ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一五一話 Merchant City of GrabenStadt

「やってきたぜ、グラーベンシュタット!」

 

 検問を終え、低い門を潜り抜けた瞬間に叩くように浴びせられる街の活気を孕んだ熱波。

 その熱に中てられた俺は人目も憚らずそう叫びながら空に手を向け両拳を突き出した。

 入った瞬間に届く多種族が織りなす商売の喧噪はそれだけで俺の心を躍らせる。

 それは俺がまだまだこの世界に慣れていないことを意味するのだろう。

 

「旅の後でよくその調子維持できるわね……。アタシはもう精神的に疲れたわ」

「異世界人だしそんなモンじゃないか?」

「ウチも昔はありましたねぇ。旅に出た直後は見るものすべてが新鮮で……ダメですね、おばちゃんみたいなことを言っちゃいます。年齢を考えたらおばちゃんですけど」

「見た目美人だし種族換算なら若いから平気だろっ。ちなみにこれからどうする? 俺はギルド行こうと思ってるんだが」

 

 理由はわからないがフードを深く被ったローブの人間が多く歩く少し異様な光景。

 以前の感覚でいうところの“典型的な魔術師”といった風体に目を引かれつつも他の光景にも目を向ける。

 まだここは大通りだからそこまで移動が困難になることはないが、チラリと見える小路には歩行速度が制限されるであろう程の人が見えた。

 それぞれで出した統一感のない日よけ(シェード)は感覚的に異様と思うほど高く、それが高身長種の為と理解すると少し楽しくなる。

 厚くも軽いシェードは風でハタハタと揺れながら小路に変化を与え、一枚の絵を生み出していた。

 

「ん~、あーしは適当に露店でも見るかな」

「アタシは宿に行くわ」

「ウチは……ギルドの書庫に行こうと思ってます」

「なら一緒に行くか」

「そうですね」

 

 見事に目的地バラけたな。

 別に問題はないけど。

 

 事前に泊まる宿だけは決めてある。

 そのため目的が全員違おうとも簡単に合うことができる。

 

「じゃあアタシは四人分の部屋、とりあえず一ヶ月で取っておくわね。しばらく下の酒場で過ごすつもりだけど誰か一人くらい早めに帰って来てね」

「ならウチが。九の鐘の前で良いですかね?」

「まあ、それくらいで良いわ」

「あーしもそこまで遅くならないだろうから早く帰れんならあーしが鍵預かっててやるよ。どうせ明日は休みだからな」

「俺は未定だし、二人に頼むわ」

「じゃあそういうことで、解散」

「じゃあね」

「お疲れ様です」

「おつカレー」

 

 解散し、ギルドに向かって歩く。

 話題が特になく無言だが、そもそも短くはあるがそこまで浅い関係性でもなく、無言が苦痛になることがないからお互いに変に気を遣ったりせずに無言のまま道を往っていた。

 

 地味に……腹減ったな。

 ギルドでなんか食うか……。

 何があったっけ、この街。

 東西に地下で繋がってるから飯系の物流も整ってるから結構種類はある。

 ……あ、串焼き。

 そのうち適当なオフか朝飯として買って食うか。

 

 商業都市グラーベンシュタット。

 ここはその名の通り商業を主として発展する都市。

 モンスターによる稼ぎも大きいが、この街が栄えている理由の多くが“地理的中心地”であることと“地龍の通り道(アヴァムギーヴ)によって東西の街と通じている”点だろう。

 ルートヴィヒの中央部に位置し、多少海抜が高いものの周囲は平坦ゆえ移動が容易い。

 モンスターから守る壁が必要ない程度には安定した土地。

 北部からの往来はほとんどここを通じて行われ。

 最西端と最東端の街も王都に行く場合ここを通じて移動。

 それゆえに人通りが多い。

 そして職業人口の第一位を多種多様な“商人”が占めているから他の街と違ってギルドへ向かう者の姿が少ない。

 より正確には“ギルドへ向かっているとわかる者”の数が少ないのだ。

 開拓兵の数が人口比で少なく、そもそもギルド方面に向かう人間の数が少ないうえに商人の格好は多くが一般人とそう大差はないのである。

 そのため断定できる人間が少なかった。

 

 この街って鍛冶屋充実してるっけ?

 本読んだけど時間少なかったから記憶が……。

 あるのは知ってるしポーラ&ペトラ曰くプロミネンス系列は基本ほとんどの街にいるらしいからそこは心配いらないけど。

 素材……どうなんだろ。

 鍛冶向きの素材とかあるのか?

 広いしありそうだけど。

 それに地下あるし。

 

 地龍によって拓かれた地龍の通り道(アヴァムギーヴ)は表面上は一本の地溝だが、実際はそうではない。

 地下で広がり、それはかなり奥まで続いている。

 そして奥まで続いた空間は途中でさらに地下へと潜り、巨大な迷宮のような洞窟に。

 そんな巨大な空間には大量の鉱物資源を有しているのだ。

 継続して採掘することがかなり困難なため大規模な採掘は行われないが、時折探索が進みある程度の安全が確保された地帯において開拓兵護衛の下採掘が行われたりしている。

 それ以外にも奥では希少鉱石が採掘しやすいという話でそれを目的に活動している開拓兵も中にはいるらしい。

 が、自主的に行うのはほんの一部で、多くが依頼によって調査と同時並行で採掘する開拓兵がほとんどだ。

 

「それでは、また夜か明日の朝に」

「ん、おう。お疲れさん」

「はい、お疲れ様です」

 

 は~、これはまた雰囲気が違いますなぁ。

 入って初手の空間、今までで一番広いんじゃね?

