ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一三七話 極彩色のスライム

「倒せたわよ」

「身体のほとんどを凍らされて弱体化したのか動きはそこまで早くはなかったです」

 

 戻ってきた二人の手にはビスマス結晶のような極彩色の粘液状のモノ。

 どぅるんとしたソレは和菓子の水まんじゅう的な見た目で。

 僅かに色褪せたゲル状の表皮と内部で緩やかかつ独りでに流動する粘液。

 よく見ると内部には細かく砕けた魔石がある。

 

「二体いたのか?」

「ん? 違う違う、分裂したのよ。こう、ぶにゅ~って」

「表現の仕方が可愛いな、おい。……逃がしてワリィ」

「別に気にしなくても大丈夫ですよ? 足元がいきなり凍ったのは驚きましたけどヒイラギさんが素早く凍らせてくれなかったら襲い掛かって来ていたスライムに襲われていたでしょうし」

「襲われてたのか」

「なんかいきなり足元の感触が変わったかと思えば近くの地面が持ち上がるみたいに伸びて――かと思えば一瞬で凍って。ビックリしたわよ」

 

 やっぱ流石に二人とも存在自体には気づいてたか。

 てことは姉御もだろうし。

 余計だったか?

 ……いや、いい判断って言ってたしアレで良かったな。

 倒せたワケだし。

 

「肝心なところで役に立てなくて申し訳ねぇッ」

「? ヒイラギさんがほとんど凍らせてくれたおかげで倒せたんですよ? 謝るの好きですねぇ。まあどうしてもと言うなら後で血を吸わせて頂ければそれで大丈夫ですよ」

「え、それは普――」

 

 普段からやっている、と言おうとしてその真意を理解した。

 やり慣れていることをわざわざ要求する、ということは言い換えれば「いちいち気にせず普段通りにしてろバカ」である。

 

「ならアタシは食事でも奢って貰おうかしら。添い寝でも構わないわよ」

「あーしはそのうち適当な休みの日に食事とか以外丸一日戦ってもらうぞ」

「まあ、それくらいなら」

「え゙っ……」

「なんでクアークが驚いてんだよ。ノースミナスじゃしゃーなしとはいえ普通にそうだっただろうが。てか今後野宿とかなりゃ一緒に寝ることだってあんだろぉがよ」

 

 それとも俺が動揺するのを期待してたのか?

 はっ、残念だったな、添い寝程度なんとも思っとらん。

 ただ近くで寝るだけだし。

 

「二人は恋人とか夫婦なのか?」

「ん~……簡単にいえば俺は好きな人がいて、クアークに対してそういう認識はしてなかったんだけど謎に好かれちゃって。相談したらそのうちそういう関係になるのは良いけど今は保留、って」

「?」

「要するに第二夫人」

「いや、そこじゃなくてだな。ヒイラギとそのヒイラギの好きな奴はそういう関係なのか?」

「気持ちは伝えたけど今は受け入れられないから待ってろ、って」

「?? それは受け入れたも同然じゃないのか?」

「多分そうだと思う」

 

 素直になれないツンデレ的なアレだと俺は思ってま~す。

 そう考えると待つのも辛くないネ。

 早く受け入れてもらえるに越したことはないけど。

 

「ダメだ、理解できん」

「正直アタシもよくわかってないわね。恩があるから許可があるまで手は出さないけど……。独占欲求はないみたいだし、というか何故かヒイラギの女性関係が広がることを確信してたし」

「え、初耳……」

「お前そんなに節操ないのか」

「いやいやいや!? そもそも二人目(クアーク)すら予定にありませんでしたよ!? 俺が一番驚いてるって! 大体俺そんなに色んな人惹きつけられるほど魅力ないって! ……ある?」

 

 え~、そんなに俺って魅力的ぃ?

 わかる人にはわかっちゃう感じ?

 いやぁ、照れますなぁ。

 

「そこまでねえな」

「血は美味しいです」

「おっふ……」

 

 完全完璧大否定じゃねえか。

 

「そこまで強くねえしな」

「魅力……なんでしょうか?」

「珍妙で愉快」

「……血が美味しい?」

「本気で殺気向けても思いっきりぶん殴っても立ち上がるところ」

「もう良いです……」

 

 泣ける……。

 俺が何をしたって言うんだ……何もしてこなかったのが問題なんですねわかります。

 

 探してくれるも見つからない俺の長所。

 ただ長所がないというよりも。

 探した挙句に見つからないという抗いようのなさがさらに追い打ちをかけてくる。

 探せば色々長所があると。

 そう思っていた時代が俺にもあった。

 けれどそう甘くはないらしい。

 

「悪いところは色々あるけどな。謝ってばっかでウゼエとか、向上意欲はあるくせに全然人から学ばねえとかな」

「あ~、あとは強がるくせに何かあるとすぐおどおどする、とかですね。まあそれは見てて可愛らしくもあるんですけど」

「そうかぁ? あーしとしては堂々としてろって思うけどな。強くなれる素質はありそうだからもっとシャキッとすりゃあ良いのに、ってよ」

「それもわかります。見てる分には面白いんですけど“男”としての評価基準で言えば下の下と言いますか、そういう態度を取られると頼れないんですよね。弱いなりに護ろうというのは伝わってきますけど実力が伴わな過ぎてどうにも……」

「もうやめてください。泣いてしまいます」

 

 とっくに俺のメンタルはゼロよ! もう勝負は着いたの!

