ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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 な、何が起こったんだ!?
 昨日の二二時から私の知らないところで私の知らない何かが起こっている!
 嬉しいけど原因がわからないから怖くもあります
 とにかく、たくさんの【UA】【しおり】【お気に入り】ありがとうございます!
 お陰で今話はなんか普段よりも伸びました


第一〇四話 理外の理と新種たち

「寝てるトコ叩き起こされて飯腹に詰め込んで即出撃の俺の気分よ」

「仕方ないでしょ。何度も起こしたのに起きなかったんだから、むしろ食べれただけでもありがたいと思いなさい!」

「感謝してまーす」

 

 寝る前の調子がホント悪かったから寝て起きた今の調子がマジで良い。

 身体が軽くてビュンビュン動ける気がするし魔術もバンバン使える。

 マトモな休息、サイコー。

 

「え、今ってどんな感じ? 何か聞いてる?」

「全体の戦闘開始から大体八時間、モンスターの増加は緩やかになってきたけど追加がいることには変わりはないって話よ」

「おおう、本当かよ、それ。軽く過労死するぞ」

「ちゃんとポーション飲みなさい」

「ギャハハッ、ポーションゾンビかよ!」

 

 それ、なんてブラック企業?

 回復薬と書いてエナジードリンク、じゃないんだからさぁ。

 

「じゃあ、そっちの雑魚処理頑張ってね」

「そっちこそ頑張って、昨日みたいに孤立すんなよ」

「あれはアタシたちじゃなくて雑魚処理が間に合わなかっただけよ!」

「アハハッ、それもそうか。んじゃまた休憩の時にッ」

「ええ!」

 

 さて、今日も働きますか。

 

「ようヒイラギ」

「む、昨日のか!」

「昨日交代した人とウルか。交代の時間だから来ましたよ、と」

「そうか!」

 

 力強くそう返事をしてくるが、一向に退く気配はない。

 まるでこのまま戦うと言わんばかりだ。

 

「えっと?」

「ああ、あのバカはあれからずっと戦ってるんだとよ。ちなみに俺は一度休憩を挟んだ」

「え゙ッ!?」

「バハハッ! その面ァ最高だなおいッ!」

「あれからって、おかしいでしょ!? 六時間? 六時間ぶっ通しでって、それが上位の人たちの普通なんすか?!」

「ンなワケねーだろ。流石に一度は休むっつーの。アイツの固有能力の一つが長期戦に使えるってだけだ」

「それでも……スゲェ……」

「フハハハハッ! もっと褒めるがよい!!」

 

 俺が二時間近くでギブアップしたのに対してその三倍以上の六時間。

 戦闘継続能力が桁違いすぎる。

 アレは一種の化け物だ、

 体力お化けの類だ。

 

「あれ? てかウルって槍じゃ……ああ、でも剣も使ってたっけ?」

「俺様に使えぬ武器などなぁぁぁぁぁいッッ!!」

 

 お、おう。

 もしかしてずっとそのテンションで戦ってたの?

 疲れない?

 ヤベエよ、ヤベエよ。

 

「アイツに関してはそういう奴とだけ認識してれば害はない」

「ああ、そういう認識なんですね。……ところで名前って聞きましたっけ?」

「俺は名乗ってないな。俺はブルックリン。さん付けとかいらねーし敬語もいらねーぜ! どうしてもって言うなら受け入れてやるがな! バハハッ」

「んじゃブルックリンで」

 

 今までの中で一番人間からかけ離れた姿のブルックリン。

 その姿はこれまでの表現でいえば獣度が高い。

 人間的な部分は二足歩行をしている点や全身の筋肉の付き方、手足の長さ、手の形状など。

 顔つきは正に蜥蜴。

 角蛇種(リビュア)のロザリンドと似た特徴ながらその特徴である角がない。

 明確な蜥蜴種(リザードマン)だ。

 

 ……もうここまでくると全然違うけど、声帯とかは人間なのか。

 というか身体的特徴によっては可聴領域とか可視光線の定義とかが違っても良いはずなのに……そういう問題って起きねえのかね?

 まあ別種の生物同士が収斂進化で人間の形に近づいたんじゃなくて人間から派生しただけだから都合よくできてるってのは充分考えられるか。

 

「つーか、ウルはなんでこっちにいるワケ? 実力的に新種(むこう)だろ。ブルックリンは実力知らんから何とも言えんが」

「つまらんからな!」

「?」

「あいつって気分によって実力が全然違うのよ。んで無駄に硬いだけで大して強くもない新種(ゴーレム)と戦うのは嫌だってワケさ。他の奴らもウルのそういう性格は理解してっから無理に嫌なヤツ相手にさせて力遊ばせるよりも雑魚に向けた方が有意義ってんでこっちにいるってワケよ」

「は~、なんつーか色々スゲーな」

「褒めたか! 今!」

 

 褒めてねぇ。

 断じて褒めてねぇ。

 

「ホンットに面倒な奴なんだよ、コイツはッ」

「……たとえそうだとしても正直ウルから学べることはクッソ多そうだから尊敬の方が強いわ」

 

