ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

156 / 183
 四月七日の謎、再び
 昨日の19:30から【UA】が約1000の増加、【お気に入り】は約20、【総合評価】は約20増加……
 何が起きたのかよくわかりませんがとにかくありがとうございます!
 そしてこれからも応援よろしくお願いします!

 これをエネルギーに頑張ろうと思います


第一五六話 手札の優劣関係

「てか普通に下りてきちまったけどモルガンがいるし上である程度虫に慣らした方が良いんじゃないのか?」

「私虫平気だから気にしないで」

「そう? 羨ましいわ」

「私みたいになりたいならそこのアホに頼めばいいよ」

「?」

 

 前を歩くマーリンはその言葉に気づいて何故かいい笑顔を返してくる。

 本当に何故だろう、罵倒されているのは確実なのに。

 そういう趣味なのだろうか。

 

「子どもの頃アイツにいきなり虫を渡されたんだ。手を変え何度かされたせいでもう慣れてしまったよ」

「うわぁ……元は苦手だったんだろ?」

「うん」

「えげつねぇ……」

「アイツは今も昔もクソガキだよ」

 

 いきなり虫って……手渡しか投げつけか箱に入れてかはわからんが、ヒッデェな。

 俺だとどんな反応すっかな?

 思考停止?

 いや、投げつけ……握り潰し?

 むしろそのレベルの嫌がらせを何度もされて“嫌い”で済むのがスゲェわ。

 大人になった今は酷くてもそこまで、って思えるけど些細なことで感情が動く子どもの頃にそれは……ありえんだろ。

 

「マーリン、俺に同じことしたらぶん殴るからな」

「流石にもウしねぇヨ!? そんなに信用ないカ?」

「あるワケねーじゃん。出会って二四時間も経ってない上に幼少期のロクデナシ話聞いてんだぞ? それで信用する方が頭おかしいわ」

「はッ、正論だナ!」

「君がマトモな感性で良かったよ……もしアレと同類ならどうしようかって……」

「心外だな。俺は性格悪いがその手の類の悪事はしないぞ。あくまで俺がするのは反撃、悪感情を向けてきた相手にだけだ」

「そうかい」

 

 探知を切れば何も見えない暗い階段。

 前を見れば果てしなく、下を見ても果てしない。

 広大な地下、龍が崩落しないようにと掘った地龍の通り道(アヴァムギーヴ)のさらに下に広がる第二層は普通に歩けば降りるだけでかなりの時間を要する。

 ただ歩けば一〇分以上。

 土合駅を超える深さと長さ。

 前にも下にも探知の限界範囲は遠く及ばない。

 だからこうして話すことでこの暗闇と岩壁と無限にも思える空間と階段の退屈を紛らわせるしかなかった。

 

「おっ、見ない顔だな。最近来た奴か」

「そうダ」

 

 階段を降り着いた第二層。

 武装の最終確認を行っていると夜からの探索を行っていたと思われる一行と遭遇する。

 メンバーは四人。

 男が二人に女が二人。

 男の人は片方が杖を、もう片方が弓を使っていて。

 女の人は片方が両手戦斧を、もう片方が片手剣と盾を。

 パッと見では男女が逆転したような装備をしているから少し面食らってしまった。

 

「なら忠告だ。さっきまで私たちが戦ってたから向こうのモンスターは活動状態で通常よりも警戒心が高まってる。ここのモンスターと戦うのは初めてだろうから比較対象がないだろうけど上とはダンチだから気ぃつけろよ」

「なるほどナ、忠告感謝すルゼ」

「気にすんなよ。私らの影響だからな」

 

 こういうのって基本無関心だと思ってたけど人によっては言うんだな。

 これが初めてだから義務ではないだろうけど。

 ん~、これからは俺も言うか?

 単に俺らが新顔だからって可能性も充分あるけど。

 

「よし、じゃア行くカ」

「忠告ガン無視……」

「ヒイラギ、諦めた方が良いよ」

「……うっす」

 

 アレって厚意でしょ?

 そんなあっさり無下に……。

 それに俺たち初見だぜ?

 無謀なんじゃないの?

