ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一六八話 怖いモノ色々

「マーリンッ、てンめぇぇぇぇぇぇッッッ!!」

「ギャハハハハッッ!」

「笑い事じゃねェンだよッ!」

「……」

 

 怒る俺。

 笑うマーリン。

 モルガン。

 周囲には無数のムカデたち。

 全てはマーリンのせいだ。

 

 クソッ。

 一体一体はそこまで脅威じゃねえのに物量のせいでゲロだるいッ!

 陣取りで負けるとか。

 

 つい少し前。

 奥まで来たは良いものの何故か聞いていたほどモンスターが襲い掛かって来ないことに退屈を覚えたマーリンが周囲へ強烈な魔力を垂れ流した。

 そのせいでそれを探知したムカデたちが一斉に来てしまった。

 一切虫耐性のない以前なら気絶していたほどだ。

 

「能力使うから探知切り替えて、ねッ!」

「おうッ」

「めんドくセエナ」

 

 瞬間、広範囲に亘って大量の霧が満たされる。

 それはモルガンの現在地を中心に半径一〇メートル。

 

「こんなに広い範囲、そんな大量にやって魔力大丈夫なのか?!」

「範囲が広いだけだから大丈夫だよ。対象はたったの三!」

「なるほど、理解した!」

 

 すぐさま魔術に対する耐性を落とした。

 理解、反応、行動、結果。

 それらは一瞬で、連鎖的に引き起こり。

 全身に漲った力は手綱を握るのが困難なほどじゃじゃ馬だった。

 

「ああもうッ、カッケエよ! マジでッ!」

「それはどうも!」

 

 思わず飛び出た軽口にモルガンも乗りつつ互いに武器を振るう。

 掛かった強化に意識を重ね、順に動きを更新。

 強化が掛かった身体能力での動きを組み上げて、斬撃を飛ばした。

 これまでの経験を活用し生まれた新たな動きはほんの僅かな間に大量の攻撃を可能にする。

 また、霧による強化は身体能力のみならず武器強化にも影響を及ぼし、飛翔斬撃は複数のムカデを一気に皆殺しにした。

 少し前まで苦戦していた相手とは思えない状況に快感と虚しさの入り乱れた感情を抱く。

 

 ああクソ……。

 倒せるのは嬉しいのに強かった相手があっさり死ぬのが気持ち悪い。

 なんだこの“敵時代は強かったのに仲間になると弱くなるキャラ”みたいな状況はッ。

 認識と現状が噛み合わな過ぎて気持ち悪いッ!

 

「そりゃッ!」

 

 蛇腹剣を取り出し、突き出し、ムカデの身体に風穴を開け、そのまま真っすぐ横へ薙ぎ払う。

 裁断機で紙をまとめて切るように、装甲に阻まれ剣筋がズレることなく剣を振るう腕を止めるまでその範囲内にいたムカデは悉くが霧散した。

 そして同時に気分も変化する。

 少し前までは強敵だった地龍の通り道(アヴァムギーヴ)のモンスター。

 だが強さを引き出す術を――自身を強者と錯覚する術を知り、強者だった敵を何度も屠ることによって相手への認識を、自身への認識を改めることが出来始めた。

 思い上がりに過ぎなかったはずの光景は現実へ。

 ムカデを上回ったという自負が、生じる。

 

 腹の奥底でやる気が煮え滾るのがわかる。

 腹筋が痙攣するみたいに動きやがる。

 ホント……良いなぁッ、オイ!

 生きてるって感じがするぜ。

 

「マーリン、あとどれくらいだ?」

「半分だナ」

「くたばれクソが」

「同感」

「ギャッハッハッハッハ! ナらムカデどもニ受け流スゼ!」

 

 スルーしてんじゃねぇよ!

 悔い改めろッ!

 

「てか今ならワンチャン――【大凍房(グレイプ)ッ!】」

 

 阻まれるからと使わなかった魔術。

 だが強化された状態でなら、と有り余った魔力を一気に消費し冷気を撃ち放った。

 頁を飛ばしたかのように一気に凍結魔術が奔り、無数のムカデの身体を貫通する。

 ムカデの魔術防御を突破した凍力は貫通した場から一気に広がる――と思えたがそこまで強くはなく、全長の二割ほどを芯まで凍らせるに止まった。

 節を数節分丸々凍らされ、それでもなお進もうとするムカデたち。

 魔術は効果が薄いかと剣を構えた瞬間、凍った部分から下を失ったムカデたちがダメージ過多によりその生を終え、霧散した。

 

 だらしねぇな。

気張れよ、作業にさせるなよ。

 

「それって魔力消費多い?」

「まあ工程数は多いぞ」

「真似は難しそうだねッ」

「簡単にやられたら立つ瀬がねぇわ……」

 

 工程数によって消費魔力が変わる?