 その欠点も正直現状は他人事で実感が湧かないから欠点として認識し辛いし、現状は慣れたら味がありそうだとしか思っていない。

 動きはどれも高水準だから参考にしかならないし。

 本当に尊敬している。

 

「フハハハハッ! 聞いたかブルックリン? ヒイラギはなかなか見る目があるぞ!」

「あ~、なりたてだとそう映っちまうのかぁ……」

「え、でも普通に強いし参考になるよな?」

「真似するつもりか?」

「できるなら」

「やめておけ。側だけ真似ても弱くなるだけだぞ」

「え?」

「ああ見えてアイツの頭ン中じゃ戦局が無数に展開してんのよ。観察力もスゲーアイツは周囲の人間、モンスターの力量を正確に理解してそこからある程度の思考も読んで、後の展開をずっと先までいくつも考えてる。それありきのあの動きなんだよ。だからヘタすりゃ数手で死ぬぞ」

「……」

「ふぅん、相変わらずつまらん考え方をする奴だ! だからお前はいつまで経ってもお前(ブルックリン)なのだ!」

「どういうことだおい」

 

 なるほど。

 膨大な先見のうえに成り立つ高度な戦い。

 たしかにヘタに真似をしたら危険だ。

 

「なるほどな。たしかに今真似すんのはヤベーや」

「ヒイラギ、貴様もか……ぬ? 今?」

「要はそれに必要なのはウルと同等の戦闘思考力、もしくはウルの動きを正確に理解して自分の戦闘思考力の次元まで落とし込むってことだろ? もしくはウルの動きの中にある理を突き止めて、線ではなく点を利用するってことだろ?」

「そいつは浅はか――」

「ふぅん! わかっているではないか! やはり弱いながらも見どころのある男だ!」

「そりゃど~も」

 

 動きの因数分解しようぜぇ?

 まあ、俺にはそもそも基礎の体術が身に着いてないから正しい分解方法がわからんが。

 今は単純に洗練された戦い方を真似するだけにしとくべき。

 

「だが俺様としてはお前に興味があるぞ!」

「俺ぇ?」

「その触れただけで敵を倒す力! 非常に興味深い!」

「おいウル、そいつぁ禁忌だろぉが」

「む? おお、確かにステイタスやそれに類するモノを暴こうとするのはダメだな! てことで、今の、ナシ!!」

「別に言っても良いんだけどよ、特別なことはしてねぇし」

 

 というか忘れかけてたけどそういえばそういうのって確かにダメだったな。

 見た目で強さが判断できないこの世界じゃ自衛手段の一つだろうし。

 あれ?

 じゃあもしかしたら俺の【洗脳】とかよりも【ステイタス看破】とかの方がよっぽどダメ?

 あるかどうかはともかく、そっちのがダメなんじゃね?

 

「ほう、ならば教えて貰おう!」

「ホント特別なことは何もなくて。ただ凍結魔術で凍らせてるだけだ」

「ほう! 凍結! なかなか特殊なことをする奴だ!」

「俺としてはやろうと思ったらできたから普通のことなんだけどな」

「やろうとしてもできないのが普通、なんだよ」

 

 それはもちろん理解している。

 だが嘘偽りなく俺としては特別性はないと思っているからこれが普通なのだ。

 

「ふむ。……一度魔術陣が良く見えるように発動してもらえないか?」

「え、お、おう。こうか?」

「なるほど……」

 

 言われたように魔術陣を顕現させ、ついでに魔術としての発動もわかりやすいようにといつもとは少し変えて鋭い氷の針を生み出して超回転と速度を加えて胸に突き刺す。

 この魔術が使い辛い環境下で何度も魔術を使ったからか至近距離で発動する魔術が使いやすくなっていて圧縮した氷の針はゴーレムの胸を穿った。

 

 急にどうしたのだろうか。

 スッと落ち着いて、声音だけ聞けば別人のよう。

 こういってはなんだが、少し不気味だ。

 

「なるほど? ……うん、わからんな。これでは実用に耐えうるのか……」

「ふぁッ!? ちょッ?! あいッ、アイツ! 今おんなじの使った! 嘘だろ!?」

「ヒイラギ……」

「な、なんだよ」

「アイツはそういう奴なんだ。諦めろ」

「……」

 

 チクショウ……。

 使える奴が限られてるってんで密かに自慢だったのに。

 認識として普通ではあるけどちょっと嬉しかったのにぃッ。

 

「ダメだ! さっぱりわからん! 使えるには使えるがこれだけでは全く使いこなせんな!!」

「よしッ、何とかなった!」

「情緒不安定か?」

 

 俺の知る限り俺だけの魔術が簡単に真似されて堪るかってんだ。

 真似されて氷の針は真似されたけど。

 なんとか、なんとか首が繋がった。

 傷は浅い。

 

「ところで、若干数減った?」

「そうか?」

「知らん!」

「減った気がしたんだけど気のせいか……」

 

 なんというか視覚的に情報量が減ったような感覚があった。

 気のせいと言われればそれで納得するような、その程度の認識なのだが。

 

