ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一一七話 想定外の関係

「おうおうおう! こっちがクソ忙しい時に行ってやがったんだ、です」

 

 気絶させた犯罪者たちを担ぎながら衛兵団の拠点へと向かうと、敵に回ったと思われる元衛兵たちを縛るキースの姿があり。

 そしてキースは何故か偉そうに俺たちに文句を言ってきた。

 

「こちとら衛兵団に入ることは了承したがお嬢のお守りまで引き受けた覚えはねえぞ! です!」

「……了承も何も、奴隷のお前が選べる立場かよ」

「テメッ、ヒイラギッ、正論ぶつけるんじゃねえよッ」

「正論なら受け入れろよ、現実逃避かテメー」

 

 まとめられた元衛兵たちはそこそこ数が多く。

 流石に全てをキース一人でやったワケではないだろうが、文句を言うだけの数ではある。

 

「んでそのお嬢は? 血でも見て吐いたか?」

「アンタまでお嬢って言うんじゃないわよっ」

「うぉっと」

 

 姿が見えないことに少しだけ心配になり、尋ねると背後から膝裏に軽い蹴りを入れられる。

 体勢が崩れかけるが流石に開拓兵としての経験でそんな無様を晒すことはなく、すぐ体勢を維持し、立て直した。

 

「背後からの不意打ちはやめろって。常時探知してるワケじゃねーんだからよ」

「知らないわよっ」

 

 地味に痛いからやめようぜ。

 騒ぐほどじゃないけど地味に痛い。

 痣になっちゃうでしょうが。

 

「無事だったんだな、いやーよかったよかった」

「当たり前じゃないの。あの程度でやられるワケないでしょうが」

「……ちなみにお嬢は俺が避難させて護ってたからほとんど戦ってないぞ」

「言っておくけどあたしだってちゃんと戦えるんだからね!?」

「はいはい」

 

 勝てるかどうかは別問題として。

 実力的にはそりゃ戦えるだろうな。

 つっても相手はモンスター相手にずっと街を護り続けてた衛兵だった人間だ。

 そのあたりの経験差でほぼ確実に負けるだろうし、負けなくても勝ちはないだろう。

 

「……あん? もしかしてそいつぁヴェガか?」

「そうだが知ってるのか?」

「おぉ、つか知ってるも何も盗賊時代に繋がりがあったんだからな」

「思わぬ場所、結構近くに証拠があったわ」

 

 もう既に何の役にも立たない情報ではあるが先に聞いていればより確信を持てた。

 気分の問題でしかないが。

 

「これは聞き出せば余罪が出そうではあるな」

「!? ないないないッ。マジで、取り調べられたときにも言ったが俺の罪は全部喋ったってッ!」

「それはわかっておるよ。少し揶揄っただけだ、気にするなキース」

「そりゃ色んな奴らと繋がりはあったがよぉ。繋がりがあっただけでそいつらに加担したワケじゃねえっつーの。その理屈がなりたちゃヴェガと繋がりあるヒイラギやらの開拓者連中だって俺と同じ犯罪者じゃねーか」

 

 ま、そりゃそうだ。

 一緒にいたから犯罪者、は飛躍が過ぎる。

 怪しいことは事実だが証拠にはなりえない。

 

「……色んな奴らと繋がり? なあキース、紫の髪で空色の肌をした男を知ってるか?」

「ん? 紫の髪に空色の肌? ……もちっと詳しく」

「詳しく? つってもそんなによくはわからんのだがな……。こう、童話の魔女……つっても通じねえか。とにかく鷲鼻がちな鼻に魔術種(エルフ)と違って斜め上に尖った耳。眼は白かった。牛みてぇなでっけぇ角。髪……はお前が知ってるのと同じかはわからんが一応言うなら長髪を後ろで束ねてた」

「あ~その特徴だとアイツか?」

「ヒイラギ、記憶を見せれば早いのではないか?」

「それもそうか」

 

 ヘルベルトの提案に従ってその場面(シーン)の記憶を送る。

 当然ヘルベルトはその時その場にいなかったから送ったのは俺の記憶だ。

 

「やっぱりアイツか。……ぎゃははははッ! カッコいいこと言うじゃねえか!」

「え? もしかして映像で見せてる?」

「その通りだが不都合でも?」

「それはねーけど、単純に絵で見せてると思ってたから……で、いつまで笑ってんだテメェは」

 

 ゲラゲラと笑い続けるキースの脛を軽く蹴る。

 笑いの沸点が低すぎだ。

 

「いや、カッコいいと思うぞ……ぶふッ」

「なんだ、今更気づいたのか」

「冗談なんだが」

 

 知ってるわ。

 流石に素で自分をカッコいいと言えるほどまだ自分に自信ないっての。

 ……やっぱふざけすぎると恥ずかしくなるな。

 真面目過ぎるのはそれはそれで苦手だけど。

 

「つーかあんなセリフ、恥ずかしくねえのかよ」

「あン? 自分(テメェ)の信念に従った発言が恥ずかしいワケねぇだろぉが。心にもねえこと言うから恥ずかしくなるんだろぉがよ。自分(テメェ)の信念簡単に曲げちまうような弱い生き方の方がよっぽど恥ずかしいわ」

「……なるほどな。煽り抜きで普通にカッコいいじゃねえか」

「ンなこたぁドォでも良いんだよ。本題は入れ本題」

 

 俺は信念問答に興味はねえんだ。

 ンなモン生きた人間の数だけ似てても全然違ってくる。

 仲良くしたい相手ならともかく、さして興味のないキースに伝えて理解してもらおうとも聞いて理解しようとも思わん。

 

「あ~なんだっけ? 紫の髪の男の話だっけか? そうだな……まずそいつの名前はジーザスだ」

「ジーザス?」

 

 なんぞそれ。

 クライスト?