 いや、これを引き起こすこと自体の、事象改変行為自体のコストの話か。

 難しいってのは単純に複雑さを増すと想像が難しくなることに対する反応。

 

「――うッ」

「どうかした?」

「一瞬よくわからん吐き気がした」

 

 自分でもよくわからなかった。

 唐突に吐き気が一瞬だけ過ぎり、すぐ引く。

 刹那的過ぎて本当に感じたのかすらわからなくなるが、確かに感じた。

 

「それだけ聞いたら魔力関係みたいだけど?」

「多分そうだと思うけどそんな魔力使った感覚ないんだよな」

「ここ上とかよりもっと濃いからじゃないの?」

「なるほど」

 

 短すぎてどういう感覚、ということすらはっきりしなかったが。

 言われてみればたしかにそんな感じがしたような気がしなくもない。

 

「環境のせいで魔術が思うように使えないってのは面倒だな。肉体と違って調節面倒だし」

「小出しにすればいいだけだと思うけど?」

「そうだな。爽快感にこだわり過ぎてた」

 

 場所によって違うのは少し驚きだ。

 同じ“魔が濃い”という環境。

 そこから与えられる影響は同じであると考えていた、言い換えれば油断をしていた。

 だが実際には場所によって身体に及ぼされる影響は異なり、そのせいで体調を一瞬だけ崩してしまっている。

 まだ知らない世界の、体感しにくい要素を思い込んでしまったという失態。

 酷く情けない。

 

「ま、しばらく使えんわな」

「使わなくても平気だし大丈夫だろう?」

「まあな」

 

 そもそも剣で戦ってたワケだし。

 (バフ)もあるし、実力的に余裕だし。

 

「お前ラ、追加が来タゾ」

「どれくらい?」

「三〇ダナ。ほとんどが蜘蛛だ」

「く……も?」

 

 唐突にモルガンの動きが鈍る。

 実力は俺以上にあるから多少鈍ったところで余裕ではあるのだが、唐突過ぎて心底驚いた。

 

「もしかして蜘蛛苦手?」

「……」

 

 蒼褪めた表情――といっても探知状態を消費魔力減少のために形状把握オンリーで色がないから顔色はわからないが色があれば確実に蒼褪めた表情――で小さく、何度も頷く。

 

 なんだっけ……“蜘蛛恐怖症(アラクノフォビア)”?

 まあいるよな。

 色々あるんだっけ……片栗粉とか黄金とか。

 実際俺も軽く“集合体恐怖症”だし。

 蓮コラとか苦手だわ。

 あと改善はしたけどまだ虫恐怖症だし、若干だけど不潔恐怖症だし。

 

「わかった。夢幻霧(きり)の維持は?」

「できると思う」

「じゃあ俺たちで蜘蛛はやる。ムカデはイケるか?」

「うん、それは平気」

「エ、俺も蜘蛛ハ苦手ナンダガ」

「……お前らぁ。わかったよッ! 蜘蛛は俺一人で相手すっから他お前らなッ!!」

「ごめん」

「すまンネ」

「飯奢れよッ!」

 

 つい最近虫に対する耐性が付いた人間にはヘビー過ぎんかね!?

 てか装甲的な蜘蛛だったらまだマシだけどフサフサしてる蜘蛛は若干キツイぞチクショウ!

 来るなよ、絶対来るなよ!

 

 毛の有無で恐怖の度合いはかなり違う。

 これははっきりいって理由はわからない。

 だがその度合いは確実に違う。

 

「来るのは向こうカラ。ガンバ」

「半ば押しつけておいて頑張れとは随分じゃねえかクソ野郎……やってやろうじゃねえかよ、この野郎!」

 

 気力を上げるためのバカ話。

 全身に漲り、効果は充分。

 スッと心を静め、マーリンの指さした方向を見据える。

 三秒。

 探知に掛かり、その姿が明確になった。

 種類が複数いてどれがどれくらいいるのかがわからない。

 

 カンボジア送り(クモのフライ)にしてやろうか?

 ……エビっぽい味なんだっけ?

