ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「だらっしゃぁッ!」
硬ッ!
前より硬くなってない?
数倒してないから強化されてるのか個体差かわからねぇ……。
「まあいい。とりあえず試せること片っ端から試してみるべ」
一度距離を取り、一気に距離を詰めて手を触れた状態で魔術を使って固定をする。
掌が触れている状態で相対位置を固定したことで前進の勢いが回転の力に変わり、タイミングよく魔術を切ることで俺はクリスタルゴーレムの背に乗った。
そしてクリスタルゴーレムの肩二か所に対して固定魔術を掛ける。
高い魔術耐性によって魔術を掛けるのには神経を少し磨り減らしたが、さっきまでの新種スコーピオンの背面装甲に加えたらまだ突破しやすい。
だが続く攻撃、【
「構築時間を抜いて四秒ちょい、流石に時間が掛かるな」
それだけの時間を無抵抗にいたら乗っているゴーレムは良くても他のゴーレムに殺される。
「って! アブねぇッ!?」
新種スコーピオン。
見た目から考えてクリスタルスコーピオン――はその尻尾から巨大な結晶塊を打ち出してきた。
避けなければ頭に直撃しているところだった。
冷静に、慎重に。
打てる手を全て試して俺でも勝つ術を模索しろ。
ここにいる以上役立たずは許されない。
これまで積み重ねてきた知識と技術を。
「使える知識はゲームでもなんでも――そういえば武器に魔術を込める技術があったな。難しくて断念したが……やってみるか」
教えて貰った時は想像以上の難易度にすぐ断念した、というか危ないということでマユゲに止められていたが。
今ならできるかもしれない。
この環境下だからこそ剣と空気の境界がハッキリわかる……。
魔術を使い辛くするこの圧力を逆に利用して魔力を全て剣身に封じ込めて……魔術を構築して……切る瞬間に一気にねじ込む。
操作はムズイが経験を積んだ今なら!
襲い掛かって来る鋏を剣の腹で受け流しながら内側へと踏み込み、一気に切り上げる。
硬い手ごたえながら全く切れないワケではなく、僅かに突破できた部分から魔術が浸透し、凍結によって脆くして、そのまま両断に成功した。
「よしッ!」
喜んで気を抜いた瞬間に魔術の制御が解けて魔力が暴走し、直前で慌てて制御したものの小規模の暴発が起こってしまう。
だがそんなことよりもやはりスコーピオンの中でも上位に入るほど硬い腕の付け根の部分を一刀両断にできたという事実は自分の成長を実感できて嬉しい。
「フハハハハッ! やはり俺様の目に狂いはなぁしッ! よしヒイラギ、殲滅してしまえ!」
「アホ言うな!? どんな無茶ぶりだよ! ……てか部隊着いたし」
「む……つまらんな」
「災難ねヒイラギ。アレに巻き込まれるだなんて」
「いやまあ、なんとか倒せるから良いけど」
「え?」
「そりゃちょっとくらい驚くかなとは思ったけどよ、そんなガチに驚かなくても良いだろ?!」
言っていることが理解できない、というふうに驚くクアーク。
発言を証明すべく俺は再び剣に魔術を込め、さっき片腕を切り落としたスコーピオンを今度は真ん中から魔石を通るラインに少しズラして半ばまで両断した。
「強くなったのね……」
「何目線!? って、師匠目線か。色々教えて貰ったし」
「まあ、戦えるようになったのならアタシたちみたいに酷使されなさい」
「しゃーない。街を護るためだ、頑張ってやりますとも」
とはいえさっきまでのように討伐数は稼げそうにはない。
理由は主に二つ。
一つ、単純に魔術の構築と剣身への封じ込めに時間がかかるという点。
具体的には妨害のない環境下で最短三秒、が都合よくそんな環境は訪れないから回避防御との並行を前提に平均で七秒ほど。
二つ、この技――仮称【凍剣】は剣で装甲を突破することと、【凍剣】による変質後の切断が前提にあるという点。
つまりそもそもの威力に加え、威力が低減した状態で切るだけの膂力が不可欠。
限られた剣身の中でそれを行うには全身を一気に作動させて酷使する必要があるのだ。
加えていうなら一応もう一つ前提がある。
それは一撃で、ということ。
相手に【
もし仮に修復前の状態で連撃を行ったとしても、それは全く同じ位置に攻撃を当てなくてはならないのだから寸分違わぬ攻撃技術を持っていない俺にはそれは不可能に近いのだ。
「キッツいわぁ」
全身の筋肉が少しずつ千切れるのがわかる。
酷使に次ぐ酷使で全身が骨まで軋み、その度に魔術で治す。
疲労と回復を短時間に味わい、短期間に繰り返すせいで意識がバクを起こしそうだった。
腕と背中が特につれーわ。
なんつーか前休んだ時の痛みと同じだな。
「ヒイラギッ、避けて!」
「え、ああ、弾丸ね」
焦ったクアークの声。
反射的に探知を強化するとスコーピオンの尻尾から放たれた弾丸が迫っているのがわかり、射線上にバリアを張ってそれを防ぐ。
