ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

136 / 183
第一三六話 姿の見えないモンスター

「で、結局どうなワケよ」

「あ~、ちょっと待て、一度ちゃんと探知する――どういうことだ?」

「何かあったか?」

「ただ気配が残ってるだけなら場所は基本動かない。だが昨日と比べてかなり動いてる」

「気配は別物?」

「かもな」

 

 探知のために放たれた魔力が全身を、内側に至るまで叩くように浸透する。

 それに害はなかったが、瞬間的な魔力量に対しての俺への影響のなさ。

 つまりは魔力操作の練度に更なる畏怖と尊敬の念が心中をハムスターの如く駆け回った。

 

「ただ気になることが一つ。大体の面積が同じなこと、それから若干だが反応が違う場所があった」

「モンスターか?」

「にしては反応が薄い。ゴブリン未満だ」

「偶然そこだけ残ってたのか? けど他に手掛かりもないし調べに行くか」

「アタシたちは何かすることある?」

「あ~、じゃあクアークだったか? クアークは向こう側。サースティは向こう。適当に離れすぎない位置で警戒しつつ待機頼むわ」

「俺は?」

「ヒイラギは……とりあえずここで警戒しつつ待機」

「お、おう」

 

 言い淀む程度には処遇に困るんですね?!

 ……強くなりてぇ。

 一つでいいから明確に強くなって、足手まといじゃないって自信をつけたい。

 

 力になれないという劣等感はぐるりぐるりと渦を巻き、劣等感で綯われた縄は俺の心を雁字搦めにする。

 貰ったばかりの自信ごと心は重苦しくなっていた。

 

「――ラギ」

「……ぅえうっ! なんぞ!?」

「お前……集中しろよ。まあいい、ちょっと来い」

「なぁんッ――!?」

 

 気がつけば目の前に姉御がいて。

 気がつけば姉御の脇に抱えられていた。

 急加速で首が仰け反り、僅かに痛めながら一足で辿り着いた着地地点で意識をなんとか戻す。

 

「俺は一体?」

「ちょっと探知しろ、範囲内」

「広くて無理っす。流石にこれは練度不足で気合じゃ無理」

「……ならちょっと手――やっぱ一度しゃがめ」

「お、おう……こんなか――ひぅッ!?」

 

 跪くようにしゃがみ、様子を窺おうと軽く振り向いた瞬間。

 目の前を何かが横切り、直後に素肌に触れられる感触が伝わってくる。

 

「む、胸ぇ……なんでぇ?」

「エロい顔しながらエロい声出すな、犯すぞ」

「立場逆じゃない? ……てかホント、なんで胸に手ぇ……っ」

 

 暖かいとも冷たいとも言えない体温と、ゴツゴツとした手の感触。

 不意を打たれた、触られ慣れていない、などの理由によって途轍もなく胸がくすぐったい。

 

「他人の魔力に干渉するにはこれが一番楽なんだよ」

「せ、背中とかでも良いんじゃ――」

「体勢的に面倒だろ。それともあーしに抱きしめられたいか?」

「それは……恥ずかしいんだけど」

「……嫌かどうかで聞いたつもりだったんだがな」

「と、とにかく何やるか知らんがやるならさっさとしてくれ」

「……おう」

 

 直後、姉御の手が溶け込むような、武器強化にもよく似た感覚が胸を襲った。

 流れ込む自分のモノではない魔力。

 内側から魔力が支配され、意思とは関係なく魔力が体内を駆け巡り、そして強制的に探知が発動する。

 これまで経験のない程の大量の情報。

 情報量の乱打に思考が掻き乱される中、姉御の補助が情報を整理してくれる。

 

「ヒイラギ感度良いな。余計な情報まで来るから鍛えるのは面倒そうだが」

「これが普通じゃないってのを俺は初めて知ったよ……」

 

 というか今みたいにやったら他人の探知情報一緒に受けれるのか。

 てことは探知した魔力を脳で解析して情報になる、って流れじゃなくて情報としては初めから存在してるってことなんだな。

 魔力をどう解析するか、に個人差があるんじゃなくて。

 魔力をどう送ってどう受けるか、に個人差があるみたいな感じ。

 ま、だからどうしたって話か。

 そこの違い利用できる場面ないだろうし、この程度のことならマユゲは普通に知っていそうだし。

 

