ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一一五話 知っている理由

「この建物に犯罪組織が潜伏している疑いがある! 調べさせてもらうぞ!」

 

 ザフィーアさんがそう叫ぶと店内が騒めき、そして目にも止まらぬ速さで事前に調べ上げた犯罪者に近づいて乱魔の力を持つ特殊な捕縛布で一人の犯罪者を拘束する。

 俺たち以外の人間。

 何も知らない買い物に来ていただけの開拓兵と同じく何も知らない店員たちはその光景を理解できぬまま戸惑いの傍観をしていたが、自分が犯罪者であるという自覚を持つ者はその限りではない。

 自身と同じ犯罪者が問答無用で、答えを知っているかのように捉えられた。

 それは瞬時に脳裏に後手の文字を過ぎらせる。

 追い詰める側から、たった今。

 追い詰められる側になったのだ、と。

 

「こやつは犯罪組織“黒鉄の墓”の一員だ。間違っても開放するでないぞ!」

「は、はいッ!!?」

 

 困惑交じりの返事。

 だがザフィーアさんの顔と名は俺が思うよりも強かったらしく。

 周囲にいた開拓兵たちは状況がわからないなりに即座に武器を構え、犯罪者が逃げないように監視し、出入り口を抑えるなどして警戒にあたった。

 店員たちも遅れて状況を理解したらしく、その場にいたものの武器を持たなかった開拓兵に商品であるはずの武器を貸し与える。

 

「ペトラは奥にいる同業者(かじし)に状況説明、ブルックリン殿は同業者(かいたくへい)に説明すると同時に事前に視た犯罪者の捕縛を!」

「わかったッ」

「了解ッ」

 

 事前にヘルベルトの固有能力で調べた犯罪者の顔の記憶を共有し、全員が犯罪者との見分けがつく。

 外では数少ない裏口を爺さんとヘルベルトが抑えていて、店内の雑兵はブルックリンが捕まえる。

 そして残った俺たちは通路の先の隠し部屋にいる犯罪者たちの拘束を。

 

「貴様らの行い、既に調べがついておる! 諦めて大人しく罪を償うがいい!」

 

 薄汚い部屋の中に入ると犯罪者たちは一斉に襲い掛かって来る。

 事前調査の感覚通り犯罪者たちの多くが戦闘の素人で、数が多いだけの雑魚ばかりだ。

 

「ふッ――」

 

 相手の鈍い動きに合わせて鳩尾の辺りを殴って痛みで行動不能にすると同時に気絶させる。

 力技にもほどがあるが俺にできる無力化などこれか【洗脳】くらいのモノだから犯罪の代償の一つだと思って我慢してもらおう。

 

「ふっ……ふふふふふふっ。まさかここまで早く突き止められてしまうとは」

「あン?」

 

 流れで一人の男を気絶させようとした瞬間。

 それを受け止められた挙句距離を取られてしまった。

 聞き覚えと、見覚えがあり。

 よく見てみるとそいつは以前俺の相手をした白い男だった。

 その背には以前は見えなかった翼が生えている。

 

「一体どんな手を使って調べたのでしょうか?」

「偶然」

 

 俺がそういうと白い男は動きを止めた。

 その隙に拳を打ち込むが受け流されてしまう。

 

 流石に剣を使うか。

 掴まれたら厄介だし。

 

「偶然? ……偶然? アハハハハッ! 愉快ですよ! 我々の計画が、何年にわたって実行される、そのために多大な準備までしてきたことが偶然にこうして潰されかけるとは!!」

「善だ悪だと問答する気はねぇが、先手を打つのは悪の特権じゃねえんだぜ?」

「いいや、貴方たちは悪ですよ!」

 

 なるほど、俺らは悪か。

 自分の立場に興味はないから深く追求はしないけど……こいつらにとっては自分たちこそが善だ正義だと考えているってワケね。

 

「ンなこたぁどうでもいい! 散々面倒起こした詫び、きっちり入れてもらうからな!」

 

 強くはない。

 だが弱くもない。

 打てば打ち返してくる。

 力量はそれなりだ。

 

「一体なんの話ですか?」

「一般人の拉致と殺害。経済崩壊による国家反逆未遂。あとは故意にしろ偶然にしろモンスターの大量発生を起こした罪。その辺だ」

「モンスターに関しては存じませんが経済崩壊は愉快でしたでしょう?」

「あ゙?」

 

 ダメだ、冷静になれ。

 愉快犯の言葉なんていちいち真に受けるな。

 変なところで真面目なのが俺の悪癖だ。

 

「皆が見て見ぬふりをする世界で。目を覚まさせてあげようというのですよ」

「……」

「いえ、目を覚まさせる、ではありませんね。目を逸らせぬよう、瞬きすら封じて顔の前に現実を突きつけようというだけです」

「お前にとっての現実(・・)が経済崩壊か? 言っちゃ悪いが下らんな」

「いえいえ、そんなに底の浅い話ではありませんよ。我々は(まさ)しく、世界を変えるために動いているのですから経済の崩壊などという児戯を最終目標のように言わないでいただきたい」

「信念……か」

「ええ。そのために集めた仲間ですから」

「集まった、ではなく集めた、か」

 

 濁っている目だ。

 まるでこの世全てを憎んでいるかのような無気力にやつれた眼差し。

 けれどその奥に僅かではあるが信念のようなモノを感じる。

 なるほど。

 たしかにこれは俺たちを()というだけのことはある。

 この目は自分が正しいと思っている目だ。

 例えるのなら信念を持った主人公の目というべきか。

 

「お前がヴァーチュか」

「! 気づかれてしまいましたか」

「まあ、な」

 

 驚愕の隙に剣を叩きつけ、受け止められる。

 だが俺の本命はその先。

 左拳を腹に叩き込んで壁に吹き飛ばす。

 

