ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「その……すみません、騒がしくて」
「い、いや……コドモスキダカラヘイキ」
正直子どもはちょっと……。
アニメとかならロリキャラ見てかわいいって思えるんだけど……リアルだと……。
「ねえ、その男の人誰~? 彼氏?」
「ホント? 彼氏?」
「いっ、いえッ、彼氏だなんて!?」
そんな前のめりになって全力否定しなくても……。
なるほど、これはシャプルの態度を真に受けて変な期待を持つなという神の啓示だな。
ありがとう、星の神。
信じてないけど。
ただやはり一切の脈なしというのは少々寂しいモノ。
早々に気づけてよかったと言えばよかったが、美人の否定は悲しいモノだ。
「あ~、開拓兵をやってるヒイラギだ。依頼で来た」
「開拓兵! 本物!?」
「お、おう。そんなに驚くことじゃねーだろ。そこらにうようよいんだろ」
「街での依頼受けるなんて兄ちゃんよっぽど弱いんだな!」
「失敬なっ」
くそっ、事実だから言い返せねぇ。
弱いのはこれまでの研鑽を怠った自分の所為だからどうしようもねーし。
「み、みんなッ、ヒイラギさんは強いんですよ!?」
「えッ!?」
「ホントォ?」
「こんなヒョロヒョロした覇気のないお兄さんが強いの?」
無茶ぶりやめよ?
少なくともこの場じゃ正しいこと言ってるの子どもの方だから、ね?
「どんな感じ~?」
「見せて見せて~」
「うえぇぇぇ」
別に見せるのは構わないんだけどさ、絶対想像未満でガッカリする奴じゃん。
弱いのを自覚している以上そもそも見せびらかすこと自体気乗りしないが、それ以上に露骨にガッカリされるのが中々辛い。
自覚した弱さである以上お世辞を言われるとイラっとする。
どちらかと言えば普通に正直に言ってくれる方がありがたい。
ただ子どもの場合そこに期待の目が混ざっていた分の落差があるから辛いのだ。
「あの、すみません……」
「いや、いいよ、うん。子どもって言いだしたら往々にして止まらんし」
これはもう諦めた方が楽だ。
諦めて、恥を掻こう。
「よぅし、お兄さん頑張っちゃうぞぉ!?」
「わぁいッ!」
「やったぁッ!」
「本当に、ごめんなさい……」
よし、落ち着こう。
慌てて余計酷い結果になったら数日は響くぞ。
場所は……庭で良いか?
「庭使っていいか?」
「あっ、はい。大丈夫です」
場所はこれでオーケーだとして、うん……他人に見せる凄い動きってどうすりゃいいんだ?
流石にバク転とかじゃねえよな。
てかそもそもバク転はやったことないし。
剣も拳も使ってないから
仮想ベアトリクス戦でもやれば良いか。
「んじゃ、あぶねーからちょっと離れてろ」
「はーい」
聞き分けが良いのは助かるわ。
「さて、と」
開拓兵の一般イメージは
それは剣などの
ここで派手な魔術を周囲に迷惑が掛かるだろうからちょっとした魔術しか使えない。
というかそもそも派手なのは憶えていない。
「短剣でいいか」
子どもに見せるためわかりやすく腕をバッと伸ばし、地面から短剣を作る。
魔術陣を通して地面から伸びる短剣に子どもたちはにわかにざわめいた。
切っ先を生み出し、地面から離れた短剣はそのまま射出されるように俺の手の中に納まり、俺はすぐさま短剣を構えて虚空をジッと睨みつける。
今から何をするのか、わかっていない子どもたちは俺の動きに釘付けになり、面白いほど空気を支配できていることを理解した。
「ふッ!」
一足で一気に距離を詰め、即座に放つ一閃。
とはいえ
俺はゆっくりとシャドウから剣舞へと切り替える。
剣舞と言っても当然習ったことがないからその名の通りではなく、武器を使った凄い動きというだけ。
演劇と言った方が早いかもしれない。
演者は俺で、役はベアトリクス。
成長によってある程度の切り替えができるようになってオフ状態にしていた【洗脳】をオンにして、ベアトリクスの動きを再現する。
ある程度動きを調節できるから大剣の動きをベースにして俺のオリジナルで動く。
すると速度はあまり変わらないものの動きの無駄が取れたおかげで一気に動きが加速して見え、子どもたちのテンションは一気に高まった。
「これでっ、終わりだ!」
そう叫びつつ少し過剰なくらいポーズを決めながら最後の一閃を放つ。
あ、あれ?
もしかして最後のコレ、要らなかった?
やりすぎてドン引かれた?
