ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一七七話 日本とルートヴィヒの犯罪者性

「出た座標はここ~……本当にここなんですか~?」

「のハズ」

 

 グラーベンシュタット北北東部。

 その最外部。

 (あば)ら家がポツンとあり、そこから北を見れば地龍の通り道(アヴァムギーヴ)が見えるほど。

 

「ここは確か~……」

「知ってるワケ?」

「記憶がたしかなら~、以前近所迷惑で問題になった人ですね~。名前はジョージ・グリーンフィールドのはずですよ~」

 

 現在ここにいるのは俺とサハルさんの二人だけ。

 キュリアスは“興味ねえな。あーしには関係ない”そっちで好きにしろ、と。

 マーリンは“疲れタ、寝ル”と話を振るよりも前に早々に立ち去った。

 モルガンは“引き受けたのは潜ることだけ。それ以外は関与しないよ”とふらふら去って行った。

 そもそも三人ともサハルさんの強さを知っている。

 俺のやっていることを詳しく知らずともその実力さえ知っていれば遅れを取ることはないだろうと信用できる。

 むしろ何故俺がついていく必要があるのか、と思われそうだが。

 言い出しっぺは俺だから最後までやらなければならない。

 

「問題になって、ギルド職員(サハルさん)が知ってるってことは一度関わったことがあるってこと?」

「いえ~」

「そっか……」

「何度もですよ~」

「あ、うん」

 

 そっちか。

 関わったことがあるならそっちから、と思って「ないのかぁ」ってちょっとガッカリしたけど。

 複数回あったのね。

 

「なのでまずは私がギルド職員として行きますね~」

「わかった」

「もし何かあれば助けてくださいね~」

「んじゃ俺は隠れて――」

「一緒ですよ~」

「あ、そうなのね」

 

 影から見守って相手を油断させつつ万が一の時には。

 という風に考えていたのだがそうではないらしい。

 どうやら開拓兵を同行させてそういった問題に当たるのが普通とのこと。

 受付嬢は元開拓兵だがそれは一般レベルでは知られていない話だし、ギルド職員自体は元開拓兵でなくても問題ないため油断を誘える、らしい。

 

「ジョージさ~ん、いらっしゃいますか~?」

 

 戸を叩くとボロボロの戸が軋み、ノックに合わせて小さく揺れる。

 すると奥からドタドタと忙しなく音が響き、それが近づき、戸の前で止まり、ゆっくりと開く。

 

「あぁい……なんの御用でぇ?」

 

 出てきたのは酷く不健康そうな男だった。

 くすんで黒ずみ、色の意味を失くした白衣を纏い。

 皮脂でベトとしボサと乱れた黒髪。

 真っ白な肌に黒い隈は嫌に目立つ。

 その表情からは悪意らしきモノは感じられず、犯人ではないという可能性を除けば悪意が本当にないのか嘘を吐くのが上手いのか。

 

「ギルドの者です~。この辺りにモンスターを引き寄せる魔道具の類があると判明したんですけど~、何か知りませんか~?」

「……知らんな」

「なるほど~。調査にご協力いただけませんか~? すぐ終わりますので~」

「……断る」

「確証はないけど~、心当たりはある~。そういうことですか~」

「っ……」

 

 表情が。

 明確に歪む。

 心を見透かしたような言動。

 細く開かれ覗いた瞳が、冷たくジョージを眼差す。

 

「ハーイ、ジョージィ。こっちは調査したうえで来てるんだ、素直に吐いちまいな」

「……恐らくは少し前に開発した魔道具が原因だ」

「それは一体どういった?」

「周囲から魔力(マナ)魔素(ミスト)なんかを吸収して魔石に魔力として保存する」

「ああ~、以前に魔道具に魔力(マナ)を吸収され体調不良を起こした方から訴えられてましたね~。その際は罰金百万アスターほどでしたっけ~?」

「あ、ああ」

 

 これは……言い逃れできませんなぁ。

 注意どころか罰金までって……。

 

「とりあえず中を見させてもらいますね~」

「……わかった」

 

 複雑そうな表情を見せるジョージ。

 それは仮にも研究者だからだろうか。

 それとも“自分は表情豊かで感情豊かで思考がすぐ顔に出る人間です。なのでどうぞ油断を”という誤認(アピール)の為だろうか。

 

「資料と比べて色々増えてますね~。一番の変化は部屋全体、そして中心、でしょうか~」

外観(ガワ)ボロいくせに中は部屋複数あるし、この部屋だけはやたら綺麗で頑丈だし……何この不釣り合い感……」

 

 案内された部屋には雑多におかれた魔道具が。

 けれど探知しても魔石の反応は一ヶ所を除いてなく。

 大量の魔道具は全て魔術刻印ではなく魔術紋様ということがわかる。

 そして部屋の中で唯一の魔石反応。

 反応自体は複数だが場所は一ヶ所。

 部屋の中心、そこにある巨大試験管の中。

 細かな魔石が液体の中で浮いている。

 

「これは一体なんですか~?」

「魔石を……生み出す装置だよ」

「……は?」

「? そのような魔道具はないはず~。仮にその言葉が真実だとして~、アナタは一体なぜこのような状況なのでしょうか~?」

 

