ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「ようヒイラ――……機嫌悪そうだな。目つきがヤベェ」
「朝っぱらから心臓に悪かっただけだが絶対聞くな。今の俺なら躊躇なくぶん殴る気がする」
「お、おう……詳しくは聞かねえよ?」
俺から言えることはただ一つ。
服を着ろ。
「それと、昨日のことで話があるから言ってたからお前ら一度受付行ってこい」
「ん、おお。なんでだ?」
「知るか。職員じゃねーんだ、俺らが知るワケねーだろ」
「ういっす、了解っす~」
正直呼び出される心当たりは皆無だ。
全員がそうならともかく、呼び出される要件が広まってないということは呼び出されるのは一部の人間。
そして俺たちが何かしらの重要な情報を持っているということもない。
今回の件で俺たちが二人と違うのは新種と遭遇した初めてのパーティだったということ。
あとは坑道の中で長期戦をしたということ。
けど後者ならばやはり要件が広まっていないことから別のことだろう。
活躍をしたクアークならともかく、俺もというのは不自然。
手違いで俺にまで評価されてたら別だけど。
「よっす、なんか話? があるって聞いたんだが」
「ヒイラギさんと……クアークさんですね。はい、確かに少々お話があります。お時間よろしいでしょうか?」
「よろしいですよ、と」
「では案内をさせていただきます」
「はいはい」
別の人……おやまあ、君は買い取りの時の伝達ミスガール。
ちょっとぶりだ。
「これ嫌味じゃなくて普通に質問だけど。結局あれからちゃんとできてる?」
「え、あっ、はい! アレを反省してちゃんとミスなく働けてます!」
「ん。それは良かった。仕事大変だろうけど頑張れよ~。って、仕事増やす俺が言うことじゃねーか」
「い、いえ。ヒイラギさんもお仕事頑張ってください。私は現役時代あまり活躍できなかったので……頑張ってるヒイラギさんのこと応援してますっ」
「マジか。ありがとうな」
応援してる、か。
そんなこと言われたの初めてかもしれん。
……なんだこれ、スッゲー嬉しい。
今すぐ戦いに行きたい。
これから話あるけど。
エネルギーが有り余っちゃいそう。
軽く筋肉痛だけど。
「失礼しゃーす……ウルが昼にいる。幻か?」
「ハッハァッ! 今の俺様は昼の覇者! 幻ではなぁいッッ!」
「爺さんもいる」
「元気そうだな」
「疲労感は抜けきらんがな。てかこの中でやっぱ俺だけおかしいって、何の間違い?」
室内のメンバー。
俺、クアーク、ウル、爺さん。
……うん、おかしいだろ。
何このプロの中に紛れ込んでしまったアマチュア感。
そういう嫌がらせ?
そもそもギルドが呼んだにもかかわらず肝心のギルドの人間の姿がない。
二人は待ちぼうけを喰らっていたのだろうか。
もしかしたら俺たちのせいかもしれないけれど。
「爺さんは爺さんなのに元気そうだな。俺より」
「ファッファッファッ。“烈日のガーランド”と呼ばれたのは大昔の話とは言え小僧には負けんわ」
「そんな名前だったのか。……名前で呼んだ方が良い?」
「爺さんで構わんわ」
よし、なら今後も爺さんだな。
「ちなみに二人ともずっと俺ら待ちだったりした?」
「近くはあるが待ったのは三〇分程度だ。ガーランドから話も聴けて退屈はしなかったしな!」
「なるほど。ちなみに要件とか呼ばれた理由ってなんだ? 知ってる?」
「待っているように言われただけゆえ知らん! 察しはつくがな!」
「そう……来たか」
近づいてくる気配を感じて会話を切り上げる。
とりあえず席に着くと非常に上等なモノだとわかった。
柔らかく、けれど反発力は確かにある。
ふよ、と身体を包み込むような柔らかな感触はこれまで味わったことがない。
あえて例えるのなら弱いダイラタンシーというべきか。
静かに押せばスッと手が沈み、けれど体重によって適度な反発力が生まれている。
「皆さんお揃いになられたようで」
「ふぅん、前置きはいらん。要件を手短に言え」
「ではそのように。今回の件で明日、褒賞が与えられるとのことです。皆さん準備のうえ明日四の鐘にギルドにお集まりください」
「……うぇッ!? 俺も?!」
「ええ。嵌合するゴーレムを討伐したのはヒイラギ様です。最功労者が褒賞を与えられないなどありえませんよ」
「間違ってはない。間違ってはないけど……」
自己評価と他者評価があまりにも乖離し過ぎている。
もう本当にこれは、なんというか……恥を晒しに行くような気分だ。
ラッキーで活躍してしまって。
大して強くもないのに強いみたいな評価を受ける。
で、実力がわかって恥を掻く、と。
ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ。
帰りたいよぅ。
助けてマユゲ、マユゲ助けて……マユケテ。
