ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「手が変な感じする」
「切って生やしてを繰り返したからじゃないか?」
「それもそうか」
「……平然とえげつないこと言わないでくれる?」
「え?」
「……え?」
「ん?」
意に反して振動する指先。
フォークとナイフがまともに定まらない中、姉御との会話にクアークはよくわからないツッコミを入れてくる。
「……言っておくけどいくら治療ができるからって指を切って繋げる、を繰り返すのは普通じゃないからね?」
「おぉう……そうなのか」
知識がないままこの職に就いたから認識が自分の経験頼り。
平然と指を切ったり繋げたりを繰り返すとワリと簡単に繋げられることもあって本気で訓練をすればそういうのが普通なんじゃないかと考えてしまう。
けれどそこの部分は俺の元々の認識とそう大差はないらしく、認識が異常になっていたという事実に「やっちまった」と頭を抱えた。
「そもそも痛いでしょ」
「それは……そうなんだけど……」
い、言えねぇ。
魔力欠乏で指切れる以上に痛い経験したことあるなんて……。
言えるワケがねぇ……。
一応は好いてくれてる人間だし、そんな奴の前で無駄に心配させること話したくねぇ……。
「まあヒイラギがおかしいのは今に始まったことじゃないわよね」
「そうなんですか?」
「い、異世界人ですし?」
「そういう問題か?」
「……いいじゃんおかしくたってッ」
「別に悪いとは言ってねえよ」
「む……」
確かにおかしいという風になっただけでダメとかは言ってない。
変という事実は変わらないけどそこに善悪はない。
うん、早とちりでしたー、サーセン。
「結局どのあたりがこいつは変なんだ?」
「自己評価とか? あとは以前の感覚を捨てるのに躊躇がないとことか? そういうのかしらね」
「え~と、前者はともかく後者はどういうことで?」
「今の話題でも出たように、指がなくなるのは普通危ないことじゃない?」
「まあ、そうですね。治せるが失くしても良い、ということと直接繋がりはしませんからね」
「自分の傷を把握できない奴は早死にするだけだからな」
どれくらいまでの怪我なら容認しても問題ないか。
それによってどれくらいの得るモノがあるか。
その損得勘定が下手な生物はすぐに死ぬ運命だろう。
「けどヒイラギはその“生物なら死を受け入れていない限りは共通する怪我に対する認識”が一時的に白紙になってたじゃない。つまりそれって“異世界”って前提に立って、決めつけは良くないとかそういう風に考えた結果短絡的に認識を捨てたってことよね?」
「そう……ですね。そう考えるとちょっとおかしいですね」
「アホの所業だな」
短絡的言うなし、アホ言うなし。
頑張った結果なんですぅ。
まずはそこについて言及しようよ。
本題から逸れるけどさぁ?
「他にも色々あって――」
「なるほどな」
「面白いので付き合う分には良いですけどね」
「態度は誤魔化す癖に表情はワリとすぐ出るから揶揄うと面白いし」
「マジで?! 気づかんかった……」
「付き合い浅いがあーしは普通に気づいてたぞ」
「実はウチもです」
「おうふ……」
そんなレベルでわかりやすい?
付き合い浅くてもわかるレベルで?
……マジかぁ。
無表情を保つことにはちょっと自信あったのに……。
「感情によって変わるよな、こいつ」
「あ~、嬉しいことがあると我慢しつつちょっと漏れた、って感じの顔になるわね」
「逆に退屈になるとハッキリつまらなさそうにしますよね」
「そうだ、気になってたんだが、こいつって戦闘結構楽しむ系統の奴か?」
「頭おかしいくらい戦闘狂よ」
「やっぱりか。じゃなきゃ指切られたうえであんな揺らがずに笑えるワケねえよな」
「え、怖」
「おかしいですね……」
「……泣いちゃうぞ?」
若干否定の感情入ってません?
ノックしたら返事返って来るんじゃない?
「あーしは戦闘狂で良いと思うけどな。戦うのが何よりも好きだしよ」
「うん。それは察してた」
「あっそ」
スッキリしないって理由で戦う時点でそりゃ察しますよ。
俺も似たような感じだったしさ。
「……てか姉御ってこういう話するのな」
「? どういうことだ?」
「初手がなんつーか“無駄話は嫌いだ、用件だけにしろ”って感じだったからさ。こういう話は嫌いかなーって思ってたワケ」
「興味ない、関係ない奴はそうだぞ。今はパーティだから話してる、嫌いではない。無駄は得るモンない雑魚との話は嫌いだが」
「ン、なるほどな」
なんとなく理解できる。
要するに既に知ってる話されても退屈、って感じだろ?
