ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一六七話 正しいやり方

「なンで今日は下集合だったんダ?」

「ん、することがあったから

「することって?」

「依頼。余裕ある時にちょこちょこ進めようと思ってな。上の方が良かったか?」

「大丈夫さ、気にしなくて構わないよ」

 

 そうかい。

 そりゃ良かった。

 

「今日はどこまで行く?」

「第二層、奥だナ」

「奥って……どれくらい?」

「ヒイラギ、やりたいヨウにやロウゼ」

「ぁ……」

「まあ、そういうことだよ。コイツがこう言う時は何も考えないで突っ込む時。こっちが作戦を立てても聞かないから諦めなよ」

「うん」

 

 マジか~。

 ……マジかぁ。

 

「よし、行くゾ!」

「うぇ~い」

「酷い声……」

「……いぇ~いッ!」

「無理しなくてもいいからね? 私が補助してあげるし」

 

 いざとなったら奴の手綱を握ってください!

 オナシャス!

 実害ないから性格が悪いとかそういうの意識しなかったけど、意外と気が合うかもって思ってたけど。

 性格が相容れないタイプだコレ。

 

「一〇時方向かラ五体接近、多分気づいてルゼ」

「んじゃ二体貰って良いか? ちょっと本番前に実力把握しておきたい」

「なら私も前の使い方が安定して可能か、試してみるから二体貰うわ」

「次余分に来タラ俺が貰ウゾ」

「はいよ」

 

 構える。

 ……いや、この構える動作要らねぇな。

 自然体から一気にやってみるか。

 

 短剣を握り、腕を少し上げたところで下げる。

 実験に実験を重ねるのは間違っているだろうが、初動の最低値を自然な範囲で限界近くまで下げた時どうなるかというのはふと気になり、試すことにした。

 それぞれが視線、殺気、魔術でムカデの意識を惹き、それぞれの範囲で戦闘を開始する。

 

「もう、ちょい――」

 

 二〇メートルを一秒足らずで接近するムカデに対して極力自然体で眺め、間合いに入った瞬間即座に全身に順に力を込めた。

 一点から広がる力。

 連鎖する力はその先の筋肉を稼働させ、突き進む力を増幅して全身に至る。

 

 きゅっとして……ドカーン。

 

 引き絞られる筋力と魔力。

 ありとあらゆる力が込められた短剣がその強固な頭部と接触し、刹那の手ごたえののち、下へ向かって再び進み始めた。

 切り裂いた感触。

 斬撃は頭部を切り裂き、伝播し、真っ二つに分断した挙句、末節部で弾け飛び、今度はその爆発とも思える破裂は頭部まで伝播してきた。

 

「次ィッ!」

 

 左から襲い掛かってくる二体目のムカデ。

 顎肢が開かれ、悍ましい口が見せつけられる。

 

 気持ちワリィ。

 

 身を翻すように左脚を軸にして回転し、貫通するというイメージを持って額に突き刺す。

 油粘土にへらを突き刺すような感触とともに頭部に渦巻く魔力が切っ先を引っ掻き、剣身に籠った魔力を掻き乱し、結び目を解くように膨張した剣身の魔力は頭部の魔力を弾き飛ばし、頭部を破裂させた。

 

「うげぇ、エグッ」

 

 意味もなくムカデと自身を重ね合わせ、頭部が弾け飛ぶ恐怖に引き攣った笑みが浮かぶ。

 頭部が弾け飛ぶとしばらくして全身が霧散し、魔石だけになって消えた。

 真っ二つになった方は全身が粉々になったからかそっちも魔石しか残っていない。

 より正確には素材(ドロップ)として残ったらしい脚は粉々になって無価値になっている。

 

「何かあったのかい?」

「なんでだ?」

「いきなり強さが変わってからさ」

「強くなった、というか力の出し方を昨日なんとなく理解した感じだな」

「なるほど、そういうこと」

 

 チラリとモルガンが戦っていた方へ目を向けると目に入るのは輪切りになったムカデと氷像と化したムカデの姿。

 輪切りになった方は節ごとに綺麗なほど切られている。

 

 凍ってる。

 ……俺の存在意義が消えたな、ハハハ。

 

「にしても全然ダメだわ」

「そうなのかい?」

「なんか切ったつもりなのにケツから弾けた」

「ああ、それは想像が半端だからだね」

 

 想像が半端?

 もっと想像力を鍛えろということか。

 普段から妄想をしてそのあたりを鍛えた方が良い、と。

 

「多分私の推測だと“切る”ってことしか考えてなかったんじゃない?」

「まあ、ざっくり“真っ二つになれ”って感じに考えてたな」

「ダメなのはそこだよ。切ることだけでその後が決まっていない。ヒイラギは“切る”という想像を剣を通してムカデに流し込んだ。それでムカデは切った頭部から“切れる”けれど、その攻撃は抜けてないんだよね」

「抜ける? ……抜け?」

「簡単に言えば攻撃の結末。初心者にありがちな失敗で、それができてないと余剰威力がムカデを無駄に傷つけるんだよ」

 

 余剰威力。

 う~ん?

 つまりオーバーキルってこと?