「まあ良いではないかヒイラギよ! これも経験だ! 早いうちから知っても損はないッ!」
「メンタルが削れます……まあいいよ、俺が断って皆の活躍までないコトになったり軽視されてもイヤだし……やりますとも、ええ行きますともっ」
褒賞だ。
活躍をしたってことを庶民にアピールするいい機会かもしれん。
問題が起きているからその部分が少し不安ではあるけど、予期せぬ事態にも迅速に対処出来るって点を評価してもらえると信じよう。
きっと、恐らく、メイビー、多分大丈夫だ。
「てか準備って?」
「服、だろうな」
「おっふ……俺の私服ってこんなんだけど、イケるかな?」
「無理だな!」
「無理だろうな」
「少しでもその格好で行こうとしてるのが信じられないわ」
「クアーク酷くないッ?!」
どうせファッションセンスなんて壊滅的ですよ~だ。
いっそのこと学生の正装、制服で……やめとこ。
前の世界ならそれでなんとかなるだろうけどこの国じゃ、絶対制服とかスーツの類は浮く。
今着てるこの服以上に評価が低くなる。
「仕方ないでしょ? ホントに酷い返しが来たんだから」
「クアーク助けて」
「この後買い物に付き合ってあげるわよ」
「わぁい」
でもこの世界の服って若干不安なんだよな。
文化の違いのせいでデザインとか形とか若干違うし、素材も違うからあまり肌に合わない。
最近はちょっとだけ慣れたけど。
「合うならくれてやったんだがな!」
「俺の方が小柄だもんな」
あともうちょっと身長があれば脳死できたのに……。
まあこれも経験として受け入れるか。
「要件はそれだけですかな?」
「ええ。これだけです。お手を煩わせてしまって申し訳ございません」
「なぁに、どうせ爺も他の者たちも昨日の疲労で今日は休むつもりだったのです、お気になさらなくともよろしいですよ」
よかった、疲れてるの俺だけじゃなかった。
ちゃんと疲れるのね、皆でも。
「準備が参加用の服を用意することなら俺様は既に準備は整っている。ふッ、酒でも飲むか!」
「爺もかつてのモノがある。必要なのはその二人だろうて」
「クアークは持ってるのか?」
「持ってないわね。普通の活躍しかしてないから」
「そっか。じゃあウルか爺さんさ、良い店案内してくれよ」
こういうシチュエーションに適した服ってのがイマイチピンと来ないから是非とも教わりたい。
自分で考えることも思い浮かべはしたけど思い込みでやったら地雷踏む可能性がある。
まずは知ってる人に聞く。
料理と同じで初めから自分のイメージで作ったら失敗するから、初めはレシピ通りに、服でいうならマネキンにセットでコーデされてるのを買うべき。
「おお! ならば案――内はせず紹介にしてやろう! うん、それがいい!」
「ファッファッファ、爺の時代とは意匠が違っておろうて。爺も紹介だけにとどめるとしよう」
「ん? どうしたんだ二人ともクアークの方見て……ああ、クアークはそういうの得意なのか」
なるほど。
たしかにポイっちゃポイな。
この国の女の人がオシャレとかに気を遣うのかは知らないけどクアークってそういうのイケそうだし。
「……ええ、そうね。一応できるわね」
「んじゃ教えてくれぃ」
「はいはい」
「これサイズのわりに首元広いな。角が生えた人のためか?」
「ええ。そうしないと引っかかっちゃうから」
鎖骨が全体的に見えるほど広い首元。
なんとなく自分が着る姿を想像し、恥ずかしくなった。
マシになったとはいえ先輩方に比べるとまだ貧弱な肉体。
露出を多くするには頼りなくて恥ずかしい。
「この何か所かに結ぶ紐のついた服は?」
「それは腕が複数ある人用ね」
エプロンの布を前後二枚にして横で結ぶようにしたような服。
結ぶ場所は二本腕の人間の脇下部分と、さらにその下に腕一本と少し分の間を開けた部分、そして飛んで一番下の部分。
たまに街中で見ることもあるから二対腕の人間は多いのだろう。
下の部分が閉じていないのは恐らく三対腕の人間や、それ以上の人間がいるから。
さらにはその服は俺が着るような見慣れた服よりも長い。
多対腕の人は胴体が少し長いのだろう。
「は~……やっぱ色んな種族がいるだけあって服も色々なんだなぁ。」
「まずは自分のよ」
「実際、ホントにどんな服着りゃ良いんだ?」
褒賞を受け取るに相応しい格好。
パーティー用の売られているのだろうか。
けれど意匠や値段を弁えないと身分を、と文句を言われるかもしれない。
「必要なのはオシャレかつ質素な服。ボロボロだったり露骨に安物だったりしなかったら別に普通のでも良いのよ」
「へ~。どういうのが良いか店員に聞いてみるか?」
「バカじゃないの? 答えが返ってくるワケないし返って来ても一般客のアタシたちには適当に決まってるじゃないの」
「商売っ気ねーな」
「何言ってるのよ。服屋なんて
「マジか」
中世の服屋ってそういうモンなの?
それともこの国特有の流れ?