 たしかに……。

 魔石を生み出せるならもっと金だってあるはず。

 けれど部屋の中にある魔道具は数こそ多いけど古いのはかなり古いし長い時間かけて少しずつ完成させた、って感じだ。

 ただモノが残ってないだけ。

 とも考えられるけど、サハルさんがそこに対する違和感を抱いている時点でその可能性はないだろう。

 

「…………少し前に、一人の男から設計図を渡されたんだ。多少弄ったが大まか元のまま」

「なるほど~。自分で発明はできないと~」

 

 毒舌ッ。

 

「どのような方だったか~、憶えてますか~?」

「ローブを被っていてよくは見えなかった。大きさは高くも低くもないくらいだ、フードの膨らみから考えて大きめの角があった。僅かに覗いた髪はアンタみたいだった。それくらいだ」

「設計図は~?」

「それは――ここにある」

「ああ~、中心では半径一メートルほどの極小範囲の引力を働かせ~、部屋の壁や天井や床に刻まれた回路を用いて地龍の通り道(アヴァムギーヴ)に影響を及ぼすほどの超広大範囲に魔の気流を生成し~、中心の引力によって膨大な魔力を集積~、というワケですか~」

「わかるのか、スゲェな」

 

 サハルさんに手渡された設計図。

 それを俺も軽く眺めるがほとんど解読できない。

 辛うじてわかるのは中心部、サハルさんが“極小範囲の引力”と読み取った部分の“範囲要素”と“長江大範囲の魔の気流”と読み取った部分の“範囲要素の一部と回転要素”だけ。

 あとはほとんどさっぱりだ。

 

「流石に全てはわかりませんけどね~。それでも一応少しくらいならわかりますよ~」

「充分スゲーわ。俺とか全然」

 

 ギルド職員スゲー。

 サハルさんスゲー。

 この国の教育ってそこまで?!

 流石にこれが平均レベルではないだろうけど……ヤベー。

 

「これが原型です~?」

「そうだ。そしてこっちが俺の改変版」

「……まあとりあえず~、色々調べることがありますし~、一度出頭していただけますか~?」

「ああ。自覚はなかったがそういうことなら仕方あるまい」

 

 ……反抗心は?

 以前の数件で折られたの?

 てか今更だけど事件に対する対処が雑な気がする。

 証拠とかほとんど出してないぞ?

 もしかして事件が起きた時に協力するのが当然な感じの常識なワケ?

 日本と違うな~。

 基本的に野次馬ばっかだし。

 けどそれにしたって反応の薄さよ。

 犯罪者よ?

 証拠ないとはいえ結末犯罪者よ?

 普通こういう時って逃げようとするのが普通じゃないの。

 

「なんというか……あっさりしてるな」

「逃げる、とか思ってましたか~?」

「うん」

「貧弱なただの研究者が逃げ切れる確率は限りなく低いですからね~、逃げれば罪は倍になりますし~」

「貧弱て……まあ、それもそうか」

 

 以前の世界とは実力が異なる。

 日本だと警察も犯罪者も基本は同じくらいの身体能力。

 鍛えているなら犯罪者も力技で押し通せるし、護る側と殺す側だったら命に対する覚悟や認識の差で犯罪者がその場でなら勝つ可能性もある。

 だがこの世界では、この国では、そうもいかない。

 モンスターと戦い強くなった開拓兵は常人の何倍もの力を発揮する。

 走るのが苦手な者でも開拓兵なら常人より早いのが普通だし、探知ができるから隠れてもバレる。

 一般人に探知から逃れるような魔力隠蔽技術はない。

 ぶっちゃけ俺もまだ全然できない。

 前提が違うから、逃げるという選択肢がないのだろう。

 もっと言えば設計図はあるし、固有能力で真偽判定もできるから犯罪者として疑われた時点で常人には真実を話すしかなくなるのだ。

 

 はぁ~、認識がまだまだ甘かったなぁ。

 前提の部分。

 切り替えられてないな。

 

「では行きましょうか~」

「犯人連行だ~」

「アンタら……はぁ」

 

 スマンね。

 アンタにとって人生を左右する大事でも俺にとっては他人事なんだ。

 それにもう終わる話。

 ぶっちゃけ楽しむくらいしかやることがないんだ。




 ちなみにもう数日か一週間ほど放置していた場合、もっとヤバいことになっていました
 具体的には街が壊れるくらい

 損壊の具合は放置期間と時の運次第なので正確にはわかりませんが、ジョージの住んでいる辺りである北北東最外部はまず間違いなく破壊され、人が多い場所を狙う傾向があるためモンスターは中心に向かって直進
 パワー型かスピード型かはその時によりますが、少なくとも一〇〇メートルほどは進みますし、どの場合であっても基本的に巨大モンスターになるため被害面積はかなり大きくなるでしょう
 魔術を使う場合もっと酷くなる可能性が高いです
 なので今ここで止められたのは本当に正解でしたね


 そしてその事実を知る者は設計図を持ってきた謎の人物含め、設計図を解読した者のみ
 その者たちが誰かに教えない限りは誰も知り得ないためヒイラギも知ることはないんじゃないですかね?
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