ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一二九話 異世界の種族の多様性

「こんばんは、いきなりですけどお兄さんは異界の方で合ってます?」

「……ああ、そうだけど。アンタは?」

「そうですよね、いきなりで怪しいですよね。――ウチはサースティ、見ての通り開拓兵で、実は遠征開拓兵だったりします」

 

 提示されたのは以前のモノとも今のモノとも異なる特別な意匠の開拓兵証だ。

 それは今までの他開拓兵との付き合いの中で何度か見たことがある。

 

 本物……だよな。

 見た目と籠ってる魔力は大体同じ。

 確かめられないし本当の事って前提で話すか。

 

「……それで? 遠征さんが一体なんのご用件ですか? 多分力になれることなんて何もありませんよ。というか一体どうして俺が異世界人だって……」

「二つ目の質問を先に返すと、それは異界の方特有の話し方だからですよ。転移の際、どのような世界から来ても転移時に自動的に起こる魂の適応によって異界の方は言語の認識が追加されるんです。母語は忘れず、けれど意図的に母語で話しかけようとしなければ言語はこの国のモノになるワケです」

「そんなこと起きてたのか……」

 

 恐怖……はあまりない。

 この世界に来て言語がそうなってから何も異変はなかった。

 その時なら何か感じたかもしれないが既に三ヶ月近い時が流れ、不都合はない。

 

「そしてそうなった異界の方たちは以前の口調とは関係なく共通して起こることがあります。それは単語選択。同じ意味を有する言葉が複数あり、それのどちらも使ってもおかしくない状況だった場合古風な単語選択に――かと思えば別の単語では若者言葉だったり、とそういうことが起きているのですよ」

「お、おう。そりゃなんか気持ち悪いな」

 

 なんだろ。

 イメージ的には「マジ久しぶり〜、おめもじ叶って超喜ばしいんですけど〜」みたいな……なんかいそうな気がしてくる。

 

 飲み込みやすいように自分なりにイメージするが逆にわかりにくくなっただけな気がする。

 

「そして次にウチの用事なのですが……体液を貰えませんか!?」

「……ふぁッ!?」

 

 体液? 体液!?

 タイエキってなんだっけ……。

 汗、涙、涎、血……精液。

 ……セイエキ?

 胃液もか。

 

「ウチ、他の人の体液がないとダメな種族なんですよ」

「え、そんな種族いるの?!」

吸魔種(ヴァンバス)と言って相手の体液に含まれる魔力を糧に成長する種族でして……他の方のようにモンスターを倒すことで強くなれないんですよ」

「お、おう。なんか色々大変そうっすね」

 

 体液提供者を探さないといけないし、場合によっては嫌な相手から貰わないといけなかったり……。

 俺に頼むってことは同じ人だと効果薄いってこと、だよな?

 

「なんで俺なんすか? 異界の方って言ってたしそれが関係する?」

「そう、ですね……実は体液に含まれる魔力を味で感じることができまして、ほとんどの方がその……あまり美味しくないんですよ」

「異世界人は違うと?」

「昔王都で出会った方は無味でして。なので成長の糧には足りずとも今は不快ではない味を、と」

「ふむ……要約すれば、物足りねえが不味くはないから寄越せ、ってことすか」

「あっ、すみません。今の言い方だとそうなってしまいますね」

「ゴメンゴメン、ちょっとした冗談のつもりだったけどジョークセンスなかったっすね」

 

 にしても味がない、か。

 魔力の味自体初耳なのだが中々面白い話ではある。

 

 可能性一、魔力を得てすぐだから味の原因になるモノが取得できていないもしくは反映されていない。

 可能性二、異世界人の特性で本来存在しないモノが相手だからその味を感受する機能がない。

 可能性三、その他。

 

「まあ詳しいことはわからんが害がないなら良いすけど」

「本当ですか!?」

「ヒイラギ……甘くない? もう少し疑いなさいよ」

「そう? だって俺を狙う利点ってないし……本人がそう言って、俺に真偽を確かめる術がない以上俺はその言葉を信じたいよ。騙されたらその時はその時だ」

「……ホント、もぅ」

 

 まあ、信じる信じないは勘任せだ。

 それに困ったときは助け合い。

 俺も何かありゃ手を借りる。

 

「んじゃ、ドーゾ」

「なんで首を?」

「なんでって、血は嫌すか? 流石に汗じゃ少なすぎない?」

「嫌じゃないです! ただ今まで体液って言うと両極端だったので」

「?」

「以前の異界の方のように忌避感があり汗が限界の方、そしてベッドへ連れて行こうとする方」

「ぼへッ!?」

 

 ヤベヤベ、酒吹き溢しちゃったよ。

 貞操観念ェ……。

 

「まあオバサンとはいえ知らない男に身体を許すほど弱くも貞操観念緩くもないので精液貰って終わるんですけどね」

 

