ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一六九話 初心と初身

「ホント、しんどかった……」

「ごめんね?」

「いや、元凶はそこで素知らぬ顔して酒飲んでるアホだから……ホント、金玉強打してのたうち回れば良いのに」

「デカい目で見られんのってスッゲー怖いわ」

「だよね~」

 

 しかも近くに目が複数あるから視線恐怖症と集合体恐怖症と虫恐怖症が併発するし。

 ホント、やんなるよ。

 

「明日は休みで良い?」

「戦ってないくせにっ、蜘蛛と戦ってないくせにっ。良いぞ」

「ギャハハッ! ご苦労ダ、もっと励むガよイ」

「寝床に蜘蛛でも入り込めばいいのに」

「本当、ありがとうね」

「モルガンを見習えッ。苦手なモン押し付けるつもりはねぇが戦えないならちったぁ感謝しろっ、感謝されたいワケじゃないけど感謝しろっ」

 

 純粋にムカつくんだよチクショー。

 

「してるしてる、そこは嘘じゃネエよ」

「どうだか」

 

 ま、仕方ない。

 信じてやろうじゃないか。

 

「俺はどうすっかな~」

「なんカ用事あんノカ?」

「ないから悩んでんだよドアホ。昨日本来のパーティの一人から“しばらく組まん”って言われてぼっちなんよね。やることはあるにはあるけどさ」

 

 サイカからの依頼があるし。

 

「依頼カ、俺もたまには一人デやッテみっカ」

「ほぉん、頑張れぇ」

 

 にしてもホントどうしよ。

 流石に一人で深くまで潜る自信はないしなぁ。

 自信というか実力?

 不測の事態一つで死にかねないのがモンスターとの戦いだし。

 

 今日でいえば蜘蛛との戦いでの魔力消費。

 環境に合わせた戦闘を正しくしないとあの時のようになる。

 あの状況下でもしも二人がいなければ俺は今頃死んでいた可能性も充分ある。

 あの状況であと少し敵が増えていれば死んでいた。

 大量のモンスターに襲われる、というのは今回マーリンのせいで引き起こった事ではあるが、それ以外の状況でも、単独で探索をしていても大量のモンスターに襲われる可能性はあり。

 マーリンがアホなことをしなければ問題ない、というワケではないのだ。

 

「あ、キュリアス」

「え? ……ホントだ。お~い、こっちこっち!」

 

 探索から帰ってきたキュリアス。

 換金を済ませて帰ろうとしていたところをモルガンが見つけ、俺はなんとなく声をかけた。

 

「なんか用か?」

「特に? とりあえず声かけただけ。ついでに飯食わん? コイツの奢りで」

「おイ」

「なら食う」

「別に良いけドヨ」

 

 なら良いだろ。

 せっかく色んな詫びに飯奢らせたのに気分的に全然腹に入らんし値段も叫ぶほど高くないからつまんねーんだよな。

 

「それで姉御はどんな感じだったんだ?」

「随分曖昧な質問だな。あーしは依頼で下に行ってただけだ」

「下? 三層奥か?」

「いや、五層奥だ」

「わぁお……」

 

 いやホント、感嘆の声しか出せねぇ。

 俺の最高到達地点って三層浅部だもん、そこからさらに二つ下のさらに奥って。

 間違いなく俺だと死ぬな。

 

「どんな依頼かって聞いても問題ない?」

「ああ、ほら、お前もノースミナスで受けたことあるだろ、調査依頼。アレだ」

「アレか。普段立ち入らん場所に人送って安全確認するヤツ」

「普段は遠征開拓兵に回されてるらしいが近々あるって噂の遠征に備えてそいつら全員遠出で色んなトコに鍛えに行っていないらしくてな。そんであーしに回ってきたんだ」

「お疲れ様ですっ」

 

 遠征かぁ、良いな良いな。

 俺も行ってみたいぜ。

 今以上にファンタジーなんだろ?

 オラ、わくわくすっぞっ。

 

「てか来たばかりの姉御に?」

「評価項目外、モンスターの素材換金履歴から実力確かめたんだろ」

「あ、そういうことか、なるほど。よっ、グラーベンシュタット一!」

「おだてても探索話しかでねえぞ」

「待ってましたぁッ」

 

 もし納品された素材に虚偽が存在した場合にその素材が誰の持ち込んだモノかを正確にするため記録される換金履歴。

 モノをハッキリ見たことはないが素材に含まれる魔力を測定したりで出た情報を紙に書いているのは見たことがあり、恐らくはそれが換金履歴かもしくはその一部だろう。

 開拓兵には姉御のように依頼をあまり受けなかったり、束縛されるのを嫌って遠征開拓兵にならなかったりなどという者がそれなりにいる。

 それゆえ正確な実力把握ができていない者が多く居り、換金履歴の存在理由の一部がこれだ。

 

