ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一四五話 見えぬ正体

 うん、連発するモンじゃねぇな。

 てか連発できるモンじゃねぇな。

 普通に多少のロス覚悟でやった方が効率的。

 

「これ、減ってねえな」

「え?! 俺結構消してるつもりだったんだけど実は役に立ってなかった!? ゴメンッ!」

「いや、ヒイラギのお陰で戦線の密度が下がって楽になった。助かる。ちなみに魔力は大丈夫か?」

「いやぁ照れますなぁ。ちなみに魔力は問題なしッ、あと八割残ってるぜぃ」

「最大でどれくらい凍らせることができて、それをやったらどれくらい魔力が減る?」

「えっと――【凍房(クラスター)】の術式上射程を伸ばしすぎたら外の部分の攻撃密度が落ちるんだよ。それを考えないで良いなら魔力一割で着弾地点から半径二〇メートルの球状範囲が攻撃できて、外の部分の攻撃密度も維持すれば魔力二割で攻撃できるがそうすると探知分の領域が使えねえから攻撃が雑になる」

「ならあーしが一瞬だけお前の探知()を請け負ってやる!」

「結局は負担キッツいわッ! ――チクショウやってやんよ!!」

 

 余計なことを考えるな。

 一気に片を付ける。

 どうせ一瞬で終わらせるんだ、魔術発動の予兆隠蔽なんて、魔術陣の格納なんて無駄は省いてしまえ。

 深く、硬く、術式を構築する!

 イメージを強固にッッ!!

 

 構築する最中、ふと加速した思考が答えを一つ導き出した。

 魔術に用いる“条件指定”。

 そして“固定魔術”の術式を分解して得られる“距離”に関する構築。

 元々は二〇分岐した冷気がスライムに触れた瞬間に更なる二〇分岐をと考えていた。

 それによってどうにか外周部の攻撃密度をカバーしようと考えていたのだ。

 けれど天啓のごとく閃いた条件指定の応用。

 俺の今の構築領域と技量では魔力の続く限り無際限に分岐をする術式を構築し、込める魔力量で距離を調節しようとしていた。

 構築手順は抑えられるが脳筋思考でスマートじゃない術式だった。

 が、条件指定を距離と複合し応用すれば――“指定距離に達するまで手順を繰り返す”とすれば余計なことに意識を割くことなく発動できる。

 

 キタキタキタァッ!

 俺って実は賢いのかもしれん!?

 

「手で良い!」

「おう!」

 

 農場よりも視覚情報が多く距離も短いからだろう。

 キュリアスは俺の一瞬のアイコンタクトの後、手を真っすぐ伸ばした。

 触れた指先はするりと絡み合い、握った手から魔が繋がる。

 処理済みの探知が、整理された情報が脳に入って来る。

 

「【大凍房(グレイプ)!】」

 

 冷気は奔り、標的にしたスライムを中心に一気に冷気が拡散する(ひらく)

 放射状に伸びる冷気は大量のスライムを貫通し、凍結させる。

 だがまだこの段階では消滅させない。

 範囲内全てのスライムが完全に氷結するのを待つ。

 そして完全消滅を捨てた時間優先の【砕氷(ヴォイド)】で完全凍結したスライムたちを一気に消滅させ、外部のスライムが氷片を吸収する前に大量の氷片を中心に向かって収束させ、今度こそ【砕氷(ヴォイド)】で完全消滅させた。

 その範囲は直径約五〇メートル。

 構築の効率化ができた分の余裕を範囲に注ぎ込んだ。

 キュリアスが余分に探知をしておいてくれたお陰だ。

 多い分には良いだろう。

 効率化のお陰で魔力消費も当初より少なくて済んだ。

 

「これでっ、何を確認したいワケ……?」

「おっと、流石に一気に魔力使わせちまったか。……観察して思ったが分裂速度と増殖速度が釣り合ってねえんだよ」

「それってつまりどこかからもスライムが出てきてるってことよね?」

「さっきみたいに包囲された状態じゃ調べに行けませんよね?」

「いや、奥に行くだけならこうやって――壁を創れば良い話だぞ」

 

 そう言うとキュリアスは魔力の大量消費で若干足元が覚束ない俺を支えながら魔術で石壁を生み出す。

 左右一対の石壁は真っすぐ続き、その範囲内にいたスライムは圧殺、壁の中に入っていたスライムたちは俺の魔術によって一気に凍結し、消滅した。

 そしてその状態で視力を強化し壁の向かう先に目を向けるとそこにあったのは――壁だった。

 

「壁じゃん?」

「見た目はそうだが奥にまだ空間が続いてる。あーしも初めは気付かなかったけどスライムの数に違和感を覚えてさっき探知したついでに調べたら奥に続いてることがわかった」

「あ、だから言ってもいないのに情報がやけに詳しかったし範囲広かったのか」

「まあ、そういうことだ。壁の外のスライムは後で殺すとして、今は壁から出てるスライムが先だな」

「壁もう少し広くならなかったの? これじゃ後ろにいるアタシたちが手出しほとんどできないじゃないの」

「……あの壁ってぶっ壊しても良い感じ?」

「ん? まあ壊せるならな」

「了解、んじゃ俺が試してみるわ」

 

 新たに現れたスライム。

 大量のそれごと一気に凍らせ、壁すらも凍らせ、新たに出てくる隙間を埋める。

 そして安全な状態で壁に近づき、【炎爆(フレア)】で一気に破壊した。

 凍った壁は熱ではなく衝撃によって破壊され、奥から空間と待機していた大量のスライムが現れる。

 だがそいつらは全て衝撃と熱によって死んだ。

 

「まだ残ってるな……」

「魔力一気に使ったろ。あとはあーしがやるから任せな」

「姉御カッケーッ」

「ちょっと状況が変わったからって気を抜き過ぎよ」

「警戒はしてるって」

「なら良いんですけどね」

 

 そんなに俺の発言ってペラい?