一気に訪れた静寂に俺は肝を冷やす。
調子に乗ってしまったのだろうかという不安が一気に俺の胸をプレッシャーで急かす。
そして――
「すっげぇッッ!!」
「カッコいー!!」
「開拓兵ってあんな動き出来るんだね!?」
爆発したかのように一気に歓声が沸いた。
少しの間理解ができなかった。
けれど少しして理解すると同時に喜びが湧いて出る。
認められたという感覚が。
自己肯定感が。
とても嬉しい。
何も努力してこなかったから、異世界人だから。
いろんな理由で自分は弱いと思っていたし、それは事実である。
けれど子どもからしてみれば例えそうであってもある程度は
「ま、まあこんなモンだ」
どうしようか。
顔が綻んでいないだろうか。
恥ずかしくて、少し顔を隠してしまう。
「格好良かったですよ、ヒイラギさん」
「そ、そうか……それは良かった」
「あ~! 姉ちゃんが兄ちゃんを口説いてる!」
「口説いてる~」
「ちっ、違っ!?」
スマン、今だけ囮になってくれ。
内心で謝りつつ俺はゆっくり子どもたちの輪から離れる。
そうして遠くで表情を取り繕っていると一人の少女が俺のことをジッと見つめていることに気づいた。
「……えっと?」
「変な人」
「ええ……いきなりぃ?」
変人は自覚アリだが初対面でそれを言われるとは思っていなかった。
初対面でわかるほど変だとも思っていなかった。
「不安定な視た目」
「……スライムじゃねえからな?」
「そうじゃない」
不安定な見た目ってどういうこと!?
異世界人ってこの世界の人間から見たらそう見えるってこと?
驚きの新事実なんだけど……。
「魔眼」
「あ、ああ……そういう」
「色も不思議。白と、青と、緑」
「ん?」
今そんな色の装備は一切身に纏っていない。
一応指輪は緑になるが今は待機状態でどの色にも当てはまらない。
恐らく、というか十中八九魔眼のことだろうけれどその色が何を示しているのかがわからない。
「お兄さん、異世界人?」
「わかるのか、凄いな」
「ンフー」
「はいはい、可愛い可愛い」
こうして素直で適度に静かなら子どもってホント可愛いのになぁ。
「それで、その色はなんなんだ?」
「多分……魔力」
「その色によって何か変わるのか?」
「知らない」
「そっか」
魔力に色があるってのは初耳だ。
まあこの子の推測があってるかどうかわからないが。
それに魔力の色がそれぞれ人によって違うとしても魔術は勉強すれば誰でも使えるからどこにどう影響しているのかがよくわからない。
「多分……髪?」
「毛?」
「うん。みんな髪と同じ色、たまに違うけど……」
「じゃあ俺は三色か」
欲張りすぎじゃないのか?
白と青と緑って……。
合うのかもわからないし。
「ちなみに具体的にどんな感じの色なんだ?」
「白はキラキラしてる。青は……空みたい。緑は……なんだろ」
「うん。緑のモノって基本少ないよな」
けど前の二つは大丈夫そうだ。空色と雲って感じだし。
緑も多分平気なんじゃないか?
「その緑って薄い? 濃い?」
「薄い」
「なら良いや」
「そうなの?」
「ま、ぶっちゃけどうでもいいんだけどなぁ。あっはっは」
カラフルな髪色の世界で気にするだけ無駄かもしれないし。
「も一個聞きたいんだけど」
「なに?」
「他に俺みたいな変なのっている?」
「……街を歩けばたまに見る。あとはお姉ちゃんも最近変。変って言うか、雰囲気は前と同じなんだけど違うっていうか、いきなり纏ってる色が大きくなったみたいで……始めて見るから怖い?」
「まあ、悪い奴ではないだろ?」
「うん。だけどよくわかんなくて、どう接すれば良いのかもわかんない」
「そっか……まあ、なんとなくわかるようなわからないような」
感覚的なモノって言うのは他人に対して言語化しにくい。
俺もこの子もお互いの感覚はわからない。
多分わかるとしたらマユゲの力を借りてようやくだ。
「でも、うん。多分シャプルは突然いなくなったりはしないからさ、ゆっくり新しい距離感を見つければいいと思うぜ?」
「新しい距離感?」
「おう。向こうが一気に変わったんならそっちも一気に変わったって問題ないだろ。ゆっくり近づいていくんじゃなくて、ある程度見極めてから平気そうな距離まで一気に飛ぶ感じ」
「……なんとなく、わかった?」
「ははは。それに手助けが欲しくなったら他の奴らを頼ればいいし、そこに俺がいれば俺を頼ってもいい」
「わかった」
「頑張れよ」
二次元の子どもは可愛い
三次元の子どもは可愛くない
そう思うのは作者だけでしょうか?
ちなみにヒイラギのステイタスは未だに変わらずオール100です
固有能力の【洗脳】だけがちょっと成長しました
その二つは系統が違いますからね、固有能力はステイタスと違って完全肉体依存ですし、そりゃあ使えば成長しますよ
なんたって肉体の一部ですし