ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一三八話 浮かばぬ対策、迷走中

「ところで結局問題のモンスターはそのスライム? で良かったのか?」

「それを確かめるにはしばらく時間を空けて、被害状況で判断するしかないでしょうね」

「あ、でも姉御が見たヤツもいるのか」

「そっちもスライムだと思うぞ」

「なるほど」

 

 じゃあしばらく様子見か。

 俺たちがいることで警戒して一時的に姿を隠す、ってのがありそうだから様子見期間はここには来ない様子した方が良いのかな?

 

「てかそいつら全部残ったのな」

「ん~、まあスライム系は比較的全身残しが多いって言うし」

「実は生きてる、とかないよな?」

「魔石が合体する瞬間を狙ったので大丈夫ですよ」

「魔石が合体? ……ああ、だから探知の反応が弱かったのか」

 

 擬態していた、とかではなく普通に反応が弱かっただけ、ど。

 広範囲に身体を広げて全体に魔石を分散させる。

 一部がやられても死ぬことはないからそっちに気を取られている間に逃げることができる。

 なるほど、普通にやったら面倒すぎるな。

 まあ向こうからしてみれば俺とは相性最悪だったけど。

 

「そんなサイズまで魔石を分割するスライムなんて聞いたことないぞ」

「そういう進化したんじゃねぇの? 特殊な存在とはいえ生物だろうしよ」

「普通スライムって小さくてもゴブリンよりちょっと小さいくらいなんだがな」

「それは……いきなり小さくなり過ぎだな。でも現実としてそうやって存在してたワケだし」

「まあ、な」

 

 今まではいなかった。

 けど突然変異で現れた。

 そういう可能性だって充分ある。

 俺はこの世界についてまだ詳しくはないからハッキリとは言えないが。

 

「にしてもスライムか……最近スライム見るようになったって言ってたしそれだろうけど。生息域の変遷だとしたらこれからずっとスライムが出るってことだろ?」

「そう、ですね。ええ、そうだと思います。以前から見ていたということは今に至るまでの期間があったということ。出現域の変化と言うのは稀にではありますが存在しています。そしてそれは年単位で」

「つーことは早いところ対抗策を講じねえとヤベえな……」

「ヤバいの? 異変とは言ってもスライムでしょ?」

「ん~……俺の考えすぎならそれで良いんだけどよ。このままスライムがこの辺りに普通に出現するようになったら食い荒らされてた辺り農園がダメになる可能性がある。種類がいるらしいけど見えづらいのが繁殖した挙句……となるとヤバいだろ?」

「見えないに等しくて、スライムの特性で増殖、畑を荒らす上に雑食で場合によっては人も襲う……たしかにあり得る可能性で危険な可能性ですね」

 

 吸収した栄養によって増殖するスライム。

 基本は草や弱いモンスターの死骸を吸収することによって生存、繁殖を行うためその増加速度は緩やかだ。

 もし何かしらの異常によって急激な増殖が起きてもその面積当たりの栄養が限られているためにそのほとんどが死滅する。

 だが畑という大量の栄養があり、近くには街がある。

 スライムにとっては無限とも思える大量の栄養。

 それを利用し増殖、そして死滅する前にトリゴの街を襲う。

 襲われなかったとしても畑は壊滅するからトリゴの経済は一気に崩壊、食糧も不足して死者は出ずとも街としては崩壊。

 その後ルートヴィヒ国内への影響は食糧の減少、外周部の街を失ったことによるモンスター対処の不足。

 対応に追われて開拓兵は駆り出され、全体的な生産性の低下。

 

「まあそういうワケで早々にスライムを畑に入れないようにする必要がある、と。……そういう感じの魔道具ってないのか? スライムを追い払う感じの」

「ねえな。モンスターを一時的に寄せ付けなくする魔道具自体はあるにはあるが何時間も持つモンじゃねえし費用がクソ掛かる。金が足りねえうえにしばらくそれでイケても結局は引き延ばしだ」

「やっぱりか……一度マユゲ(アイツ)に相談してから考えるかぁ」

 

 選択肢は大きく分けて二つ。

 一つ、追い払う。

 これは畑への進入を防ぐ、や。

 トリゴ地方からの排除。

 二つ、討伐。

 これは一帯のスライム全てを発見、殲滅する必要があるから途轍もない労が必要だ。

 そして原理上ほぼ不可能な三つ。

 そもそも出現させない。

 これはそもそもモンスターの発生原因原理が不明である以上アテにできない選択肢だ。

 例えるなら病気の原因がわからないままに予防するようなモノ。

 病原体なら空気なのか飛沫なのか接触なのかダニなのか蚊なのか、生活習慣なら食事なのか運動なのか、他にも遺伝的なモノ、ストレスによるモノ。

 この世界なら魔力的なモノ。

 何が有効なのかわからないまま、それを突き止めようとしないまま治そうとすれば瀉血のような根拠のない治療法やロボトミー手術のような誤った治療法を実行してしまうかもしれない。

 

 厄介だなぁ、オイ。

 てか俺の行く先々ではなんでこんなに問題が起こるんだよ。

 どこぞの死神の呪いでも罹ってんのか?

