ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「相変わらずメンタルにクるモンスターどもだぜ」
とはいえ虫慣らしは済んだ。
初めほど影響はない。
それに一層奥、ここではゲジゲジ以外にもサソリ――スコーピオン系モンスターもいる。
他種のモンスターがいる以上それぞれの縄張りがあったりして、嫌な相手との遭遇頻度は減る。
「こういうフィールドワークは楽しくて良いけど……って、学術的なヤツじゃないからフィールドワークじゃないか?」
まあなんでもいい、重要なのは今この場にいるモンスターの数と種類。
どの範囲にどんなモンスターがいるのか。
その場所でどれだけの頻度、モンスターと遭遇するのか。
ひたすらに戦って情報を集める。
地図はあるけれど現在地を探知と体感で把握するしかないからかなり面倒だ。
歩くための地形把握探知とは別に。
精度を落とし、範囲と隠蔽に特化させた探知を一定範囲ごとに発動させる。
目安は探知限界の三分の一から半分。
限界ギリギリでそれをすると突然の遭遇、となりかねないため自分の移動と相手の移動も考慮してその目安だ。
もっとも、結局先に察知されて向かってこられたら速度によっては意味がないから完璧、とはいえない。
だがそれをいえば俺の実力ではどう足掻いても“完璧”にはならないから仕方ない。
だらしねぇが仕方ない。
戒めながら許容する。
過度に求めず、可能範囲でやるべきだ。
「ふむ……地図に、というか本に書いてあった範囲だとこの辺りまでか。……あんまいねぇ」
出現範囲との違い。
いるにはいるが出現範囲、と呼べるほど多くなかった。
まるで出現範囲外に出た“はぐれ”のようである。
「モンスターが手前に寄ってるのか?」
感じる異変。
遭遇範囲は手前に寄り。
けれど出現範囲は恐らく変わらず。
抱く疑問は“なぜその二つにズレがあるのか”ということと“ズレているという仮定が正しいとして、なぜその程度で済んでいるのか”ということ。
モンスターは生まれた場所一定範囲。
正確には生まれる場所一定範囲を活動地とする。
ノースミナスのように坑道そのものが活動地点として認識されていて、かつごく近くに人間がいる場合は坑道から外へ出て人間を襲う場合もある。
だが
そもそもサイカは“日に日に酷く”と言っていた。
モンスターの魔が以前よりもより多く街に流れ込んでいるのだとすれば人間の発する魔は以前よりも圧倒的に少ないんじゃないのか?
もしかしてモンスターの魔と人間の魔は競合……干渉しあわないのか?
イメージ的になんとなく同じ座標にいると思ってたけど。
実は高さなり横なりでズレがある?
打ち消し合うように真反対に進んでいても目の前に存在しないからぶつからない?
例えば陸上トラックでそれぞれ反対方向に走るとしても、周回するトラックが異なればそもそもぶつかるワケがない。
それと同様に、魔も存在する次元や空間が異なれば干渉しあうことはないだろう。
いや待て。
何か見落として……そうだ、ノースミナス。
あそこでは人間の魔とモンスターの魔が干渉していたはずだ。
その影響があったからこそ本来現れるはずのないアンデッドが湧いたし、不自然な流れが生まれてゴーレムたちが強化された。
干渉は確実にある。
そのうえで異変があるんだ。
「手掛かりがねぇ……勉強の一環でマユゲが言ってた。“モンスターは人間から発される魔を感知して襲い掛かって来る”って。……ならなんでモンスターどもは誘導されるみてぇに手前にズレんだ? 人間の気配なんて微弱すぎんだろ」
思考すれども答えは出ない。
情報も知識もなく、限られた手掛かりから推理する知恵もない。
調べればわかるだろうと考えていたが、そうではなかった。
探知できているとしてもなんで今なんだ?
それならもっと前に、人間の魔がより多くこっちに来ていた時こそ誘導されるべきだろ。
もしかしてこの座標のズレに人間の魔は関係ない?
それとは異なる要因によって移動している?
何故?
何によって?
全体的にズレてるってことは広範囲に、以前から変わりつつあるってことは長期かつ連続的に。
たとえば常にその影響があるとして。
どうして逆にズレる程度で済んでる?
