ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「
「数いるのは良いがどいつも弱くて大したことねえぞッ! つまんねえじゃねえかッッ!!」
「一応街の危機なんだけど?! 不謹慎じゃない?!」
「はッ! “一応”って言ってる時点で
「そりゃ開拓兵だしね!」
無際限の如く湧く大量のスライム。
一体一体は正しく攻撃すれば俺でも一撃で屠れる程度。
だがその数が問題だ。
かれこれ一〇分は戦い、四人の討伐合計数は二〇〇〇を超えている。
ちなみにその半分以上がキュリアスの手によるモノだ。
けれど床に落ちた魔石はほとんどない。
モンスターである以上スライムには全て魔石がある。
倒せば当然死骸とともに魔石を残す。
では何故魔石が落ちていないか。
それは
死して残った粘液と魔石の捕食による魔力の補給。
そして通常ではありえないらしいほどの分裂速度によって得た魔力が即座にスライムの増加に繋がり、減らした傍から元の数に戻る。
「! これ俺じゃ無理だ!
「ならコイツを代わりに返却だ!」
「ホント個体別に耐性が違うの厄介だなぁおいッ!」
斬撃に対する耐性が高い個体、打撃に対する耐性が高い個体、魔術に対する耐性が高い個体、魔術を使用する個体、魔石を分散させる能力のある個体、魔石の移動能力が高く攻撃が致命傷にならない個体、分裂速度が特に秀でた個体。
様々だ。
「喋る余裕があるなら戦いなさいよ!」
「
「殴るわよ!?」
「仲間割れはしないでくださいよ!?」
「言われてっぞぉ」
「アンタもよ!」
だが恐らくは無限ではない。
無際限に思えるが、人間が生きる上で
つまり、いずれコストが支払いきれなくなった個体から完全消滅を果たす。
それに加え、俺にはこのスライムたちの天敵ともいえる力を有している。
端的に言えば“指輪”。
マユゲから借りている指輪の力によってモンスターの死後周囲に拡散する魔を指輪は吸収。
スライムは大気の魔を吸収する能力があり、それは濃度に応じて向上するらしいからそれを阻止できるこの指輪は正に“天敵”だ。
「
「任されましたぁッ!」
一気に
雪華を両手で握りしめ、繊細な魔力操作の下、一気に冷撃を飛ばす。
ほんの僅かな薄さに絞り込んだ凍力は飛翔斬撃と組み合わされて微小な氷の粒を吐き出しながら宙を舞うスライムたちの身体を凍らせ、斬り砕いた。
魔石に直接触れたスライムはそのまま魔石が砕け、冷撃が粘液に触れたスライムは凍力が伝播し魔石と
「アガってきたぁッッ!」
「ちゃんと配分考えてくださいね!?」
「ああッ!」
ずっと戦いを続ければ必然的に身体も精神も熱を帯びる。
長期の戦闘による思考の加速と本能の揺さぶりは俺の化けの皮を剥がして俺を俺らしくするような感覚がある。
思考が冴え、頭が軽く、反応速度が向上し、これまであった無駄が一段階取り外された気がし。
なんとも形容できない高揚感があった。
最ッ高ッ!
この感覚ッ!
この“更新される”感覚ッ!
変化、成長、進歩、飛躍、“俺”という存在が俺の中で確立していくこの快楽。
興奮するじゃねぇかッ!
戦えば戦うほどに蓄積する快楽。
もはや俺が今どんな顔をしているのか、俺自身にもわからなかった。
「皆体力大丈夫なの?」
「それ皆っつーか
「じゃあヒイラギ大丈夫?」
「当然。こちとらノースミナスの一件で
「ならよし」
「面白そうな話じゃねえか、今度聞かせろ」
「帰ったらな!」
魔力の自然回復速度を考慮しながら魔術を行使する。
対象の支配権を魔術で上書きをすれば、つまり
だがそれには対象を常に支配し続ける必要があるワケで、頭がおかしいレベルで魔力と行使力があれば良かったのだが残念なことに俺の魔力は高が知れているし頭も一つだから人外じみた行使力も持っていない。
理屈の上では可能な一手だが、その理屈を行使できる実力は俺にはなかった。
クソッ。
可能かもしれないのにできねぇ……。
俺にもっと力があれば……。
気分はさながらバナナが見えているのに手に入れられないチンパンジーだ。
俺にとっての
モンスターの死骸を再利用されない、その手段は。
考えろ。
まずスライムの干渉力自体は大したことはない。
つまりあまり多くの魔力を使わずとも吸収自体は阻止できる。
が、それをいくつもやれば魔術の構築力の問題で俺がキャパオーバー。
必要なのはいかにしてそこに対する構築力を抑えるか。
どうやったら効率化できる?
