ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一三二話 遍在する気配

「今日はこんな遅ぉ時間にすまねス。被害に遭ったのは()らの畑でね、見知った狼ン足とは違ったから依頼出すことにしたんヨ」

「それはお気の毒に。ちなみに発見当時の状況やその場所を最後に見た時間を憶えていれば教えて貰えますか?」

()にそんな言葉遣いせんでええヨ。そやねぇ、見つけたんは見回りン時で二の鐘ちょっち後、最後に見たんはやっぱ見回りン時で八の鐘のちょっち後ス」

「なるほどな」

 

 午前六時と午後六時頃。

 夜前は問題なく、朝に問題が発覚した、と。

 相手は恐らく夜行性。

 

「ここらス。ここらが被害に遭ったんス」

「あいやぁ、酷えこって。かなり無秩序に暴れ回った挙句ここでなんか喰ったな」

「ここで食べたの? 動物のこともモンスターのことも詳しくはないんだけど普通食べたいところだけ食べて硬い肉とか骨は食べないんじゃない?」

「そうですね、ウチもそう思いますけど」

「たしかに。けどそれだとこの量で無事逃げおおせる大型動物ってことになるぞ」

 

 周囲にぶちまけられた大量の血、そして無数に刈り取られた体毛。

 乾きかけの血は乾いていなければバケツ一杯分にはなりそうなほど。

 それだけの量の血を失い、動きが鈍っているであろうに逃げられるのはよほどだ。

 

「襲われたのが動物ではなくモンスターって可能性はないのか?」

「捨てきれないが可能性は低い。偶然血液が素材(ドロップ)として残ったとしてこの量の血が全身部分としたら合致するモンスターはウェアウルフくらい。けど残った体毛からして色も種類も違うだろ?」

「よし。……その予想通りとして、考えられるのはヒイラギの考える通り通常動物。具体的にはこの辺によくいる草食獣だ」

 

 その姿は俺も見ている。

 じっくりは見ていないからどういう雰囲気の毛かは知らないが色はおおよそ同じだ。

 

「それでどうなんス? 何かわかったス?」

「え、あー、現状情報が少ないから強くは言えないけど街で食べたあのパンが食えなくなるのは困るからできる限りのことは頑張るぜ」

「お兄さん……()らの小麦は他の街用ス。周囲も同じス」

「ありゃ、カッコつかんな」

 

 う〜ん恥ずかしい。

 台詞と現実が噛み合わないとか顔から火ぃ出るわ。

 

「でもわかったス。あとは任せるんで。他に聞きたいことは?」

「俺は……何か違和感あったか、ってことかな。三人は?」

「アタシは……特にはないわね」

「ウチは……ウチも特には」

「あーしはヒイラギと少し被るけど最近前は見なかったモンスターや生物を見ることはあったか、ってことくらいか」

 

 何を手がかりにすればいいのか、わからずに質問が上手くできない。

 

「違和感、がどういうモンかはわからんスが、以前脱穀済みの小麦がちっと消えたことがあるス。時期は大体二週間くらい前」

「量は?」

「人一人がスッポリくらいの高さと範囲ス」

「なるほど」

 

 わかるようなわからんような。

 具体的だけど馴染みがなくてわからん。

 

「最近見るようになったのは……いっかネ? あぁ、最近スライムを見るよなったナ」

「スライム? 具体的には?」

「具体的? 色々おったヨ。チマいのからデキャァのまで、赤ぁのやら見えにくいのまでナ」

「そう……」

 

 生息域の変化?

 モンスターでもそういうの起こるのか?

 でも起きてる以上はそういうモンなんだろ。

 

「なら()は向こうにおるんでナ。用がありゃ呼んでくりゃれ」

「ういっす」

 

 やっぱ得られた情報は少ない、か。えええ

 それだけの情報でどうにかなるんだったら依頼になってないって話だ。

 

「じゃあまずはこれを配っておきますね」

「ありがとね」

「準備ってこれか」

「なんだこれ?」

「暗視の魔道具ですよ」

「暗視……へ~、そんな便利なモンあったんだな」

「知らずに今まで生き残ってきたのか。半端ねーな」

「おお、本当に見えるな」

 

 イヤリングを着けると視界が変化する。

 確かめたところ、このイヤリングには二種の暗視効果があるらしい。

 一つは装着者の魔力を僅かに放出し、探知と同じ原理で周囲の情報を取得。 

 その範囲内の探知情報を視覚情報として変換し、視界を補うことで結果的に暗闇でも見えるようになっている状態。

 もう一つは原理はよくわからないが見た感じだと光の増幅だ。

 暗い画像を画面の明るさを引き上げることで無理やり明るく見るような、そんな不自然な見え方である。

 それぞれで見え方が違っていて少し変な感じがする。

 