 貞操観念ェ……。

 

「てかオバサンて……普通に見た目二〇代じゃ」

「実は四〇近い三〇代ですよぉ」

「種族寿命は?」

「五〇〇年くらい?」

「若い……」

 

 単純計算、八歳……。

 考えるのをやめよ。

 

「まあ吸うなら死なない程度に好きにドーゾ」

「あ、ありがとう」

「どういたしまして」

 

 まあそういうのは無味だった時にしなさいな。

 髪色が変わった状態で味がどうなのかわからないし。

 

「いただきます――!? 美味しい……」

「健康な血です。……実際なんで美味いの? てか魔力の美味い不味いが感覚わからないっすけど」

「魔力の美味しいは……快楽的と言いますか、不思議な幸福感に包まれるんですよ」

「へえ……」

 

 快楽的とか言うなよぉ。

 いやらしく聞こえるじゃないの。

 

「ヒイラギさん、でしたか? 貴方の魔力はとても独特で表現しづらいのですが味がハッキリとしていて美味しいです」

「そりゃ良かった」

 

 ハッキリしてて美味しいのか。

 よくわからん。

 そもそも魔力ってどこから生まれるんだっけ?

 マユゲは大気中のを吸収して活用できるように組み換えるとか言ってたな。

 

「不味いのはどんな感じっすか?」

「そうですね。一度に色々な感覚が襲い掛かってきて気持ち悪い、ですかね。雑味も多くてダメです」

「うへぇ、マズそぉ。大変っすなぁ」

「ありがとうございました。声はかけてみるものですね」

「ま、なんかあったら声かけてくださいな。俺も困ったら助け求めるんで」

 

 そう言って立ち上がり、握手をしようとしたところで僅かに眩暈が起こる。

 座っている時はわからなかったが少し倦怠感もあり、明らかに貧血の症状だ。

 

 うおっほほほ。

 マジか。

 ガチで貧血になるとこんなんなるのかよ。

 おもしれ―。

 やる気起きないし動き辛いけど楽しっ。

 

 貧血の反動で少し頭のネジまでどこかに行ってしまったのか、疲労と生存本能によるコンボなのか、テンションがおかしな方向へとねじ曲がり、愉快なことになっている。

 

「ウチは種族的にレベルが低いので戦力として数えないでくださいね。ウチにできるのは技術指南くらいのモノですから」

「へぇ、技術指南……」

「伊達にレベル一のまま見習いから一般に昇格してその後も名を馳せてはいませんから」

「レベル一でそれだけのことを……じゃあ是非とも技術指南をお願いします」

「良いですよ。……ところで、そのぉ」

「?」

 

 どこか言い辛そうだ。

 何か気まずいことでもあるのだろう。

 ただその内容を想像できない。

 血を吸い、ハッキリと「精液」と臆することなく口にしたのだ、

 しかも自ら望んでそれをやったとも。

 そんな人間が今さら何を臆するのか。

 想像できる人間は少ないだろう。

 

「技術指南の間で良いのでまた血を吸わせていただくことは……」

「いいっすよ。てかさっきも言ったように欲しくなった時に血があげれる状態ならいつでも言って貰って構いませんし。」

「そ、そうなんですか!」

「ええ」

 

 ん~、笑顔の女の人ってカワイイね。

 無表情は無表情で良さがあるし変顔する人はそれはそれで愛らしさはある。

 無表情はカッコよさ寄りだし、変顔は取り繕わない親近感が。

 けどカワイイって点でなら笑顔がトップな気がする。

 

「俺は“緑月亭”ってとこに泊まってるんで。ギルドにいなきゃそこに来て、そこにもいなかったら伝言でも残して貰えれば」

「わぁ、本当ですか!? 絶対ですからね!」

「そんなに喜ぶことかなぁ……?」

「マズ飯ばかり食べてたのにいきなり上物が来たらそりゃああなるんじゃないの?」

「そうか。てか機嫌悪い?」

「別に」

「嫉妬か? 愛い奴め」

 

 美人のカワイイ、って若干のギャップで推せる。

 ……うん、テンションバグってるな!




 トリゴで一番顔見知りの多い女サースティ
 見ない顔を発見次第声をかけるのが近年のデフォ
 朝は五人、昼は一二人に声をかけ、夜はヒイラギ一人
 手当たり次第にやろうとしてたものの珍しいのを見かけたから近づいたら思わぬ掘り出し物を見つけてしまったという

 種族的に仕方ないと周囲は理解を示しつつ個人の感覚が勝ってしまいあまり親しい人がいないのもまた事実
 遠征時に摂取した体液はまともだったらしい
 半分を少し過ぎたあたりでアデルと接触し、体液提供を受けた
 味はヒイラギよりも格段に良かったとのこと
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