ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一一〇話 似た二人。“理解”と“わかる”

「いや~、今日はホント疲れたな~」

「今日何回目よ」

「気ぃ抜くと疲れが襲い掛かって来てな。てかそんなに言ってた?」

「街に戻って来てから五回目」

「それは、スマン」

 

 流石に鬱陶しいな。

 気をつけないと。

 

「というかそんなに疲れてるならポーションでも飲めば良いじゃない」

「知り合いに、苦痛には慣れておけポーションに頼るな、的なことを言われてるからそれは遠慮する」

「そう……ところでずっと右腕を気にしてるけど何かあったの?」

「あ、気づかれてたか。まあ多分筋肉痛だな。前の酷使ほど痛くはないから平気だ」

「ならいいんだけど」

 

 正確には筋肉痛に加えて前の酷使の症状も若干入ってる。

 魔力を圧縮したりしてたから腕とか臍の辺りは痛いし、右腕に関しては魔術も待機させまくってたから少し熱を帯びる。

 わかりやすく、感覚的に言えば汗が少し滲む程度に筋トレした時の身体の熱。

 マラソン後ほどは熱くはなく、けれど平熱よりも高い。

 そんな感じか。

 

「ところで結局昨日今日の大量発生は何が原因だったの? 無事収まったからいいけど流石に何もわからずこのままって言うのは少し不安じゃない?」

「俺とヘルベルト、あとウルが話し合って立てた仮説だと“廃坑の放置し過ぎ”が原因じゃないかっていうひとまずの結論が出た」

「放置し過ぎって……どの坑道にも定期的に調査依頼は出されてるわよね? なのに放置?」

 

 まあ言葉だけで解釈をすればそうなるだろう。

 俺たちは話し合った時に順番に理解を進めていったからそこに対するツッコミはなかったけど確かに結論を先に行ってしまうと少しわかりにくいかもしれない。

 

「まず、モンスターは魔から生まれ、高濃度の魔の下には強力なモンスターや大量のモンスターが湧く。それは前ヘルベルトと話した時に理解したよな?」

「ええ。そこは大丈夫」

「で、その魔は人間の魔と反発が起こるって性質がある。ちなみにこれが街中にモンスターが出ない理由だ。魔が磁石の反発みたいに一定範囲外に弾かれるからな」

 

 より詳しくいえば周囲の環境によっても異なる。

 基本的に想定しているのは物理の計算のようにそれ以外の余計な要素を一切考慮しない気体、大気の環境下だ。

 例えば大気なら一〇〇メートル反発する魔だとしても、それが例えば海なら三〇メートルほどに、厚さにもよるが岩ならほんの僅かと。

 対象によるらしい。

 坑道は大気の通りはあるが長いくぼみでしかない。

 イメージ的にはペットボトルだろう。

 穴から中に風を吹き込むことはできるが、風の抜け道がないから風の通りが悪く停滞するのだ。

 

「んで弾かれた魔が坑道内に留まって、滅多にモンスターが倒されず循環が行われないことで締め切った部屋で長時間過ごすみたいに淀んだ魔が溜まる。元々溜まった魔が限界に近くて、つい最近それが一つの形として現れた」

「つい最近? もしかしてアンデッド?」

「正解。溜まった魔に死者の怨念が作用してアンデッドの大量発生という形で発散が開始。けれどすぐ俺らがアンデッドを倒し、ギルドが死体を回収した結果その発散が中途半端に中止。イメージ的にはそれが溜まっていた魔のストレスになったらしくて、魔の溜まりに残ってた“モンスターを発生させる”って状態が暴走して周囲の関係ない魔にも影響を及ぼして今回の事件に」

「なるほど。つまりセックスの時に向こうだけ満足しちゃって欲求不満、その結果暴走、みたいな感じね?」

「……なんか……まあ、うん。それで納得できるなら良いよ。うん……」

 

 忘れてたぁ。

 そういえばクアークってそういう奴だったね。

 ……舌なめずりをするのはやめなさい。

 

