ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「ふぉぉぉぉッ! 本当か! 本気でか!? これくれるのか!?」
「お、おう……なんか鍛冶の研究とかに役立てばって思ったんだが……」
「ああ! 肋骨一対でどこまでできるのかはわからんがプロミネンスの名に誓ってやってやるよ」
「おおぉ、どれくらいの覚悟かはなんとなくしか伝わって来んがとりあえず頼もしい」
この国における“名に誓う”って行為はどれくらい重いのだろうか。
発達し安定した社会に生きていた俺としては想像ができない。
その祖先の偉業とやらをロクに知らないし、知っていてもそれを凄いと思えないからだ。
思えたとしても認識に対する深さが足りない。
ただ、恐らくはこの国におけるそういう行為はかなり重要なのだろう。
この国では様々な貴族がいる。
アデルで言えばオーガスト家は“
中には“滅竜貴族”というのも存在するらしい。
その貴族というのは一部の例外を除き、複数代――最低でも二代での活躍が必要。
プロミネンス家は元々プロミネンスという一人の男がいて、その男は龍のいた時代に龍や竜の素材を用いた武具の製作をして活躍していて、そしてその後息子であるフィランダーが当時利用不可能とされていたモンスターの素材を武具転用可能であることをフィランダーやルイスとともに突き止めた。
その功績で名を馳せ、その後も様々な活躍をして貴族として認められることになったのである。
つまり明確に先祖の功績の上に自分たちがいることを理解できるのだ。
良い立地で店を経営できるのも宣伝せずとも客寄せができるのも祖先のお陰だし、その功績を護ってきた祖先のお陰。
一般家庭でしかなかった俺には理解できない話だろう。
「ちなみに何に使うんだ?」
「わからん。カーバンクルの情報はないに等しいからな。まずは魔道具やらなんやらで色々調べて、って感じだな。こいつはあッチの腕の見せ所だッ」
「うおー、カッケー。惚れちまいそうだぜッ」
ホントカッケーわ、その腕。
いかにも職人って感じがする。
触ったらやっぱ硬いのか?
あれ?
筋肉って柔らかい方が良いんだっけ?
……忘れた。
「あ、腕が良いで思い出した。逃がしてはしまったもののこの剣のお陰で腕一本は切れた。ありがとよ」
「聞いた聞いた。お手柄だってな。てかそれはあッチのお陰じゃないだろ」
「や~、武器強化の切り替えがやりやすかったし」
「……ま、そういうことなら礼の言葉は受け取ってやる」
「ホント、良い腕してるし色々手伝ってくれる優しさもあるし、ありがたい限りですよ」
「そう褒めるな、照れるだろ」
「なんだよ~事実だろ?」
「だからやめろって」
照れてる照れてる。
可愛いなぁ。
てかなんで褒められ慣れてないんだよ。
普通この商売でこの腕あれば称賛されまくりだろ。
「んじゃ話変えるけど、これの扱い方ってわかる?」
「蛇腹剣か。知ってるぞ。けどなんで買った時に聞かなかったんだよ」
「これ戦利品っていうか、黒鉄の墓のとこに行った時に敵の武器を奪ったんだけど、提出したら貰っておけって言われたから俺のになった」
「ふぅん……そういうこと」
てっきり犯罪者の所有品は全て衛兵団が没収、みたいなのを想像してたからちょっと驚きだ。
犯罪者の持ち物とはいえこの蛇腹剣は盗品ではなく一人の所有物。
それを倒して得たのなら俺は俺のモノにする権利がある、とのことだ。
少し納得できずにいたら「モンスター
犯罪者はモンスターと同格というシビアさに少し笑いが零れた。
「そうだな。……まずヒイラギはどんな風に使おうとしてみたんだぁ?」
「なんか魔力を流せば伸びるかなーって思ってやってみたんだけど全く伸びなかった」
「典型的な失敗例だなぁ。蛇腹剣は伸ばすには伸びた後の姿をイメージする必要があるんだよ」
「つまりは、こういうことか――あれ?」
「蛇腹剣を伸ばすのは中のワイヤー部分だけに魔力を流すんだよ」
「なるほど」
説明に従うため剣の中に意識を向ける。
流した魔力。
その伝導率の違い。
剣身の中には╂╂╂状の部品が、剣の中で先端と根本の部分以外それぞれ内部で二回ずつ十字になったパーツのついているワイヤーが通っている。
これは恐らく伸長後に刃の部分が滑り落ちないようにするためのストッパーだろう。
ここにだけ魔力を込める。
ワイヤーにだけ絞って……ワイヤーを伸ばす。