常に影響があるんだったらズレるんじゃなく、コンベヤ方式で常に手前に移動するハズ。
常に存在する影響がどうして途中で止まる?
現象の推理と実際の違い。
纏まらないままに脳裏を思考が駆け巡り、推論を複数打ち立てる。
影響は常にあるけど効果には波がある?
周期があって、それによってズレがズレで留まってる?
たとえば影響に対する免疫が付いたとか。
周期……月?
いや、それはない。
月の影響は強力だけど遮蔽物で簡単に影響を打ち消せる。
他、免疫……もしかして幼体?
正確には存在力の弱い生まれたての初期状態。
人間が幼少期に他者から影響を受けやすいのと同じように、モンスターも生まれたての状態では周囲の環境から影響を受けやすいんじゃないのか?
モンスターとして生まれてすぐは引き寄せている“何か”に影響されて移動し、ある程度存在力を持つとその影響を受けなくなって活動位置が決まる。
推測重ねの暴論だけど一応筋は通っている……のか?
俺が考えたことだから無意識に正当化する主観が混じってるかもしれない。
「さてさて、どうしたもんか」
何はともあれ情報を集めなくてはならない。
だが現状半分すら調査できていない。
さらにいえばこの調査によって得た情報を帰った後分析する必要もある。
やっぱつれぇわ。
でもやんねぇと安心できねぇし。
やるしかねぇよなぁ。
つーかキュリアスに色々ちゃんと調べてもらえるように、というか憶えておくように言っとけばよかった……。
絶対細かく憶えてないよ。
でも調査内容だし。
教えてもらえない可能性あるよなぁ。
一応ダメもとで聞くだけはしてみるか。
重要な情報な上、俺は信用がほとんどなく、それらの条件を
可能性がゼロというワケではないだろうが、低いだろう。
実際にやるとしたら交渉の上で。
たとえば俺の持っている情報と引き換えに。
だが現状俺の持つ情報は第一層のモノくらいだ。
有益といえるかわからない。
そもそも前提として、ギルドがそのことを認知していない可能性もある。
俺とギルドでは調査の目的が異なる。
俺はモンスターの出現域と遭遇域の異変に関して、ギルドは深層で異変が起きていないかの調査。
追及している利が異なる。
説得するとしてどうすれば。
交渉の技術なんて買い物の時の値引き交渉くらいだぞ。
そもそも最近慣れたとはいえ俺はコミュ障。
経験値がなさ過ぎる。
そんな俺ができるか?
やるしかないのはわかってるけど無謀過ぎないか?
未熟な俺と、常に交渉し続けてきたギルドの腕。
どっちが優れているかなど火を見るよりも明らか。
勝ち目はゼロだろう。
…………そもそも勝つ必要あるか?
考え方を変えろ。
俺の交渉力じゃ求める最上はどう足掻いても得られない。
だったら必要な情報だけは最低限得られるようにすることに力を注ぐべきだろう。
全てを手繰り寄せようとしても俺じゃ絡まって思うように操られるのが関の山。
自分の土俵に乗せようとしたところで独り相撲に終わる。
だったら相手に気持ちよく歩かせて最低限こっちよりの道に誘導すればいい。
それくらいはできる……はず、多分。
「一番いいのは相互協力なんだけど。……まあ巨大組織と一個人じゃ体裁的にもムリっしょ」
高望みが過ぎる。
流石にそれは無謀だ。
最高を望むな、最低限で良い。
全てを掴もうとして失敗したら必要なことを掴み損ねる。
「……けどやっぱ協力しようよぉ。交渉とかめんどくせぇよぉっ」
自覚はしていたけれど、どうにも“何かに例える”ということが苦手……
くッ……低知能が露呈してしまう……
協力ができれば楽なんですけどね、一個人と国営組織が対等に接してしまうと体裁的によろしくない、だから無理だろう。というヒイラギの考え
それを許してしまえば信用に関わりますしお寿司、と
協力して一時的には良くても長期的思考をすれば良くないよね、むしろマイナスだよね、と
いやぁ、実にお間抜けで愛らしい