 油でも注がれんのか?

 ってそっちはクライストの方か。

 ジーザスはなんだっけ?

 ヤハウェは救済者、だっけか。

 まあなんでもいい。

 

「まあ恐らくは偽名だ。奴が俺を相手にする時にはそう名乗ってた。違う奴を相手にするときは違う名で呼ばれてた。そっちの名前は忘れたけどよ」

「他には?」

「他つってもほとんどなんも知らねーよ。アイツとは多少の商売の付き合い、王都に潜入してた時に偶然出会って取引しただけだ」

「取引内容は?」

「とある商人を襲撃して積み荷を強奪、商人は殺せって。んで積み荷は売るなり使うなり好きにしろって言われたよ」

「ふ~ん。……ん?」

 

 キースが関わった商人襲撃事件?

 ……もしかしてアデル、というかオーガストのアレか?

 確か盗んだ奴らが裏で売って、それを商人が買って、キースが襲撃。

 これ商人とばっちり――いや待て冷静になれ。

 そもそも物が盗品。

 次に、商人はそれを買った。

 怪しい奴から買う時点で商人も怪しい。

 もっといえば盗品を街の外に持ち出した時点で表に出せないことを理解のうえで隠してるってことだから。

 うん、商人も黒だ。

 危ない危ない、白黒見誤るところだった。

 ちゃんと商人も犯罪者。

 そこを間違えちゃいかん。

 

「なんつーか、お前を間に挟んでそのジーザスとも俺縁があったのか――」

 

 そこまで言って気が付いた。

 あの盗品は盗品ということで表に出せないが、それとはまた別の理由で表に出せない。

 アデルから聞いたこと。

 オーガスト家のモノが盗まれたと表に出ればオーガスト家の、国内最強の信用が崩壊しかねない、と。

 もしも、経済の崩壊やモンスターの大量発生同様に、オーガスト家の失墜も奴に仕組まれていたことだとしたら?

 仮にそうなら国内最強の信用が崩壊しかねない、ではない。

 確実に崩壊をしていた。

 そのために奴は、ジーザスは動いていたのだから。

 いかなる手段も用いて先導しただろう。

 不安が募って、負担で天秤が傾く、ではない。

 ジーザスの手によって天秤そのものが傾けられようとしていたのだ。

 

「――……ちッ」

「どうかしたか?」

「本気で面倒な奴だと思っただけだ。放置すりゃ比喩抜きで国が亡ぶ。奴の最終目標はハッキリ言って全くわからん。何を成したいのか、そもそも成したいことがあるのか、単なる破滅主義者なのか。だが断言できる。奴は、ジーザスは放置すればいずれ必ず国家滅亡の脅威となる」

「……マジか?」

「マジだ。詳細は言えんがお前のその依頼もそれに加担してたヤツだ」

「……冗談じゃなく?」

「だからマジだって。奴の行動は多分そこを向いている」

 

 ああクソ。

 詳しく説明できないのがもどかしい。

 事が事だし今度アデルに会ったら伝えておくか?

 伝言できりゃ良いんだがあの内容を他人にバラすワケにもいかんし、やっぱ直接言うしかない。

 けど簡単に会える相手じゃねーし。

 ……やらないよりはいい。

 今度王都に戻ったらダメ元で試してみるかぁ。

 

「だからまあ、衛兵団の仕事頑張れよ。国家転覆加担者」

「なんだ、だからまあ、って!? どういう繋がりだよ!?」

「罪にはならんだろーがひょっとしたら他人から甘い蜜吸うだけじゃなく自分の命を護ってくれる国まで壊しかねなかったって反省して、悔い改めろってことだよバーカ」

「……」

 

 やっぱ社会で生きる以上は犯罪なんてやるモンじゃないね。

 自由に生きたきゃ国を出て一人でやれって話だ。

 他人と交流しない、他人に迷惑をかけない以上はそれを止める人間はいない。

 てかそもそも独りで生きてりゃ誰にも観測されないってことだし、シュレディンガーの猫的な感じで社会の認識外で何をしようとも犯罪認定すらされないし。




 ジーザス(偽名):正体不明の黒幕
          種族不明(この時代の人種は多数存在し、固定化しなかった場合も多数存在するため種族として認定できず、突然変異としての認識の方が正しい)
          夜明けや日没間際の空を彷彿とさせる紫の髪と、澄み渡った夏空のような空色の肌、曇天のような灰色がかった暗い白の瞳が特徴
          人体実験を平然と行う精神性を持っており止める者がいなければ千人だろうが万人だろうが食事のメニューを決めるような気軽さでその命を奪う
          固有能力【???????????】効果不明、その特性上通常のような成長ができず、強くなるためには固有能力に依存するか魔道具などを用いて強化するかなど成長手段が限られる(けど固有能力は多分作中屈指のチート)
          一度国を亡ぼそうかと考えたが生きる場所が失われるため断念
          その後は国そのものではなく国のシステム(・・・・・・)を崩壊させたのち、その弱みに付け込んで全てを手中に収めようと企んでいる
          影に潜り込んで移動する能力で逃亡、現在は既にノースミナスにはいない

 ちなみに偽名の『ジーザス』ですが綴りは『Juses』ではなく『Xerxes』です(ユダヤ教およびキリスト教への配慮ができる作者……だったら初めから使うなって話ですけど)
 この『Xerxes』は普通に読めば『クセルクセス』ですが、まあ頑張って読もうと思えば『ジーザス』と読めなくもないので作者はそう読むことにしました
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