ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「何独りでやろうとしてるのよ」
「んべぇ……クアーク。それに二人も……」
「腕、切られたいのか?」
「なんで!?」
いきなり物騒なんだけどこの人!?
「ウチたちはパーティなんですよ?」
「え、お、おう。そうだな? ……ナニコレ?」
手掛かりもないワケで、どうしようか、仕方ないから北西部を見に行くか、とした矢先、ワケもわからないまま三人に包囲されて問い詰められ、本当に何が何だか。
「つ・ま・りッ。ヒイラギが誰にも頼らずに問題を片付けようとしているのが不満なのっ!」
「ナンノコトヤラ。俺はウェアウルフ君と戯れてくるだけですぜ、うん」
「あの人から聞いてるのよ“あンのアホがまた一人で無茶しようとしてっから力貸せェ”って」
「おしゃべりマユゲめぇ……」
思わぬ妨害に遭い、わざとらしく拳を握って見せる。
「はいはい、話を逸らさないの」
「うい~」
「反省してる?」
「別に、ただ単に調べに行こうとしてただけだしぃ?」
「……キュリアス」
「わかった」
「? ――!?」
ただの“可能性”の“調査”に迷惑はかけられないと説明するとクアークはため息交じりに姉御の名を呼び、姉御はやれやれといった様子で俺の両腕を掴んだ。
そして直後、勢いよくぶん回される。
それはもうバターになりそうな勢いで回され、目は回らないが内臓が遠心力で下りるような感覚があって気持ちが悪い。
回されたのは一瞬か、それとも数秒か数十秒か。
浮遊感の後、勢いよく地面に叩きつけられる。
「っ~……」
「頼れって言ってるの。わかる?」
「はい……」
「アタシたち仲間、仲間頼る、わかる?」
「何故片言? わかるけどさぁ……あんま迷惑かけたくないっていうか……」
「ダメね」
「どうしましょうか?」
「手の施しようがねえな」
「ヒドッ!?」
一気に浴びせられる罵倒の雨。
何か恨みがあるのだろうか。
まあ多少なりとも恨みがあるからこうしているのだろう。
「仲間は同じ感覚を共有するモノ。それが仲間の合理性なの。行動すべてを束縛する気はないけど重要なことはせめてちゃんと報告しなさいよッ!」
「はい、申し訳ない」
「あ、わかってねえなこれ。というよりはわかったうえで無視しようとしてんな」
「ま、まさかぁアダダダダダダダダダッ!」
「そうやって勝手に無茶されると信用も信頼もできないでしょうが!」
「無茶はしようとしてねぇよ……」
俺とて現状命は惜しい。
だから危険だと思ったらちゃんと助けは求める。
「流石に斥候がパーティ引き連れて行っちゃダメじゃん?」
「アンタ……そういうけどそうやって集めた情報アタシたちに一度でも報告した?」
「……してない、です」
「それのどこが斥候なんだよ」
「斥候を言い訳に使っちゃダメですよ?」
「はい……その通りで」
まあうん、それは否定しようがない。
実際言い訳に使ったし。
「例えばだけど……アタシが一人で問題を解決しようと危ないことしてたらどうする?」
「助ける」
「即答……まあそういうことよ」
「……理解はできたけど納得はできねぇよ」
「アンタね――」
「クアーク、どうせコイツには口で言ってもわかんねえんだ。ならどうせだ、こっちも勝手にすればいいだろ?」
「――そうね」
「え?」
「お前が勝手に独りでやろうとするように、あーしらも勝手にお前に付き纏えば独りにはならねえってことだよ、簡単な話だ」
…………??
つまり?
どゆこと?
