ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一七九話 秘匿事項と

「昨日はありがとうございました~、ヒイラギさ~ん」

「や~、結局何もしてないし気になさんな」

「いるだけでも充分ですし~、感謝してますよ~」

 

 まあ、そういうなら素直に感謝を受け取るか。

 

「あ、そうだ。……秘匿すべきモンなのを承知でやったから罰は覚悟してるんだが、昨日の設計図をこっちで解読した結果の資料があるんだ。いるか?」

「……何やってるんですかぁ~。とりあえず見せてください~」

「ん、ホレ」

「ちょっとじっくり読みたいのでとなり失礼しますね」

 

 ……このムチっとした頬っぺた。

 押してみてぇなぁ……。

 あ~、いかんいかん、アホなコト考えてる。

 

「それで? ヒイラギはまぁた厄介事に首突っ込んだワケ?」

「またって何さ、またって。ちょぉっと気になること調べてたらそれがうっかり厄介事だっただけですぅ。別に厄介事とわかったうえで突っ込んだワケじゃありません~。それに元々のきっかけは人助けですぅ」

「あ~はいはい、わかったからそのムカつく顔ヤメテ。殴りたくなる」

「まあ、実際そこまで無茶はしてねぇよ。どっちかっつーと色んな人に無茶させちまった側だ」

「気にすんなヒイラギ。あーしは嫌とか思ってねえし、多分アイツらもそうだ」

 

 依頼の関係だし受けた以上は自己責任って考えと、命の危険に巻き込んだって認識がどっちもあって困る。

 このあたりの割り切り、ちょっと苦手だなぁ……。

 こう言ったらまた独りで、って言われるかもだけど。

 

「臨時パーティのこと?」

「そうだ。二人いてどっちもコイツより強いからコイツが心配する側じゃねえんだけどよ」

「そのあたりの感情に強さは関係ないでしょーが」

「まあ、そうですね。ただ同じ開拓兵として、そしてより強い者として、自分の判断で動いているのだから心配させる道理はない、ということですよ。……前も言いましたよね」

「憶えてますとも。けどだからって長年の経験で生まれた感覚はそう簡単に変わりませんとも」

 

 ちょっとの心配くらいさせて欲しいものだ。

 

「まあ今回は周囲を頼ったということで、成長したとしましょう」

「……何目線?」

「仲間目線じゃない?」

「だろうな」

「左様で」

 

 こんなんが仲間で申し訳ないねぇ。

 心身共に成長してやるから楽しみにしてやがれってんだ。

 

「ところでさ、クアークってマユゲとあの後も交流あったのな。昨日初めて知ったわ」

「というかアタシだけじゃなく二人も知ってるわよ?」

「え……」

「前お前抜きで飲んでたらクアークが見つけてな。その時に話した」

「色々笑いながら愚痴を言ってましたよ」

「楽しそうに愚痴を!? 聞かなかったことにしよ」

「別に悪口じゃ――」

「あ~あ~あ~ッ! 聞こえないもんね~っ!」

 

 マユゲが言った悪口なんて聞きたくないやい。

 知らなくて良いし。

 別に知らなくて良いし。

 忘れれば良いだけだし。

 

「あ~、要するにアレだ。そのメンドクサさが好きみたいな感じだったぞ」

「え、マジで?!」

「ホントホント」

「わ~い、ヤッター」

「……メンドクセエなコイツ」

 

 なんか今聞こえた気がするけど気にしないでおこ。

 

「でもそっか、三人とも交流あったんだ。いやまあ、だからどうしたって話ではあるんだけどさ」

「ヒイラギはあの人が外にいることに驚いてるだけでしょ?」

「あ~、かもしれんな。外出てること自体は知ってるけどそれ見たことないんだよな~」

「面倒事が多いって言ってましたしね」

「マユゲはなぁ、多いだろうなぁ」

 

 人の心の声が聞こえるってのはかなり辛いだろうからなぁ。

 実際その感覚はわからないけど、辛そうなのは察せる。

 悪意への恐怖とか、別に気遣われたくないのに気遣われる鬱陶しさとか。

 色々あるだろうし。

 

「これは……スゴイですね~」

「む……。だろう?」

 

 その後も適当なことを話しつつ食事を摂っていると読み終えたサハルさんがふと呟く。

 いつの間にか思考と考察を纏めるための紙を用意していたらしく手元にはびっしりと文字が書きこまれていた。

 

「たった一晩でこれとは驚きですね~」

「んでそれに付属して、多分設計図を渡した黒幕は以前俺が関わった事件の犯人でもありま~す」

「……?」

「詳しくは“トリゴ ヒイラギ”で検索検索ぅっ」

「あ~……スライムのヤツか」

「え、アレが関わってるの?」

「奇縁、ですかねぇ」

「ホントね、俺も知った時はビックリよ」

 

 やはりそことの繋がりは予想していなかったらしく、それを聞いた三人はそれぞれの程度で驚きを見せ、サハルさんは姉御の依頼に同行するにあたって俺のことを調べたのだろう。

 少し思い出すような素振りを見せてから「思い出してスッキリ」という風な表情に変わった。

 

「具体的には魔力を集める部分の回路がそうだって。設計図内での該当箇所は書いてあるだろうし、トリゴでの方は……多分ギルド側の、書庫とかそういうトコにあるだろうから、まあそっちで調べてくれ。そっちの方も回路図は残ってるから」

「わかりました~。では私はこれらのことを踏まえて報告書を纏めますので失礼します~。あ、それと解読してくれた方に“ありがとうございました”とお伝えください~っ」

了解(りょうかぁい)

 

