ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一二五話 次はどうするか

「大体の奴には会ったか? エリナにも素材は持って行ったし、クレイオスのおっさんにも一応顔は見せた。エーベルヴァインは俺のいない間に開拓兵に……つーかミアとパーティ組んでたし。ポーラにも顔は見せたから……特にいないな」

 

 この街に戻って来て三日目にしてすることが少なくなってしまった。

 訓練はしているが実戦に勝る上達はないし。

 勉強はマユゲに教えて貰えなくなるがやろうと思えば自力でできるから場所に制限はなく。

 そうなるとこの街にいる意味がない。

 

「他の街……行くかぁ」

 

 とはいえ俺は鍛えるのに良さそうな街を知らない。

 最北部には森があったはずだがそれ以上のことはわからず、西も西であまり調べていない。

 

「てことで、助言を下さいな」

「……そォだなァ、とりあえずその全部聞いてる前提で話すのやめろな。聞いてはいるンだが普通に口に出してくれ」

「ういっス。簡単に言えば、暇で鍛えたくて、でも良い場所わからん、だからおススメの場所教えて。って感じ」

「なるほどなァ。……ちなみに成長方針は決まってンのか?」

「速度と手数。あと魔術、かなぁ? 凍結魔術」

「ある程度は自分のこと理解してるみてェだな。だが不充分だなァ」

「不充分?」

「お前は異世界人だ。それゆえの発想ってのがお前の武器足り得るンだ」

「発想、ねぇ」

 

 実感はない。

 それは多分空気のようなものだから。

 あって当然、ごく普通のこと。

 俺が俺として生きる中で勝手に築かれた“俺”という存在。

 そのつもりがなくとも歩いていただけで踏み固められた地面のような存在だ。

 

「オレも、他の奴らもお前の武器を予測できない。それは知らないからだ。当然の話、オレはお前から話を聞くまで知り得なかった知識がいくつもある。それはこの世界で、国で存在しないモノだからだ」

「元型が違う、みたいな感じか」

「そォいうこった。二世界にはそれぞれ存在して、存在しないモンがいくつもある。そして存在しないモンは想像しえねェ。わかりやすく言えばお前の世界の“ゼロ”っつー概念だ。一度知れば単純な概念なンだがそれを知るまで誰も気づかなかった」

 

 知れば当然、けど知らなければ一生でない可能性もある。

 たしかにそれは恐るべき武器だ。

 

「けどそれが通じるのって人間相手じゃね?」

「馬鹿かてめェは……。黒鉄の墓と戦うンだろォがよ」

「あ、そうだな」

「それにモンスターでも知能が高いヤツはいるだろォが」

「たしかにぃ」

 

 実際戦ったワケだし。

 

「戦いですぐ打つ手を見つけられるようにしておけ。そうやって自分(てめェ)の思考に制限掛けてっと必要な時に何も思い浮かばねェからなァ」

「まあ、なるほどな。俺ゆえの発想、か」

 

 ディティールをどれだけ詰められるかはともかくとして、俺にもあるにはあるだろう。

 まずはそれに至る思考を止めないのが大事か。

 

「それはともかくだなァ。確認すっから服脱げ」

「……ああ、前のアレか。はいはい」

 

 こうして改めて自分の身体を見ると本当に筋肉質になったと思う。

 元は贅肉がほとんどなく骨とともに筋肉が見える状態だった。

 今はみっともなく肋骨が見えたりはせず、筋肉を纏っている感じがする。

 

「なるほどなァ。身体は出来上がりつつある」

「どういう感じに?」

「あァ、簡単に言えば敏捷重視の体格ってこった。急加速急停止に耐えれる骨と筋肉の強度になってンだよ」

「力はそこまで出ないのか?」

「瞬間的な力は出せるに決まってンだろォが。ただ最大出力での持久力は低い方だから力押しになりゃ勝ち目は薄くなる、って感じだなァ」

「最大出力での持久力……じゃあ全力ダッシュは長持ちしない感じか」

「全力疾走ゥ? 魔術なしで一分くらいじゃねェのか? 速度を重視しつつある程度の体力維持も考慮すりゃ大体一〇分くらいだろォけどな」

「一定速度で走ったら?」

「速度によるが時速一六キロ程度として今のお前なら七か八時間くらいだろうな。流石に水分補給のための魔術はありとしてだが」

「なんか俺人外じみてきたな」

 

 フルマラソン二回から三回は強すぎる。

 でもこれがこの世界の人間だもんな。

 なんならこの程度が最高地点じゃないし。

 この世界、総じて生物の強度が高すぎる気がする。

 魔があるだけでここまで変わるのかよ。

 

