ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「これってどういう?」
「あァ、そいつァ双生華つってな。咲いて、枯れて、また咲くンだよ」
「へ~、面白い花だな」
「色ンな種類があってなァ、どれも一度目の開花と二度目の開花で少し変わったりすっから色々調べ甲斐あンぜ」
「花の研究とかするんだな」
「魔の特性があっからよ」
魔の特性……へ~。
まあ普通に枯れてから咲く花なんて知らないし。
そのあたりか。
てかモンスターじゃないのな、それ。
「魔石がねェし、意思もねェからな。モンスターはもちろん動物でも、ミマラマザでもねェ」
「……ん? ミマラマザって?」
「筋肉――正確には少しちげェがそれに類する肉体を有し、光合成を行い、低くはあンが知能もある生物だよ。文字通り
「そんなんいんのか……」
「あァ。現状人間域が狭いからロクなことはわかってねェが昔の資料だと龍壁山脈の外にも大量にいたらしいから分布は広いと思うぜ?」
「おもしれー」
それがどう役立つのかは詳しくない俺にはよくわからないが多分役には立つんだろう。
よくわからないが。
「んで話は戻るが、この双生華が咲くっていう龍壁山脈を北に越えた先にある地帯の花畑に出るモンスターが書いてねぇんだけど?」
「あァ? ……あ~、確かその辺の山岳地帯とか高原地帯――花畑がある付近はなンでか知らねェがモンスターは出ねェンだよ。説によると特殊な花粉かなンかでモンスターを寄せ付けないとからしいな。普通の虫とかは寄るから受粉とかはできるが」
「そんなのあるのか……」
「ねェよ」
「ないんか~い」
「正確には寄せ付けない花粉はねェ、って話だ。オレが思うにアレにゃ乱魔かなンかの力があってモンスターはそれを避けてンだよ」
「ほぉ。磁石的な感じで直接的な反発効果はないけど邪魔だから逃げるって感じか」
そもそもモンスターの苦手なモノ云々ってどういう風な判断よ。
花を手に入れて……モンスターの巣に持っていくとか?
アグレッシブだな……。
もしかして隷属魔術で従わせるとか?
でも前聞いた時は言語のやり取りが必要だって……言ってたような言ってなかったような。
普通はしないだけだっけ?
言葉が通じないから……必須ではないけど通じる方が圧倒的に楽ってだけか。
「なンだ、行くのか?」
「まさか、遠征開拓兵になるまでどれだけ掛かるのか」
「別に外行くだけならそのへんは関係ねーだろォが。ただ遠征部隊に入った方が安全で安いってだけだ」
「あ、そうなの?」
「そりゃそうだろ。誰が何しようが大して関係ねェ。ましてや龍壁山脈外は現状ルートヴィヒの外、国外だからな。干渉する気も必要もねェンだよ、自殺と区別が付かン」
「あ~」
区分関係なく行けるかどうかはさておき行こうと思えば実行できるということには驚いたがそれよりも会話の流れから察して自殺に対して無関心かそれに近いということがより驚いた。
こうなのだろうという理屈はなんとなくわかる。
自殺を考える者、つまり精神が不安定な人間を無理に生かそうとすればその精神のまま生きながらえることになり、その状態でトチ狂った思考を周囲に無差別にまき散らされでもしたら大惨事だ。
トチ狂った思考は感染し、国民の生産能力低下。
無関係の者まで割を食う。
ルールに従った正しき者がそれゆえに損をしないための、合理的判断。
恐らく以前の世界なら批判が蛆のように大量に湧いて出ただろうが、そこは幼少期から英才教育を受けるこの国の人間たちだ、自分が気に食わないという理由で自分の生活基盤を崩壊させるような愚行は起こさない。
「まあ俺は正規のやり方で行くと思うよ。いや、一人で行くのが不正ってワケじゃないけどさ」
「そォか。まあ好きにすりゃ良いと思うぜ? 行くっつーなら力も貸すし」
「そりゃどーも。素材が欲しいだけだろうけど」
「それもあるがこっちはちゃンと心配してんだぜ」
「そいつぁ……疑ってごめん」
「行くなら事前にちゃんと言え」
「ういっス」
まあ自殺する気はさらさらないからしばらくは……。
強くなるためには――。
っていかんいかん、今は勉強の時間だ。
集中しなきゃ。
「エルナの丘は――」
エルナの丘。
龍壁山脈を北に越えた後さらに北上した先、僅かに東へ移動した地点に広がる台地の中にある小高い丘。
そこには基本的に草原が広がるばかりだが他と異なる点が存在する。
それはエルナの丘には謎の光の粒が多数浮遊しているということ。
粒の大きさは手の小指の爪から拳ほどまで。
また、その光はそれそのものが光源のようでどの方向から遮っても光がなくなることはない。