 てか俺もそこまで依頼を受けてるワケじゃないし多分そっち側か。

 全然未熟な俺の実力を把握する必要ないだろうからそれはないな、うん。

 

「流石にロクに知らない状態だからな、向こうもちゃんと調査員をつけた。というか実質的にはあーしはそいつの護衛だ。ほら、あそこで忙しなく動いてる奴」

「あ~、あのほわほわした髪の女の人?」

「あの無駄にキラッキラした紫の髪の奴だ」

「うん」

 

 メタリックな紫髪の幼女に見えるギルド職員。

 きっちり制服も着ているし動きも忙しなくはあるが洗練されているからちゃんと大人なのはわかるがあまりにも小さすぎて“親に付いて来て手伝いをしている幼女”にしか見えない。

 

 ……あ、ヤベ。

 見すぎてバレた。

 はい、幼女とか思ってサーセン。

 

「てか不定期な調査だろ? なんで急に姉御に? 別に遠征開拓兵待ちゃよくね?」

「知らん、興味もない」

「あっ、はい」

 

 流石だぜ。

 

「基本は普通の調査依頼と変わらん」

「つまり、退屈だったと」

「ムカデだの蜘蛛だのサソリだの色々出たりしたんだが、まあもっと硬いヤツはいるからな、全然強くねえワケだ」

「つえー」

 

 俺もそんなこと言ってみたいわ。

 前にもっと強いヤツと戦ってな、ソイツに比べたら大したことなかったよ、とかさぁッ。

 やっぱそういうの憧れるじゃん!

 わかってるよ。

 似合わないのはわかってますとも。

 けど男だしカッコつけたくなっちゃいますよ。

 ……強くなりてぇ。

 

「でも魔術ばっか使うヤツがいたりしてなかなか面白くはあったな」

「ほほう!」

「基本は妨害とかだったな。身体能力下げてきたり重力で押さえつけようとしたり」

「そ、それは一体どのような感覚で?!」

「露骨に面白がるな気持ち悪い。……こんな感じだ」

「うヴぇッ」

 

 イッタァいッ、鼻が痛ァいッ!

 思いっきりぶつけたァッ!

 

 ガクンと、体力だけを抜かれたかのような倦怠感と身体の重さ。

 弱くなった――

 ――いや、戻ったのだろう。

 この感覚は、そう。

 ステイタスを得て、レベルアップをする前の感覚。

 以前の世界での、生身での感覚だ。

 そしてその状態で大岩を投げ乗せられたような重苦しさ。

 刹那的死の錯覚。

 身体に異変がないのはキュリアスが上手く調節をして防御力だけは残した、ということだろう。

 

「がっつり効いたな。……サースティが言ってたけどホントお前……」

「今のスッゲェな。一瞬声の出し方とか息の吸い方わからなくなってたわ」

 

 普段はステイタスでの強化込みで身体動かしてるからいきなりなくなるとこうなるのか。

 面白い。

 

「なんでホントそんな無防備なんだよ」

「掛けろって催促したの俺だし」

「だからって……まあいい」

 

 握手を求めながら直前で手を引っ込めるのはただのヤベー奴だろ、普通に考えて。

 

「調査はまだ残ってて終わったワケじゃないから特に面白いことはなし。サハル――調査員の奴は出現域がどうだと出現数がどうだとか言ってたが詳しくはわからん」

「場所が場所なだけに出現数も調べなきゃなのか……俺の時はただ変なことなかったか、って感じの超ざっくりで良かったからなぁ」

 

 たしかにそれは実力があっても実績がないキュリアスには任せられないだろう。

 地龍の通り道(アヴァムギーヴ)の深い位置。

 つまりそこで手を抜けば被害が出かねない。

 ギルドが念を押して調査員をつけるのもわかる。

 

「まあ、ぶっちゃけ大したことはなかったし、はっきりはわかってねえけど問題はないだろ」

「姉御に比べりゃ大体そうでしょうよ……」




 身体能力低下:とても単純
        身体強化の逆をするのみ
        ただそれだけ
        下げれる限度はステイタスの100まで
        そのため一般人に使用しても意味はなく、多少魔力が抜けて身体がだるいかもしれない、程度


 勘が鋭いと視線に籠った意思も若干読める、人もいる、かもしれない
 基本的に(そもそも可能なものが限られているが)そこに対する羨望、憧憬、思慕、嘲笑、憎悪など感情を種類別で朧気に感じ取るだけ
 ヒイラギは今回小柄であることをただの事実として“小さい”“幼女みたい”と考えただけでありそこに対する“嘲笑”“侮蔑”などの悪感情を抱いていなかったためその意図はサハルは感じ取っていません
 なんとなく“見られてますね”“なんでしょう? 視線から感情が抜けてます”“私は人形じゃありませんよ~”と考えてました
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