ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一二〇話 一ヶ月の終わり

「おやおや皆さんお集まりで。わざわざ俺を見送ってくれるのかね?」

「ヒイラギには恩がある! お前が認めずともこの街を護ったのはヒイラギッ、貴様だ!!」

「バハハッ。あまり認めようとはしないがな!」

 

 この街に来て四週間が経った。

 その間にできた仲間や友人たち。

 クアークやヘルベルト、ウルやブルックリンに爺さん、他にも何人か仲の良い開拓兵の姿もある。

 そしてそれ以外だとアイヴィやペトラ、ウォルトン、ロザリンド、ジューン、キース、ザフィーアさんの姿もあり、総勢一〇を超える俺の友好関係に自分の変化を明確に感じた。

 

「いつかまた来なさいよね」

「用があればな」

「用がなくても来なさいよっ」

「なんだ、寂しいのか?」

「そっ、それはあれよっ、ええっと~……訓練に付き合ってくれる人がいなくなるじゃない」

「別に仲良い奴がいなくなって寂しく思うのはおかしなことじゃないんだから素直に言えよ……」

 

 ジューンとの付き合いもなんだかんだで多かったな。

 休日に訓練してると誰から聞いたのかいきなりやって来て拉致して訓練に付き合わされたのは今となってはいい思い出……かもしれない。

 都合が合えば爺さんやザフィーアさんに稽古つけてもらえたりもしたから俺でもある程度は成長できたはず。

 こいつは思ってることをわかりにくく言ってくるから会話するのがちょっとやり辛い感じはあるけど嘘とか変な気遣いをしてこないから楽だった。

 まあイヤってなるほど「アンタ才能ないわね」って言われたのは俺の心に掌サイズの溝を生み出した。

 もう少し傷つくかと思ったが、ちゃんと経験を積んで行けば才能なんて手に入れられるから大したダメージはないものである。

 

「ヒイラギのお陰でボクやロザリンドだけじゃなくて他の子たちも暮らしがマシになったよ。その……ありがとう、色々」

「どういたしまして。ただ無茶はするなよ? 無茶なんて大人でも引き際を間違えるんだ、子どもがするモンじゃねえ」

「うん」

「わっしもヒイラギや他の人たちに教えて貰って協力しながらではあるけどちょっとは戦ってモンスターを倒せるようになった。だからもう心配しなくても平気だ」

「そうか、それは良かった」

「そのうちもっと強くなって会いに行くから……待っててくれ」

「え、ヤダ。お前が追いついて来い」

「ったく。……わかった、すぐ追いつくから心の準備してやがれ」

「ふッ、全力で置いて行ってやる」

 

 ま、教えた感じホントすぐ追いついてきそうで怖い。

 ロザリンドもアイヴィも、ジューンもだけど。

 この国の人間は幼少期から戦闘に対する親しみが違うからか成長速度が恐ろしく早い。

 その分俺も危機感を持って訓練できるからその点はありがたいが。

 

「またいつか会おう」

「ああ。もしヘルベルトの探してるフーベルタって人の手掛かり掴んだらその時連絡するわ」

「助かる。僕も貸せるときはまた力を貸してやろう」

 

 魔術種(エルフ)の時間感覚は不思議だ。

 多く代を重ねたワケではないのに時間感覚が違うといえば良いのか。

 それなりの重要任務のはずなのにあまり急いでいない。

 実は魔術種(エルフ)の結界の中は時間経過が緩やかとかそういうのだろうか。

 指輪の収納空間も時間概念を外してあるらしいからあり得る。

 

「爺さんも色々教えてくれてありがとうな」

「ファッファッファッ。元よりそういう約束だったから問題ないわ。それに未知で未熟な相手に対してどう教えれば良いのかという理解にも繋がったから気にするでない」

「……ちなみに爺さんから見て俺は成長した?」

「ふむ……ちぃとばかしは成長したと言えよう。かつて遇った異界の者に対しても同じことを思ったが異界人というのは戦いの基礎すら知らんでな、一〇〇を聴いて、一〇〇を教えて貰ってようやくちょっとしか身に着けん」

「覚えが悪くてすまんね」

「だが小僧は比較的に要領は悪くはない。しかと訓練をすれば大成する可能性は充分あろう」

 

 お、マジか。

 可能性ある感じ?

