ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「まさかもう集めてくるとは。驚いたよ」
「予定がなかったもんでね」
依頼の内容と、ついでにいくつかの追加物を合わせたモノをサイカに手渡す。
自分のあれやこれやを渡すというのは何とも羞恥心が刺激されて苦しい。
「……顔色悪くないか? 流石に心配すんぞ、それ」
「すまない。日に日にこの街の魔が辛くなってきてね、幻覚のせいで脳もかなりキツイんだよ」
「眼がちょっと変わってるしそうかと思ったけど……」
けれどその翡翠のような眼すらさらに濁りを増し、
美しいと思う反面、透き通っていれば見惚れすらしていただろうと思うその損ないを心底残念に思う。
「来てもらっていきなりで悪いが、以前の痛み止めを頼めるか?」
「あ、ああ! それくらい遠慮せず命令するくらいしてくれて良いって!」
以前のような無理やり笑ったような引き攣った笑みとは異なる、だがやはり無理矢理と伝わってくる苦笑。
気高くも見ていて苦しくなるその様子に俺は心を痛めながら【洗脳】をかけた。
すると僅かに表情が和らぐ。
「痛みが残るがかなり楽になった」
「幻痛か」
「会話が苦手そうな君に頼むのは申し訳ないが、気を紛らわせるために私と会話をしてくれ」
「ああ、構わん」
こうして関わった以上助けるくらいなんともない。
むしろこうして頼られることが最近嬉しくなってきた。
以前なら都合よく使われているとしか思えなかっただろうに。
「ええと、話題話題。その、幻覚ってどんな感じなんだ?!」
「……話題選び下手だね、ヒイラギ。幻覚そのものは大したことがないんだ。光の粒だったり、光の線だったり、光の膜だったり……見えている視覚情報だけなら、私もここまで苦しまない」
テンパった挙句出すべきではない話題に苦笑しながらも応じてポツポツと話してくれるサイカ。
その表情には幻覚に対する忌々しさと、ただの視覚情報だったならばどれだけ良かっただろうという感情が入り乱れている。
「存在する幻覚の揺らぎ。酷い時は大量の情報を絶え間なく送り込まれる気さえする、街に渦巻く負の感情すら伝わってくる気がする」
「情報と負の感情……」
「多分実際伝わって来てる。負の感情しかないのはその方が強く、尾を引くからだろう。……ヒイラギ、そんな情けない感情を垂れ流すなよ」
「感情じゃなくて顔見て言ってるだろ」
「バレたか」
そんなハッキリ見られたらそりゃ気づくわ。
「でも感情が伝わってきたのは事実だ。知り合って間もない私に厚意と心配と感謝を向ける変わった奴だよ」
「……子どもっぽい話、自分の存在意義とかそういうのでちょっと悩んでるときにサイカのお陰で元気になったんだよ。てか話して思ったより恥ずかしくなかったから言うけど、固有能力なんよ。ちょっと扱い辛い固有能力で痛みを止めたからさ、ちゃんとマトモな使い方ができたって嬉しかったんだよ」
「はっ、なるほどね」
「わ、笑うなし」
笑われると途端に恥ずかしくなる。
そんなことで悩むなと言われているような気がして自分の小ささが恥ずかしい。
「合理的に考えたまえ。そして薬師として邪道であり心理であるこの言葉を贈ろう。“世に薬は存在せず、あるのは人の勝手な分別であり、有益有害で名を変えるに過ぎない”と。ヒイラギの手に委ねられたその薬。用法を変え、吐くも癒やすも君次第だ。それは君の決めることなのだから」
「……全く。うっかり惚れたらどうしてくれんだよ」
「ということで貰った俺の素材は他の方へ~」
「オレは余分なのを返しただけだがなァ」
「ホント、物好きだよな。俺の尿とかアレとかって何に使うんだって話だろ。アレか? 鳥の糞から作る化粧品とかカタツムリの粘液の化粧品とかそういう?」
韓国のゴキブリパックとか、イギリスの牛の精液トリートメントとか……。
そういう変な利用されませんよ~に!