「安いのか?」

「モノによりますね。今回のこれは安かったですし」

「ふ~ん。街帰ったら見てみっか」

 

 広大な畑を眺めながら敵のことを考える。

 正体不明の相手。

 数も不明。

 日単位、もしかしたら週単位の時間が必要になるかもしれないと覚悟をしながら俺たちは捜索を始めた。

 

 

 

「しっ……」

 

 キュリアスの静止に従って俺たちは一斉に立ち止まり、身構え、腰を低く落とす。

 手指示(ジェスチャー)に従って一方向に耳を傾けた。

 

 ヒュゥウウウウゥゥゥゥウ。

 ザザザザザ、ザザザザ。

 ガサッ。

 スゥ……。

 ドクン。

 ガサッ。

 

 風の通る音や小麦の揺れる音、僅かな足音、呼吸音、血を伝う心臓の音、手が耳に触れる音。

 静謐な深夜。

 音の限られた世界の中、生み出される音は掻き消し、増幅しながらもそれぞれ主張し合う。

 

 ガササササッ。

 

「!」

 

 不自然な音に気づき三人の顔を見ると、同様に気づいた二人も同じように他三人の顔を窺い、先に気づいていたキュリアスは俺たちの様子を見て頷き。

 そしてゆっくり近づく、と指示を出す。

 異論は一切なく、キュリアスを先頭として音の発された方向へとゆっくり歩みを進めた。

 

 ガサ……ガササッッ!

 

 風が小麦を揺らすのに合わせて進むことで気配を消す中。

 音を発する正体が突如として強い反応を見せ、音を遠ざける。

 

「ッ、待て!」

「キュリ――」

 

 真っ先に飛び出したキュリアスを呼び止めようとし、そして呼ぶよりも早く探知を行いながら何かを追うキュリアスを追った。

 一足で遠くまで進むその姿に追いつく自信を失いながらそれでもはぐれまいと追いかけ――そこでキュリアスは減速する。

 

「ちッ」

「……逃げられたのか?」

「ああ。たったの一足でここまで一気に跳んで、そっからさらに跳んで完全に見失っちまった」

「大体さっきのとこから一〇〇メートル。そこを一足で移動して、さらにはキュリアスから逃げることが可能な程度には早い、と……身体性能から考えてモンスターで間違いないだろうけどこのへんにはいないしな」

「この辺は雑魚ばっかだからな」

「……」

 

 この辺は雑魚ばかり、つまりウェアウルフすら雑魚の一種。

 圧倒的実力差を息をするように突きつけてくるキュリアスに絶句しながら、周囲に意識を向ける。

 

「なんかこの辺妙な感じがするな」

「ああ、気配が誤魔化されてやがる」

「全体的に気配を感じるけどそのどこにもいない。まるで探知範囲が届かない位置に魔石を持った超巨大モンスターの中みたいだ」

 

 例えるなら海溝。

 そこに海溝があるのはわかっていてもその最深を感じ取ることはできない。

 

「昔こんな風に気配を消す相手と戦ったことがある。もしそれと同じようなヤツなら少し面倒だな」

「そん時はどうやって倒したんだ?」

「そこに今みたいな隠れる場所はそこまでなかったからな、目と耳と勘で探してぶっ殺した」

「お、おう……まあ勘って経験によるもんだろうから流石、って言えばいいのか?」

 

 少なくともこの状況で使えるモノではないことは理解した。

 打つ手がない。

 

「あーしの知ってるのと同じなら気配を感じる範囲のどこかにはいると思うんだがな」

「そうか」

「なら探しましょ」

「そうですね。それぞれ等間隔で並んで時計回りに周回しながら中心へ向かいましょう」

「わかった。ならあーしは向こうから」

「んじゃ俺はあっちから」

「ならアタシはヒイラギの反対側ね」

「ではウチはこちらの方からで」




 迷走する農家娘の口調
 私って生まれと育ちが違うせいで口調が出身地とも成長地ともどちらとも言えないというか
 もっといえば幼少期から色々な本(主に漫画)を読んでいたのでそこからの影響も強く、口調が私生活でも若干不安定です
 まあ、そういうモンだと思って受け入れてください

 ちなみになぜ魔道具が指輪ではなくイヤリングなのかといえば、目に影響を及ぼすからですね。近い方が良い

 
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