「死ねヒイラギ!」

(あめ)ぇよ」

 

 不意を打つように飛び出してきた影。

 だがヴァーチュ程度に全力を出しているはずもなく、その対処は容易だった。

 

「よう――ヴェガ。まさかテメェが敵だったとはな」

「そのワリには全然驚いてねーな。棒読みだしよ」

「はッ、アレで騙せたと思ったのかよ、バーカ」

 

 ヴェガが敵なことにはなんの驚きもない。

 露骨すぎるほど怪しかった。

 

「……理由を聞いても良いか?」

「開拓兵どころか一般レベルで御法度な“力の追求”。見て考えてそれをするならともかく直接俺に聞き出す。正体不明の、脅威になりうる相手を警戒したのはわかるが……欲をかきすぎたな」

「そういうワケか」

「その時点で怪しかったワケで、さらに言えばあの場にいないはずの状態であの場にいた。大人しくしてるべきだったな」

 

 バレていないと思って随分杜撰なやり方をしていた。

 ハッキリ言って嘗めすぎだ。

 

「まあだからってなんの意味があるって話だな。まさか俺はともかくザフィーアさんたちから逃げれると思ってはねぇだろ?」

「……まあ、な」

 

 打ち合う剣は重い。

 経験の違いを思い知らされるほど腕に衝撃を与え、一撃ごとに力負けしてしまって少しずつ腕が麻痺する。

 黒鍵を短く戻し、双短剣に持ち替えて連撃で攻勢にまわり、押し返した。

 

「お前の動きは既に散々見た!」

「ぐッ……」

 

 観察されていた俺。

 それに対して俺はヴェガが敵だと気づいてから動きを観察する機会がなかった。

 見たか見ていないかの違い。

 たったそれだけの違いが経験以上に戦闘を不利にさせる。

 

「だったら俺も、お前の動きはわかる!」

「何ッ!?」

 

 お前は俺の知識を知る由もない。

 平和な世で発展した娯楽(フィクション)によって生み出されたいくつもの蛇腹剣。

 アニメだったり漫画だったりゲームだったり。

 お前の動きを見たことはなくても。

 蛇腹剣(その)動きを見たことはあるんだよ!

 

「しゃらァッッ!!」

 

 蛇腹剣の切っ先を左手の短剣で弾き、襲い掛かってきた根本部分の刃を右手の短剣で流し、そのまま左手に持つモノを切り替え、蛇腹剣の根元に絡める。

 それは与えられていた捕縛布だ。

 乱魔の力を持つそれは一目見てわかるほどに蛇腹剣の動きを鈍らせる。

 

「ちぃッ!」

 

 動きの鈍った蛇腹剣の、無防備なワイヤー叩き切ろうとすると収縮させることで回避され、同時に距離を取られてしまう。

 そしてどうにか捕縛布を解こうとするも絡まりきっていて解けず、切ろうにも千切ろうにも拘束用の捕縛布だから一切意味を成さない。

 

テメェの詰み(チェックメイト)だッ!」

「そう簡単に行くか!」

 

 いくら頑丈とはいえ元々捕縛布は“ゼロ距離に壁がある状態でパンチをする”と同じ状況を生み出すことを目的にしている。

 簡単にいえば“極端に動きづらい状況で固定する”がそもそもの目的で。

 その耐久性も“力を発揮しきれない状況で発揮される力”を上回る程度のもの。

 力を充分に発揮できるこの状況では時間を掛ければ千切ることができる。

 手練れの者相手に同じ手は通じないと考えた方が賢明。

 だとしたら最も条件を整えられている現状で決着を着けるべきだ。

 

「はぁぁぁぁッ!」

「おらぁぁぁッ!」

 

 思い切り後ろに引きつけて力を貯め、ヴェガも俺に合わせるように縮めた蛇腹剣を背後に引きつけ、俺たちは同時に加速し、腕に全力を込める。

 

「なッ!?」

 

 驚愕の声を漏らしたのはヴェガ。

 その攻撃は背後で停止し、俺に届くことはない。

 

気絶し()てろ!」

 

 ヴェガの攻撃が止まった理由は単純。

 直前に捕縛布に対して固定魔術を掛けたからだ。

 固定魔術の掛かった捕縛布はその場から動くことを禁じられ、捕縛布の絡まった蛇腹剣は捕縛布に引っ張られて同様に動くことができない。

 

 良いのが入ったッ!

 

 剣を握った手から剣を収納()し、全力で殴りかかる。

 鳩尾に入った一撃はヴェガの身体を浮かせ、ヴェガは蛇腹剣を手放しながら壁に激突した。

 すぐ蛇腹剣を奪って指輪に収め、探知で反応を窺う。

 ヴェガもヴァーチュも反応が鈍く、気絶しているのがわかった。

 

「実に良い演目だった。有象無象にしては見事!」

 

 俺の戦いの決着とともに訪れた静寂。

 それを打ち破って不意に。

 拍手の音が空間に響き渡る。

 この場に相応しくない言動と音に、皆が一斉に反応をした。




 流石に無理過ぎましたかね……
 一応ヴェガが敵ということは六一話執筆前から決まっていたことなんですが伏線(伏線とは言えないほど杜撰な描写)があまりにも少なすぎましたし、伏線を使うにも流石にか月単位で前に伏線を張ったら大体の人が忘れてそうと思ったためにあんな直前でのご都合主義的描写に……
 長期向けの伏線はいくつか張っているワケですし気にせずずっと前から伏線を張っていればと後悔しました
 申し訳ない

 一応伏線的に張ったのは第六一話後書き
 後書きを飛ばしてる読者に優しくないというクソ仕様
 ホント、申し訳ない
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