「それでなんかわかったのか? 俺は普段より処理する情報量が多すぎて一瞬で情報消えちまったし」

「何かいるってことがわかった」

「なるほど、どこだ」

「そう逸るな。厄介なことに相手も動いてる、場所が掴みきれん」

「この四人……三点の包囲の中にはいるのか?」

「ああ。流石に動きすぎると隠れきれなくなる可能性があるのか内部にはいる」

 

 なるほど。

 近くにはいる、と。

 

 ふと地中にいるという可能性が過ぎる。

 が、すぐ違うと理解した。

 そもそも高度の座標が地中なら初めから言っている。

 言わないということは地上のどこかにいるということだ。

 

 動くと隠れきれなくなる?

 あくまで姉御の可能性でしかないけどその方向性で考えてみるか。

 例えば並行処理を極端に苦手としている。

 この場合は苦手、じゃなくてキャパオーバーか。

 視覚聴覚嗅覚魔覚をそれぞれ隠蔽するだけの実力。

 やったことないからわからんが俺なら多分視覚でギリだな。その時のメンタル次第でギリ行けるか行けないかが変わる。

 

 魔術の並行処理という観点でいえば相手は確実に俺よりも何倍も強い。

 だがそれが強さと直結するワケではないのも事実だからあまり気負ってはいけない。

 油断はダメだが気負い過ぎるとそのせいで普段通りの実力が発揮できなくなることもある。

 

 移動すら困難なくらいの並行処理。

 確かに単純に二つのことをやるってのは疲れるけどそもそもそのあたりと魔術の演算領域は別のはず……関係はあまりなさそう――個体的にもしくは種族的に脳の他のスペースまで領域を拡張してるとかなら別か。

 あと他に考えられるとしたら純粋に見た目が擬態向きとかか?

 見つけ辛いくらいに、それこそノミとかダニみたいなサイズ――そういえば細菌型のモンスターとかはいないのか? いたら特性によっては最強――っていかんいかん、思考が逸れてる。

 

 これまで巨大モンスターの話を聞いたことはあるが微小モンスターの話は聞いたことがない。

 知っている限りのでも肉眼で見ることが可能な範囲だ。

 

 小さいってのは可能性が低いとして、他に考えると植物系か?

 もしくは透明か褐色。

 それなら確かに動かなかったら見つかりにくいが動けば見つける難易度はマシになる。

 透明の場合は屈折率の違いとかか?

 あと他は……パッと思いつかん。

 ……てかそもそも昨日姉御が見てる時点で小さいってのはないか。

 前提条件忘れてた。

 

「どっちの方に行ったんだ?」

「大体中央の方ただヒイラギの探知感度でもわかり辛いな」

「その俺のでもってのは実感ないけど……中央か。俺向こう側に向かった方が良いか?」

「それだと逃げられる可能性が高い。はっきり言ってあーしらの探知じゃ見つけられねえか見つけられても反応が遅れすぎる。あの速度相手だと一瞬の遅れは負けだ」

「じゃあどうすれば良い?」

「その探知使わせろ」

「俺は道具かよ……まあそれ以外にないから仕方ねぇか」

 

 少し進んでは胸を触られながら探知をする。

 三度目で慣れたというより羞恥心が一時的に死に、意識が完全に捜索に向いた。

 だが五回目を終え六回目。

 進むにつれて探知範囲が狭まるからと胸を触られる必要はなくなり、ある程度やりにくくても問題のない手の接触へと移行する。

 

「近いはずなんだが……」

「流石にこの探知範囲になると俺でもなんとなくはわかるな。情報量少なくて頭が軽い」

 

 けれど存在感が稀薄すぎる。

 この距離まで近づいてなお俺の感覚では二〇メートルから三〇メートルということしかわからない。

 

「ここで止まれ」

「流石に逃げられるか」

「ちょっと探知を常時展開する。キツイだろうが耐えろ」

「了解」

 

