ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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 前回書くのを忘れていました、申し訳ない……

 【UA】が10000を突破いたしました! ありがとうございます!!
 最近は【お気に入り】の伸びが緩やかになりましたが先月28日には100を突破していましたし、本当にありがとうです!


第一三五話 空いた麦畑

「ヒイラギ……一応コイツ持ってけ」

「なんだこれ、指輪? 結婚?」

「ちげェよ何寝ぼけたこと言ってやがンだ。金玉でも蹴りゃ起きっかァ?」

「はいっ、起きてます! 心配ご無用です! はい!」

 

 な、なんて恐ろしいことを言うんだ。

 

 渡された指輪を受け取る。

 半透明の白い金属でパッと見は細身の平打だが側面には彫刻が刻まれていて、ローズカットの真っ赤な宝石が填め込まれている。

 これは恐らくカーバンクルの宝石で造った指輪だ。

 

「とりあえず試作だ。オレもカーバンクルの宝石なンて触れたことねェからなァ、効果は簡単にしておいた」

「どういう感じの効果?」

「炎の放出だな。つっても単純にそのまンま出すようなモンじゃァねェ。圧縮した炎を大量に放出して、触れた瞬間に開放、一気に燃え上がるってモンよ」

「この側面の彫刻はなんぞ?」

「それ自体にゃ大した意味はねェよ。刻印だのなンだのは中に刻んであっからなァ、側面のそれはオレがどンなン刻ンだかっつーのを忘れねェよォに暗号化して刻んだだけだ」

「じゃあこれ解読したら俺でも同じ感じの作れるってこと?」

「無理だな。それの解析には他に道具がいる。表面上だけ解読してもマトモな効果は出ねェよ」

「す、スゲー」

 

 魔術的に秘匿された暗号ってこと?

 ロマンじゃん。

 

「燃やす対象を選べるようにはしたがその操作は今のお前にはクソムズイだろォな。下手すると暴発だってしかねンからあンま無茶はすンじゃねェぞ? ……つっても言っても聞かねェよな、お前」

「いつも通り気をつけるけど確約はできん」

「だろォな……」

 

 呆れたようにため息を吐き、そしてハッと嘲笑するように笑い飛ばすマユゲ。

 そこには理解と諦観と僅かな信頼が含まれていて、申し訳なくなるとともに少し不謹慎ながらどうしても嬉しく思ってしまう。

 

「じゃあそろそろ――」

「あァ、そォだ。……面倒だからキュリアスの前で頑張り過ぎンな。本気で面倒だ」

「え……頑張れじゃなくて頑張るな? てかマユゲと姉御って知り合い?」

「いや、知らねェ。ただオレが面倒だ」

「え、ええ……頑張らないと俺死んじゃうんですけどぉ……」

「チッ。ンじゃァ今言ったのは忘れてくれ」

「お、おう……」

 

 マユゲさんマユゲさん、アナタ一方的に誰かを苦手とし過ぎじゃありません?

 食わず嫌いは良くないですよ。

 俺が言えたことじゃないけどさ。

 

「うっせェ……オレにも色々あンだよ」

「知り合いじゃないのに?」

「それ以上言うな、ぶン殴ンぞ」

「行ってきまーす」

 

 退散退散。

 今日もお仕事頑張りまーす。

 

 

 

「おいおい、一番の雑魚が一番最後とは随分じゃねえか」

「うい、申し訳ねえ」

「新しいの着けてるな。遅れたのはそれか?」

「ん、とりあえず貰ったけど試作品だから使う予定はなし。てか火らしいから使えん」

 

 一応燃やすのは決められるけど御しきれる自信ないし。

 

「二人ともちゃんと集中してくださいね」

「そりゃもちろん」

「わかってる」

 

 流石に俺もそこまで間抜けではない。

 仕事のオンオフくらいはする。

 

「ちなみに俺が来る前になんか聞いたりした?」

「そうね、新しい被害はないって話。ああ、あとこれは報告じゃなくてお願いなんだけど“依頼だから仕方ねえスけどできればあんまり畑は荒さんで欲しいんヨ。()らの飼っとる狼どもが怒るんでな”って」

「……どうでもいいけど喋りの真似巧いな。声は普通にクアークなのに喋りが完全にあの子だ……まあ畑守るために畑荒らすのは話が違うしな、最大限の配慮は当然だな」

「でもウチたちって注意されるほど荒らしましたかね?」

「そう言われたら確かに……俺はちゃんと気をつけて歩いたぞ? 追う時に若干倒しちゃったかもだけど」

「あーしは全く倒してねえぞ」

「アタシはちょっとだけ」

「ウチも少し」

「? ……被害状況どんな感じで言ってた?」

 

 自分たちの認識と向けられた認識の差。

 誰かしらの尺度が俺と違うか向こうが過剰と思えるほどに反応しているか。

 とはいえ苦労して育てているであろう小麦だ、ダメにされて怒る気持ちは察することができる。

 