 商人が多いからか?

 

 外観から察した大きさに対して入ってすぐの空間の割合がこれまでと比べ大きすぎる。

 それは商人が理由、そう考えた。

 普段開拓兵として利用しているから実感はそこまでないが、そもそもギルドは商人と開拓兵の両方が所属する機関。

 そしてこの街グラーベンシュタットでは商人と開拓兵の人口割合が圧倒的だ。

 つまり利用者もそれだけ多いからギルドもそれ相応の規模が求められ。

 商人がギルドの奥へ向かう用はそこまでないため訪れた商人のほとんどが入ってすぐの場所、受付で用を終えるのだ。

 最も活用される場所は受付であり、そこに面積を割くのは当然のこと。

 

「そういえばギルドにいくつかの店が出てんだっけか? 使ったことね~」

 

 恐らくは利用者は多いのだろう。

 ギルドという開拓兵が最も訪れる場所に店を構えているのだ、それは当然のこと。

 だが異世界人ゆえにこの国が珍しく感じ、街を見て回りたい俺にとっては観光がてら店を探すというのは好きな時間であったためギルド館内の店を活用したことはなかった。

 

「おうアンタ、邪魔だ、退いてくれ」

「あ、スマン」

 

 ギルドの様子に興奮して立ち止まったせいで邪魔になってしまったらしく商人らしき男にシッシッと手で蠅でも追い払うかのように退くように促される。

 横の方へ移動し、どこかに座ろうと周囲を見回した。

 すると奥の壁、連絡用の掲示板とともに常駐依頼の掲示板を見つける。

 他の人たちにとっては見慣れたものらしくそれに目を向ける人間はほとんどいない。

 邪魔するモノは何もないからと二つの掲示板の近く、それを読める範囲の空いていた席に腰を下ろす。

 

 う~ん、やっぱ商業都市なだけあってそういう系の依頼ばっかか。

 

 ほとんどが地龍の通り道(アヴァムギーヴ)で繋がった街までの魔導船護衛依頼、一ヶ月分の依頼が三の鐘(午前八時)から七の鐘(午後四時)の間の一日五度分出ている。

 上りと下りの二方向があるからさらに倍の一月に三〇〇の魔導船が出ているようだ。

 

 一日一〇の依頼が出ていると考えたらかなりの開拓兵が護衛に使われてないか?

 それにそんな重要な役割を開拓兵だけで……いや、衛兵か!

 そもそもほとんどの魔導船が民営じゃなくて国営……魔導船運航取り仕切ってる側で衛兵が使えるから開拓兵は余剰戦力として?

 いや、来た開拓兵の数に応じて衛兵に休みを与えてるか別の任務を与えてるとかか。

 別に来なくても問題はないけど来てくれたら楽になるからありがたいみたいな、ホテルのアメニティグッズ的なそういう。

 

「ん~……ンンンン」

 

 なんで俺って考えても意味ないことをすぐ考えちゃうんだろ。

 

 

「ぶはッ」

「んぉ?」

 

 唸りつつ自分のアホさに呆れていると正面から噴き出す声が聞こえてきた。

 低く、顔を見ずとも男とわかる音。

 顔を上げて確認するとやはりそこには男がいた。

 

「笑えるなぁ、オマエ」

「? そりゃど~も?」

 

 よくわからない状況に思わずよくわからない返しをしてしまい。

 さらにそれが面白かったらしく男はギャハハと笑う。




 川はこの国において結構重要です
 それは水源という意味ではなく水路という意味で(水源としても利用はされますが水が欲しけりゃ魔術なり魔道具なりで出そうと思えば出せますからね)

 その重要度は我々の世界における中世の森、と同じくらいですかね
 中世の森には“森番”という、まあ簡単にいえば文字通り森を護る公務員が居ました
 森は莫大な財産のためその所有権を巡って色々争ったり、が普通な時代
 王領林なんて言葉もありますし、当時は森林を管理するため“森林長官”“林務官”“樹木管理官”など色々ありました

 閑話休題(それはさておき)、陸路以上に簡単に移動ができる水路というのはかなり重要で上手く使えば発展を急激に加速させられるし、失敗すれば国が亡ぶのも容易
 地龍の通り道(アヴァムギーヴ)――運河(ルイズギーブ)を活用したからこそグラーベンシュタットは“商業都市グラーベンシュタット”として発展したので
 それゆえに管理などは国家が行っているワケです


地龍の通り道(アヴァムギーヴ)の補足

 多少の蛇行はあれど大体真っすぐ続いている、と解釈されるかもしれませんが(説明していないからそう解釈するしかない)実際は一部地上が残っている場所もあり、その場所の一つにはヒイラギがゼーフルスに向かう時に使った川が通っています
 地龍たちの通った大穴が崩落したのが今の姿で、奇跡的に崩落を免れた場所がそうやって残っている、と

 ちなみに川が残ったことに関しては奇跡ではなく、地上に川が流れていると察知した地龍たちがその地点だけあまり暴れ回らなかった、という理由があります
 多少の濡れはともかく川レベルの濡れは嫌、と
 それ以外は本当に奇跡で、それがわかっていていつ崩れるかがわからないため例え陸路があるように見えても誰も通りません、怖いからね

 地上を通る川は人間も壊れられては怖いため定期的に魔術による補修と補強が行われています
 壊されたらかなりヤバいからそこは陸路として利用されないどころか近辺への立ち入りすら禁じられているレベル
 近くの街も必要最低限の小規模
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