「服は作る人間によって特徴がある。腕の良い職人は人気だから職人によっては個別に相手をするだけで遊んで暮らせる金を稼げるのよ」
「あ~そういうことか。この国でもちゃんとファッションは発達してるのな」
下手に宗教とかで服装を縛られない分自由にできて色々発達したのかもしれない。
というよりも人種が色々あるからそれに合わせたり、無駄を省いたりする過程で自然とお洒落が発展したのだろう。
「なんというか全体的に服のサイズに対してダボっとしてるように見えるっていうか、横の部分通気性良すぎないか?」
「言っておくけどそれはそれ単体で着るワケじゃないわよ」
「普通に勘違いしてたわ。横の部分布を繋ぐ紐だけで寒そうとか思ってた」
「それは乾粘糸って言ってスライムから作った糸。魔力を流すと伸び縮みするからそれぞれで好きに調節するの。服の幅を絞って温かくしたり緩めて涼しくしたり」
「凄いな」
前の世界じゃできなかったことだな。
スライムのドロップは以前街で見かけたことがある。
死ぬと大幅に弱体化するとはいえある程度は残る酸でも塩基でもない特殊な腐食性。
それを加工で無害化したスライムのドロップ、つまり粘液は触れても害のないただのドロドロだった。
それこそ子どもが作るような水を多く入れ過ぎた緩いスライムのような粘液。
魔術的価値――一度乾燥させて粉末にしたモノを他の材料と混ぜて何やかんやすることで魔道具の術式部分に使われることのあるインクになるが。
俺なら多分その利用方法を見つけた時点で満足して、一般目的の利用を考えなかったと思う。
スライムを使ったインクの魔道具は安物がほとんどでそのあたりの魔道具は一般家庭でも利用されているためそれも一般利用と考えられなくはないが。
「そうね……例えばそれを着るなら――」
「え、別に構造的に気になっただけで着るってワケじゃ……」
「こういうのは試してみるのが良いわよ」
明るい色の服って基本白しか来たことないから不安だ。
持ってた服と今持ってる服も紺色とか深緑とか焦げ茶色だし。
この、若葉色が微妙に落ち着かない。
というか似合う気がしない。
「ん~、ちょっと一度この服身体に合わせてみて」
「……こんな感じか?」
「なるほど」
着せ替え人形の気分だ。
せめて姿見が欲しい。
自分の格好は自分じゃ見えないからとても暇である。
「こうかしらね」
「明るい茶色の上着に濃い茶色のズボン。あとベルト?」
「多分に合うわよ。ヒイラギって髪が緑交じりだから同系統の若葉色、あとは木みたいに茶色を合わせたら日常的に見て見慣れてる分違和感はないはず。服のことがわからないうちは多少地味でもいいから色の組み合わせは自然に存在する組み合わせが良いと思うわね」
「黄色と茶色とか、赤と茶色とか?」
「そうね。あとはその色を組み合わせて良い……と思うのは流石に難しいだろうから、違和感がなかったらその服がおかしいってことはないはずよ」
まあ、そうか。
初めは無難でよし。
けど無難すぎもダメ、と。
強くなるために筋トレするのも良いけどそれだけじゃなくてまずはゴブリンと戦ってみなさい、的なね。
「他は……この辺り、橙と黒かしら」
「黒の上にオレンジか」
黒のインナーにオレンジのアウター。
たしかに悪くはないが少しハロウィン味を感じた。
もっとも、この国じゃそういうのはないだろうけれど。
「ん。髪とかか……じゃあクアークは淡い紫とか灰色、水色、あと橙色とかが似合いそうだな」
「選んでくれるの?」
「え……笑うなよ?」
「別に気にしないわよ」
色自体は似合いそうだけど目的である褒賞のことを考えるとあまり派手過ぎてもダメか?
だとしたら若干く済ませた感じの色味で。
服は内側にくすんだ薄紫、上に薄めのオレンジ。
ズボンを灰色にしてみるか。
「こんなんが精一杯です、はい」
「じゃあこれにしようかな」
「え?!」
「悪くはないわよ? ただサッシュベルトを忘れてるのは減点ね」
「マジか……」
じゃあせっかく選んでもらったし俺もこれと、あとさっきのオレンジと黒にするか。
……不安だ。
俺が選んだヤツで行くとか正気かよ……。
前、「次回書く」っていったのに書かなくて申し訳ないです
ガーランド:
身長は一二〇~一三〇センチ
得物は一二〇センチほどの
火の魔術が得意
固有能力はないが、それでもかつては名を馳せていたため聞く者が聞けば反応される名前
父親が執事、息子も執事で家はそこそこ裕福
子どもは息子が一人、娘が二人
書いていて思いました……ファッションわからんッ! と
そもそも着飾って格好をつけるタイプじゃないので普段着はシンプルな安物の服か、グッズの服なんですよね
ヒイラギとクアークが着ることになった服は完全に私のなんとなくの感覚でして、ファッション雑誌すら読んだことのない人間の考えなので適当に読んでください
できればファッションガチ勢が出てきて変な指摘をしてこないことを願います
ホント、わからん