ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一四九話 酒を飲んだり呑まれたり

「次は東――って言ってもルートヴィヒの中で言えば中央も中央――の商業都市に行こうと思ってるんだが。マユゲも来るのか?」

「それは邪魔ってことかァ?」

「まさか。愛しのマユゲと離れたくはないですぜ。ただマユゲにも都合とかあるじゃろ」

「そもそもが結界の中で引き籠もる生活だ、気にすンな」

「まあ、そうだな」

「ついて行く気がねェとしてもルートヴィヒには行けンだ、いちいち来るか聞くなってンだ」

「ういっす」

 

 ですよね~。

 結界の特性上ここからルートヴィヒに歩かず所要時間ゼロで行けるし。

 まあ魔力は要るだろうけど。

 

「別にそこまで魔力は要らねェよ。次元の操作に使うだけだかンなァ」

「次元? 空間じゃなくて?」

「空間の操作は結界創る時点で大体済んでる。それ以外は外から中に行く時と中から外に行くときくらいだ。転移は次元操作でできンだ」

「へ~……ん? でも前は膨大な魔力が必要になるって……」

「はァ、オレは何回この説明をすりゃァ良いンだよ。それは汎用性を持たせた場合だアホ、特化させりゃもっと楽に決まってンだろォが」

「そういえばそんなことも言ってたな」

 

 たしかに同じ話題の時に特化型なら魔道具を縮小できると言っていた。

 全体を縮小できるなら消費魔力も減らせるだろう。

 

「距離によってどれくらい消費魔力変わるんだ?」

「それによる差は大したことねェよ。距離で代償が必要になンのは設置の時、お前の部屋の魔道具置いた時だからなァ。必要なのはほとんど次元操作だけ、距離のなンぞ【炎槍穿ち(ショット)】一発分の魔力にすらなンねェくらいだァ」

「そいつは随分効率が良いな」

「そりゃ接地時点で繋がってっからなァ」

「ああ、確かに」

 

 設置されてるモンを使えばそりゃコストは軽くて済む。

 でも距離が微小ってのは本当に小さいって話なのか、それとも次元操作がデカすぎるのか。

 

「てかさ、部屋に設置してるアレは回収後どうなんの?」

「どうなるっつーのはどォいう意味でだ?」

「接続的な問題」

「あァ、それは起動したままなら基本繋がったままだ。移動させりゃその距離に応じて維持に魔力がいンがなァ」

「……結界(ここ)の中だと距離はどういう扱い?」

「ねェな」

「維持魔力皆無?」

「少なくはあるな」

「じゃあ部屋の魔道具を結界の中に入れれば次設置するより魔力減るんじゃね?」

「そもそも魔道具で結界を一時的に繋げてんだから魔道具動かしたら結界に繋がンねェだろォが」

「そっか……」

 

 魔力消費を減らせると思ったのだがやはり駄目らしい。

 専門家に僅かな知識で勝てるワケがないのだ。

 

「かといってもう一個作ってもその起動と接続に魔力がいるし……」

「そォだなァ。指輪でそれをするとして、大きさの問題で組める機能は結界系統だけ。起動にはオレの魔力を使えば良いとしても維持にはお前の魔力が必要になンだが、お前の今の魔力量的に最大魔力量の二割か三割分制限掛かるぞ」

「おおう……じゃあ俺の魔力だけじゃ起動できねえのか」

「あァ、大まかに接続までの流れを言えば“この結界と同じ次元に最小の結界を創る”“この場所とその場所を繋げる”“縮めた距離を維持する”だからなァ」

 

 ふむ、創って繋げて維持する。

 なるほど?

 

 聞いた説明をなんとなくイメージしやすいよう自分の中で噛み砕く。

 

「例えば、マユゲの酒の器を今いる結界、酒瓶を新しい結界と仮定するけど。今マユゲの器は机の上にあって、酒瓶は俺の手にある。これは今それぞれで存在している次元が違う」

「そォ……だな。あァ、比喩的にはそォだ」

「まず初めに酒瓶を同じ(じげん)に置く、そして魔術で中身を操作して器の中に酒を入れる」

「二点の場所を繋げてるなァ」

「これを維持する、って認識で良い?」

 