魔術構築の無駄な工程の切除……無理だ、そもそも【
個別に発動してる魔術を一つにまとめて途中で分岐させる?
……無意味だ通常の【
繋いだ後にキャパオーバーになるどころか繋ぐ以前にキャパオーバー、場合によっちゃ失敗の反動でこっちが被害被りかねんぞ。
工程を減らすことも、工程を変えて効率化することもできない。
熱に浮かされ加速していた思考が
ふと思い浮かべた直前の案の図。
途中まで直進していた冷気が大量に分岐し、放射状に広がる光景。
それが不意に思考を刺激した。
点を中心に等間隔に二〇の分岐を――。
「――【
放った冷気は真っすぐ進み、ある一点で一気に拡散。
冷気の線に触れたスライムは凍り付き、宙を漂ったり跳躍していた奴らは床に落ちて砕け散る。
工程削減、消費減少、あとはここから更なる効率化を。
無理だと諦めかけたことが実現できた。
その喜びはあるものの本来の目標は一切遂げられていない。
喜びよりも先に効率化の思考が駆け巡り、そしてある光景に意識が奪われる。
それは可視化した
ただそれ自体は自然現象として、安定して存在している大気中の水分が冷気で氷結し細氷や氷霧として現れたのが室温で溶けたに過ぎない。
が、その光景は俺に一つのアイデアを与えた。
魔術で生み出したモノは安定性を、存在力を欠く。
まるで
けれどそれは基本的に、であって魔術発動時に存在力に指定を与えると魔術としての操作を放棄した後もそこに物質として残り続けるのだ。
つまり対象の消滅、残存を決定するのは
放棄していない魔術も同じで。
掌握した炎を“消えろ”と意思の下命じればその炎は消滅し、それは炎のみならず風も水も土も同様。
「【
握り潰すように、氷像と化した死骸を魔石を中心に圧縮し、玉としてまとめた後に、消滅させる。
圧力に負けて砕けた氷も魔石も、体表の結露すらも全てが渾然一体となってガラス玉のように小さくまとまり、そして跡形もなく消えた。
消滅し、全てが魔へと還り、全て指輪に吸収される。
「……くはっ。マジか、笑える」
「なんかヒイラギがよくわからないことしたんだけど!?」
「あれはなんでしょうね……見えないほどに圧縮した――ようには見えませんでしたが」
「ありゃ多分消滅させたんだろうな。正確には分解、か」
「どういうことよ」
「やってることは多分単純。相手の存在強度を魔力として消費、それが一定値に達した瞬間にボフン、だ。けど言葉で聞くより難しいと思うぞ。よほどの想像力と事象干渉力がねえとまず無理」
「ヒイラギさんって性格が前衛ですけど実は適性的には後衛向きなのでは?」
「前衛が向いてねえってこともねえぞ。基礎の部分が未熟で持ってる技術が歪ってだけで多分近接戦闘もイケる類の奴だ。適性的には中衛か遊撃だろうな。まあなんにせよ面白そうな奴だなあ」
「……壊さないでね?」
「んなことしたら遊べねえだろうが。当然ギリギリで止めるよ」
「なら良いわ」
「良いんでしょうか?」
やり方は慣れてきた。
けど少しミスる。
若干の取りこぼしのせいで地味に漏れてそれが栄養になってんなぁ。
圧壊したときの壊れ方が予想できないせいで地味にロスい。
毀れた欠片に魔力が集まってそれを捕食されると増殖が瞬間的に加速する。
もう少し上手くやらないと。
けどだからってどうする?
これ以上の手はない。
やるなら今の手を効率化する。
それでどうする。
壊れ方がわからない。
なら壊れ方を操作する。
どうやって?
凍結に強弱をつけて強度に差を生んでそこを基準に壊す?
かえって効率が悪くなるだけだ。
そもそも内部で流動して内部で力の具合があるのに強度をどうこうしたところで結局は不測の壊れ方をするだけ。
……探知の強化。
頭に負担がかかるがそれならイケる。
よし、やるか。
「【
魔術の連続行使。
情報の濁流も脳に多大な負荷をかけ、まるで脳をミキサーでかき回されていると錯覚しそうなほどの頭痛が脳を刺激する。
刹那を秒に引き延ばすその激痛の甲斐あってか、探知によって把握した内部の繊細な力の均衡に合わせた魔術操作は一切の無駄なく全ての氷片を消滅させた。
Q.なんで【
A.正多面体だから
一点を中心に全方向に満遍なく攻撃を拡散させようとなった時に等間隔になるのが四、六、八、一二、二〇方向なので
教科書に載っているため図として脳に入っていてイメージが簡単で、二〇を選んだのはパッとイメージできる範囲の最大火力だと思ったからという数学的脳筋思考です