「ただこれ。ヘルベルトが試算してみたら普通こうはならないというか、環境と魔の溜まる速度的にはむしろ土地を潤すことになるんだとよ。元々そういう地形だし、すぐ近くに人間が拠点を構えたことでそれは良い方向に作用してるって。けど、その死体云々が問題だったというか。あの坑道に複数の人間が長期間滞在してた場合全体の大きな流れが捻じ曲がって、それで悪い方向に転んだって」

「つまりそいつらが原因ってことね?」

「まあ、簡単に言えば?」

「……」

 

 流石に考えすぎだと思いたいけどこれが人為的だとしたら……。

 分野的にも賢い奴じゃないと難しいらしいし、国全体を見てもできる奴は少ないからホント考えすぎだと思いたいが。

 もし考えすぎじゃないとすればかなり厄介だろう。

 俺含めて並みの奴らじゃ向こうの尻尾を掴めない。

 ゴリ押しが最善かもしれない。

 

「まあそういうワケで初めに言った結論を詳しく言えば。本来なら放置しても問題なかった魔の貯まりが予期せぬ流れの捻じ曲がりによって異常をきたし、魔の溜まりが暴走してモンスターを生み出した。ってなる」

「ざっくりわかったわ」

 

 そりゃよかった。

 

「とりあえずは安心して良いのよね?」

「おう。また黒鉄の墓が面倒起こさん限りはひとまず安心してヨシッ」

 

 ヘルベルトが言うには「停滞していた魔力の多くが散っているな。ふむ、不快さも減った。これならじきに正常な流れになるだろう。しばらくの間これまでとは少々数や強さが変わる可能性はあるがそれを理解のうえで挑めば問題はなかろう」とのことだった。

 つまり簡単にいうと。

 風邪がぶり返す可能性があるから用心はするべきだがおおよそ治りつつある。

 となるワケだ。

 

「んじゃあ、そろそろ寝ますかねぇ」

 

 防具も兼ねる服を脱ぎ、肌着になる。

 防御のためか服の見た目ながらそこそこ重く、脱ぐと開放感があり、また涼しくもあった。

 ちょっとだけではあるが肩こりのような感覚が和らぐ。

 よく見ると少しだけその部分の血流が圧迫によって弱まっていた。

 そして指輪を外す。

 坑道にいる時は万一に備えて寝てるときもずっと着けていたから調節機能があるとはいえ流石に指輪の跡がついていた。

 

 あ……ウルに指輪借りっぱなしだ。

 貰ったんだっけ?

 よく憶えてねえや……。

 明日にでも聞いてみるか。

 返せっていうなら返せばいいし。

 

 黒と赤の細い指輪を見て少し申し訳なくなる。

 多分向こうは全く気にしていないのだが、借りパクをするというのはどうにも居心地が悪い。

 これまでの信用関係を損ないかねないことだ。

 仲良くしたい相手にはふざけているとわかる時以外は常に誠実で誠実であるべき。

 それが自論だ。

 

「って、活動時間が基本ちげぇや……」

 

 自称“夜の帝王”のウルはその自称通り基本的に活動時間は夜だ。

 だからこれまでほとんど接触はなかった。

 たまにギルドで酔いつぶれた姿を見たくらいのもの。

 以前は自称“昼の覇者”だったらしいが、少なくとも今は夜型の生活をしている。

 運よく遭遇するか、酔いつぶれているところに接触するか、俺が向こうの活動時間まで起きているかだ。

 

「何ブツブツ言ってるの?」

「すまん、鬱陶しかったか。ウルから指輪を渡されてたんだが――!!?」

 

 流石に裸にはならないとはいえジロジロ見るのは失礼だからと、マナーとしていつもお互いが寝る準備をするとき俺はいつもクアークに背を向けて極力見えないように準備をしていた。

 そんな俺の反応を見て意図を察してくれていたのかクアークも特に多く会話を振るワケでもなく、基本的には適当に聞き流しても差し支えのない冗談話ばかり。

 にもかかわらず、今日は何故か背中にクアークの感触が伝わってきた。

 

「あ、の?」

「その指輪はウルの固有能力で創ったヤツだから気にしなくて良いわよ。むしろ返されても困るだけだと思うし」

「それは良かったが…………なんで、抱きつく、の?」

「気分だから、かしら」

「……」

 

 ちょッ、えッ、ちょッ!?

