ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一二三話 雪華・(アジャラ)

「あの、さっきはゴメン」

「え?」

「その……ウザいとか」

「いや、アレは俺も軽薄だったし要領を得なかったし……」

 

 訓練をしているとイヴォンヌに話しかけられた。

 夢中で気付かなかったが少し空が赤みを帯び始めている。

 

「……本当は世界を旅したい。昔聞かせてもらった色んな景色を見たい。それが私の目標」

「そうなのか」

「遺跡も見たいし、それと同じくらい他の場所にも行きたい」

「俺も同じような感じだ」

「さっきはいい加減で、お金のためにやってると思った」

「そんな風に思われてたのか」

 

 目標のために頑張っている横で適当なこと言われてやられたら腹が立つのは当然だ。

 真面目だからこそ腹が立つ。

 少し、わかる。

 

「その……それだけっ」

「お、おう……」

 

 イヴォンヌは最後にそう言って立ち去って行く。

 

 あ、パーティとかじゃないのね。

 ちょっと期待してたわ。

 

「……どうすりゃいいんだろ。…………わかんねーや」

 

 思わず失笑してしまった。

 こっちの世界に来てから変化はしたが成長はしていない。

 考えても出ない答えだ。

 

「もう遅いし、マユゲんとこ行こ……」

 

 こういうときは訓練をして一度頭をスッキリさせるのがいい。

 

 

 

「マ~ユ~ゲ~! ……って、シャプルがいる」

「あっ、お久しぶりですねヒイラギさん」

「ここに来てたんだな」

「もしかして教会の方へ?」

「うん。一度見に行った」

 

 仲良くないはずなのに一緒にいるなんて何かあったのか?

 

「別になンでもねェよ」

 

 そうか。

 

「あ、また二人だけでっ。ズルいですよ」

「なンの話だ……。大したこと話してねェのは聞きゃわかンだろォが」

「それでもです」

「?」

「……ヒイラギは一体なンの用だァ?」

「落ち着くために訓練しに来た。んじゃ」

 

 シャプルへの用事は帰って来ましたよって話だし、帰ってきたのは見たらわかる上に多分マユゲから先に聞いてただろうし。

 邪魔しちゃいかんわな。

 

「何かありましたか?」

「え? いや~、慣れたつもりだったけど他人と話すのって大変だよな、って再認識」

「?」

「そォいうことか」

「だから二人だけで繋がらないで下さいよっ」

「簡単に言えば会話に失敗したって感じだなァ」

「なるほど、そういうことでしたか。でもあまり心配する必要はないのでは? 両者の間に何かしらの問題があったとしてもそれが悪いと直接繋がることはないですし」

「そうか?」

「ええ。私たちはあることが理由で繋がりがあり、そのあることに関することで少々仲が悪いですが嫌っているワケでも憎んでいるということもありませんから」

「……」

 

 仲は悪いが嫌いでも憎んでもいない、か。

 色んな感情を一つにまとめ過ぎ、なのかね。

 

「まあ、こういう人間にとって大事なことは説明だけでは――言葉ではあまり意味を成さないことです。ただ今言ったことをちゃんと憶えて、意識して、理解出来る際に理解して頂ければきっとヒイラギさんの糧になるのではないかと」

「おお……良いこと言う」

「私は人を救い、導く巫女ですよ。街を、国を護るために健全な人を育む。それが大切な人のためであり、私のためでもありますからね。何かお困りのことがあればお力になります」

 

 おお~。

 カッケェ。

 

「ありがとうな。ちょっと元気出た!」

「それは何よりです」

 

 しっかり憶えておこう。

 これは理解はできても共感できないというのだろうか。

 言っていることの意味はわかるしその理屈もわかる。

 けれど少ししこりが残ると言うのか。

 これまで考えていた理屈とは異なる理屈がいきなり自分の中に投げ込まれたモノだから水面(せいしん)が揺らいでいる。

 

「さて、訓練しますか」

 

 蛇腹剣と雪華を取り出す。

 一週間も経つと雪華のことが意識から少し抜けていた。

 変に気を惹かれ過ぎて他に集中できないというのがなかったからよかったけれど忘れかけていたというのはペトラに申し訳がない。

 

 え~っと、確か使い方を軽く書いた紙を貰ったから……どこ行った?