 ちったぁ休ませろや……一ヶ月くらい休んだけどさ。

 

「アテはあるのか。なら任せたっ。なんかわかれば連絡頼む!」

「了解」

 

 う~ん、どうしたものか。

 とりあえず明日、というか今日の昼にでも適当な農家に声かけまくってスライム関連の話聞くか。

 これまでは一般人(のうか)でも対処可能だったらしいし、どうやって対処したかとかその辺の話を聞きつつ役に立ちそうな話を纏める。

 同時並行で探知使って隠れてるスライム見つけてぶっ殺す、と。

 凍らせればモンスターだから変質で死ぬけど小麦とかは解凍すればなんとか元には戻るし。

 まあ、一度凍った影響でしばらく後どうなるかは知らんが。

 喰い荒らされるよりかはマシだろう。

 ……謝って許してもらえればいいなぁ。

 

 見掛けは問題なくとも細胞が破壊されてダメになる、というのは充分考えられる。

 そもそも標的にしたのはあくまでもスライム。

 一緒に凍らせてしまった小麦は小麦を凍らせたというよりも小麦の表面に氷を生み出した、という方がより適切だ。

 恐らく内部に大きな影響はない。

 が、万が一がある。

 魔術で、魔力を浴びせてしまっている以上は万が一ではなく百が一かもしれないが。

 

 追い払う、倒す。

 どうする?

 寄せ付けないとして例えば“餌があると認知させない”とか“壁か掘を造って畑に入れさせない”とか。

 前者はともかく後者は論外。

 そんな大規模なモン畑全部にとか正気(のうきん)かよ。

 前者は……わからん。

 そもそもスライムがどうやって餌を認識しているのかもわからんし。

 触れたモン喰えるなら手あたり次第とかだったらどうしようもねぇんだよなぁ。

 あと他はスライムが苦手とするモノ。

 ……大量のホウ砂? アホか。

 塩? ナメクジかよ。

 ……特定の魔力の波長とか。

 なくはないかもだけどそんな大規模に魔力まき散らすモン魔石の魔力が速攻尽きるし規模と出力次第じゃ人体への悪影響も農作物への悪影響も考えられる、ナシ。

 臭い……嗅覚ねえだろ。

 …………ダメだ、頭が役に立たん。

 研究書でも読み込むべきだったか?

 

 一向に出ないアイデア。

 頭を使うのはマユゲに任せた方が効率的かもしれない。

 が、異世界人だから思いつくという可能性もあるから思考を止めるワケにはいかない。

 

 あ、でも探知と同じで常に魔力発する必要はねぇか。

 スライムに反応してその時だけ魔力を発する――スライム探知ってどうやんだよ。

 探知の魔道具とか聞いたことねぇ。

 あるのかもしれんが知らねぇ、知らねぇってことはかなり珍しい、珍しいってことは高そう。

 ……クソがよ。

 はい次、殲滅の方向性。

 現状探知は俺が一番の感度。

 やるなら俺か。

 だとしてこの規模は……って、そもそも通常生物じゃないんだから今いるスライム全部殲滅しても意味ねぇじゃん。

 結局倒しても湧くんだし。

 

「あ~、ダメ。なぁんも思い浮かばん」

「もしかしたらこれで終息、とかもあるんだし明日にしたら?」

「そうですよ。考えすぎてもあくまで想像の域を出ない以上はあまり意味がありませんよ」

「…………おう」

 

 だからって思考を止めろってのかよ。

 ヤダね。

 そんなのやっててつまらないじゃないか。

 俺にはやりたいことがある。

 俺にはまだ手に入れていないモノがある。

 まだ死にたくない。

 

 弱い俺は思考を止めたら死ぬだろう。

 地上でのさばっているからと勘違いしてはいけない。

 人間とは元来脆弱な存在。

 無策で挑めば龍どころかゴブリンにすら簡単にやられてしまう。

 三人は強いから良いかもしれない。

 けれど俺は弱い。

 だから今、思考を止めるつもりは毛頭なかった。




 ずっと書いてなかったキャラ&種族紹介

 サースティ:紫がかった青髪と灰色がかった銀髪の入り混じる髪
       結膜部分が灰色で角膜や虹彩は深紅
       種族は吸魔種(ヴァンバス)
       非常にわかりにくくヒイラギは相手の目を見続けるのが少し苦手なため気づいていないが左眼にハートマークが刻まれていてそれは魔眼である
       効果は『魔力操作妨害』
       その特性上実力の近しい相手には効きづらい傾向がある

 吸魔種(ヴァンバス):他者の魔力を体液を経由して吸収することで成長する種族
     身体構造上モンスター討伐によるレベリングが不可能
     代わりに体液からの魔力吸収が高効率
     多数存在する種の中でも特に身体的特徴に個人差が激しい
     角の生えた者、翼の生えた者、尻尾の生えた者、それ以外の器官(我々の世界に対応する単語がない)を有する者、様々
     質量が見た目と比べて小さい
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