状況がまだ朧気にしか理解できていない。
恐らくは俺が独断専行して事件解決に挑んでいたことに対する怒りが理由。
パーティとしての信頼性の欠如、だろう。
だが面倒事に関わりたくないというのが通常の人間の精神性だ。
自分が関わらずに事が終息するならそれで構わないはず。
俺は俺がするしかないからやっているワケで、三人にとって俺が動いてそれで終わるのならそれが一番楽だ。
つまり楽に越したことはない以上、怒りと信頼性の欠如から現状に結び付く過程が想像できない。
「ああ、それとなヒイラギ」
「はいッ!?」
思考に耽っていると低く重苦しい声音で、笑みとともに、けれど決してプラスの感情を感じない表情で語り掛けられ、背筋がゾッとする。
「あんま
「う、うっすッ!!?」
ただ肩に優しく添えられているはずの手から煮えたぎるような怒りが伝播し、その熱と反比例するように肝が液体窒素を掛けられたかのようにキュゥと冷え縮こまった。
「……わかってなさそうだから翻訳してあげる。つまり“お前のそれは心配ではなく侮りだ。敬意を払えと言う気はないが最低限実力を弁えろ”ってこと。アタシも同感。付け加えるなら態度に文句はないけど仲間である以上適性に応じてちゃんと動かせってことね」
「まあ恐らくは面白そうな敵と戦えそうなのに独り占めするなって感情の方が強いんでしょうけど。でも実際おいたははダメですからね~」
「俺のやってたことは子どものいたずらと同じってことですかそうですか……」
なかなかどうして酷いことを言ってくれる。
実際そうなんだろうけれども。
「――なんかありますなぁ。……風車?」
「見ての通りかなり古い風車です。魔石――魔が一般レベルにまで普及する以前のモノで約二〇〇年前、もしかすると三〇〇年前にまで及ぶとされている旧時代の遺物ですね」
「そんな昔のモンがよく残存してるな」
「流石にもう使用はできないみたいだけどね」
「残存、ねえ。あんなボロボロのが残存って言って良いモンか」
たしかにキュリアスの言う通りかなりボロボロだが俺としては三〇〇年近く人の手入れがされなかったモノがその原型を理解できる程度には残っているというのが信じられない。
はっきりいってこの世界も前の世界も建物の耐久年数がどれくらいなのかは知らないが、それでも三〇〇年という期間がかなり長いことくらいはわかる。
「何ヶ所か残ってるけどどれも同じような朽ち具合。ホントずっと放置されてましたって感じだな」
近くで見ればさっきまでよりも鮮明に朽ち具合が伝わってくる。
撫でれば灰のようにサラリと粉が指に付き、ポロリと首が落ちるように壁が僅かに剥がれ落ちた。
まるでそこだけは崩壊した世界かのような光景に得体のしれない僅かな恐怖に頭を撫でられる。
「中から反応はなし……入るか――ってもう入ってるし」
「んな確認すぐ終わらせろ」
「はいはい」
手っ取り早いようで。
探知を終えた頃には既にキュリアスはもう既に中に入っていて、経験の差も探知の腕もやはり違うのだということがわかる。
元々知っていたが改めて認識したというか、門のところのやりとりのせいで再認識させられたというか。
別に軽視していたつもりはなかったのだがそう取られたということは少なからず無意識のうちにそう認識していたということ。
こうして再認識するのも良いだろう。
「なんもねえし誰もいねえな」
「上に続く梯子と地下室……けど地下には何もないっぽいな」
「地下にはボロボロの木箱があるだけだったわ」
「恐らくはここを利用していた時のモノでしょうね」
「隠れ家的なことになってると思ってたんだけどなぁ。手掛かりなしか」
「まあ他にもいくつかあるワケだし……隠れ家?」
「どういうことだ?」
「え? 聞いたんじゃなかったのか? あのスライムが人為的に生み出されたモンスターだ、って」
「聞いてないですね」
「聞いてねえな」
「聞いてないわね」
「あ~……、まあ、そういうことだ」
「説明しろよ!」
「あだぁッ!?」
俺に関することを言われたときに一緒に言われてたと思っていたがそうではなかったらしい。
だが大事な部分は今理解しただろうからと説明を放棄したところ、キュリアスから思い切り尻を蹴られて強制的に風車から退場させられた。
骨盤を砕かれては堪ったものじゃないので仕方なくざっくりと説明すると三人は険しい表情になる。
「待て待て待て待て、マジか?」
「信じられないなら帰っても良いよぉ? どうせ初めから俺一人でやるつもりだったわけですし?」
「んな話聞かされて帰ると思ってんのか?」
「まっさかぁ~」
「ならアホ抜かすな」
「は~い」
流石にアホな所業過ぎて信じられないか。
まあそうだろうな。
俺もいまだに半信半疑。
できればそんなアホいて欲しくないという感情が強い。
「だからアンタは急いでたってことね……」
「とはいっても褒められた行動ではないですけどね」
「うい」
いきなり攻撃するのやめれ。
「なら早く次行きましょ」
「お、おう」
「チッ、信じたくはねえがそうだってんならそうなんだろうな……」
「モンスターを相手にするのに忙しいというのに面倒を増やさないで欲しいものですね」
トリゴ北西部の風車
約二〇〇年~三〇〇年前の旧時代の遺物
その動力は極めて原始的で魔を用いない純粋な風力によるモノ
目的は小麦の製粉や乾燥し過ぎた場合の地下水脈からの灌漑用
ちなみにトリゴの街としての歴史は一〇〇年ほどだがそれ以前の小さな村だった時代にも小麦の栽培自体は行われていた
現在のように他の街に小麦を流通させはしていなかったが最外部の一つという立地上龍や竜を防ぐ拠点の一つとされていた(トリゴ近くの龍壁山脈の標高は龍壁山脈の中でも特に高い部類のためそこからの龍や竜の侵入は極端に少なく、そのため拠点としての重要度は低く最外部ながらそれを理由とした発展はしなかった)