ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一四一話 塵積経済回し

「ところでヒイラギお前、汗臭くねえか?」

「え、あ、あ~……訓練してたからだな、多分」

「てことはもっと前から起きてたのか。てかそうなら呼べよ」

「え、ええ~……腕ぶった切るじゃん」

「真に迫ってねえと危機感生まれねえだろうが」

「それもそうだな」

 

 治せば治るモンにウダウダ言ってもしゃーないな。

 痛いのはちょっと嫌だけど。

 

 痛みは一時的なモノ。

 力はサボらなければ永久的なモノ。

 どっちが良いかなんてわかりきっている。

 

「それで納得するのか……」

「え?」

「……なんでもねえ」

「そうか? にしてもウメー、今度再現してみよ~っと……ふぁぁぁぁあ……」

「寝不足か?」

「ああ、まあ若干ねみぃ」

 

 流石に頭が辛い。

 体力的には問題なくても今日は情報が多すぎた。

 一度寝て脳内を整理しないと頭がパンクしかねない。

 大量の情報を抱え続けられるほど俺の頭は優秀ではないのだ。

 

「寝たんじゃなかったのか?」

「あ~……朝寝て夕方起きるって時間感覚はなかなか適応できんかった。慣れが必要だな、コレ」

「初めは仕方ねえな。お前こっち来てどれくらいだ?」

「世界ってことだよな? こっちの世界に来てだと――大体八〇日だな」

「ふ~ん」

 

 思えばもうそんなに経ったんだな。

 あとちょっとで一クール分……見逃したアニメが地味に惜しい……。

 まあ創作物(フィクション)以上に空想(ファンタジー)してる現実が経験できるから別に良いけど。

 

「そういえば、どれくらいの期間様子見するんだ?」

「え?」

「え? じゃねえよ。あの依頼はお前が持ってきたモンだろうが、だったらその間の統率役はお前に決まってるだろ」

「てっきりいないかキュリアスかサースティのどっちかだと思ってた。二人の方が圧倒的に知識があるし」

「知識量とまとめ役は別だろうが。それ言ったら国王だって国内一の知識量の持ち主になるだろうが。……つっても実際そんな感じではあるんだが」

「俺だったのか……」

 

 依頼を受けたらパーティリーダーだった件。

 マジすか。

 雑魚の分際で自分以上の人にあれこれ指示出すのメンタルによろしくないんですけど、それは。

 

「てかクアークはどうしたよ。普通に選択肢から抜いてるが」

「ああ、アイツは俺に付いて来てる感じだから」

「ふ~ん。物好きだな」

「ほっとけ」

 

 どうせ俺はイロモノですよ~だ。

 

 そんな軽口を叩きながら現実問題として様子見の期間をどうするかに思考を向ける。

 キリよく一週間と考えたがそれでは長すぎる気がした。

 だが半分の三日か四日となると少し微妙な気もする。

 気分的な認識だから酷く曖昧だ。

 

「様子見の期間、キュリアス的にはどれくらいが良いと思ってるか、教えてくれ」

「ならまずお前の意見から聞かせろ」

「……まず一日二日じゃ短すぎる、警戒心がたったそれだけで消えるとは思えない。一週間じゃ長い。だから三日か四日が良いと思ったんだが、警戒心が強い相手だった場合それじゃ短いような気もした。んでスライムのことあまり知らないから思考が迷子になってる」

「ああ、基本はそれでいい。だがスライムは普通よりは警戒心が少し強いから様子見期間は五日くらいがちょうど良いだろうな」

「なるほど。……てか普通に教えてくれるのな」

「たりめーだ。あーしは暗に考えろって言ってんだ、知らないことに対して“正解”出せって無茶言う気はねえよ」

「必要なのは考える意思、ってことか」

 

 五日か。

 ならあと四日。

 情報集めつつウェアウルフ君たちに特訓付き合ってもらおう。

 いずれは速度で上回る……上回れればいいなぁ。

 ……いやいや、弱気は良くない。

 強気でいればこう……イメージによって魔術のなんやかんやで成長補正(バフ)がかかるかも。

 それに自身のある男の方がカッコいいって話だしッ。

 

 カッコいい、というのは単に“モテたい”という意味ではない。

 深層心理的な部分でそういう意図がないとは断言できないが、主に名声的な部分に目的がある。

 以前のように。

 ノースミナスの時のように“開拓兵が活動している”という認識を広める必要が出た場合“カッコいい開拓兵”と“カッコ悪い開拓兵”とでは話題性が違いすぎる。

 かつては龍、今はモンスター。

 外敵の恐怖に晒され続けているこの国は英雄を欲している。

 カッコいいとは言い換えるなら英雄性。

 英雄的(カッコいい)開拓兵に人の目は無垢のだ。

 

 自信、自信……自信。

 まず俺の中の長所、特殊性ってなんだ?

 異世界人であること?