 あくまで可能性だからサボれば駄目になるけど。

 

「これ、試作品だが言ってたヤツだ」

「おお、幅広の剣。抜いて見て良い?」

「……ヒイラギの性格的にすぐ使いたくなるだろうから王都に戻るまで見るの禁止。やるならギルドの訓練場でやれ」

「え~。ちなみにどんな感じ? 言える範囲で」

「使った素材はそこまで特別なモノじゃない。市販されてるような素材ばっかだ」

「ということは機構の方に何か仕掛けが」

「ああ。最新の研究――つっても鍛冶の方じゃなくて魔術とか魔道具とかだ――の資料を読み漁ってどうにか試作とはいえ実用に足る程度には持っていった」

「なるほど。魔導剣ってとこか」

 

 渡された剣はかなり大きい。

 横幅は一〇センチほど、厚さも一センチ近い。

 そして特徴的なのはその形状。

 先端、切っ先部分は四角くまるでエクスキューショナーズソードのようだ。

 つまり刺突攻撃は捨てているか、もしくは武器強化(じまえ)で用意しろということだろう。

 

「チクショー、早く見てぇっ」

「かなり使いにくいんだから慣れてない間は間違っても適当に使うなよ?」

「わかったよぉ」

「次お前が来る時までには完成させるつもりだから楽しみにしてろよ」

「了解。ちなみにこれの銘は?」

「雪華・戯」

「戯好きな」

「まだ黒鍵も雪華も試作でしかないからな」

 

 楽しみだな。

 名前になんか意味でもあるのかね?

 俺に合わせてるとしたら凍結魔術の発動補助とか?

 ま、一週間の辛抱だ。

 

「それじゃあ皆また会いましょうね」

「うん、またそのうち……ん? …………ふぁッ!?」

 

 あまりにも自然過ぎて一瞬違和感がなかった。

 俺を見送る立場であるはずのクアークが何故か、隣にいる。

 

 ンンン?

 なん、えっ、なんッ。

 

「えっとぉ? 一応聞くんだけど……着いて来る気?」

「もちろん」

嘘だそんなこと(ウソダドンドコドーン)!」

「別に良いでしょ?」

「まあ、はい……」

 

 以前の何やかんやがあっからこえーのよ。

 それがなけりゃ人間的にはかなり好ましいタイプだから大丈夫なのに……。

 

「てか、皆何も言わないけどもしかしてほとんど知ってた感じ?」

「うん」

「結構前に」

 

 おぉう、ほとんど知ってたんですね。

 なぜ俺だけ……。

 

「ヒイラギ」

「ブ、ブルックリンッ……」

「頑張れ」

「チキショー! 薄情なッ!」

「ならもし俺がその立場だった時ヒイラギは助けてくれるんだな?」

「…………」

「他人のこと言えねえじゃねえか」

「ふッ」

 

 うん、ぶっちゃけスマンかった。

 確かにそうだわな。

 緊急を要するワケじゃないし。

 やってることってただの痴話喧嘩みたいなモンだしね。

 

「本当に着いて来るのか?」

「ええ。どうせ最近は暇してたもの」

「ヒマで着いて……」

 

 今は大丈夫でもゆくゆくは今以上に危険な場所にも行くつもりだ。

 もしその時も着いて来るのだとしたら命を懸けるには理由が薄い気がする。

 けれどそれは俺の感覚だ。

 クアークが何を重視するかは分からない。

 また、他人の行動に口を挿む権利は俺にはない。

 俺が言えるのはあくまでも「後悔するなよ」ということだけ。

 

「まあいい。来るなら止めない」

「ありがとっ」

 

 不意に見せたクアークの笑みはとても可愛らしく、先にマユゲを好きになっていなかったら惚れていたかもしれないほどだ。

 これは危ない。

 気を強く持たなくては優柔不断な野郎になってしまう。

 

「んじゃ、皆、またな」

 

 それぞれに再会の約束をすると、順にその姿は消えてゆく。

 最後の一人に声をかけ終えるとその場には俺たち二人と、門番しか残らなかった。

 

「この街を離れるのも久々ね~」

「フェー……ドロヴァと組んでいた時からずっとだっけか?」

「正確にはそれよりもう少し長いわね」

「ふ~ん……開拓兵のくせに」

「それ、皆にも言われたわね」

「だろうな」

 

 考える事は皆同じ、か。

 当然ではある。

 開拓兵が開拓しなければただの兵だ。

 俺たちは“開拓兵”だ。

 無理と無茶を通すのが本分だ。

 だったらやることは決まっている。

 この世界で、この国で生きると決めた時からやるべきことは変わらない。




 雪華は属性をどうするか少し悩みました
 雪華のモデルとなった武器――とはいっても形状のモデルでしかなくその効果は違いますが
 ちなみに形状モデルは『MÄR』のガリアンというキャラが使う“避雷剣”というモノです
 子どもの頃アレを見てカッコいいと思いましてね
 ふと新しい武器を、と思った時あまり良い感じのロマン武器が思い浮かばず、だったら先に形状を設定して想像を膨らませやすいようにしてしまおうと思い浮かべたのがソレでした
 そうしてからはワリとすんなりアイデアが出たと思います
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