 ……なんでこんなにボロボロにされねばならんのだ。

 うん、俺がそういう話の流れにしたからだな!

 全ては俺が悪い。

 

「てか大した実力もないのに自信満々にする方がなんというか……」

「そういうところだぞ」

「実力の範疇で、ですよ?」

「……俺の、実力? 三人と比べて強いところ……」

「ああ、評価基準がそもそもそこなのか」

「聞きますけど今まで強く関わってきた人の名前を言ってください」

「アデル、ベアトリクス、デューベ、クアーク、ヘルベルト、ザフィーア、ヴェガ、ウル、ブルックリン、ガーランド、ジューン、サースティ、キュリアス」

「……んん?」

「一部知らない人がいますけどほとんどがかなりの実力者ですね」

「ワザと強い人だけ言ってない?」

「別に……同郷の奴らと一般人とかの戦闘力ない人たち、あとは戦ってる姿を知らない人を除外しただけだけど?」

 

 なんでそんなにみんなで口噤むのさ。

 そんなに変?

 うわっ…俺の友好関係、狭すぎ…?

 

「これってあれか? 前言ってた以前の感覚を捨てるのが早いってヤツ」

「多分そうね」

「悪い方向に働いてますね」

「ホント、散々な言われよう……。君らそんなに俺のこと嫌い?」

「嫌いではねえぞ。人間としてなら向上心があるから好きの部類だ。てか嫌いなら会話すらしねえ」

「ヒイラギさんに対する好き嫌いと、ヒイラギさんの抱える問題点は別の話ですから」

「お、おう」

 

 よくわからんが……。

 

「言っとくけど俺だって無意味に上見てるワケじゃねえからな……?」

「へえ、理由あるんだ」

「下見て笑って慢心するくらいなら上見て卑屈になりながらでも進む方が良いじゃんよ」

「つまり自信持ったら堕落するってか?」

「俺の性格的にそんな気がする。それに人間自分が思ってるほど強くないってのが基本だし」

「ふうん。まあ言い分はわかった。だが……だからって逐一ウゼエ面晒すんじゃねえッ!」

「あだだだだだだだだだッ!?」

「自信ねえ奴が一人いるだけでどんだけ士気下がると思ってんだッ」

「う、うっす! サーセンしたぁッ!!」

 

 あ、頭がぁッ!

 伸びる(ぬらりひょん)ッ!

 

「ちったあ堂々としやがれってんだ」

「あい、頑張ります……」

「一度切り替わったら良い感じなんだけどねぇ」

「そうなんですか?」

「ええ。以前いた街で色々あった時にその問題解決に挑んでる姿はなかなかそそるモノがあったわよ」

「つまり何かが起こらねえとダメってことかよ。アホか」

 

 容赦なく向けられる罵倒。

 悪意はないから深刻な影響はないし、事実だから全て正面から受け入れられる。

 けれどやはり自分の不甲斐なさというのは突きつけられるとなかなか辛い。

 

「ヒイラギは上目指してるから言っておいてやる。“何かあったら全力になる”じゃそのうち死ぬぞ、遠征入りすらできねえで“そこそこの開拓兵”で終わりだ。断言してやる」

「ぁ……」

「先を知ってるあーしが言ってやる。進んで行けば最低でも“起こった瞬間”に即応できるくれえじゃねえと未知に付け込まれるだけ。この先折れることなく進み続ける意志があるなら早いうちに常に戦いの中って心構えをしておけ」

「ッッ! わかりました! ありがとうございます!!」

 

 常在戦場という心構え。

 ただそれは修羅と化せという意味ではないだろう。

 常に張り詰めた余裕のない状態でいろ、というワケではなく。

 自然体に警戒を加え。

 自然体を鍛えろということ。

 

「若いって良いですねぇ」

「若いというか青いというか。先が楽しみではあるわよね」

「ヒイラギさんは応援し甲斐がありますよね。見ていて楽しいですし近くにいてワクワクドキドキしますし」

「問題事を惹きつける変な力があるのよ、多分」

「ですね」




 堂々としていない男は基本この世界じゃモテない!
 理由としては、堂々としていない→覇気が足りない→戦う時にワンテンポ遅れやすい→後手に回る→死、だからです

 一人の人間としては堂々としているというのはそこまでの評価基準ではないですけど“開拓兵として”や“家族を護る男として”という観点で評価した場合その欠点はあまりにも大き過ぎますね
 情けない男を選んだせいで自分まで死んでしまう、というのは絶対に避けたい事項です
 なのでそれが足りないヒイラギは異性として意識されることは少ないです

 クアークは近くでヒイラギを見て、全くないのではなくいざという時には発揮するのを知っている上にそもそもの評価基準として“自身の固有能力に負けない強い愛を持てる”というモノがあったのでヒイラギを好きになって、好きで居続けているって感じ

 マユゲがヒイラギの求婚を保留にしたのはそういう理由も、あったんじゃないですかね~
 断らなかったのはマユゲなりの愛とか信用信頼、だったんじゃないでしょうか
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