「あ、理解した。減ったんじゃなくて種類が変わったんだ」

「それか」

「なんだそのことか!」

 

 気づいていたのか。

 というより俺だけ気づいてなかったのね。

 ちょっと恥ずかしい。

 

「前線の方は……変わってねえな」

「ヒイラギが初めに来た時はスコーピオン系の新種はいなかったんだよな?」

「見てねえな。いねえんじゃねえか?」

「だと良いんだが」

 

 フラグ立てるのやめれ。

 来ちゃうでしょーが。

 

 嫌な予感のするブルックリンの言葉に内心でツッコんでいると、そんな嫌な予感通りに新種のスコーピオンが現れる。

 色はレモン色というか、黄色のチョークだ。

 黄色のチョークがメタリックカラーになった、そんな感じがする。

 

 ……なんか言葉にするとわかりにくくなったな。

 なんだメタリックチョークって。

 

「んなこと言うから来たじゃねえか」

「強さはわからんな――多くないか?」

「多いな。――って、こっち来たぁッ!?」

「とりあえず戦ってみろ!」

「お、おう!」

 

 まずは拳に魔力を貯めて、殴る。

 表面が砕け、パラと僅かに散るがすぐ修復された。

 その感触は硬く、脆い。

 

 アブねッ。

 

 散り、舞った黄の粉塵が突然輝き、顔の前で弾ける。

 咄嗟に上体を反らすことで避けたがそこに対して足元への鋏が襲い掛かってきた。

 そのままでは攻撃力次第では右脚を切断されかねない。

 俺は思い切って無理な体勢のまま跳んだ。

 人生初めてのバク転はなんとか辛うじて成功し、鋏は避けられた。

 そしてすぐに魔石を狙って【凍壊(フリーズ)】させる。

 

「ふぅ、ビビったぜぃ」

「俺、コイツ嫌いだ!」

「言うと思ったぞ!」

 

 冷や汗を拭いつつ一体何の鉱石なんだと滑らかな手触りの残骸をパッと拾いつつ冷や汗を拭っているとウルのワガママと呆れ怒りのブルックリンの叫びが耳に届く。

 ウルの作ったその死体は一ヶ所が強く罅割れていて、もう一ヶ所には槍が突き刺さっている。

 ブルックリンの作った死体は狭い範囲に対して無数の切り傷が走っていて、それが最終的に魔石に届いているようだ。

 

「ヒイラギ、お前はどうだった?」

「魔術使えばワリと簡単にいけた。殴った感触は連打しないと倒せなさそうで一撃じゃ俺は無理」

「そうか。魔力の残りは?」

「も~全然減ってませんとも。一〇〇回だろうが二〇〇回だろういける気がするぜぃ」

「よし、なら新種の黄色いのは任せた!」

「ヒイラギが引き受けるというのか! ご苦労だ!」

「え、有無を言わさず強制? やるのは良いけど選択肢が欲しかったよチクショー!」

 

 ま、適材適所だ。

 文句はない。

 むしろ活躍の場を与えられたと喜ぶべきだろう。

 

「ちなみにこいつらを構成してるこの黄色い鉱石って何?」

「残ったのか? 運が良いな。ちょっと貸してみろ」

「ほいッ」

「戦闘中に投げんな!?」

「メンゴ」

 

 そうは言ってもノールックで受け取ってる時点でタイミングとか関係ないだろ。

 全然動き悪くなってないし。

 

「あ~、これは上冬鉱だな」

「カミフユコウ? 上冬鉱っていうのか……何それ?」

「知らん。なんでも知ってるワケじゃねえよ。冬初めの魔月の黄魔の月と色が似てっからそういう色ってくらいしか知らん」

「そっか」

 

 名前がついている、ということは昔から馴染み深かったのだろうか。

 雑草みたいにその他大勢のクズ石として認識されていないということはそれなりに利用価値があるはず。

 今の時代は使われていないかもしれないが調べたら文献次第では載っているだろう。

 

「ハッハァッ! 上冬鉱の利用用途は主に錬金術だ! ヒイラギも知っているモノにも使われている! それは双子魔石! 等級にもよるが異なるモンスターの魔石を合成する際に使われることがあるのだ! 他には稀に鍛冶に用いられたりもするぞ!!」

「博識だな。実は思考力だけじゃなくて知識量もスゴイ?」

「凄いとも!」

「……アイツ、あんなんだが学者の家系に生まれてんだとよ」

「なるほど学習環境は整ってたわけだ」

 

 スゲー。

 語彙力が消える程度にはスゲー。

 ホント、長所だけ見たらモテないのが不思議な人だな。




 ブルックリン:緑色の蜥蜴種(リザードマン)
        西にある湿地帯出身で、幼少期から集落の大人たちの戦いを見てその技を盗んだため若い頃から実力はかなりのモノだった
        出身地に合わせた魔術訓練によって得意魔術は水や土、その二つを複合した地面を泥沼にして操作するというモノ
        獣人の嫁が二人いる
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