 どういう?!

 これ、感触、裸!?

 それとも普通に肌着?

 うぇええええぇぇぇ……。

 

「お、俺ってそんな慰めなきゃって思うくらい落ち込んだ雰囲気出してた?」

 

 他意はない。

 他意はないハズだ。

 なんというか、そう!

 母親とか姉がするみたいな、そういう感じの優しさ的なアレだよアレ。

 うん。

 きっとそうだ。

 そうに違いない。

 そうであれ!

 

「そんなことはないわよ。さっき言ったように、アタシの気分。アタシがそうしたい。アタシが――」

 

 脳が融けるような、ロカリーのように甘い声。

 熟れた果汁が染みるように、声が、言葉が脳に入り込み。

 肩越しに下がっていた腕が持ち上がり、俺の顔を後ろからそっと挟み。

 俺の意思とは関係なく顔が横を向き。

 そして視界に影が差す。

 

「んぅっ……」

「あ……」

 

 唇が重ねられた。

 ファーストキスは俺の意思を無視してクアークのものとなり。

 ファーストキスは仄かにアルコールの香りがした。

 

「初めて……」

「そうだったの?」

「初めてのキスは……好きな人と……」

「アタシを好きになれば良いのよ?」

「……クアークを?」

 

 酔いが廻るように、思考がぼやけ、身体が熱を孕む。

 よく知った感覚に身が包まれる。

 思考が、クアークに、犯される。

 

「なんで、こんなこと……」

「嬉しかったの。あの時囲まれて、少しだけ死を覚悟して、けど助けようとしてくれた」

「それは……吊り橋効果……」

「恐怖を感じて、それを救おうとしてくれたから好きになる。そうね、そういう心理もあると思うわ」

 

 ジワリと暖かい手が頬に触れ、再び唇が重ねられ、そして押し倒された。

 ズキと胸が締め付けられるように痛む。

 

「でも。好きって気持ちはホント」

「それは、クアークの求めていた、本当の愛じゃない……。だから……」

 

 これはダメだ。

 どちらも幸せにならない。

 クアークは酔っているだけ。

 冷静になった時、後悔する。

 頭の片隅に、辛うじて残っていた俺の思考が拒絶をする。

 だが俺の意に反した思考が拒絶を抑え込もうとしていた。

 

「アタシのこと……キライ?」

「そうじゃない……」

 

 熱いコーヒーに入れられた角砂糖のように、甘さが体内に溶け込む。

 シロップのようにドロリと理性にまとわりつく。

 

「なら、スキ?」

「好きだけど……それは仲間としてで――」

「――アタシを、受け入れて」

 

 ズキズキと胸が痛む。

 優しく抱きしめられているはずだ。

 なのにクアークの肌が触れた右腕がズキリと、そっと手を這わされたお腹がズギズギと。

 身体のあちこちが痛みを発する。

 カンカンと脳の警鐘が鳴らされていた。

 犯された理性が「抗うな」「身を委ねろ」と囁く中。

 脳が。

 耳が。

 指先が。

 胸が。

 強く「抗え」と。

 そう叫ぶ。

 

「やめてくれ」

「どうして?」

「本位じゃないからだ」

「すぐ平気になるわよ」

「俺も、お前もだ」

「……アタシは自分が望んでやってるのよ? なのに本位じゃないって言うの?」

「詳しいことはわからん。だが……俺はお前に応えることはできない」

「どうしてそんなことを言うの? どうしてそう言えるの?」

「クアークが他人を試して、理解した何かを。俺なんかが持っているワケがないからだ」

 

