ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第一八話 不思議な感覚

「それじゃあ、まあ、俺の仕事を教えてくれ」

「では必要な資材を書いた紙をお渡ししますのでそれを買ってきていただきます、というつもりだったのですが諸事情により既に準備されております」

「マジか」

 

 そういう冗談を言うのだという親近感を抱きつつ、なら何をするのかと気になる。

 魔術があるから単純な工程は簡単にできるはず、なら俺の必要性はない。

 

「なのでまずはこちらの資材を中に運搬し、一緒に修理をしてください」

「修理俺だけでやると思ってた」

「いえ、流石にそれは……大切な教会を全てお任せしてしまってはなりませんので」

 

 別に俺に任せても良いと思うんだが……まあ心を込めて作ることに意味があるっていう精神性なら尊重するべきだろう。

 外部の人間があーだこーだ言っても毛一本分の価値もない。

 

「まあ資材運搬は流石に俺がやるよ。そこそこ重いだろうし依頼受けた身だし」

「そうですか、ではお任せします」

 

 俺がそう言うのは想定済みだったのか、シャプルはすぐ反応して俺を先導する。

 案内された先には荷車に載った大量の資材があり、荷車といえどここまで運ぶのはとても大変そうだ。

 貧弱な俺は少し心配になりながらも資材を持てる範囲で抱える。

 すると重いものの想定よりは軽かったため少し動きが狂った。

 

「こちらに」

 

 前を歩くシャプル。

 こちらを一切見ていないのにも関わらず、俺の歩きやすい速度で先導してくれるお陰で俺とシャプルの距離は何度繰り返しても一切変わらない。

 

「よっ、と」

「ありがとうございました。では老朽化した部分を私の指示に従って順番に交換してください」

「了解」

 

 老朽化と言われてボロボロなイメージがあって穴が開いてる貧乏な感じだと思っていたけど、外装が劣化しているだけで穴らしい穴は見当たらない。

 もしかしたら見えない小さな穴が開いているのかもしれないが、現状その気配もない。

 

「では私は設置に取り掛かります」

「はいは~い……設置?」

「ええ、教会を強固にするための魔道具の一種です」

 

 手に握られた魔道具。

 小さな物が複数。

 パッと見では装飾品のようにしか見えない。

 そう見えるように意匠されているのかもしれない。

 

「この魔道具を正しく配置することで建物が頑丈になるんです」

「設置するだけで頑丈になるのか……流石魔術」

 

 科学に洗脳された俺じゃイマイチ受け入れにくい話だが、それがこの世界では普通なのだ。

 普通にそれが売られていて、シャプルはそれを普通に買って、普通に使おうとしている。

 根底意識を変えるのには時間が掛かるのは重々承知ではあるが、少しもどかしく感じてしまう。

 

「ええと、次は――」

 

 ただ決まった位置に設置すれば良いのではなく設置するのにも順番があるらしく、シャプルは色んな所に移動しては床に、壁に、天井にと総食品のような魔道具を設置し、時には外に設置しに行き、また戻って来る。

 

「終わったぞ」

「ありがとうございます。こちらも終わったので最後にこの石へ魔力を流すのを手伝ってください」

「良いが……俺の魔力はそこまで多くないぞ」

「構いませんよ。私一人では足りないだけでその不足分を補うには人一人の魔力量があれば充分ですので」

 

 なら問題ないだろう。

 一瞬誰にでも使えることをコンセプトにしているはずの魔道具が一人で使えないのはダメだろうと思ったが、よく考えると建物を強固にするという効果をこの規模で発動させるのだ。

 魔力が多く必要になるのは当然。

 

「では、手を」

「あ、ああ」

 

 シャプルの掌に乗った石。

 それに魔力を流すには俺はシャプルの掌に手を重ねるしかなく、女に触れるという経験が極端に少ないから少し躊躇ってしまった。

 

「ありがとうございます」

「お、おう……」

 

 嬉しそうに微笑むシャプル。

 何故か石を胸に抱きしめ、俺の視線はその石に向く。

 その石はなんとなくさっきの魔道具に使われている部分に似ている気がした。

 

「なあ、その石って魔道具のヤツと同じか? ちょっと違う気がするんだが……」

「これは双子石と言って、二つに分けると離れていても一方の出した反応と同じ反応をすることから簡易通信に利用されている鉱物です」

「へぇ」

 

 何その量子もつれみたいな石……。

 流石に量子もつれと違って光速を超えはしないだろうけど。

 

「その双子石を特殊な技術――錬金術で加工して複数の接続を行ったモノがさっきの魔道具に使用されている数珠石です」

「錬金術なんてのもあるのか、スゲェな」

「知り合いに錬金術を研究してる方がいるのでよろしければ紹介します」

「お、本当か。なら余裕ができてきたら頼むわ」

 

 流石に今の状況でそんな面白そうな存在に関わっちまったら訓練そっちのけで話しちまう気がする。

 会いたい気持ちはかなり強いがここは我慢だ、うん。

 先に香月たちの件を済ませなきゃだ。

 

 錬金術というのはロマンだろう。

 この世界の人間からしてみれば当然の技術だから何も感じないのかもしれないが、なかった世界の人間からしてみれば、思春期の男としてはロマンでしかない。

 

「わかりました。話は通しておくので会いたくなったら私に言ってください、紹介します」

「おう」

 

 一か月くらいで会えるようになると良いな。

 

「さて、他にすることはあるか?」

「いえ、修理はもう終わりましたので……」

「そうか」

 

 仕事が終わったからもう帰っても良いのだが他の依頼を紹介してもらえるかもしれないからもう少し話をしておきたい。

 

「……どうせだ、他のことも手伝うぞ」

「そうですか? う~ん、でも……」

「別に遠慮しなくて良いぞ」

「遠慮というワケでは……。それにそろそろ――」

 

 ハッキリしない反応にもしかして嫌がられているのではないかと不安になっているとシャプルの言葉に重ねて子どもの声が教会内に響いた。

 

「シャプル姉ちゃ~ん!」

「お姉ちゃん!」

「来たよ~!」

 

 入口の前には複数の子どもたち。

 シャプルの知り合い、いや、恐らくはシャプルが面倒を見ている孤児なのだろう。

 

「皆っ……えっとぉ……」

 

 シャプルは子どもたちと俺を何度も見て、戸惑っている。

 

「うげぇ……」

 

 俺はやたらとテンションが高くて言葉が通じづらいという理由から子どもが苦手なのだ。

 

 

 




錬金術:ぶっちゃけ戦いばっかのこの世界じゃ金の価値はそこまで高くない
    金は貴重性からそこそこ高価だけど機械技術が未熟だから実用性が現状なく、他に貴重で実用性がある金属があるから錬金術の金は元々は金属を総称する
    現在は金属以外のモノも錬金術の対象とされている
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