 机の上には愉快な光景が広がっている。

 器と、立った酒瓶。

 酒瓶からは見えない管を通っているかのように酒が器に向かって伸び、器に残っていた酒と繋がっている。

 それは魔術で酒を注いでいる光景で、他の者が見れば普通に注げと呆れられるだろう。

 

「認識としてはまァ、それが楽だろォな」

「世界には色んな机があるから単純に結界を創るだけじゃダメなのか」

「あァ。ンなモン棚の酒持って来いっていうくらい雑な話だ」

「ちなみにどの酒が良い?」

「二番目の棚、紅い貼り紙の――そう、それだ」

「なんだこりゃ。アーラ・ラミ・ルウィア?」

「あとその右隣の下にあるのも頼む」

「これは……ロカリー酒か」

 

 紅い方はよくわからないがロカリー酒は見たらわかった。

 ただ見ただけではそれがキツイ方のロカリー酒なのか甘い方のロカリー酒なのかはわからない。

 

「……試しに一口、アーララミの方一口飲んでみろ」

「おう……なんかあんまり酒って感じの匂いはしねぇな。雰囲気的には柑橘系……いただきます――がぁぁあああああぁぁッ!? 喉がぁぁあああッッ!!?」

 

 口に含んだ瞬間伝わってくる柑橘系の酸っぱさ。

 以前苦手な系統の酒を飲んで以来初見の酒はあまり深くは味合わないようにすぐ飲み下すようにしているのだが、今回ばかりは少し味わえばよかった。

 喉を通る強烈な酸味と酒精。

 二重苦が喉を滅ぼす気さえした。

 溶かすような酸の刺激と灼けるような酒精の刺激。

 ちゃんと一度味わい、吐き出せば良かったと後悔がやってくる。

 

「プフッ――ハハハハハッ! 完ッ璧な反応だなァ、オイ!」

「なぁにこれぇ……」

「それはかなり酸味の強い柑橘から作った酒でな。よほどの変人じゃねェ限りは割って飲む」

「そんなモン飲ますなよぉ……」

「くくっ」

「ったく……これで割って飲むのか。……半々か?」

「あ、おい」

「グェッフォッ!! 甘ッ!?」

「なンでてめェは自爆してンだ……酒それぞれ一、水かお湯二で割ンだよ」

 

 喉がぁ……。

 酸っぱいと甘いと酒で喉が死ぬよぅ。

 一分程度で俺の喉に多大なダメージが……。

 

「ほらよ、オレ的にはこれくらいが好みだ」

「お゙ぉ゙――美味い゙ッ」

「その声じゃあンま美味そうには聞こえねェな」

「ふへへッ、自爆しちった……お、治っだ。治ってねえわ」

「あ~、笑えンなァ」

「酔ってるな。俺ら」

 

 自分たちで食事を作るとペースの問題で酒飲みのペースが生えーんだよな。

 一気に作んねぇと。

 

「――マユゲ、カルパッチョ食う?」

「なンだそれ」

「生で食える系の肉とチーズとかソース掛けた料理。カルパッチョ作んのはかなり久々だし作ったのも一回だけだがまあ、難しい料理じゃないしイケるイケる」

「まァ、モノは試しだ。食わせろ」

「あいよ」

 

 ま、使う食材が既視感あるモンとはいえ初めて触るヤツなんだけどね。

 

「おい」

「へーきへーき、ちゃんと毒ないヤツだからぁ」

「そォいう問題かァ? どォせそこらの毒なンぞ効かねェけどよォ」

 

 わぁ、便利ね。

 さて、作りますか。

 といっても普通に切って適当にソース掛けて、ってするだけなんだけど。

 肉を薄くスライスして~、チーズ適当に削って掛けて~、油と酢と塩と砂糖と適当なの混ぜたソース掛けて~、香辛料適当にちょちょっと掛けたらおしまいっ。

 あとはちょっとソースの味変えて、アボカド的な果実……実もそうだけど種ちっさッ、ワイルドアボカドかよ……流石にそこまで小さくねぇかぁっ。

 

「ほいよ。適当に買っといたカナッペっぽいヤツもあったの思い出したからそれに載せて食うのもご自由にドーゾ。あと雑に作ったサラダも」

「さてどんなモンか……結構ウメーなァ。ソースが結構好みの味だ」

「お、口に合って何より。っかー、ウメーわぁ。自分の料理の感覚が恐ろしいわぁっ」

「自分で自分褒めンな、アホ」

「あ、サラダちゃんと混ざってねぇ。しょっぺぇ」

「聞けよ」

「聞いてま~すよ」

 

 あ~、楽し~。

 笑いの沸点が底見えるレベルで浅いわぁ。

 ……沸点なのに底なの?

