ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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 サーセン、ザフィーアの名前をザーフィアって間違えて表記してました
 誤植は今話だけだったので以前のが間違えているということはありません
 だってザフィーアは『Saphir』ですもん
 2022/04/16/01:28


第一一二話 褒賞授与

「――此度の活躍を称賛し、褒賞を与える」

「ありがたきお言葉謹んでお受け取りいたします」

「勿体なきお言葉」

「恐縮です」

「身に余る光栄」

 

 授与儀礼(アコレード)

 手柄を権力者が正式に認める、という儀式で。

 ごく一部、権力者とそのお抱え鍛冶師しか製法を知らないという特殊な材質と、その内部に刻まれ中身を見ようとすれば自壊してしまう特殊な魔術刻印と魔術紋様を施した一種の宝剣。

 それを権力者が相手の額に剣先を鞘越しに当てて両者の魔力を宝剣に流して記憶させる。

 そうすることで功績が正式なモノとなり、功績が書類に残り王の下へ行き、書庫に追加されるのだ。

 宝剣は儀礼後それぞれの手元に渡り、場合によっては高度な身分証明に用いられる。

 

「――繰り返すようだが、此度の活躍誠に感謝している。後日正式な褒賞を与えるが今日はそれとは別に礼を用意したゆえ楽しんでほしい」

「喜んで」

 

 領主こえー。

 顔見れねえよ。

 いやまあ、状況的に顔を上げるワケにはいかないから物理的にも見れないんだけど。

 

 貴族ということで普通の人間を想像していた。

 けれどそんな固定観念を持っていた俺を嘲笑うかの如く自然と放たれる威圧感。

 服の中に収められた圧倒的な筋肉(にく)

 素人目にも勝率ゼロと映る。

 圧倒的強者が目の前に。

 そのプレッシャーは一昨日の死闘すらも上回りそうなほど。

 

 なんでこんなバケモンがこの場に二人もいるんだよ!

 ここの戦力密度バグってるだろ!?

 

 目の前に化け物が一人。

 そして横の方にももう一人。

 それはクアークやウル、爺さんではなく、この場に来ている衛兵団の者たち。

 圧倒的強者であるザフィーアだ。

 

 あ、そこそこの地位の人だ。

 端っこにいる辺り本当に“そこそこ”なんだな。 

 

「ではパーティーを楽しんでくれ」

 

 長話はしないタイプなのか、やけにあっさりと儀礼は終わり。

 パーティーが始まった。

 

 そもそもパーティーをやるのが驚きだな。

 いるのはギルド関係者と衛兵団関係者鍛冶師関係者。

 貴族はさっきの人とその家族だけ。

 貴族を相手にしなくて良い分気は楽だが。

 

「こえー、あの威圧感は何?!」

「貴族だから仕方ないわよ」

「そうなの!?」

「そりゃそうでしょう。貴族ってのは元々武勇を認められてその地位に着いたのよ? それでその子孫も同じ。強いのが当然とは言わないけどおかしくはないわ」

「なるほどな。そういう理屈か、理解した」

 

 完全に遺伝するワケではないが血筋として強くなる可能性は充分あるし、その立場上幼少期から強くなるための環境は整えやすい

 

「どれも美味そ~」

「……作法はちゃんとするように、ね」

「俺、立食ビュッフェタイプのパーティーマナー知らんっ……」

「え?」

「いや、普通のマナーとかだったら外側からフォークとナイフを使うってのは知ってるけど。立食ビュッフェってどうすんの?」

 

 ヒソヒソと。

 けれど恥を掻きたくはないから焦りつつ尋ねる。

 ウルや爺さんは顔が広いのか速攻で知り合いに囲まれた。

 頼れるのはクアーク、次点でそこそこの地位の人。

 

「こういう場所だと基本的にナイフは使わないわ。小さく一つに纏まってたり、一口の大きさに揃えられてるから必要なのはフォークだけ。お皿やグラス、フォークは全部左手で持って、食べたり飲んだりするときだけグラスやフォークを右手で持つの」

「??」

 

 その量のモノを……片手で?

 クアークさん? 俺は多対腕種じゃないですよ?