 途端に、クアークの目が少し悲しそうに細く下ろされた。

 けれど視線は外れない。

 

「だから……やめてくれ」

「イヤよ」

「そうか……」

 

 できれば、言葉で説得をしたかった。

 言って聞いてもらえればそれに越したことはない。

 けれどそんな希望とは裏腹に、クアークから帰ってきたのは拒絶に対する拒絶の言葉。

 最後の希望を抱き、俺はあえて全身から力を抜いて。

 ジッとクアークの目を見つめる。

 

「受け入れてくれるのね」

「……」

 

 それすらも叶うことはなく。

 クアークの手は腹部からゆっくりと下腹部へ下り、ただそっと溶かすような優しい微笑みが向けられる。

 

「もう……『やめてくれ』」

 

 俺の言葉に従ってクアークの動きがとまる。

 大切な人だから。

 恩人だから。

 【洗脳】なんて使いたくなかったのに。

 こうすることでしか己の身も、彼女のことも護ることができなかった。

 護りたくて。

 なのに傷つけるようなことを。

 

「俺は気にしてないから……忘れてくれ」

 

 彼女の歪みは彼女の固有能力によるモノだろう。

 もう一つの固有能力。

 正確な力はわからない。

 ただ恐らくは常時発動型の精神異常系。

 もしかしたら常時ではなく条件が整った場合にのみ移動発動するのかもしれない。

 そして来たす異常は多分好意(・・)だ。

 

「驚いたわ。ヒイラギも似たような力があったなんて……」

「なッ!?」

 

 一度は止まった手が再び動き出す。

 どかした手が、また身体に触れられた。

 

「その力ならどんな相手も思い通りじゃないの? 多分、アタシだって」

「断言はできないけど……クアークと同じだよ」

「真実の愛?」

 

 求めているモノは俺とクアークじゃ違うだろう。

 けれど本質は似ているはずだ。

 

「……こんな力で誰かを操って愛を得ても、それは空っぽなだけ。全てが意のままの世界じゃ満足にはなれない。自分で自分を励ますように、やがてその虚しさに気づく。愛されていても、心はそこにはない。真実の愛じゃ、ない」

「気づいてたのね」

「わからなかったよ。ただ普通に、愛を求めながら愛がどういうモノかわかってない、愛を探す旅をしているようなモノだと思ってたから。けど今、クアークの固有能力(ちから)で意識を変えられて、歯車が嵌まった」

「鈍いと思ってたのに、意外と頭良いのね」

「流石に気づくわ」

 

 わかるからこそ。

 わかっちまうからこそやるせなさがこみ上げる。

 

「他人の心をねじ負けるその能力。簡単に変わってしまう人間の心。それを見てしまったからこそ、それに負けない、強固な愛を見たくなって、欲しくなったんだろ?」

「流石にアタシと同じなだけあってわかっちゃうかぁ」

「バーカ。全然ちげーだろ。自由にオンオフできる俺と比べりゃ勝手になっちまうクアークの苦痛はもっとひでーだろうが。それこそ理解なんて、わかるなんて言葉を使っちゃいけないくらいにな」

 

 そんな無責任な言葉は使えない。

 経験を理解できるのは全く同じ経験をした人間だけ。

 同じ“いじめ”を受けても、その内容は千差万別なように。

 多少似通った経験をしたところで本人の苦しみは本人だけのモノ。

 想像することしかできず、共感はできない。

 わかるよ、なんて不誠実で身勝手で無責任な言葉、同じ“心を捻じ曲げる能力”を持った俺には使えないし、使うワケにはいかないのだ。

 

「バカね。そういう時は素直にわかるって言えばいいのに」

「そんな嘘の言葉、使って欲しいのか?」

「イヤよ。そんな詐欺師の言葉。反吐が出る」

「だろうな。わかるよ(・・・・)

「もうッ! バカッ! なんでそんな自分から嫌われるような真似……」

「捻くれたクズだからな」

 