 笑える。

 今なら橋が転んでも笑えるぞオイ。

 

「ほとんど食ってねェ状態で強い酒飲ますンじゃなかったなァ」

「むしろマユゲはよく平気だな」

「酔ってはいるぞ。ただ話す前に普段の自分と照らして喋ってっからなァ」

「それができる時点で酔ってねぇんじゃねぇの?」

「そこは慣れだなァ」

 

 慣れで酔いの影響ってどうにかできんだな……初めて知った。

 俺もやったらできるか?

 ……そもそも普段そこまで考えて発言してないから普段の言動憶えてねぇや。

 

「あっはっは!」

「いきなり笑うンじゃねェよ。内心聞こえてるけど驚くだろォが、この酔っぱらい」

「メンゴ」

 

 ほうほう、いきなりだと驚くのか。

 今度ドッキリ……無理だな、素面じゃやろうとした時点で悟られるし酔ってるときにそれするメンタルねぇわ。

 

「……お前って酔うと妙な気張り抜けるよな」

「む?」

「酔ってるせいで自己防衛の感覚が消えンのか?」

「はい?」

「お前の普段の態度。アレはコエーからだろ? 何怖がってンのかは知らねェがよォ」

「……」

「おめェはビビりすぎなンだよ。もっとしゃんとしろォ。たしかにアホな奴はいるがよォ、常にそれ確かめなきゃおめェは生きられねェンですかァ?」

「でもよぉ、裏切られんのはこえーじゃん」

「だからおめェを受け入れる気になンねェンだよ。裏切られて命まで失うことなンぞまずねェンだよ。最悪命さえありゃ現在地までは戻せる、それはほぼ何もなしにここまで来たおめェならわかンだろォが」

「まあ、それは」

「居場所失うのがコエーだァ? オレもクアークもいンだろォが、金がなくなったところで見捨てねぇっつーのォ」

「……」

 

 普段の、俺……。

 怖い?

 自己防衛。

 そう……なのか?

 

「もっとも、おめェのそれはもはや一種の素になってンだろォけどなァ」

「わからんて」

「普通にしてろって話だ」

「え~? 俺嘘吐いてないぞ?」

「嘘云々じゃねェっつーの」

 

 いやホント、わからんて。

 

「おめェは元々他人を信じやすい質だろォ? そのくせして経験のせいですぐ疑ってかかる」

「おう? なんでそんなことわかんのさ」

「見てりゃわかンだよ。それにどォせそのうちそォなる」

「はい?」

「とにかくだなァ。おめェが普段抑えてる色ンな部分、一度何も考えず出せっつー話だよ」

「抑えてる……そんな自覚、ねぇんだけどなぁ……」

 

 俺はこの世界に来て、これまで好きに生きてきたつもりだ。

 たしかに社会的面で自重したことや信念に則って自重しなければできた行動も自重したことはある。

 それは例えば【洗脳】だったり。

 この街に来て一〇日ほど経つがその力を他人に向けたことはない。

 一度だけ、ウェアウルフ相手にしていた時に油断して、一度だけ使いはした。

 だがそれだけ。

 信念にそぐわないというのもあるし、自分自身扱いかねている。

 この力をどうすればいいのか。

 今はクアークの気持ちが少し、わかる気がする。

 能力は違うし悩んでいる時間も圧倒的に違うから“わかる”なんて言葉クアークに失礼だけど、それでも最近はそんな言葉を思わず使ってしまいそうになる程度には少し“わかる”気がした。

 

「お前、クアークにも他の奴らにも言われたろ。お前が誰かに力を貸すように、オレらもお前に何かあったら力貸すンだ。だからあンま悩むンじゃねェよ」

「……ふふっ。そうか、ありがとう」

「礼なンぞ言うンじゃねェ」

「そうね、いちいち言ってたらキリねぇな」




 一五一話から書き方少し変えようかな……


 アーラ・ラミ・ルウィア:そのまま意訳すると“太陽神の加護を受けた酒”
             まあ一般的な意味としては“柑橘酒”です
             特定の酒の名前ではなく柑橘系果実酒の総称
             ビール的なそういうあれ
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