 

「ちなみにさ、二人はここに出るモンスターのこと知ってる? 俺はスマン、知らん」

「初めてを大事にしたいカらナ! 調べてなイッ!」

「前の街で少しだけ……」

「モルガン、情報頼む……」

「わかった」

 

 昨日は酒飲んだせいで完全に頭からそのことすっぽ抜けてたんだよなぁ。

 マジでごめん、モルガン。

 

「今日行くあたりに出るのは種類的でいえば第一層(うえ)の同じような浅い場所に出るモンスターの変種とか強化種だね。浅い地域だと基本的には虫が出るから気を強く持った方がいい」

「おう……ありがとう」

 

 虫。

 もはや言葉すら嫌な響きに感じてしまう。

 昨日のがまだ少し忘れられない。

 忘れてしまえば同じ苦しみをまた味わうことになるのだが、瞼を下ろせばその暗闇の中をゲジゲジが這いまわるのだけはやめて欲しいものだ。

 そのせいで今日は若干心がすさんでいる。

 睡眠すら【洗脳】で強制的に摂ったのだ。

 

「来た」

 

 上を飛ぶマーリンからの報告に反応してすぐさま指輪(さや)から剣を抜く。

 構えるは(アジャラ)

 黒と白、二つを構え、神経を研ぎ澄ませる。

 

「鎧百足の群れ、数は五。一、二、一、一。どうするヨ」

「まず私が動きを止めるからその後三人でそれぞれ攻撃。自分の手札がどれくらい通用するか確認しようか」

「了解。手伝えることはあるか?」

「大丈夫、すぐ終わるからさ」

「わかった」

「ならもう行く。一応周囲の警戒よろしく」

「おウ」

 

 手筈を決め、モルガンは瞬時に腰を落とし、飛び立った。

 刹那の輝きが背を覆い、機械仕掛けの翼が背中に生じ、一瞬で鎧百足たちの頭上へと辿り着く。

 そして俺たちの方向へ向かって直進していた鎧百足たちの正面に蒼暗い霧が湧き出し、そこに入り込んだ鎧百足たちは不思議なことに立ち止まった。

 だがそれを不思議がっている暇はない。

 今するべきは戦うこと。

 立ち止まってしまっている以上は一方的な攻撃でしかないがモルガンが足止めをしてくれているのにそれを無駄にしてはならない。

 

 まずは一体!

 範囲を威力に収束させて――凍らせるッッ!

 

 雪華に込めた凍結魔術。

 様子見としてあえて最大出力ではなく瞬間的に構築できる、つまり反射的な攻撃で出せる攻撃の範囲で冷気を放った。

 範囲を捨てたために射程は剣先から約五メートル。

 ブーストされた魔術は余剰凍力で地面に針のような氷を生み出しながらコンマ数秒で駆け抜け、鎧百足の全身を氷で覆い尽くした。

 

「ちッ」

 

 鎧に魔術の威力が落とされ内部全て(ぜんしん)を凍らせきることができなかった。

 だが魔石までは到達し、一体を一撃で殺すことには成功。

 続いて踏み込みながら五歩手前の位置で剣に魔力を込めて斬撃を飛ばす。

 白の斬撃は弾かれ無傷に、黒の斬撃は数ミリの傷をつけてそのまま威力を失った。

 そのまま連続して今度は武器強化との複合。

 さらに歩みを進めるように一歩踏み込んで斬撃を飛ばす。

 白は脚を二本切り落とし、黒は脚を五本切り落とした。

 そして残りの距離を一気に詰めつつ背に上がり、頑丈な装甲を狙って胴体を輪切りにする。

 白も黒もともに装甲を真っ二つに。

 だが魔術の増幅としての役割が大きく、弱いワケではないが黒鍵に比べると少し物理的攻撃が劣る雪華による攻撃は断面が少し歪になってしまっていた。

 

「もっと丁寧にやりなよ。倒すのが目的じゃなくてどれくらい通用するのかを調べるためなんだからさ」

「ごめんごめん、一体目は威力重視とはいえ抑えたんよ?」

「二体目は良かったけどね」

「そうか? もうちょっと上手くできたと思うんだけどな」

「初めての相手にしてはちゃんとできてるさ。私の能力にも動揺せずすぐ対応できてたしね」

「あ、そうだ。アレってなんなんだ? 言える範囲で教えてくれ、具体的には対象を選べば俺でも霧の中に突っ込んで良いのか」

 

 切りに掛かる時呼吸を止めた上に全身を魔力で覆ったんだよなぁ。

 もし防御貫通で作用とかなったら百足とキスすることになってたし。

 あ~、考えただけで恐ろしい。

 

