ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「ちぇぃッ!!」
攻撃の直線状にバリアを多重展開し、魔術で強化。
威力の落ちた攻撃に回し蹴りを合わせ、逸らす。
その隙に周囲の人たちは一斉に長大な尻尾を攻撃する。
伸びれば伸びるほど耐久性が落ちるため先端は特に脆く、一斉攻撃によって少しずつではあるが痩せ細るように削れていった。
だが一度攻撃を終えた尻尾がそのまま留まり続けるワケはなく、終端に着いた尻尾はそのまま縮み、戻る瞬間に鉤爪のように先端を折り曲げて再度突き刺そうとしてくる。
背後からとはいえ探知範囲に入った虚のない攻撃。
避けることは容易い。
「尾節は伸びるがその節の数は変わらない! そして各節の内部に魔石がある! 潰したからとて尾節がなくなることはないだろうが確実に脅威度は落ちるから狙える者は全員破壊を試みろ!」
「今の一瞬でそこまで……」
ハッキリいって全然わかっていなかった。
直線軌道だから仕方がないとはいえ動きが素早すぎて目で追うので精一杯、尻尾の節の数なんて数えている余裕はなかったし、探知がヘタだからか全体的に魔力が濃いことくらいしかわからず魔石の有無なんてわからない。
だがそんな、俺にとって高度なことをウルは今の一瞬で正確に把握し、もう一本の尻尾の魔石を一か所砕いていた。
純粋に技がスゲェよ……。
しかも聞いた感じだと固有能力は戦闘向きじゃないし。
戻る動きに合わせて一瞬で貫いたウルの攻撃。
その穴は槍を引き抜くと同時に塞がるが、槍とともに砕けた魔石がパラパラと零れ落ちてその力量がわかる。
「ホント……こんなところでやられるワケにゃいかねーなッ」
第二撃。
同じように直線軌道で襲い掛かって来る尻尾。
まるでさっきの再現のような、馬鹿の一つ覚えのような動きに合わせてさっきと同じようにバリアを張って回し蹴りを叩きこもうとした時、勘がそれを思い留まらせた。
上げかけた右脚をそのまま滑らせ深く前に踏み込み、そのままの流れで切り下ろす。
迫る尻尾が不意に――止まった。
ギチと軋む急停止音を響かせ、タイミングをズラすために止まった尻尾は再度急加速を行う。
普通ならば回し蹴りは空振り、攻撃は直撃していたが、踏み込みのお陰でタイミングをズラし返せ、カウンターはジャストタイミング。
叩き落された尻尾は地面に突き刺さり、俺は即座に尻尾を全力で踏みつけた。
「今だ! アイツが押さえてるうちにぶっ壊せ!!」
単純な力のぶつかり合いでは確実に負ける相手。
それがこのゴーレムの、尻尾攻撃だ。
けれど相手の力を万全でなくしてしまえば勝ち目は薄いが存在する。
助走なしの、立ち幅跳びでは走り幅跳びと倍以上の大差がつくように、力を載せる猶予を奪ってしまえば単純な要素上では俺が勝ることができる。
直接は魔術防御でできないから踏みつけた俺自身の脚を魔術で固定して、加速と体重を全て載せた最大限の押し付けを維持し、同時に反発を防止。
強烈な抵抗を右脚で感じるが、他の開拓兵たちの奮戦のお陰で目論見は成功した。
「足どけるぞ!」
「ああ! でかしたッ!!」
各節の魔石を壊し終えたのを確認し、合図を出してから脚を退ける。
すると溜まっていた力によって尻尾は素早く本体へと引き寄せられていった。
スゲェ……たった五秒で一〇ヵ所近い魔石を全部潰しちまったよ。
なんつー人たちだよ、マジで!
これが無限の殺人生物と戦い続ける世界の人間か。
そりゃつえーわ!
「おいおい、こいつぁもしかして勝てるんじゃねえか?」
「良い囮だった、助かったぞ」
「弱いが役立たずでいるつもりはないんでな。力になれて幸いだ」
笑い合いながら様子を窺う。
すると修復を終えた尻尾が上を向き、そして半ばから複数に細く分裂した。
一本の
当たれば死ぬ雨に。
嫌な汗を掻きながら必死に避ける。
恐らく耐久性能は低い。
だが攻撃の暇がないほどに苛烈を極める攻撃の数々。
これがずっと続けば俺の体力切れで殺される。
「てか魔石破壊で動き落ちた?! 弱い俺には違いがわからんのですが!?」
「防御、だろうな」
「攻撃できない俺に意味ねえ! ……魔術か」
防御力が落ちた、ということは今なら魔術も効くかもしれない。
だが、この回避に手一杯な状況では構築の余裕がないのも事実。
「爺さんッ、数秒で良いから俺の分も対処できないか!?」
「老体を労わらん小僧だ。よかろう! 一〇秒だろうが二〇秒だろうが、一分だろうが耐えてやろうぞ! 代わりに成果は出してもらうぞ!!」
「おうよッ!! その意気で本体も倒して良いぞ!」
「ファッファッファ。若いのの手柄を横取りする気はないのでな、遠慮する!」
魔術を構築する。
尻尾が凍てつくさまを、砕け散るその欠片全てさえを見通すように、深くイメージを。
この状況で魔術を使う感覚は覚えた。
流石に万全とはいかないが一瞬だけなら広範囲で使える。
魔力はごっそり減るけど残量は充分あるし、出し惜しみはナシ。
へその辺りに魔力を凝縮して――胸から全身に供給される魔力をまた同じ位置に圧縮――よし、そろそろだ。
「準備は整った!」
「よし来たッ!」
合図で俺の正面に立っていた爺さんがその場を離れ、二本の尻尾が俺に向かって進む。
魔術は構築し終えて待機状態、魔力も充分貯まっている。
これが今俺にできる最大の魔術だ。
慎重に、一気にッッ!!