 笑い合う。

 少しだけクアークの笑顔が自然になっていた。

 

「ちなみに……どうして意図的に使える力じゃないって気づいたの?」

「そんなの、クアークの神経がマトモだからだよ」

「?」

「どうしようもなく短絡的で、どうしようもなくクズで、他人の心がわからない俺とは違う。手遅れになってから後悔する俺とは違って……それをしたらどうなるか、ちゃんと初めから分かってるだろ」

「アタシを信じたってこと?」

「俺とは違うのはわかるよ……他人の心がわからずとも、それはわかる。仲間だからな」

「ごめん……ちょっと顔見ないで……」

「はいはい。俺の初めてが奪われちまったんだ、この際胸くらい貸してやるよ」

 

 渦巻く既視感。

 俺にとってのマユゲが。

 今のクアークにとっての俺なんだろう。

 この世界にきて俺は早々に理解者を得られた。

 洗脳の効かないマユゲという存在。

 【洗脳】を知るマユゲという存在。

 悪用する動物的人間性を抑えて自責する俺の中の社会的人間性が。

 ただひたすらに。

 他者の心を捻じ曲げる罪悪感と虚しさが。

 心を圧し潰そうとし、けれど秘密を共有するマユゲという人間がいたからこそ圧し潰されずに済んだ。

 立った少しの間の出来事。

 罪悪感を抱くのに三日だっただろうか。

 そこからあっと言う間に心が黒く淀んで。

 けれど救われて。

 一週間にも満たない出来事。

 それをクアークは二〇年近く、もしかしたら二〇年以上味わってきた。

 想像を絶する苦しみだろう。

 だから歪んだのだろう。

 想像することしかできないのに俺の想像の範疇にはいない。

 苦しみを想像できるだけの人生を歩めていない。

 

「ったく……俺もお前も、何してんだか」

「傷の舐め合い、かしらね?」

「なぁにカッコつかねー声でカッコつけてんだ。大体俺はもう済んでんだよ。だからこそ初めてのために受け入れるつもりはなかったのに……こんのバカっ」

「えへへ、ごめんなさい」

「ちったぁ反省しやがれッ」

 

 なんだ、えへへって。

 子どもか!?

 

 頑張って強がるクアークを、少し躊躇ってから仕方なく胸の中で抱きしめる。

 胸がしっとり冷たく湿る。

 

 鼻水出してねェだろォな?

 

「ヒイラギ……」

「ん?」

「……ごめんなさい」

「おぉ」

 

 依存にも似たこの感情を。

 それでも俺はマユゲに「愛している」と言おう。

 何もかもが歪で、他人からすれば異常で。

 けれども俺は愛しているし。

 命すらも投げうてるこれはきっと“狂愛”。

 

「ヒイラギ……」

「今度はなんだよ……」

「好き」

「……まあ、俺もだ」

「ヒイラギ……」

「なんなんだよ……」

「愛してる」

「……ワリィが応えられねえな。俺には他に愛している奴がいるんだ。まずはそいつにちゃんと言って、そんで答えを出してもらう。まだなんだよ。まだちゃんと伝えてない。冗談でしか言葉にしてない」

「そう……」

 

 多分断られるだろうけど。

 会える限りは伝え続けよう。

 本気で拒絶されたら会えすらしない。

 だから、チャンスがある限り伝え続ける。

 

「ヒイラギ……」

「またかよ!?」

「ごめんなさい」

「え――んぐッ?!」

「んっ……」

 

 唇が重なり、舌が搦められる。

 突然のことに溺れそうになり、見開いた視界には涙が流れていた。

 

「……次やったら全力でぶん殴る。効かないの承知で顔面パンチ喰らわす」

「ありがと」

「礼なんて言うんじゃねえ、蹴り飛ばすぞ!」

「ふふっ」

 

 何笑ってンだよ。

 人がせっかくに気しないように流そうとしてるっつーのにッ。

 

「もう寝るぞ! さっさと服着ろ!!」

「そうね。そうするわ」

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