「あはは、大丈夫だよ。対象は選べるさ」

「お~、そりゃ良かった」

「人間相手にも使えはするけどね」

「へぇ~。相手の動きが止まった辺り固定系か神経作用系、もしくは精神作用系? ……いや、感触的に固定系はないか。だとしたらどっちか……霧……幻覚? ん~、わからんっ」

「幻覚というのは当たってるよ。バラしちゃっても問題ないから教えてあげるけど、私の固有能力は【夢幻霧】って言ってね、相手に幻覚を与える能力なんだ。霧の範囲内なら私の想像に従って魔術の構築なしにいきなり石の壁を創ったりもできるんだよ」

「強ッ!?」

 

 たしかにそれはバラしても問題のない話だ。

 霧の中に入れば不可避

 その効果を知っていようがそうでなかろうと何も関係がない。

 勝てる相手にならば確実に勝てる能力。

 ゴーレムに勝てる俺でも油断をすればゴーレムに負ける。

 けれどモルガンのその能力があれば展開している間は負けが消えるも同然。

 

「そんなにかい? ただの幻覚としか思えないけど?」

「霧の中なら盾を創れる。それはつまり一時的なモノだろうと物理的干渉ができるってこと。さっきみたいに肉体にすら干渉可能なら相手の腕を想像で切り落とせば回避不能の攻撃、だろ?」

「そんな……アホな……」

「だって想像の具象化じゃん? できるできる。つ~か加えていうなら可能範囲は霧の中に限定されるけど、逆に言えば霧の中なら魔力残量の範囲内でどんな魔術も使えると思うぜ?」

 

 魔術の構築なしで想像に従って現象を引き起こすならそれは一種の全能だ。

 全能という神にすら届きうる能力に対して魔力量という枷を着け、霧の中という縛りを加えたのがモルガンの【夢幻霧】という能力。

 モルガンは魔術が苦手と言っていたが、その実最強の魔術師の可能性を秘めている。

 

「面白そうナ話しテんナ」

「あ、二体とも一撃で倒してすることなくなったマーリンくんじゃん、どったの?」

「モルガンが強いみたいな話してっカラヨ、本当にそうなら上行ったら久々に戦えって言いに来た」

「え~、アンタとぉ? 嫌」

「戦えヨ」

「大体それはヒイラギが勝手に言ってるだけでッ。君ッ、なんてことを言うんだいッ!?」

「でもできるっしょ」

 

 ダイジョブダイジョブ、多分できるって、多分。

 防げるってことは非実体の惑わすための幻影じゃないってことだし。

 イケるイケる、“疑わない事”それが“強さ”だ、って海賊王の右腕も言ってたから。

 

「ま、試すだけならタダだし。まずはやってみようぜ」

「そうだナ。モルガンことだからどうせ失敗するダロうけド」

「よしクソ野郎ッ、アンタの腕で実験するから覚悟しな!」

「ヒイラギ身代わり頼ンダ!」

「え? じゃあ腕で良いか?」

「は!?」

「おイおいオい!? それで良いノカ?!」

「まあ、本来の仲間に訓練の時切られまくってるし……」

「流石に一時的とはいえ仲間の腕を切るのはちょっと……流石に怖いよ」

「じゃあやっぱりマーリンが……」

「断ル!」

 

 ま、それもそうか。

 俺の感覚麻痺ってだけだし。

 

「しゃーない。適当な鎧百足(じっけんたい)でも探しますか」

「私はできると思わないけどね」

「お前はホント昔かラダメだヨな……ダメモルガン」

「ッ。それくらい余裕だよッ! それより自分の心配すれば? これを機にアンタなんか全然比較にもならないくらい強くなってやるんだから!」

「ほぉ? 随分ナ自信じゃねエカ?」

 

 ……うん、仲がよろしくて大変結構。

 鎧百足(むし)が大量に来てるけど。




鎧百足:特定の種を指す言葉ではなく大まかな分類(ゴーレム、みたいな)
    基本的には表面の硬さに特化しているため凍結魔術のように内部に影響を及ぼすような魔術は効果が大きい
    他に通用しやすいのは雷撃など
    ヒイラギの【洗脳】のような力もあっさり効く
    だが全く耐性がないワケではなく、相性に胡坐を掻いて手を抜くと簡単に魔術を無効化される
    武器で戦うなら戦槌が推奨される、がそれはあくまで“メタ装備”でありさらに奥に進む場合打撃系武器だけは不利になるため用いる場合は複数種の武器を用意するか変形装備を用意するのが得策
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。