「【
貯めた魔力が暴発するように一気に周囲に広がる。
爺さんの驚愕と緊張が見ずとも感覚で伝わってくるが、問題はない。
この一見暴発、暴走にも思える爆発的魔力拡散は意図したモノであり、魔力は全て俺の制御下にある。
拡散する俺の魔は、ゴリ押しによって大気中の魔を押し退けて数瞬の間だけ、一定範囲における俺の魔術使用を完璧なモノとした。
俺の魔力で最高の環境として整えられた一定範囲で、俺の魔術は一切のロスなく発動。
正面の二本は当然のこと、周囲の尻尾ごと根元まで凍らせ、それは他の腕にまで影響を及ぼした。
「!!? 今だ! 一気に畳みかけろ!!」
魔力に驚いたのか、それとも俺がここまでするとは思っていなかったのか、一瞬だけ驚いたウルは刹那に冷静さを取り戻し周囲に指示を出し、自身も攻撃する。
尻尾を一本、ゴーレムとスコーピオンの腕をそれぞれ六割ほど一瞬で失い驚愕するゴーレム。
策を弄することからも察してはいたがこの合体ゴーレムは知能が高く、だがそれゆえに不測の事態には弱いらしい。
「やべッ、魔力使いすぎた……」
攻撃に参加しようと一歩踏み出し、そこで脚が止まる。
一瞬で二割近い魔力を使ってしまったがために身体が不調を訴えていた。
「心配するなヒイラギ! 皆その活躍は理解しておるしこのジジイも証明してやる!」
「情けなくてワリィな……」
緊急的に指輪から魔力を補給する。
本当はこれに依存したような生き延び方はしたくなかったのだが、意地と他の皆の命は秤にかけられすらしない。
嫌ではあるが忌避感は薄かった。
そして次に俺はもう一つの指輪を操作し、設定を弄る。
それは経験値を魔力に変換して指輪に貯める指輪。
マユゲにしてもらった設定以上に弄って経験値の取得率を一〇〇%に近づけることはできないのだが、逆に魔力への変換率を以前同様の一〇〇%にすることはできる。
今多少レベルアップをしたところで力にはならない。
だったら魔力として戦闘継続力を上げるだけ。
「よしッ、あとちょっとで――」
魔力回復が済み、攻撃に参加できると意気込んだ瞬間のこと。
俺がやったような魔力の爆発。
だが制御が疎かでそれは俺とは異なる完全な暴発。
強い魔力の衝撃波を生み、攻撃に参加していた開拓兵たちに襲い掛かる。
そしてゴーレムはその頑丈さで暴発を耐え、そして暴発の最中に変えていたらしい姿を土煙の中から表した。
その姿はさっきまでよりも少し小さくなっていて、腕は二本一対に戻って尻尾は一本に。
小さくなって尻尾が生えただけかと思いきや、元のゴーレムのモノと思えた腕、手にはリザードのような鋭い爪が生えているのがわかった。
しかもそれは元々のゴーレムのような無骨さがなく、まるで職人の手によって研磨された上等な刃物の如き洗練された鋭さを密かに、だが確かに主張している。
「腕に自信のある奴だけが出ろ。……クアーク、爺さん、やるぞ」
「ええ。良いトコ見せるわよ~」
「こんなジジイじゃ華がないだろうに……けどせっかくだ、ジジイの本気見せちゃおうかね!」
爺さんの語尾を「じゃ」にしようと思ってすぐやめました
ああいう役割語を話す人っていませんし。ふざける時はともかく
なのでどうにかそれっぽい口調を、と思ったのですがこれが殊の外難しい
男キャラが極端に少なかった一話~六〇話と比べると男キャラを出せる今は楽しいですし、ヘルベルトもウルも爺さんも動くさまは楽しいのでどうにかしたいです……
爺さんの情報は明日にでも出します(出せる情報は多分少ないですけど)
一応決まってるけど今後の展開と照らし合わせて微調整したいですしお寿司
ちなみに装備は薄い革鎧(魔術的支援目的)と