 いや、この国だと異世界人は基本的に近づきたくない存在だ。

 それは初めの一週間、香月たち(アイツら)の仕事探しの時に見て知ってる。

 見た目、普通……と信じたい、けど多分どっちかってと不細工。

 そもそもこの国の美醜感覚わからん。

 頭脳、そこまで良くない、数学とかは教科書読んでざっくりは理解してっけどそれをゼロから構築する賢さはないし、この国で一般的な経済とか為政の知識は俺あんま持ってないからこの国比じゃバカのはず。

 ただ異世界人ゆえのこの世界の法則に縛られない発想力はある、ハズ。

 強さ、速度寄り、力はそこそこ、魔術はまだ低級下級と中級を少し程度の構築力、ただ凍結って特殊性はあるからそれなりの話題性はアリ。

 見栄えもそれなりにするハズ。

 他……わからん。

 

「いきなり黙ってどうした。酔ったか?」

「まだ平気なはずだ。てか酔うほど俺飲んだっけ?」

「初めに弱めの酒三杯、普通の七杯、試しに飲ませた強めの酒が半分一回三割二回一口五回……ワリと飲んでねえか?」

「……数えると意外と飲んでたわ、ハハハハハッ!」

「クッ、やっぱ酔ってんじゃねえかよ」

「言われてみりゃ暑いし!」

 

 思考は多分まだ正常。

 ただ少し火照っている自覚アリ。

 

「あーしもちょっと酔ってきたし、もうそろそろ終わりにするか」

「了解、締めになんか食う?」

「ん~、いいわ。このあとがあるし」

「なんか用事あるんだな、こんな時間なのに」

「戦うのよ。あーしとヒイラギで」

「んべぇ……なら締めはいいや。残ってる料理で充分」

 

 食後の運動にしては少々苛烈なお誘いだ。

 飯と酒で熊のように膨らんだ腹に意識を向け、消化に加速をかける。

 たった今、俺の腹の中は地獄の釜もかくやというほど激しい。

 少なくとも俺の中ではそんなイメージだった。

 

「……たった一食で銀貨が何十枚も」

「王都から離れてるし開拓兵向けだからな」

「経済を回すため、か」

「武具が多少割引される代わりに飯は割高だ」

「一気にドカンと持ってかれる武具は少し安くして気分的にも買いやすく。それと比較すれば少ししか持っていかれない飯は少し高くして食いやすい気分は変わらないまま積み重ねで金を払わせる、と」

 

 開拓兵向けの店だけあって“支払いは開拓兵証(カード)で”がイケる。

 だから銀貨じゃなくてアスターだな。

 

 たしかに値段は高い。

 王都で暮らせば何ヶ月も、上手くやれば年を過ごせる額だ。

 だが払うことに抵抗感はない。

 金は余っているしそれは自分のためにもなる。

 情け、ではないが理屈としては“情けは人の為ならず”だ。

 他者に掛けた情けが巡り巡って自分の下に戻ってくるように、払った金はいずれ経済の過程で自分の利益となって戻って来る。

 正しく運用運営すれば社会とはそういう循環が可能なシステムなのだから。

 

「ふう、食べたなあ」

「俺は腹いっぱいですよ……」

「そりゃあんだけ食えばそうだろうよ」

 

 もうステーキ二〇〇グラムくらいしか入らん。

 それ食べちゃったら五分くらい休まなきゃダメなレベル。

 

「行くか」

「さ、流石に戦う前に準備運動させてね? 吐いちゃうから」

「流石に吐かれたかねえからな、それくらいは許してやる」

「ありがてぇ」

 

 ああ、若干酔いで身体の感覚がチゲェや。

 軽かったり普通だったり重かったり、場所によって違ってやりづれぇ。

 真っすぐは……なんとかイケる。

 

「後ろ観なくて良いのか?」

「え? ……おぉ、なんだこれ。若干光ってる?」

「陽光石だかなんだかが太陽の光を貯めて夜に薄い膜で覆うとかなんとか。詳しいことは知らねえから知りたいならギルドで本借りて自分で読め」

「ういっす」

 

 月光を浴びる建物群の中。

 その光を僅かに上回る程度の僅かな光を放つ酒場。

 派手過ぎず、軽く見る背景程度の認識では気づかないであろう光り加減。

 だが観るという意思の下で観察をすると、その調和のとれた絶妙な光は建物の魅力を更に上げているのがわかる。

 また、建物を這うように刻まれた淡い光の線は看板に収束し、看板を目立たせていた。

 

 壁面の紋様とか、なんか意味あるのか?

 昔がどうのこうの言ってたし何かしらの地方の(まじな)いとかそういうのかね。

 魔術的意味があったら面白いんだけどパッと見た感じ魔術のヤツとは雰囲気違うし。

 麻の葉模様とか青海波模様とか源氏香模様とかそういうなんか、文化的な模様って認識してりゃいっか。




 邪気払いとしても用いられる陽光石系統の鉱石(以下“陽光石”)
 その理由としては陽光石が太陽の光を吸収し放出する(日中に吸収した太陽の魔力を夜に放出する)という性質によって魔月の悪影響を防ぐことができる、と理屈はともかく経験則でわかっていたからです

 コランダムが含まれる不純物でルビー、サファイアとなるように陽光石もそのカラーバリエーションがいくつか存在し、それによる呼びわけもあります

 魔道具への応用もかつてより研究が行われていたものの“陽光の吸収、放出”というあまり利用目的の少なそうな研究よりも他の役に立ちそうなことへ研究を回すのが得策という各研究所の方針により人員はそこまで多くなく、研究の進捗もそこまでよろしくない様子
 ただ一定数それの研究を目的に研究者になった者もいるため僅かずつではあるものの研究は進んでいる、らしい
 アエジ様式好きの人がやはり多い、とのこと
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