「半径三メートルから四メートルの小麦が荒らされてたって」

「あ~、そりゃ怒るわ」

 

 結構荒れてるな。

 そりゃ怒るわ。

 

「てかそれ俺らじゃなくね?」

「うん、だから今その場所に向かってて……多分この辺りなんだけど」

「あっちじゃねえのか?」

「あ、ぽいな」

 

 荒らされた小麦畑。

 大まかな形は円。

 三メートル強の範囲の小麦が荒らされている。

 

「クアーク。ここの小麦、回収したとか言ってたか?」

「明言はしてなかったけど口ぶりからして放置してるはずよ」

「これは……」

「ああ、範囲と麦の量が合ってねえな」

「少し残骸が少ないですね」

 

 そこに広がる小麦の残骸群。

 被害に対して残っているのは七割ほど。

 明らかに少ない。

 風で飛ばされたというには全体の配置に偏りがなく。

 獣に食われたというには周囲の小麦が綺麗すぎる。

 

「しかも見てみろよ、この断面」

「ん? なんだこりゃ。切った、千切った、噛み切った、どれとも違うな」

「燃やされたというには綺麗ですし」

「溶けた、かしらね」

「確かに“溶けた”に近いな」

 

 しゃがみこんで小麦の断面を確認する姉御。

 確かにその断面は俺の知らないような雰囲気で、独特だ。

 

「コイツはスライムか?」

「最近よく見るって言ってたからな、そうじゃないのか?」

「ここは昨日の場所からそう離れてませんしスライムだとしたら朝から昼にかけて、ですかね? 夜にウチたちはモンスターに出会いませんでしたし」

「問題はそこなのよ。話によれば発見は朝の見回りの時」

「ん?」

 

 俺たちが昨日――というか時間的には今日――帰ったのは午前四時頃。

 鐘の音を耳にして終了の報告をしに行き、帰りは一応とこの辺りを通った。

 つまり午前五時くらいまでは何事もなかったのである。

 

「これって時間的に一の鐘のあと――二の鐘との間に起きたってことだよな」

「そうだろうな。大体一時間ってところか」

「あれだけ遭遇しなかったのにたった一時間の間に……モンスターがウチたちを警戒したのでしょうか?」

「そうかもしれないわね。けどだとしたら警戒して逃げる程度の知能はあるワケだし厄介ね」

「渦中のヤツかはわからんがソイツはソイツで警戒した方がよさそうだな」

「逃げる程度の雑魚なら問題ねえだろ。あーしはツエーのと戦いてえからな」

「脳筋、乙ッ」

「るせえよっ」

「フヒヒ、サーセン」

 

 ……また、昨日と同じ感覚?

 魔力――気配の残滓。

 やっぱりこの辺に何かいるのか?

 昨日よりも気配が薄くてわかり辛いな。

 感知がギリギリ。

 場所は少しズレて感覚はかなり薄い。

 昨日のがそのまんま残ってるだけ……なのか?

 

「あ? どうした?」

「いや、やっぱり今日も気配が残ってるなぁ、って」

「……そう? …………あ~、わっかり辛いけどちょっとだけ残ってるわね」

「ウチはほとんどわかりませんね。言われて限界まで探知を強めて“かもしれない”の程度です」

「ん、良く気づいたな。あーしも若干感度上げねえと気づかねえくらいには薄いわ」

 

 反応しないから気のせいか考えすぎかと思ってたら気づいてなかったのか。

 

「あれかね、異世界人で魔力を元々持ってなかったから魔力という存在そのものに対する耐性がなくて過剰なくらい反応しちゃうっていう」

「てめぇの強さに理由なんてつけなくても良いんだ、自己評価が低いのは理解してるがよ。たとえ理由が“異世界人だから”だったとしてもてめぇの探知感度があーしらの中で一番なのは事実だ。良かったじゃねえか、てめぇの強さが一個見つかったじゃんよ」

「え、あ……そうか。これも俺の強さか」

 

 ちょっと自信が出た。

 俺のこれが役に立つかもしれない。

 責任があってちょっと不安だけど……いいな、これ。

 

「腕切られずに済んでよかったな」

「え? ……あああああああああ!! 忘れてたああああ!」

 

 そういえばそんなこと言ってたわ。

 徹夜の依頼明けプラス寝た後だから記憶が封じられてた……。

 助かったぜ。




 トリゴには狼が多いです
 元ネタ? ドイツの伝承の「ライ麦狼」です、詳しいことは作者も知りません。民俗学とかやってたワケじゃない完全な独学ですし

 ちなみに農家で飼われているのは普通の四本脚の狼
 六本脚もいるにはいますが少なくともこの時代では人前にはほとんど姿を現しませんし誰かに懐くことはまあ、ほとんどないでしょう(可能性はゼロではない)
 接触には彼彼女ら基準で面白くないとダメでしょうね

 四人に適性は……ないことはないでしょうね、低いでしょうけど
 単純な素質だけでは四人は一生遇いません、何かしらの巡りあわせがないと
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