 

「グラスはお皿の端に乗せて親指で挟む、フォークは先端を自分に向けてお皿の下で持つ。慣れが必要だから不安ならグラスはテーブルに置いても良いし壊れない程度に強く挟んでも良いと思うわよ」

「ほうほう」

 

 お手本のお陰でわかりやすい。

 そのあたりのマナーは機会がないと一生知らなかっただろうから本当に助かった。

 でも服はなかったワケだし経験はないんじゃないのか?

 ……実は意外とこの国だと普通のマナー――それはないな。

 場所によってはフォークとナイフもまだ一般ではない。

 前の世界だとフォークとナイフがセットになったのはたしか一九世紀だったか。

 それ以前はナイフと手づかみだったとかなんとか聞いた記憶。

 まあともかく、この国でもそれが一般ってワケではないはずだ。

 衛生とかの普及、価値観、宗教、なんかが色々作用して時代感にしては普及している方ではあるけど、やっぱりそのあたりの感覚はワリと新しいモノだから根付くにはもう少し時間がかかりそう。

 

「張り紙とか説明とかはないけど料理の置き順はちゃんとあって、それに従って少しずつ、二品か三品くらいを目安に取ってね。逆走はしちゃダメ」

「了解」

「あと味が混ざると味が落ちるし料理人の人にも失礼だからお皿はその都度交換。グラスはそもそも初めから入った状態で受け取るから心配ないとは思うけど」

「わざわざお皿変えるのか……まあ確かに言われてみれば高級料理で味が混ざるのは嫌だな」

 

 基本的には見た目は気にせずグチャグチャでいい、という感覚があるものの。

 それは恐らく安物しか食べたことがないからで。

 高級ならそれ相応の食べ方をするというのは別におかしなことではない。

 

「フォークは?」

「それは人によるわね。あまり汚れないし」

「それもそうか」

 

 色々マナーがあるんだなぁ。

 こうして見るとウルとか爺さんの所作ってスッゲェ綺麗だし……俺もマナー身に着けてみるか?

 綺麗に越したことはないだろうし。

 頻繁に使いはしないだろうけど一応頑張るか。

 

「とりあえず一緒に回りましょう。その方が声をかけられてもまとめて相手できて楽だろうから」

「そうだな。美味い飯も食いたいし」

 

 並べられた上等な料理。

 普段の俺ならほぼ確実に見ることのない味は当然ながら、見た目にも気を遣われた漂う高級感。

 いっそ取るのすら恐怖してしまいそうな料理をクアークは躊躇することなくお皿に取り、俺も釣られるようにしてさらに少量並べる。

 

「……いただきます」

 

 食べるのが怖くなる料理だが一度取ったからには、そもそも用意された以上は食べなくてはならない。

 これからに、今後食べる料理への感覚を狂わせそうな恐怖を抑え、料理を口に運んだ。

 

「ウメェ……」

 

 いきなり肉料理を食べるのは怖くて、野菜を多く使われた料理を食べたのだが。

 その威力が途轍もなかった。

 酸味と塩味が強く、けれどそれは不快にならず、野菜の甘さと合わさり口内に快楽をもたらす。

 

「少しお話よろしいですか?」

「はい?」

 

 不意に声をかけられる。

 不意に、といっても近づいてきたのは正面からで、相手が少女ということでてっきり対象はクアークだと思っていたから不意にしたのは俺の勝手な勘違いに過ぎないが。

 

「えっと……僕、ですよね?」

「はい。ヒイラギ様です」

「一体どのようなご用件で……何か無礼を?」

 

 貴族の令嬢さん方が一体俺になんの用!?

 怖いんだけど?

 怖いんだけど!?

 俺なんて粗野で戦闘狂の危険人物よ。

 だから、ね?

 マジ怖いから離れて。

 ほぅら、後ろの子みたいにつまらなさそうにしてさ。

 俺に興味なんて持たなくて良いんよ?

 てか人の顔見るなり露骨にガッカリするの傷つくからヤメテ。

 

「とても強いモンスターに止めを刺したのはヒイラギ様だとか」

「そこだけ聞かれたら間違いではないですけど。実際は他の人たちの助けがなければ、僕一人じゃ無理でしたよ」

「討伐なさった嵌合体の残骸を調べ、その強度が非常に高いことはわかっております。他の方々の手助けがあったからと言ってそれが弱さと同義となることはありません。なのでそのような表情をなさる必要もありませんよ」

「あはは……情けなくて申し訳ない……」

 

 恥ッず!