触れても崩れず、剣でも手でも透過するのみ。
唯一、魔術を放った時は風に揺られる羽毛のようにヒラリと躱す。
意思の有無は不明。
害はなく。
光に好かれ寄ってくる者と嫌われ離れられる者がいるがどういった条件かはわからない。
一部では意思があるとの声があったが決めつけるのはまだ早計である。
考え得る中で簡単なモノは“魔力総量”“自然魔力放出量”“レベル”“害意や恐怖などの感情”が考えられる。
「……自然魔力放出量? あ~、前なんか勉強したな。なんだっけ……」
「自然魔力放出量、自然魔力放出ってのは文字通り魔術を使わずとも勝手に放出される魔力のことだ。大気から吸収して、自分のモノにした魔力が一定期間使われねェと勝手に放出されるンだよ」
「あ~、そういやそうだっけ。古いのは魔力の器から弾かれるとかなんとか」
「他には生きてるだけで消費する魔力の残滓、とかだなァ」
そういえばそんなことも以前言っていた。
たしかその時は「ステイタスの科学的解析」だとかなんとか。
この“魔術も科学の一種”というのは未だに少し慣れない。
異世界人だからか単に適応能力が低いのか、何度も使っているのに魔術を
――
その時に「実験で得た情報を元に組ンだ仮説の段階を出ねェ話だが、魔力を無意識のうちに纏うことで自然と魔術に対する耐性を上げてンだろォな」とも言っていた。
人間が魔術を手に入れる前から世界には魔は存在していて、龍による絶滅の危機をきっかけに眠っていた種が発芽した、と。
だから自然と魔を利用することができ、動物や植物、ミマラマザ同様に生きるように自然に魔の利用を行っていたのだ、と。
魔は空気同様に大量に存在し、魔を利用できる生物とそうでない生物では生物としての性能が全く異なっており、ゆえに昔の人間が無意識的にしても魔を利用していたのも魔術の種を秘めていたのも、今の人間が魔を利用できるのも全ては自然淘汰の中での当然、とのこと。
「色々あるモンだなぁ……で、結局この光の粒の正体って未だ不明ってな感じ? この本が出たのは……大体三年前か。進展なし?」
「そもそもが遠征は年一くらいだからなァ。もうちっとすりゃァ変わるだろォけどな」
「そなの?」
「あァ。前と比べりゃ技術もここ一〇年くらいで一気に変わったからなァ。昔と同じ頻度じゃ効率も
「確かにそうだな。筋肉ついたのに前と同じ訓練しても負荷は少ねぇしな」
「筋肉馬鹿が」
「何を言う。つけた筋肉は俺を支え、守ってくれる大切な存在だろうが」
「……そォだな」
筋肉、大事。
つけすぎると俺の武器の速度が落ちるから適度が大切だけど筋肉のお陰で動きが全然違う。
レベルは大して変わってないけど動きは変わってるし。
それはただ動くのが上達しただけかもしれないが。
「え~っと、他には……とりあえずパッと見た感じ他は普通に書いてありそうだからしばらくは良さそうだな」
「まァわからンことあったら聞け。勘違いで歪まれても面倒だからなァ」
「了解。とりあえず考えてわからんかったら聞くわ」
他にはミワラン山地とかか。
色々ホント面白いことが書いてあって、良い。
やっぱ勉強ってのは自分が好きなことを好きなペースでやるに限るな。
面白いことが多すぎて夢で冒険の夢を見そう。
異世界語解説
ミマラマザ
ミマ(mima)が『動物』の意で、ラマ(rama)が『動物』の意
そしてザ(za)が『狭間、間、中間』や転じて『境界』の意
MimaRamaZaではなく、一つの単語のため基本はMimaramaza
まあこのアルファベット表記は異世界語を強引に我々が理解出来る表記にしただけなんですけど(それを言ったらカタカナ表記もそうなんですけど)
エルナの丘
エルナはエ(e)が『光』、ル(l)が『海』、ナ(na)が『竜巻、台風』転じて『回転、巻く、渦』という意
ちなみにエル(Elu)だと『光の女神』という意味になってしまいます
この辺りの言語は古代神信仰のあった時代(龍の被害が比較的少なかった時代。というか龍に目を付けられておらず人間の前に出てくるのが低級竜か下級竜だったくらいの時代)に生まれたりした言語のためほとんどの単語に龍が関わって来ていません
ミワラン山地
ミ(my)は『生物の、生物がいる』とかの意味、ワラン(walawn)は『否定(元々はcan notの意味だったが時間経過で広く使われるように)』
ミワランは『生物のいない』という風になるが実際には植物動物ミマラマザモンスターはいる
ミ(my)をミ(mpi)としてしまうと『人間』という意味になってしまう
ちなみにミ(my)はミマ(mima)やラマ(rama)のma部分の語源