ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「ふゥン? スライムか」
「なんか知らん? これ一応片方貰って来たんだけどさ」
「ほォ? ……モンスター関連はそこまで詳しくねェンだが仕方ねェ、調べてやる」
「毎度毎度申し訳ねぇ……」
「気にすンな。こっちも楽しンでやってンだし気分転換には良い研究題材だァ」
「また今度何か面白そうな魔術関連の道具とか素材とか持ってくるから」
極彩色スライムの死骸を見せるとマユゲの表情が険しくなる。
一目見ただけでその厄介さを理解でもしたのだろうか。
「別に要らねぇよ」
「え~、なんか贈らせてよ。最近金が溜まる一方なのよ、経済に悪いのよ」
「なら金だけ寄越せ。研究費にする」
「りょうか~い」
物欲が欲しい。
なんか適当に金の使い道が欲しい。
ちょいちょい武器屋とか行って金使ってるんだけどなぁ。
服とか色々買っとくか?
安いからいっぱい買えそう。
「そンなに金使いてェなら奴隷でも買ったらどォだ?」
「奴隷? 何に使うのさ」
「育てて戦いに使う、家買ってそこの管理をさせる、性処理に使う」
「おい、最後……」
「実際そういうモンだぞ。犯罪で、借金で、売られて、経緯は色々あンが奴隷に落ちりゃそういうモンだ。まァ規則はあって殺すなとか言われてるがそれ以外は基本問題ねェからな」
「純愛派だから無理だわぁ」
やっぱね、そういう大事なモンってのは自分の力で手に入れる方が良いよ、絶対。
好きな人を無理矢理、ってのはその好きな人の精神性を捻じ曲げるってこと。
触れ合う中で変化するならともかく、強引に捻じ曲げたらそれは好きな人によく似た別人だよ。
奴隷だからって強引にすんのも、【洗脳】で従わせんのも、俺の性には合わん。
あるがまま、素の性格が俺は好きだわ。
「そォいうモンか? ……まあ、そォいうモンか」
「そういうモンだよ。マユゲだって俺が平然と嘘吐く奴だったらぶん殴るだろ?」
「排除する」
「な? 多分俺らってそういうトコちょっと似てると思うぜ? 嘘そのものが嫌いで、例え自分や相手に利益があっても基本的には嘘を吐けない。もし吐いてしまえば後々罪悪感に苛まれる。だから嘘を吐けないし、吐いて欲しくない」
「確かにな」
嘘で苦しんだ。
苦しまされた。
だから嘘が嫌いだ。
だから優しい嘘なんてペテンも信じられない。
結局は嘘だから。
嘘という悪事を正当化するのは嘘を吐く側。
騙す悪意を誤魔化す嘘。
クソくらえだ。
ゆえに“優しい嘘”なんてもっぱらクソだ。
嘘を肯定し、それが善行であるなどと嘯いた
一度その御大層な“優しい嘘”とやらでこっ酷く傷つけばわかるのだ。俺のように。
「嘘吐いて誤魔化して、結局本当のことがわかって余計に傷つくならさっさと残酷な真実を突きつけて立ち直らせた方が良い」
「……つまりバレないなら。例えば死ぬ間際なら嘘吐くってことかよ」
「まっさか~? 最後の言葉が嘘とか悲しすぎんだろ」
「…………けどお前はお前自身が死ぬ時なら、必要とあらば嘘吐くだろォが」
「何それ? 俺ってそんな人間に見える? てか嘘わかるんだしこの問答いる?」
「あァ、お前は嘘を言ってねェよ。けど多分、お前はそうするよ。忌々しいことになァ」
「なんかよくわからんまま嫌われた……」
泣いちゃうぞ?
理由不明の悪意とか敵意って結構怖いんだぞ?
よくわからないまま悪意敵意を向けられるというのは普通に悪意敵意を向けられるよりも個人的には恐ろしいモノだ。
理由がわかっているなら納得や理解はでき、ある程度の対策もとれる。
だがわからなければそれすらできない。
何故嫌われているのか、何故無関心ではなく敵意なのか。
闇から這いずる手というのは根源的に恐ろしく感じる。
「……忘れろ」
「ういっす! 怖いんで忘れまぁす」
「おォ」
洗脳……はしなくて良いか。
俺のことだ、寝たら多分忘れる。
どうせしばらくは休みだしな。
好きにやってりゃ問題ないっしょ。
「んじゃ邪魔になるだろうし俺は俺でやることあっから――」
「行くならその前に魔力これに込めてからにしろ」
「久々だな」
「あァ、指輪からも少しではあンだが吸収してて魔力自体は採取してあンだよ。けど無駄がデケェからなァ、直接寄越せ」
「ホイホイ。前と同じで一割くらい……っと」
「これで一割か。増えたなァ」
「レベルアップ若干したしな」
「それだけじゃねェ。レベルアップしなくても魔力使えば増えるって前言っただろォが」
「そういえばそうだな」
確かに体感的にもわかるくらい増えたな。
注ぐのに掛かる時間が増えてる。
「ま、行ってくるぜぃ」
「何するか知らンが頑張れよ」
「ういうい」
ふいぃぃ……。
……隣の農家まで遠ッ!?