剣の腹を、剣の上からワイヤーをなぞり、その姿を鮮明に思い浮かべ、同時に剣が伸びる姿をイメージした。
地面に切っ先を向け、伸びた後スレスレで止まるイメージ――。
「うおッ!?」
「ははッ、やっぱやらかしたか」
「わかってたのか?」
「扱い慣れてないと必ずそれやるんだよ。蛇腹剣のワイヤーはかなり繊細でな、ちょっとした想像でも感じ取って反映しちまう。伸びて直前で止まるとか想像したろ? そうすっとな、剣の側としては伸びて、止まるの二段階になるからよ」
「……難しくね?」
「蛇腹剣は魔力操作とかの上級者が使う武器なんだよ」
「……俺、よくアイツに勝てたな」
一時間練習しても
それを認識すると改めてヴェガに勝てたのは奇跡だったのではないかと思ってしまう。
事実そうなのだろう。
「巧い、が強さと結びつくワケじゃねぇからなぁ。知力やらが勝敗を左右する時だってあっしな」
「う~ん……」
「多少の調節ならできっけど根本的な解決にはならん。それでも使ってみたいってんならタダでやってやるぞ」
「……自力で使えるようになってみてえ。せっかくだが遠慮するよ」
「そうか。そういうことならこれ以上口出しはしない」
じゃないと伸ばし過ぎる。
「ちなみに使い方を軽く教えると。鞭みたいに振って使えるし、固定魔術で形状を決めて武器強化でワイヤーごと斬撃力を高めると質量同じのまま巨大な剣としても使えるようになる」
「ほ~。なるほどね」
「突きの瞬間に一気に伸ばしつつ垂れないように固定すれば貫通力が半端じゃない攻撃ができる」
「つまりは……こうッ、か!」
「お~、上手い上手い」
あまりコントロールを気にする必要のない状態だと他のことに意識を割かなくていいから楽でいい。
固定する軌道も直線で単純だからやりやすいし。
あ、ヤベェ、これ超楽しいわ。
しかもこれアレじゃん。
突いて、戻ってきた瞬間の反動利用して回転すれば結構ヤバめの威力持った回転斬りできんじゃん!
「触った感じこいつの最大射程は五メートルから六メートルってとこだ。だから目算でそのくらいの距離測れるようになっとけよ、探知に頼ってばっかだといつか痛い目見んだかんな」
「それはカーバンクルの時になんとなくわかったわ。忠告ありがとうな」
「良い客が減るのはこっちもヤだからな。今後ともご贔屓にってこった」
「おうよ。しばらく……つっても大体二週間か。この街にいる間は頼りにさせてもらうわ、それ以降もこの街に来ることありゃ客としても友人としても来るし」
ハッキリ“客”っていう辺り素直で好感が持てる。
変に上っ面で気遣われるよりそういう本音を言ったうえで仲良くする方が楽しいし。
「なんだ、二週間で帰るのか……」
「なんだぁ? もしかして寂しいのかぁ?」
「寂しい? ……あ~、かもしれねえな」
「え……」
「こうしてお袋以外の人間と話したのって最近だとそこまでねえからさ。たまに話はするけど軽く程度だし。こうやってじっくり話すってのはちょっと楽しい」
「……しゃーねーなぁっ。そんなこと言われちゃったら来ないワケにはいかないでしょーが」
あーヤバ、嬉しいわ。
こっちに来てちょくちょく親しい人はできたけど……長い間ボッチだった俺に刃こんな面と向かってそんなこと言われちゃったら本当に……。
マユゲもだし、デューベもだし、ペトラも。
他の皆も。
これを当たり前だって思わないように気をつけながら喜びを噛みしめよう。
「あッチはヒイラギがいなくなるまでになんか新しい装備でも作ってやるよ」
「マジで? ペトラ大好き~」
「……何か要望でもあるか?」
「あ、無視なのね。要望……面白さと実用性を兼ね備えた装備が良いでーす」
「わかった。どうにか作ってみる」
「楽しみにしてるぜぃ」
蛇腹剣を簡単に扱えるワケがない
流石にそこまでの経験はヒイラギにはまだありません
そもそもが魔術の多重行使ですし、安全な状況ですら意識の操作が難しいのに情報量の多い戦闘中にそんなことできるワケがない
できてたヴェガは一種の変態です
固有能力なしでそれやるって……よっぽど訓練したんでしょうねえ
メタ装備(捕縛布)でロクに戦えずやられちゃいましたけど……哀れ
蛇腹剣ユーザーは「いい加減発展させてくれよ」と思っていますが、鍛冶師としてはロクに使い手のいない武器を造る気はないって感じで、「そういうなら使用者増やせ」と思ってますが、まあ使い勝手のせいでユーザーが増えないというイタチごっこ
誰かユーザーの中から名声のある人が出たらちょっとは変わるんでしょうけどねぇ