 もうちょい信じてくれても良いじゃんよ。

 ま、仕方ないけどね。

 そういう感じ(キャラ)でやってますし。

 

「階段のすり減り具合と内部の劣化を見た感じだと結構最近誰かが来てますね」

「スライムが大量に居た時点でわかりきってたことだが罠に警戒しろよ」

「罠って魔道具とか設置されてるのか?」

「ああ、流石に探知方法はわかるよな?」

「魔力反応」

「さっきの扉と同じかそれ以上の隠蔽力があるかもしれないから注意しろよ」

「了解」

 

 余分な情報を切り捨て、探知漏れ(ミス)がないように各々で探知をしながら進む。

 風化で粉塵と化し、滑りやすくなっている階段を慎重に下りながら巡らせる探知。

 近くで感じる三つの魔力を遮断し、他に意識を向ける。

 一歩、また一歩と下り、けれど罠らしき気配は感じない。

 そうしているうちに最下部に辿り着き、開けた空間に辿り着く。

 

「完全に風車の下から外れたな」

「それはそうだろ。流石にこの広さの空間を風車の下に掘るのはヤベえ」

「そうか。確かに」

 

 魔術で強化する技術とかあっても流石に上に建物がある状態でその真下に大きな空間造るのはヤバいの部類なのか。

 まあ実際は本当にヤバいってよりは安全のため、の方が強いだろうけど。

 

「ああ、あったぞ。あそこからスライムが湧いてやがる」

「大きめのスライムがよくわからん機械に繋がっててその大きめスライムから秒速一体くらいの速度で増殖、が合計四基。んで大本に巨大な試験管と謎液と巨大魔石……デカくなぁい?! 合成魔石なんだろうけどさ」

「よくわかんないんだけど要するにアレを潰せばいいのよね?」

「ええ。ですが調べたら何かわかるかもしれませんしあまり壊すのは……。けどこのままじゃ敵が多すぎてすぐには近づけませんしあの大きなスライムの方を倒せば止まるのではないでしょうか?」

「てか、なら俺があの魔石だけ壊そうか?」

「あの内部の液体が凍るのでは?」

「ん? ああ……普段の氷が出るのは操作を若干捨ててるからだよ。倒す必要がなく、対象が一つで、目視も探知も余裕なこの状況なら――【凍壊(フリーズ)】っと、まあこんなモンよ」

 

 魔力を伸ばし、伸ばした魔力線全体ではなく最終地点でだけ冷気が生まれるように指定。

 対象を指定し、形状を決定し、魔力を固定する。

 冷気は巨大な魔石全体に行き渡り、凍り付き、そして二つと無数の欠片に割れた。

 

「はい、しゅーりょー。……増殖止まんねぇな」

「まだ若干魔力が残ってるってことだろうな。そのうち増殖は遅くなるし止まる。まだイケるよな?」

「もちろんさぁ」

「休んでても良いのよ?」

「あんあいかにも特別です、って表現したスライムがいるのに休むわけねぇだろぉ?」

「だと思った」

 

 クアークがちゃんと俺のことを理解していることに笑いながら探知を切り、身体強化と武器強化だけに絞りつつ殺気でスライムの位置を把握し、上にいた時同様に相手に合わせた最適な攻撃で戦う。

 ずっと探知でスライムの特性を把握していたが、なん百にも及ぶ討伐の経験によってなんとなくの雰囲気を感じ取れるようになっていた。

 理屈はよくわからないが恐らくは色、動作などの視覚情報を元としたパターン化と無意識に拾い集める魔的情報による直感だろう。

 

「あまり期待しない方が良いぞ」

「え?」

 

 俺のやる気と反比例するように大きなスライムは悲しくなるほどに弱かった。

 多分増殖力を強化された状態だからその分力がほとんどない。

 逃げられないようにかほとんど動きもしなかった。

 かなりガッカリだ。

 

「つまんねえな」

「同感だ……俺のやる気はどこへ向ければ。チクショー」

「色々残ってはいるけど人はいないわね」

「こっちに逃げ道らしき通路がありますしスライムに足止めを受けているうちに逃げられたんでしょうね。行き先は恐らく他の風車でしょうけど数が多すぎて追えませんし」

「けどこのまま放置したら回収されかねないし、俺らで回収すっか……この辺のモンがどうなるかはわからんが機材とかは高いっぽいし調べたらわかることもあるかもだし、マユゲ送りだな、こりゃ」




 安定しないキュリアスの呼び方
 キュリアスだったり姉御だったり……まあその場のノリとかがほとんどですね
 あとは切羽詰まると名前呼びとか
 まあ作者が思うに、ヒイラギは死ぬ手までもふざけそうです


 ちなみに機械に繋がってたスライムは色んな種類のスライムが合体したごちゃごちゃ状態のスライムです
 魔石から供給された魔力によって増殖する場合はそこに含まれる特性がランダムに選ばれて新たなスライムが生まれます
 製作者は大きなスライムを敵として生み出して足止めに使おうとしていたもののその意図と反してそんな感じになったワケです

 意図としては色んな特性を持った最強スライム
 現実は複数の特性から適当なのが組み合わされるルービックキューブみたいなスライム

 まあ最強スライムが実現してても現段階で開発できていた特性では大した足止めにはならなかったので製作者としては結果オーライ
 でも製作者は結果を知らないので最強スライムのお陰で足止めに成功したと考えてます
 研究資料が残っているのは元々本来の目的の休憩がてら作ったお遊びだったから
 お遊びで街一つ滅んだかもしれないって、厄介ですね
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