 流石に食う勇気はあまりない……ミミズ食ったし今更かぁ。

 

「お~お~、デケェケツ振って誘ってんのか? そんなに遊んで欲しいなら滅多刺しにしてやんよ!」

 

 するすると音もなく走る蜘蛛たち。

 間合いに入った瞬間、一気に薙ぎ払い装甲強度を確かめる。

 そのまま切れる蜘蛛、飛び上がって避ける蜘蛛、純粋な強度で上回る蜘蛛。

 倒せたのは三体。

 そして飛び上がって避けた蜘蛛が前四脚で糸を投網状に広げて投げつけてきた。

 

 マジか!?

 糸って一本でビヨーンってすんじゃないの?!

 スッゲェ。

 

 想定外の行動に心を躍らせながらごく僅かな魔力を使って冷気を放ち、投網を凍らせ防ぐ。

 そこへ連続して蛇腹剣を伸ばし、魔石ごと装甲を貫いた。

 砕け散る氷投網、弾ける装甲、霧散する肉体、降る魔石。

 倒した隙を狙って他の蜘蛛たちが一斉に襲い掛かってくる。

 まず先に包囲され、周囲を把握する間もなく一体が刃と化した鎌脚で的確に首を狙った攻撃が行われた。

 

「ッ、パリィッ!」

 

 雪華を取り出し力技で勢いを削ぎ、そのまま鎌脚を上へ弾き飛ばして蛇腹剣で切り落とす。

 だが今度は背後から牙――鋏角で挟み殺そうと噛みついてくる。

 気配が一切隠されていないから回避は可能だが相手の手数が多すぎて攻めきれない。

 カウンターの時くらいで、それ以外は防御や回避、他には二人に意識が向きそうになった蜘蛛を威圧して惹きつけるなどすることが多いために数は一向に減らない。

 

 ちょこざいなッ!

 

 鎌や牙などの近接攻撃。

 糸の中距離妨害。

 中には特定ではあるが魔術を発動する蜘蛛もいて、魔術の遠距離攻撃と妨害。

 体躯による包囲数の制限、というモノがない。

 ちょっとの隙間から攻撃が放たれ、上へ逃げれば一斉射撃の弾幕。

 厄介極まる。

 

「ちッ……【氷冠(スリップ)ッ】」

 

 冷気を練り、それをモンスターではなく地面に向けて放つ。

 一気に凍てつく足場。

 蜘蛛たちの動きが鈍り、さらには凍てついた足場からせり上がった氷壁によって身体が裏返り、氷に纏わりつかれ動けなくなる。

 

「……吐きそ」

 

 モンスターの魔術防御を突破しなくてもいい分かなり魔力消費は少ないのだが、規模のせいで消費は多いし即興の術式のせいで無駄も多い。

 加えていえば環境が酷いから普段なら問題ない消費でも今は悪影響がある。

 

 よしッ、この隙に。

 ……腹が。

 大体半分くらい倒せたッ。

 うっ、胃が唸る。

 あ~、あ~ッ、吐きそう。

 ゲロりそう。

 ゲロリアン。

 

「死ねクソ虫どもがァッ!!」

 

 吐き気を気合いで抑えつけながら吐き気と気合いの混ざった感情を蜘蛛たちにぶつける。

 残り約一五体。

 弾幕は圧倒的に薄く、心的余裕も合わせて倍以上の手数を出せた。

 

 なんとか調子が戻ってきたな。

 ならこのまま――。

 

 氷壁をうまく活用し蜘蛛たちを一方向に並べる。

 多少のバラつきがあり一直線にはならなかったが多少ならば問題はない。

 まず射程と貫通力に割り振った刺突を繰り出し、一気に六体。

 左に四体、右に三体。

 あとは消化試合だった。




 一人の男の人生を描く作品だからと自分を納得させる半面、さっさと話を進めて発展させたいと思うも、それをしてしまうと今の技量では伏線が露骨になりすぎたりと恐ろしくもあり、けど今まで撒いた伏線を忘れてしまいそうという恐怖もあり(多分一部は既に忘れてる)、どうしたものかと悩み中

 ついでに言えばグラーベンシュタットでの話が終われば一度休載しようかとも悩んでます
 けどバッサリとカットしない限りグラーベンシュタットでの話は結構長くなりそうで、だとしたらいっそ半年間毎日投稿ではなく一年間毎日投稿にしてしまおうかと欲が湧いてる今日この頃


 魔の濃い土地に関する設定。色々決まっているもののそれを上手に本編へinする技術がなくて悔しいところ
 一応登場させようと思っている場面は決まっている(かなり先)のでそこで出すつもりですがそれまでに技術を身に付け小さく設定を出して良ければなぁ、と
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