「とにかく問題はなさそうだ。指輪の経験値吸収、半分まで開けてやンよ」

「そーいやあれから弄んの忘れてた……」

 

 モンスターの異常発生の時に弄って以来戻すのを忘れていた。

 不便を感じなかったから意識していなかったし、指輪の着け外しは装備準備の一つとして頭の中に染みついていたから意識にとまることもなく。

 今言われ、ようやく気づいた。

 

「やっぱりなァ」

「?」

「その指輪とここの結界は間接的に繋がってるンだよ。だから送られてくる魔力の量とかがわかるンだがァ……半分過ぎたあたりから設定変えたままだしでどォせ忘れてんだろォな、と」

「正解。そういえば奪った経験値は魔力に変換して結界に利用してるって言ってたな。双子魔石的な?」

「まンま双子魔石使ってるわ」

 

 あ~、やっぱり。

 こういうのでってなると基本そのイメージだわ。

 単に知識がないからその選択肢しか出ないだけだろうけど。

 

「……そういえばさ、この世界で瞬間移動? 空間移動? とか、過去とか未来に行く技術とか魔術ってあるの?」

「空間転移はやろうと思えば今からでもできるぞ。まァ長距離だと魔力消費が増えたりで面倒だがなァ。…………過去に戻るのも理論上は可能、もちろん理論上ってだけで空間転移の比じゃねェくらいに魔力消費すっから人生費やすくらいしねェと不可能ってくらいの机上の空論だ」

「できるんだ……」

 

 人生費やす、ねぇ。

 そんな情熱を一つのことに費やすってのはなんともカッコいいことで。

 というよりも人生費やす、というのが普人種基準なのか魔術種(エルフ)基準なのか。

 それによって言葉の受け取り方が結構変わりそう。

 

「理屈を知った上だと普通はやらねェしやっても意味ねェからなァ。まともな神経してりゃ鼻で笑うだろォな」

「そんなに?」

「あァ。膨大な魔力の云々、記憶の過去への転送云々、時間逆行を発動させるための術式準備、その他多数。現行技術じゃァな、やるにしても頭のおかしいくれェの巨大な設備が必要になンだよ」

「巨大設備?」

「魔力の貯蓄だの回路の干渉防止だのでそォだな……ちっせェ街くらいにゃなるンじゃねェか?」

「うは、マジか……」

 

 というかそれ、現実問題としてその規模だとモンスター被害で壊されそう。

 ENIACが可愛く見えるレベルの規模って、絶対実用性ないわぁ。

 

「まァそれは汎用型ってだけで特化させちまえばもっと縮小できンだけどよォ」

「そうなのか」

「固有能力を使っちまえば、な」

「あ~、確かにヘルベルトの接続みたいなので複数人の固有能力を繋げちまえば能力次第じゃ確かに楽に出来そうだな」

「ン?!」

「ん?」

「あ、あァ、いや、なンでもねェ……」

 

 露骨におかしいマユゲの反応。

 その言葉のようになんでもない、というには動揺が僅かに見える。

 接点があるとすれば魔術種(エルフ)という点だろう。

 

「同じ種族だし、知り合い?」

「同じ? ……あァ、まあ、そォだな、知り合いというか、なンというか」

「……元カレ?」

「それはない。オレは生まれてから今現在まで誰とも付き合ったことねェよ」

「え……マジ?」

「聞いてなンになンだよ。お前はオレを……惚れさせるンだろ?」

「うん」

「なら過去現在未来全部合わせてもオレの旦那はお前、だろ?」

「そ、それは告白ですか? 求婚と捉えてもよろしいので!?」

「よろしくねェ」

「よろしくにできるよう、頑張るわ」

 

 今のは完全に求婚だと思ったんだが……。

 まあ違うなら違うでいい。

 嬉しくて死んでしまうわ。

 

「ンなこたどォでもよくてだな。おめェが次行く街、いくつか候補はあるがおめェの意見も尊重するべきだろォから一緒に考えてやンよ」

「わぁい、マユゲ大好き~」

「はいはい」

 

 わぁい、適当だぁ。

 てかちょっと自分の目的忘れてたわ。

 イッケネ。




 ENIACというのは黎明期のクソデカコンピューターのことです
 幅30m、高さ2.4m、奥行き0.9m、総重量27トン
 今のと比べると頭おかしいレベルですね

 空間転移と時間逆行の色々は説明する機会があればいずれ解説したいと思います
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