 肩の高さまで上げた俺の左手の甲と姉御の右手の掌が触れ、魔力が通う。

 そして一気に情報の流れが脳にまとわりついた。

 絶え間ない情報の川。

 姉御のお陰で整理され、濁流ではなく清流。

 だが激流。

 情報圧で脳が情報を拒絶。

 けれども魔力から得られる情報は気絶ができず。

 代わりに視覚が、聴覚が、嗅覚が、触覚が、得られていたはずの情報が脳を素通りする。

 

「大体あのあたりだ――と、流石に無理か」

「……」

「すぐ終わらせてやる」

 

 俺の目は虚空を眺め、そこには暗黒が広がっていた。

 そして脳の負荷がイメージとして現れたかのように暗黒に脳細胞がパチパチと弾ける白い光が奔り、目の前には宇宙が広がる。

 直後、視界が元のモノへと戻り、聴覚嗅覚触覚が徐々に徐々にと回復していく。

 

「反応があった場所に何発か打ち込んだ。殺しきれずとも効果はあるはずだ」

「あ、ああ――」

 

 思考も飛びかけていたから急激な変化に対応しきれず呆然と。

 そうしていた瞬間、不意に足元が揺らぐ。

 いや、足元が揺らいだのではない、脚が揺らいだのだ。

 安定しない足場。

 元々濡れて僅かに滑りやすくはあった。

 だが動きに支障はないと無視していた。

 それが今、思い出したかのようにズルリとスライムのようにぬめり、俺の平衡を乱す。

 

 何が起きた。

 なんだこれは。

 姉御は何も起きていない。

 俺だけの異常?

 体幹が弱い?

 感覚が一時的にバグを起こしたせいでこうなった?

 足元。

 湿って……いや、動いた?

 地面が――。

 

「一瞬で良い! 探知範囲をくれ! 初めに感じたあの気配を全て感知させろ!!」

 

 触れていた手を強引に掴んで引き寄せ、胸に触れさせる。

 そしてなんの説明もなしに一方的な要求。

 だが必要な相手以外には必要最低限で会話を済ませる姉御だからこそすぐにその要求を聞き入れることができたのか。

 奔る魔力と波動する魔力。

 超範囲の探知。

 周囲の大まかな地形情報ごと気配が脳に叩き込まれる。

 

「【凍壊(フリーズ)ッッ!!】」

 

 探知のアシストを受けた超範囲の【凍壊(フリーズ)】。

 広がる白。

 最低限の対象選択。

 凍らせないのは仲間だけ。

 地面も小麦も関係なく、魔力の暴力をもってして全てを凍らせる。

 

「逃げッ、るなッ……」

 

 急激な魔力損失。

 体調変化で口どころか全身が思うように動かない。

 

「ヒイラギッ」

「あっちに一部逃げた。一番離れてたところのヤツだ、すまねえ」

「二人とも聞こえてたなッ! そっちは任せたッ!」

「わかったわ!」

「わかりました!」

 

 魔力量の変化によって崩れた体調。

 姉御が魔力回復薬(マナポーション)を取り出し、半開きの口に強引に突っ込んでくれる。

 

「助かった……」

「構わねえよ。それより大丈夫か?」

「ただの魔力管理不足だ。気にすんな」

「あーしが気づくよりも反応してすぐに攻撃。良い判断だったぜ」

「戦いたかっただろうに迷惑かけてすまねぇな」

「気にすんな。どうせ雑魚だ。それにヒイラギが相手してくれればしばらく退屈はしねえだろうからな」

「そうか。ならちょっと安心した」

 

 魔力消費で痛む胸。

 そのせいで呼吸がままならない。

 死にそうなほど苦しいが姉御が背中を一定のペースでさすってくれるお陰で肺がそのペースに合わせて動き、呼吸がどんどん楽になっていた。




 ちなみに先に言っておくとノミとかダニサイズのモンスターは基本存在しません
 モンスターの発生原理的にそのサイズのモンスターは不可能に近いです
 かなり特殊な環境を造り、その内部で人為的に生み出さない限りは恐らく不可能です
 天文学的確率(小並感)


 胸に触れたのはそこが一番楽だから
 手に触れた状態だとロスとか多いですからね
 胸に触れるのが手っ取り早い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。