 年下の子に慰められるとか超絶情けないわ。

 

「全くよッ。倒した男だからって期待してたのにこんななよなよした男だなんてガッカリよッ」

「ちょっと、ジューン、失礼ですよ」

「何よ、事実じゃない。こういう実力はあるのに自信のない奴ってあたし嫌いなの知ってるでしょ」

「申し訳ございませんヒイラギ様……」

「別に良いですよ。気にしてませんし」

 

 そんなに嫌われるとかビックリだけど。

 

「はぁ? 取るに足らないくらいあたしの言葉はどうでもいいって言うの!?」

「ええぇ……」

 

 何その飛躍……。

 筋肉言語?

 

「なッ!? アンタねぇッ!」

「ん? ……いやッ、今のはだなッ。了承の意味じゃなくて呆気にとられたっていうかだな――」

「言ってることが理解できないくらいおかしいって言いたいの?!」

「違ッ!? なんでそうなるんだッ、おかしいだろッ!?」

「おかしいって言ってるじゃないの!」

「今のは違うだろッ?!」

 

 なんでそういうことになるのかがわからない。

 言葉が通じないような。

 そんな感覚だった。

 

「一発殴らせるか切らせなさいッ!」

「ヤダよ!? 威力によっちゃ死ぬだろうが!」

「それくらいの加減はできるに決まってるでしょうが! 死ぬほど痛いだけで死なないわよッ!」

「なおのことイヤだわ!?」

「なら死を選ぶのね!」

「なんでそうなるんだこの馬鹿!? 強制的に選択肢絞って二択突きつけた挙句それって頭おかしいんじゃねえの!?」

 

 ビックリだわ。

 それ完全に盗賊の理論じゃねえか。

 いきなり襲い掛かって来て「命が惜しけりゃ持ってるモン全部おいてきな」とかそういうヤツじゃん!

 完全に蛮族じゃん!

 超絶質わりぃよ……。

 

「アンタまたッ……」

「あの、お二人とも……その、周囲の方々が見てらっしゃいますので……」

「あたしと戦いなさい!」

「……ファッ!? ちょ、え、はぁあ!? ヤダよクアーク助けて。この子話通じないし理性ないよッ、頭狂戦士(バーサーカー)だよッ!」

「いいじゃないの、遊んであげたら?」

「裏切りッ」

 

 ヤダよォ……。

 ……逃げるか。

 

「どこ行こうとしてるの? 正面にいて逃げられるワケないでしょうが」

「おっふ」

「アンタこそ頭おかしいんじゃないの?」

「せ、せめて後でにしよ? な? 俺せっかく来たのに全然食べてないから……な? あとで、なんか……衛兵団にでも場所でも借りて、もしくはギルドの訓練場とかで、な?」

「そう……」

 

 おお、そこはちゃんと話が通じるんだな。

 よかったよかった。

 

「なら今度あたしがご馳走してあげるわ」

「…………なんですって?」

「食事は今度食べれるわ。だから今日、すぐ、わかる?」

「わかりたくない……」

「慣れてるし衛兵団の訓練場でやるわよ!」

 

 マユゲさんマユゲさん……貴女のお願いを聞いてこの街に来たらこんなことになりましたよ。

 責任を取って助けてください。

 もしくは責任を取って結婚でも良いです。

 でも急を要するのは現状の方なので助けの方ができればありがたいです。

 マユゲ様マユゲ様、どうかお聞き入れください。




 ジュリア:まともな方の令嬢
      双子の姉で五女
      戦闘力は高くはないが平均以上ではある、頭を動かすことの方が好き

 ジューン:頭狂戦士(バーサーカー)な令嬢
      双子の妹で五女
      戦闘センスはあるが感覚派の脳筋ガールなため言葉で教えてもロクに身に着かず、多くの者たちが師匠にすらなれなかった
      師匠の一人にガーランドがいる
      ガーランドは言葉での教示を諦めてはいないがジューンに合わせて戦うことでの教示を主にしている
      
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