「ごめん!」
「声かけしてくれりゃいいですよッ、と!」
張ったバリアは全力ではなかったがそれなりに魔力を注ぎ込んだモノ。
だがそれは結晶弾丸によって僅かに罅が入っていた。
咄嗟とはいえ危なかったかもしれないという事実に僅かな笑みが零れる。
「ああもう、恐怖でワクワクしてくるなぁオイ……」
戦い続けて頭がどうかしてしまったのだろうか。
この恐怖が楽しい。
逸る心臓がどうしようもなく心地よい。
「顔ヤベぇな!」
「たまに出るのよね、アレ。まるでアンタみたい」
「俺もか! ハッハッハッ! 知らなかったな!」
「そっくりよ……」
繰り返す
だが一体のゴーレムに攻撃を弾かれ、その装甲は突破できなかった。
回避し、もう一度攻撃を試みるがやはり異常なほど硬く、傷一つない。
「ヤベッ」
同時に魔力の高ぶりを感じ取り、急いで撤退する。
直後、地面から大量の結晶が突き出してきた。
地面自体が大量の結晶で構成されているせいで以前戦った時よりも圧倒的に範囲が広く、伸びる結晶も長く、肩を僅かに掠めてしまう。
「どっちでも良いけどどっちかこいつの相手頼めないか? 無駄に硬くて攻撃通らんのだが?!」
「ほう、硬いと! ならば俺が確かめてみようではないか!!」
聞くなりすぐ楽しそうな笑みを浮かべながら大槍で貫きに掛かったウル。
だがその槍先は頑丈な装甲に阻まれて五センチほどの位置で止まっている。
「ただの石くれのくれに生意気な!」
暴雨のような突きと暴風のような薙ぎ払い。
僅かずつではあるが一瞬のうちに体表が削られ、ゴーレムの左腕が落ちる。
そして右腕もと狙いを定めた瞬間、結晶の操作とともにゴーレムが後退をした。
……今までゴーレムが
そもそも一度敵対したモンスターがそんなことするってのもほとんど……。
「フハハハハ! モンスターが逃げるとは奇妙な!! しかも今防ごうとしたな! なるほどただの石くれではないと見える。さっきの言葉は撤回してやろう!!」
心底楽しそうにしながら生えた結晶を破壊する。
そして飛翔斬撃で道を切り拓き、攻撃しようとした瞬間。
クリスタルゴーレムは近くにいたゴーレムに対して体当たりをするかのように接触し、そしてその全身を吸収した。
…………は?
仲間を殺した?
吸収?
スライムでなら聞いたことがあるがゴーレムで?
待て待て、そんな特性聞いたことないぞ?!
存在感が一気に高まる。
左腕は再生し、その肉体は肥大化。
体内の魔石は二つ。
この中で
根拠などない。
だがその存在感がそう伝えていた。
「合体の特性を持つモンスターか。稀に生まれると聞くが……厄介だな。……ああ、実に厄介だ! 厄介極まりないではないか!!」
「喜ぶなこのおバカ!!?」
その瞬間、ゴーレムの身体から触手のように蠢く無数の針が飛び出す。
硬度は大したことはなく、バリアで防げば簡単に折れるほど。
だがその針が当たったモンスターはゴーレム、スコーピオン、クレイ、クリスタルと種類関係なく吸収されていった。
「……おいおいおい、どうするよ、これ」
「倒すしかないでしょ。何をわかりきったことを……」
「だよなぁ」
初めの一体が吸収された後からこちらの様子を窺っていた開拓兵たちが今の光景を目の当たりにし、騒めく。
経験の長い人たちだからきっと俺なんかよりもよっぽど脅威を理解しているのだろう。
「部隊を二つに分ける! 一方は合体するコイツの針を破壊、もう一方は急いで他のモンスターの討伐にあたれ! 急造でもいいから協力して雑魚巨大モンスターの位置を操作することを優先! それから脚の速い奴は寝てる奴ら起こして連れてこい!!」
「了解!」
「お前ら拠点に行ってこい!」
「ああ!」
「ヒイラギ、お前はこっちだ!」
「お、おう!」
一気に戦局が動いた。
状況を理解したウルが即座に周囲に指示を出し。
その作戦が間違っているとは微塵も思わない開拓兵たちは指示に従って即座に急造パーティを編成、脚が早い者も道中のモンスターを排除する者たちとともに一〇秒もかからないうちに晶洞を後にする。
そして攻撃が通じないであろう俺もなぜか合体クリスタルゴーレムの討伐に加わることになった。
こういうのって事前に情報を出すのが正解なんでしょうけど基本ヒイラギ視点で進む以上は突然やっちゃっても良いか、と思ったので合体モンスターは突然出ました
というかそもそもモンスターの情報全てを事前に出すのは面倒ですし不可能でしょうからまあ、良いか、と
そういえば油粘土と書いていてふと思ったんですが、アレって色々種類あるんですかね?
私はやけに硬かったイメージがあったので硬いけど頑張れば壊せそう、かつ多くの人が知っているであろうモノとして油粘土という表現をしたんですけど……
柔らかい油粘土とかあったらどうしましょう……