ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一三一話 深刻な依頼の多様性不足

「なんつーか全体的にウェアウルフ討伐の依頼が多いな」

「この辺りにいるのは多くがウェアウルフですからね。必然的にそうなってしまうのでしょう。それに狩りをする際に畑に逃げ込んだ他の動物を追ってかなり被害を増やしますから」

「なるほど」

 

 そういえば昔なんかで読んだな。

 畑に侵入してきた動物を退治しようとした飼い犬が暴れた結果、結局畑が荒れたとかいう本末転倒な話。

 てか狼って肉食だけどやろうと思えば雑食もイケるんだっけ?

 まあ関係ないか。

 モンスターだし。

 異世界だし。

 

「他は……街に潜り込んだ盗賊団“見えざる蒼き砂漠”の捜索、盗賊団はもういいっての。次、隣町まで護衛……来たばっかです。次、畑を荒らす正体不明の存在の捜索、時間帯は夜か……保留。大量に出現したウェアウルフの殲滅、一体倒すのもワリとキツイっす。次、グラスサーペントの素材納品、牙に皮に毒液……毒液?!」

 

 おおう、マジすか。

 蛇毒ってモンスターのどうやって手に入れんだよ。

 全身ドロップ狙い?

 クソクソのクソじゃん。

 まあ運よく手に入りゃ……基本グラスサーペントに遇わんわ。

 

「あまり良さそうなのはないなぁ。普通に倒して売っぱらうだけか」

 

 モンスターの数が限られているせいで依頼に多様性があまりない。

 正確には色々あるにはあるのだが街中のモノが多いというか、見習いがやるようなモノだから一応とはいえ一般の俺が受けるべきではない。

 戦闘が関わるのは当然で、けれどモンスターの種類が少ないから変化が皆無。

 そもそも討伐ではなく追い払うことを前提とすれば一般人でも撃州などで物理的対処ができるし、魔道具で追い払えもするのだ。

 依頼も系統が偏る。

 依頼の数が多いのは農業で栄えた街だから規模が多いだけ。

 

「この畑での捜索は一人足りませんしね……」

「……一人?」

 

 必要人員最低四人。

 現状メンバー俺、クアーク。

 だから足りないのは二人。

 

「もしかしてサースティも人員に入ってる感じ?」

「そのつもりですけど、ダメですか?」

「俺としては迷惑かけるよな、って思ってたんですけど。まあサースティが良いって言うなら頼みます」

「では引き受けました」

「けどやっぱ一人足らんすね」

 

 サースティが入ってくれたのはありがたいが結局は一人足りない。

 やるつもりはなかったとはいえサースティに入って貰った以上はやりたいのだが。

 掲示板で募集でもするか?

 時間が掛かるし自分の脚で……暇そうなのはいるか?

 ……ノースミナスと違ってこっちにはちゃんと生活の昼と夜があるからこの時間帯にいる人は少ねぇな。

 いなくはないけど。

 

「ウチの方で知り合いに声を掛けましょうか?」

「ん~……や、自力で探してみます」

「わかりました。ではウチは準備をしておきますね」

「何かしら購入した場合は料金はちゃんと払いますんで、よろしくです」

「別に気にしなくてもいいんですけどね。でもヒイラギさんが気にしそうなのであとで料金を請求させていただきますね」

 

 さて、まずは一番近い所に声をかけるか。

 

「すんません、今――」

「ああ、聞こえてたよ。けどワリィな、こっちも用あるしそもそも他にパーティいっからよ」

「あ~、なら。邪魔して申し訳ない」

「断るついでに教えるが、この街はそこまで他の街から開拓兵が来ねぇし新規の開拓兵も多くねえ。だからパーティは大体固まってんだよ。んで現状フリーでここにいんのはあの女くらいだ」

「あの女? ……長い髪を根元と先端で留めた?」

「そう、あの魔石みてぇな髪した女だ。あいつなら誘えばイケるはずだぜ」

「おお、ありがとうございますっ」

「気にすんな」

 

 そこにいたのは光に透けてもなお真っ黒で、そして煌めく夜空のような小さな点を有した長髪の女の人。

 顔には細かな切り傷や火傷の痕、感電の痕が見える。

 酒を飲みながら本を呑んでいるらしい彼女の武器は大型武器らしく、その脇にはベアトリクスのような大剣やウルのような大槍、岩のごとき大鎚、俺の身長くらいありそうな刃長を有した大鎌。

 その細い体躯が対比でさらに細く見えるほど大きな武器群の中に彼女はいた。

 そして驚くべきことに彼女は大量の武器とは裏腹に一切の防具を纏っていない。

 

「あ、あの~、すみません。今ちょっと話せますか?」

「はぁ? ……わかった、前置きは良いから用件だけでよろしく」

 