「なンだその悍ましいモンは……しかもそんな国が複数あンのかよ」
「あ、心の声聞こえるの忘れてた……ごめん」
「別に良いけどよ……オレには関係なェし」
世の中には信じられんような活用方法する人がいるからなぁ。
想像を絶するというかしたくないというか……考えないようにしよ。
「最近調子はどォだ?」
「ん~、時々精神的に不安定になりかけるけど概ね元気、かな」
「大丈夫かよ」
「うん。大体悩みは解決したから。ちょいちょい話題に出してるキュリアスとかさっき話したサイカのお陰で超絶元気ですよぉ。目下の悩みはサイカの病気治せたらなぁ、ってのとちょっと気になることがあるのと、あとついでに強くなりたいってのだな」
うん、心身ともに至って健康だ。
悩みの内容もワリと普通。
健全だね。
「おめェが望むならやっても良かったンだが生憎と病気は専門外だからなァ。それに前例ナシじゃ流石のオレも調べよォがねェ」
「お、意外と優しい」
「……オレはいつだって優しいだろォが」
「そうなんだけどさ。それはあくまでも俺個人に対する好意であってマユゲとサイカに直接的関係はないじゃん? あくまでも俺を介して知っただけでただの赤の他人。そこに優しくするなんて珍しーな、って」
マユゲが冷たいワケではないのは理解している。
言動が素っ気ない時は多々あるが基本的には俺が死なないように色々してくれて、助言をくれて、落ち込んだ時に共にいてくれもする。
だが魔眼のうちの一つ、思考読みの魔眼のせいで他人を遠ざけているのも事実だ。
善意悪意関係なく発される嘘偽りの不快。
それがどのような感覚でもたらされるのかすらもわからず。
けれど
逃げるように遠ざけるのは必然。
そんなマユゲの優しさが、少し不思議だった。
「……まァ、アレだ。そいつのお陰でお前は変わって、お前自身がそれを良く思ってンなら、な」
「へ~、そういう風に考えるのな」
「オレだって色々あンだよ。もう二度と同じ後悔はしたくねェからな……」
「……」
昔、何かがあったのだろう。
後悔が。
知りたいと思う一方で、知りたくないとも思い、同時に知ってはいけない、と。
ゴブリンの魔石ほどに小さく開いた口は、すぐに閉じた。
「ところでよォ、その病気の症状ってなンだ?」
「幻覚。正確には光の粒だの線だの膜だのの幻視と情報感受と感情感受」
「情報と感情だァ?」
「よくわからん情報が絶え間なく脳に叩き込まれるんだとよ。感情は負の感情がほとんどだってさ」
「……」
「どったの?」
「……いや、手掛かりが少ねェなと思ってよォ」
それは……仕方ないね。
「光……色とか聞いたか?」
「全く」
「そォか。なら今度聞いとけ」
「あ、もう無理。“これ以上この街にいるのは無理だ”って言ってたからもう街出てるんじゃねえかな?」
「……なら仕方ねェか。また会うことがありゃァ聞いとけ」
「あいよぉ」
ホント珍しいな。
魔が関わってるから興味惹かれたってのもある?
まあ、理由がどうであれ解決の可能性が少しでも上がるならそれは素直に嬉しい。
「何言ってンだ。魔が関わる病気なンぞざらにあるだろォが」
「……魔石病とかか?」
「あァ。というよりこの世に存在する病気の大体がそうだ。魔で強化されてっから一般人を除けばほとんどの奴が普通の病気に掛からン。掛かっても魔術で治せるしな」
「ステイタススゲェ」
「ステイタスじゃねェ。魔だ」
「おう、わからんがわかった」
ステイタスの正体すらわかっていないからわかりようがないが。
別にわかる必要もない。
「物質に含まれる魔。それが毒となって人を襲うンだ。相反する魔で解毒は可能だがそのものの防御はほぼ不可能。可能な防御法は魔を高めて相殺することだが消すのは無理なンだよ」
「え、マジで?」
「固有能力とか魔眼は別として、基本はわずかだが症状が出る。免疫つけりゃそれ以降は楽になンだがよォ」
「へ~。だから薬とか売ってんのな」
「そォだ。普通の、治癒魔術じゃァ毒の廻りを加速させるだけだからなァ。魔術で治すなら解毒魔術か回復魔術。だが解毒魔術はそもそもの知識がいるし回復魔術は使える奴がいねェ。原理が数段ちげェからなァ」
「ほえ~」
解毒魔術……は。
うん、まあ、そりゃそうか。
分解するにしても無効化するにしても変質させるにしてもそもそもの知識が必要だし。
てか治癒魔術も一応それなりに人体の知識要るもんなぁ。
回復魔鬱はそもそも初耳だけど。
「固有能力も魔眼もナシにアレを使える奴がいるとすりゃ……ソイツは一種のバケモンだなァ」
「マユゲをしてバケモンと言わしめるとは……詳しくはわからんが本気でヤバそう」
「規模によっちゃ治癒魔術よか効率が良いのは確かだがなァ」
なんとも、まぁ。
「ところで気になるってのはなンのことだ?」
「ああ。サイカが“日に日にこの街の魔が辛くなってきている”ってのがな。気のせいなら良いんだが、ちょぉっと引っかかってるだけ」
「……そォか」
まだサイカは街を離れてません
翌日の朝、早くに離れます
まあ夜寝ているときに押しかけるのは迷惑ですし、しばらく会いませんね
韓国のとかイギリスのとかは流石にメジャーなモノではないと思いますし、現在も行われているモノではないと思います
かなり前に話題になっただけですし、今もとは考えたくないですね
えげつねぇ……
ちなみに鳥の糞というのは“うぐいすの糞”のこと
うぐいすではなく鳥と表記したのは作者自身うろ覚えだったためヒイラギもうろ覚えにしておきました
流石に知識持ちすぎても一高校生としてはおかしいですしね
あくまで面白い雑学とかを進んで調べる系の、ワリとよくいる青年ということなので