 加減をして倒せってことか。

 色のない状況じゃキツイんだよ。

 種類がロクにわからんし。

 サイズで見分けろってことですねぇ。

 経験積まなきゃ無理ゲー過ぎる。

 

「必要なのは斬撃を伸ばすこと。切るのは敵だけじゃない。その少し先も切るんだ」

「あ~、余計な威力を大気に拡散させるってことか」

「そういうこと。威力が敵の中(そこ)で完結してしまってるから余った部分が中で暴れる」

「なんだ、意外と簡単そうじゃん」

「そう思うだろう? 意外と難しいんだよね、それ」

「おぉう、聞きたくなかったぜ」

 

 てか想像だけでここまで強化されるとか……これまでどんだけ無駄がデカかったんだよ。

 未熟過ぎてへこむわぁ。

 

「お前ラっテそんナン考えてんノか。俺ぁ蹴りだかラ気にしたことネェや」

「……なんだろう。ホント……なんだろう……」

「わかる? これがコイツの嫌なところの一つなの」

「何にイラっと来たのかはわからんが、取り敢えずイラっと来た」

「それは私らが苦労してることを平然と何も考えずに達成してるからだと思うよ」

「なンの話ダヨ?」

「こっちの話だよ」

 

 お前。

 お前お前お前ぇぇぇ……。

 関係ねぇじゃん。

 蹴りだろうがなんだろうが攻撃で強化使ってたら武器種関係ないだろうがッ。

 攻撃の威力が余ってたらそうなんだからさぁ。

 

「モルガン……」

「何?」

「俺ちょっとだけ“モルガンの考えすぎなんじゃないか”って思ってた……。ごめん、超ごめん」

「まあ、仕方ないんじゃないかい?」

「え、あれ、暗に煽ろうと思って言ってるワケじゃない?」

「多分」

「怖いわ」

「うん」

 

 空を飛ぶマーリンを虚無の目で見上げる。

 なんというか、本当に色々残念な奴だ。

 見た目も良く、実力も高いのにそれを帳消しにするのではないかというほどの性格の残念さ。

 

「……ところでモルガンはどんな感じだった?」

「ん~、まだ少し発動まで遅延があるけど威力は充分、かな。練度の問題でまだ効率は高くなくて連発はちょっと難しいかもね」

「そっか。でも固有能力だし仕方ないのかもな。通常魔術と違って効率を良くするのって難しいし」

「そうなんだよね。これって発動の規模と相手の魔術防御に消費魔力が依存するから」

 

 俺も大体同じようなものだ。

 まず【完全催眠】か【浅度催眠】かで消費量が変わって、掛ける相手の数だったり相手の魔術防御、他は相手の意識をどれくらい残すかという要素で消費が上下する。

 逆をいえばそれら以外に改善点がない。

 というかそもそも今挙げたモノは改善点ですらない。

 固有能力は例えるならあくまでも“与えられたピースを使って一つの作品を組み上げる”という作業。

 それに対して魔術を組むというのは“与えられた材料を加工して自由なピースを生み出し作品を造り、時には材料すら自分で手に入れる”という作業。

 自由度が格段に違うのである。

 

「単純に言えば魔力量上げたら解決するけどな」

「でも簡単じゃないだろう? これまで魔術なんてほとんど使わなかったから全然だし」

「魔術使わなくても魔力量は増やせるけど?」

 

 俺も色々やっててわかったからな~。

 魔術使わず身体強化と武器強化で留めてる魔力量ガン捨てのモルガンは知らないのも流石に無理はないか。

 

「そうなのかい? ちなみにどんな方法?」

「まず自分の魔力の輪郭、というか規模を掴みます」

「規模?」

「簡単に知覚できるのは体内、肉体と同じ規模の範囲じゃん」

「そう、だね。――うん、そうだね」

「んでそこからさらに自分の中に意識を向けるとその知覚範囲が拡張されてだだっ広くなるワケよ」

「? 自分の中…………あ~、ホントだ、あるね」

 

 ……チクショウ!

 俺それ認識するのにかなり時間掛かったのにッ。

 魔力の内部空間把握するのに日単位で掛けたのによぉ……。

 

「そしたらそこにある魔力を普段の魔力操作の感覚で中心部にゆっくり圧縮します。この時一気にやってしまうと身体が苦しくなるのでご注意ください」

「中にある魔力を……ゆっくり……」

「圧縮し過ぎると胸が痛むのでちょっとキツくなったな、程度で留め、その状態を維持。元々の空間に少しずつ魔力が回復していくから適当な頃合いで圧縮してた魔力をゆっくり解放します。一気にやるとゲロるから注意してください」

「回復したら解放」

「するとしばらく身体に違和感がありますが実害はないので気にしなくても大丈夫です。もし違和感をすぐに取り除きたい、という場合は魔術を使えば改善されるのでご安心を。即効性は低いですが鍛錬同様繰り返すことで効果が出るため街中で暇な時とか食事中とかにやると良いかもしれません。と、まあこんな感じだな」

「探索中は危険だからできないけど街中でいつでもできるのは良いね」

「だろ?」

 

 俺もそう思う。

 というか魔力の多い場所での違和感はノースミナスで慣れたから俺はもう結構平気だけど、それ経験ない人ってどうなんだろ。

 あ~、でも地龍の通り道(アヴァムギーヴ)もあの時ほどじゃないけど結構魔が濃いから意外と平気?

 

「今度からやってみるよ。ありがとう」

「気にすんな。目指す目標に停滞されたくはねえからな」

「それって私一人じゃ成長できないと思ってたってワケ? 生意気な~」

「ご、ごめんッ!?」

 

 だからヘッドロックは勘弁ッ!




 性格が相容れないタイプ、と言いつつも実際はそれなりに合うタイプ
 なんせ今のヒイラギはキュリアス仕込みの脳筋思考
 良く言えば柔軟で、悪く言えば染まりやすい

 脳筋で戦えるだけあってマーリンの実力は結構高い
 武力寄りで魔術はそこそこ


 魔力云々は色々設定があるけど基本出さない設定(マスクデータ)
 出すにしてもヴァーチュとかあの辺で出すと思うので多分しばらく出さないです
 もしかしたらマユゲが出したりヘルベルト関連で出したりする可能性はありますが
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