これ、数回れねえじゃんよ。
流石は農場間の距離というべきか。
軽く疲れるほどには遠い。
旅を経たからそこまで体力消費はしないがただひたすら小麦畑、遠くの山脈も大きさはほとんど変わらない。
視覚的変化が乏しすぎて精神が疲弊する。
「お? あんちゃんどうしたのさぁ?」
「あ、俺は開拓兵だ。少し前からこの辺りでスライムを見るようになったって聞いたから聞きに来たんだけど話聞いてもいい?」
「別に構わねぇけどぉ、俺そこまで詳しくねぇでさぁ」
「大丈夫大丈夫、俺としては情報ならなんでも欲しいって感じだから」
「そ? ならいっかぁ」
なんつーか、伸びるんだね。
そして上がるんだね、語尾。
「まず、どんなスライムを見かけたかとか憶えてる? てか実際にスライム見た?」
「見たよ見たよぉ。朝とかはよく見るんよねぇ。どんなんかって言われたら全部は憶えてないねぇ、色々おったからさぁ」
「憶えきれないくらい!?」
「あ~、単に俺の頭が悪いだけさぁ。……そうだぁ、まとめて売ろうと思っとったのがあるんだけど買うぅ? 急に出たヤツだし値段は適当で良いよぉ」
「残ってるのか!? ぜひ買わせてくれ」
ラッキー、まさか残ってるとは。
てっきり捨ててるか既に売られてると思ってたからなぁ。
こりゃ幸先良い。
「これだなぁ」
「皮……中身は漏れたのか」
「うちの狼に開拓兵みたいに魔石だけ砕くなんて無理よぉ。させる利点も俺にはないしねぇ」
「まあ、確かに」
積まれた色取り豊かなスライムの表被膜。
だがわざわざ内部の粘液を絞り出した、というワケではなく、狼の爪で傷ついた表面から漏れ出ただけらしく内部にある程度ではあるが魔石とともに粘液が残っていた。
「適正価格がわからないからすまないが、これくらいで足りるか?」
「うふぁあ、こんなに貰って良いんかぁ? ちょっと小遣いになれば程度だったんだけどぉ?」
「問題ねぇよ。ここで金出し渋って街に危機が来るくらいなら金払って情報を効率的に収集する方が俺的にもお得ってな」
「おぉ。開拓兵はやっぱカッケーなぁ!」
「ふっ、だろう?」
鋭く切り裂かれた表被膜。
下に積まれたモノは傷が雑で、上の新しいモノほど洗練された傷になっている。
数度の傷から一度の傷に。
これを狩ったという狼の腕の磨き様がわかる。
「狩った狼に会わせてくれないか?」
「いいよぉ。今の時間ならナカーが近いなぁ」
ナカー?
……ああ、「ナ・カー」、要するに……「渦毛」か。
こういう固有名詞は翻訳されなくて意味の理解に若干理解に時間掛かるなぁ。
まあそれ言ったら俺とか自分の苗字の「永井」の意味とか知らねぇからなんでわざわざそんなこと気にするんだって話だけど。
「あ、いたいたぁ」
遠くに
「でも何を見るんよぉ? うちのは皆普通の狼よぉ?」
「お、くるくるほわほわの毛。よ~すよすよす。目的としては倒した狼の強さがどれくらいかってのを知るためだな。流石にこうして残った素材だけじゃ、な」
「なんでよぉ?」
「未処置のまま素材放置したら弱い素材とかだとすぐ劣化するからな」
「なるほどねぇ」
現に貰った素材は大体が魔力に乏しい。
スライムがそもそも魔力が少ない場合が多いのだが。
「はいはい噛まないでねぇ」
「ナカー、この人は敵じゃねえぞぉ」
『グゥ』
「よぅし、良い子だ」
結構顎の力強いな。
いきなり触ったのがそんなに気に食わなかった?
まあ咬筋力がわかったからヨシッ。
爪は……結構鋭い。
適当に……これに攻撃してみろ――つ、強い。
一番初めの俺よりも……ってそれはオレが弱すぎるから比較にならんわな。
「やー、すまんね。見ず知らずの開拓兵の頼み聞かせちまって」
「いいさぁ。断って被害拡大させる方がもっと嫌だからねぇ」
「あと最後になんだけど。スライムがいないか見回る……というか畑の中で探知使って良い?」
「開拓兵がわざわざやってくれるのかぁ? 俺そんな金持ってねぇよぉ?」
「あ、タダだよ。流石に押しかけてこれするから金払え、は質悪いだろ。大体俺の利益でもあるんだし」
「ならぜひやってくれよぉ。案内もするしなぁ」
何を見て、何を感じて、どう成長していくのか
ヒイラギが嘘を区別する日は来るのか、嘘を許せる日は来るのか
触れ合う中でどう変わるのか楽しみです
ちなみに嘘うんぬんのところ、色々表現に悩みました
当初の予定ではもっと長文になる予定でした
けどヒイラギの心境を全部吐露させていたのでは支離滅裂になると考えカットしました
内容を短くまとめられる記述力が欲しい……
渦毛の狼、ナカー君
ちょっとネーミングが直球すぎるんじゃない? と思いつつも自分の渾身のネーミング、というのがどうしても信用できなかったため直球になりました
スマンネ、ナカー君