 確かこの辺に収納……あったあったこれこれ。

 

 出したは良いものの使うのは後になるであろう蛇腹剣を収納しつつ雪華を鞘から抜き、紙を片手に構える。

 

「え~っと? 特殊な素材を用いた特殊な文字によって常時微弱ではあるが効果を常時発動している。……魔術刻印――じゃなくて魔術紋様みたいなモンか。んで、そこに対して魔力を込めることで魔術も行使可能、と」

 

 つまりは魔術紋様技術を応用した新技術ってところか。

 魔術紋様は基本的に安定化というか、レンガとかの建材によく使われたりするから流石に武器転用は無理だったんだな。

 日常生活――包丁とかなら可能性はあるけど派手に外部からの影響が出る武器防具は無理、と。

 つーことは魔術刻印と魔術紋様の複合技術(ハイブリッド)か?

 いやちょっと違う?

 魔術刻印も魔術紋様も原理はおおよそ同じ。

 ただこの文字はちょっと毛色が違うな。

 

「鍔の部分につけられた濃紺色の石はそれぞれの文字と繋がっているから外さないように……これか。外れないようにしてあるけど外したら填めても使えなくなるから戦闘で外れてしまった場合はあッチのところに持ってくるか他のプロミネンス工房へ~……ふ~ん」

 

 で、肝心の使い方はどこに……ああ、あったあった。

 う~ん、色々書いてありますなぁ。

 魔力を込めて効果を発動、込める場所によって――何ヶ所かあるんかい。

 先に書いて……いや、それはそれでゴチャゴチャするか?

 わからん。

 

「ここに魔力を込めたら……何も起こらんやないか~いっ。って、これやった上で一定速度以上で振らなきゃダメなのね、はいはい」

 

 魔力を込めた状態で一定以上の速度で振ると――という文言に従って剣を振るう。

 するとボッと剣身が炎に包まれ、剣の残像のように火の穂(ほのお)が飛び出た。

 

「うおッ!? スゲエッ!」

 

 編集でエフェクトを付け足したみたいな感じに炎が出て、興奮した。

 飛翔斬撃の時もそうだがこういうのは興奮する。

 こっちの方の有用性はわからないが。

 

「魔力を込めればその分だけ威力が向上、ただし回路の耐久性の関係上あまり大量の魔力を込めると壊れる可能性あり。推奨上限は剣幅が魔術で五倍になる程度。内部の手入れは特殊な技術もあるから可能ならあッチのもとへ持って来るように、と」

 

 書いてあるメインの文字は五文字。

 内四文字は火・風・水・土の主要四系統。

 火は純粋に焼き、風はかまいたちのように細かい風で切り裂き、水はウォータージェットのように切断力を上げ、土はサンドブラストのように傷口をボロボロに傷つける。

 そして最後の文字は少し特殊らしい。

 

「お前の協力もあってある程度使えるようにはなったが解析が不充分で単体じゃ実用性に欠ける。だから“記憶”の魔術文字(ルーン)と複合させてなんとか使えるようにした――魔術文字(ルーン)?」

 

 なんとなくそうは思っていたがやはり“ルーンブレイド”だった。

 剣身に魔術を発動させる特殊な文字が刻まれてるし勝手に呼んでやろうと思ってたけど。

 

「これは俺の魔術補助をする、と。魔術補助、ねえ」

 

 魔術補助、というワケあって魔力を流すと武器強化の時のような武器との一体感が生まれる。

 剣身の奥まで腕が拡張されたというべきか。

 ちょっと武器強化とは違ってこれは腕の感覚が明確に生身に残っているのだが、魔力の通りがまるで自分の腕かのようにすんなりと通る。

 そして凍結魔術を構築し、献身に重ね合わせ、発動した。

 

「ヒャッハー! なんだコレ! 吹雪かよ!?」

 

 振るった途端に放たれる猛吹雪の如き突風と雪の嵐。

 下から切り上げるように放った影響で地面に氷結の道が生まれ、そして道は標的を全て凍らせ、その奥まで伸びていった。

 

「すっげえ……」

 

 そんな感想しか口から出てこなかった。

 圧倒的な威力は俺の経験したことのないモノ。

 俺が強くなったワケではなく。

 この雪華のお陰だ。

 わかりきったことだが、改めて自分に言い聞かせないと(・・・・・・・・)勘違いしてしまいそうだった。

 

「これ……えげつねぇ。ちゃんと訓練せずに使ったら仲間巻き込むじゃん」

 

 それが理由でペトラは俺に訓練場でやれと言ったのだろう。

 ありがとう、ちゃんと注意してくれてマジでありがとう。




 火の穂の部分は正しくは「ほのほ」ですが、炎の由来は「火の穂」のため、火の穂と書いて「ほのお」と読みました
 勘違いを生みだして火の穂を普通にほのおと読むよ広めるのは不本意のため一応しっかり書かせていただきます

 
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