 大変ですなぁ。

 俺とか絶対無理だわ。

 お疲れ様ですっ。

 感謝してますッ。

 

「まあ、色々成長したみたいで良かったわね」

「む? そんな成長したって感じする?」

「するわよ。なんというか……背筋が伸びた」

「それ成長なの?」

「つまりは堂々とした雰囲気になった、ということですよ。自信がついたように見えます」

「堂々……してる?」

「まだ頼りなさはあるけどな、ちったあマシになった感じはする」

「わーい」

「そういう反応の部分はまだ子どもっぽいけどな」

「良いじゃんよ、子どもで。素直なのは欠点じゃないっしょ。歳だけ無駄に食って偉くもないのに偉ぶるガキに比べりゃ」

「一番良いのは大人になることだけどな!」

「そりゃそうだ!」

 

 笑いが零れる。

 なんの捻りもない、くだらない話。

 それがこれまで他人と関わって来なかった俺にとっては子どもの頃(かつて)できなかった思い出を紡ぎあげているようで、楽しく、嬉しかった。

 

 ……一〇〇日もいて、これまでってのはちょっとおかしいか。

 流石にその期間をこれまでに含めるのは無理がありそう。

 

「それにしても、この街に来て一〇日……」

「一週間ここにいなかったクアークが言うと違和感あるな」

「それもそうね。それでこの街にはいつまでいるんだっけ?」

「一ヶ月くらいじゃね? 観光とか探索とか、色々やるつもりだし。まあ地龍の通り道(アヴァムギーヴ)全部を、ってのは無理だろうけどな」

 

 正直やる前は「もしかしたら一ヶ月で全域余裕かも~」とか余裕ぶっこいてたけど。

 はい、無理で~す。

 全域探索(マッピング)しようと思ったら一ヶ月じゃ一割イケるかイケないか。

 最下層にすらそもそも辿り着けないだろうし。

 てか最下層ってドコ?!

 情報規制掛かっててわからんのだが!?

 

 実は地龍の通り道(アヴァムギーヴ)の情報は一部規制が掛かっている。

 理由の最も大きな部分は“必要以上に恐怖心を煽らないため”。

 第六層のモンスターが俺一人では太刀打ちできないほどの存在。

 そしてさらに下の階層がある。

 俺も経験を積んでそれなりに強くなった。

 だがそれでもあっさりとやられるのは確実。

 もしかしたら気づかぬうちに殺される、なんてこともあるかもしれない。

 俺でそれということは、一般的な、常人からすれば絶望そのもの。

 足元を自分たちを守ってくれるはずの開拓兵ですら勝つことが難しい化け物が跋扈している。

 その認識は。

 たとえそのモンスターたちが一切街へ上がって来ないような存在だったとしても、その事実だけで人々の心に不信感や軋みを与える。

 だから情報は規制され、一般的には実力にもよるが開拓兵で十分対処可能としているし、情報規制のことを知った開拓兵たちもその情報がないという情報すら外部に漏らさない。

 

「あ、そうだ」

「どうした?」

「あーし、ヒイラギが他の街に行く時にパーティ抜ける。もし偶然行き先が被るならもう少しパーティ続けるだろうけど、まあ多分パーティ抜ける」

「そっか。今までありがとうございました」

「待て待て、別に今から抜けるワケじゃねえから」

「冗談冗談」

 

 柔ら――硬い……。

 

 普段から防具をつけないキュリアス。

 じゃれ懲らしめるために脇に抱えられた俺の頭はキュリアスの身体と腕に挟まれて逃げ場を失い、そして柔らかな胸に当たった――かと思うとその奥にある強固な胸筋にも触れ、だらしなく顔を緩ませるでもなくただひたすら、無表情になった。

 

「パーティが嫌になったの?」

「別にそういうワケじゃねえよ。ただあーしの勘が“今は離れた方が良い”って、そう言ってる」

「そうですか。では仕方ないですね」

 

 ……勘って、本当に勘?

 それとも固有能力?

 個人情報出し聞きはしないけど、この世界どっちかわかんねえんだよな。

 

「ウチはどうしましょうか……まあ、しばらくは考えます」

「ふ~ん。まあ一時的にわかれても、また会って酒でも飲んでくださいや」

「ええ、いいですよ。喜んで」




 次回で一時区切り!
 休載です!


 キュリアスの勘は普通に“勘”です【勘】ではありません
 ステイタス表記上ではそういった能力はありません
 普通になんとなぁく自分にとって都合がよくなる勘が稀に働いたりするだけ


 描写をしないせいで忘れられてるんじゃないかって不安になる設定“キュリアスは防具を着けていない”
 より正確には金属鎧や装甲鎧(ドロップアーマー)戦闘衣(バトルクロス)の類を身に着けていない、です

 どういうことかといえば、生身に防具を纏うワケではないのは当然ですが、その内側に着る下着(ブラジャーなどのアンダーウェアではなく中に着る服)もあります
 蒸れ防止のため通気性の良いモノが用いられますが、頑丈な素材を用いた防具に触れるということで通常の素材よりも頑丈な素材で造られています
 防具の防具というワケです

 最低限の、防具擦れで破れない程度の強度を持った下着を身に着けているワケです
 そしての上に通常の服、に見えるように造られた気持ち程度の防御力の服を着ています

 端的に言えば“ゲームの防具にある「服」というアイテム”ですね
 防御力があるためカテゴリーは防具ですが、プレイヤーだと防具扱いじゃない、みたいな
 服(防具)とは別に通常の服もあって、それを着てる的な
 まあDQだと服を脱がしたらアンダーウェアなんですけど(笑)
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