そりゃ嫌だわな。
良くも悪くも自分に素直なんだな、姉御は。
「でも実際どうします?」
「何、って依頼ね。どうするもこうするも取れる手段が限られてるんだから今日と同じしかないんじゃないの? それ以外に何かあるの?」
「唯一の手掛かりは姿形もどんな能力があるかすらも不明なモンスター。しかもそれはあくまでも関わってる“かもしれない”、程度だしなぁ」
「一番近くにいて最後まで追ってたあーしですらほとんど姿は見てないし」
「――見てたのか?」
「ちょっとだけ、ゴブリンの忍耐力くらいちょっとだけだ」
そう言いながら姉御は呑んでいた酒から口を離し、中身をうねうねと動かして見たらしいモンスターの姿を形造る。
姿が曖昧だからか全体像が流動的。
ただ見た範囲の特徴は反映されているらしく見ていない部分と見た部分の違いが明確にされている。
「これは腕、か?」
「どちらかと言えば触手じゃない?」
「触手……」
「触手持ちのモンスターってトリゴ周辺とかトリゴの外にいましたっけ?」
「南西の方にある森の方にそういうモンスターがいたはずだ。けどかなり距離があるしそのモンスターは直射日光が極端に苦手。それ以外は知らん」
「新種?」
「だとすると珍しいですね。人間生息域内での新種モンスターの発見はいつ以来でしょうか」
「それは知らないけど新種だと色々面倒ね」
全てが探索し尽くされたワケではないが少なくとも龍壁山脈内、つまり人間生息域におけるモンスターはその大半が発見報告済みだ。
キャンプ地設営の上、森であれば数ヶ月間の徹底的な探索がなされる。
殲滅は不可能なため初めから目的は調査のみ。
つまり“熟練の開拓兵”が“月単位”で“調査”に集中する。
モンスターという点で言えば人間生息域における調査は一〇〇年以上前に住んでいるのだ。
その中で新たなモンスターが現れた、というのはそう多くはない。
「面倒って、なんかあるのか?」
「単に報告だので手間取られるのがメンドクセエッ。だからあーしは見つけても絶対に報告しないっ」
「お、おう……」
まあ、書類系は面像ですよねぇ。
ああいう退屈に頭使う系は俺も嫌い。
パズルとか戦いみたいに楽しくとか熱中して頭使う、とかだったら構わないんだけどな。
「こっちにある小さい人型は……キュリアス?」
「ああ、わかりにくいか?」
「いえ、平気です」
「体高は一五〇センチくらいか。んで触手らしきなんかで最大……かはわからんが倍まではイケる、と」
魔石中心に射程は三メートル。
そこからさらに伸びると考えると内側に潜り込む技術か遠距離攻撃が必要となるだろう。
「そもそもお前らはあの速度に付いて行けるのかよ」
「視界と探知次第ね」
「多分大丈夫です」
「……足を引っ張ってしまい申し訳ない」
マジ……申し訳ない。
俺から
ダメだ、メンタルが死にそう。
「まあ、お前は身体強化してギリだろうな」
「ギリも何も普通に無理だろ姉御ぉ……」
「そうか? 意外と目は悪くないしそこそこ勘も磨けてる。脚もまあ、ちっと物足りねえけど強化である程度マシになるしそれなくても動き次第じゃ追いつける」
「マジで?」
「直線に逃げられたら無理かもだけどな、パーティなら相手の動きを変えられる。例えヒイラギがどの実力でも最弱の雑魚でもな、そこにいて、動けるなら役に立つ時はあるモンだ。人手がある、ってのはそういうモンなんだよ」
「なるほど……」
確かにその通りだ。
どんなに取るに足らない存在であってもそこにいるというだけで盤面の変化には充分。
もちろんそれがプラスに働くかマイナスに転じてしまうかはわからない。
その正負を決めるのは俺次第だ。
考えなしに動いてしまえば本当に足手まといのお荷物になるし、正しい動きをできれば俺であっても利点にはなる。
「最大限……いや、今まで以上の実力を発揮できるように頑張る」
「頑張ってね」
「気負い過ぎて空回りすることには気をつけて」
「下手打ったら腕ぶった切り一〇回な」
「ヒエッ……」
触手というワードに反応するんじゃないっ
モンスターの質は龍壁山脈内と龍壁山脈外で全然違います
普通は立ち入ればそのうち死にます
単身でどうこうできるキュリアスとアデルが異常なだけ
実力だけで言えばキュリアスやアデルは年単位で過ごせます(既知のエリアに限る)
流石に未知のエリア深くに単身突っ込んだら実力関係なく死ぬ可能性高いですし
ちなみに、ヒイラギが現時点で単独遠征に向かえば数分で跡形もなく消えます