 本から顔を上げて俺のことを見つめた彼女は静かに本を閉じ、平坦な声でそう返してきた。

 女性にしては低い声はスッと入ってくるように不思議な安心感を受ける。

 

「一人足りないから一緒に依頼を受けてください」

「その声……なるほど少し前に来た奴か。良いぞ、ちなみに人数は何人だ」

「貴女含めて四人です」

「それ素じゃないんだから普通に話して構わない。報酬三割寄越せ」

「三割……等分して二割五分だから、俺の分から払って四割で良いか?」

「貰えるモンは貰う。その依頼はいつだ?」

 

 気分転換のための依頼だし報酬もそこそこあった。

 金もいつ用ではないから俺は一割で充分。

 ただ二人のいるところで金を渡したら二人まで出すかもだから受け渡しは後でにしてもらおう。

 

「明日。街の外だから北門、九の鐘集合」

「あーしはキュリアスだ」

「俺はヒイラギ、よろしくな」

「ああ」

 

 午後八時。

 時期的にまだ完全に陽は暮れてはいないが出歩くには暗く、戦うには危険な時間帯だ。

 

「邪魔して悪かったな」

「構わない。暇つぶしに読んでただけだから」

「暇つぶしにそんな研究書……スゲェな」

「流石に普通のは読まない。このフーベルタって人のは役に立つしわかりやすくて楽だから読んでるんだよ」

「あ、見覚えがあると思ったらフーベルタ・ホルシュタインのか」

 

 マユゲの結界の中にあったのをなんとなく憶えている。

 見た時は本棚の端の方だったから順番に読もうと思ってまだ読んでいないヤツだ。

 ただ背表紙は憶えている。

 

「ヒイラギも読んだことあったか。今はモンスターの研究かなんかしてるっぽいし、ホント幅広いよな」

「モンスター? 最新のだとそういう系なんだな」

「ん? 依頼であったろ。グラスサーペントの素材納品。依頼主フーベルタ・ホルシュタイン、ってよ」

「マジか?!」

 

 言われて記憶を巻き戻す。

 ――確かに依頼書の中、普段読み飛ばしている場所に書いてあった。

 

 ヘルベルトに情報残しておくか。

 

「てことは今はこの街にいんのかね?」

「いるんじゃねえか? どうせすぐいなくなるだろうけどな」

 

 色んな所旅してるのか。

 まあ何かしらの理由があって急にいなくなったっぽいし見つからないようにすぐどっかにいなくなるのは当然ではある。

 じゃあヘルベルトにはあまり役に立つ情報ではなさそうだな。

 一応残してはおくけど。

 

「そこまで関係ない話なんだけどさ、そんなに武器の種類あって扱いきれるのか?」

「ああ、問題ないから安心しろ」

「別に怖いとかそういうのじゃないぞ? ただ純粋にそんなに使えるのスゲーな、って思っただけ」

「しばらく街離れて一人で遠く行ってたからその過程でな」

「一人ってマジか。スゲー……」

 

 街離れて、ってことはずっと外にいたってことだよな?

 んでその間ずっと一人?

 ……マジかよ。

 それってマトモに寝れるワケ?

 もしかして寝てる間も常時索敵使えるように訓練してて、敵が近づいたら起きるとかそういうヤツなのか。

 もしくはそういう特殊な固有能力とか。

 

「別に凄かねえよ。経験積みゃ簡単だ」

「おおう。その域まで辿り着ける自信しねー。けど辿り着きてー」

「やる気と運がありゃどんな奴でもできると思うぞ。サースティと一緒にやってんならアイツに教わりゃ良いだろうしな」

「……知り合い?」

「知らねえ。ただ昔動きを見た時にただひたすら技を磨いた動きだってわかったからな」

「俺にとっちゃキュリアスも動きスゴいだろうしそっちも真似するわ」

「別に良いけどよ……理屈もクソもねえぞ。ただやりやすいようにやってるだけだからな」

 

 やりやすい動き……。

 そういうのの方が見て学ぶには良いかもしれないな。

 見た目が良いかはともかくとして。

 

「見て判断するわ」

「まあ好きにしろ」




 登場人物を出し過ぎて今後の展開を組みづらい問題
 けれど現実的にそれぞれとの関係性を考えるとずっと同じ人は出し辛いという……
 ま、頑張るしかないですわぁ


 ちなみにキュリアスの言ってる「遠く」とは龍壁山脈の外のことです
 一人で自由にやりゃ別に遠征でも一般でも良いだろ、の思考で彼女は現在一般開拓兵
 周囲に聞かれても「遠く」としか言わないので誰も一人遠征とは知らない
 なんならトップクラスに龍壁山脈外のことを知っている人物ではありますが、記憶や思考、感覚の言語化が深刻なまでに苦手な人なので話せもしないし本も書けません
 できるとしたらヘルベルトの固有能力やそれに類する記憶読み取りの固有能力でキュリアスの記憶を読むくらいですかね
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