ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第二二話 三大欲求の一つ

 チックショウ、相変わらず躊躇が一切ない。

 叩きつけられすぎて全身がイテェや。

 

「あ~、強くなりてぇ……レベルアップしてぇ……」

 

 油断すると不意に出る言葉。

 強くなりたいという本心と。

 レベルアップしたいという怠惰が。

 即物的思考というか、目先の利益に手を出そうとしてしまう。

 けれどそれではダメだということもわかっているからやきもきするのだ。

 彩に言ったのと同じようなもので、少なくとも今の俺にとってレベルアップは上等な武器を手に入れること。

 使い手が未熟なまま、一切の力がないまま強力な武器を持つのと同じ。

 銃の使い方さえ解れば赤子だろうと人を殺せるのとなんら変わらない。

 今の俺は赤子に過ぎないのだ。

 

「くそ……」

 

 思わず愚痴を零すといくつかの足音が近づいてくるのがわかった。

 

「どうかした?」

「……別に。ただ自己嫌悪に浸ってただけだ」

「大丈夫なんですか?」

「ああ、よくあることだ」

「確かに、見たことある顔」

「だろ? だから平気」

 

 近づいてきたのは霜村、香月、辰壬の三人。

 そして三人は何故かそのまま俺の隣に腰を下ろす。

 

「まだ何か用か?」

「その……改めてありがと」

「別にどうでもいい。何度も言うな。あのまま見捨てて非行に走られたら同郷ってことで俺にも被害が及ぶと思ったから助けただけだ」

嘘吐き(ダウト)

「辰壬ぃ、余計なこと言うな」

「照れ隠し、癖が出てる」

「む……」

 

 自覚はなかったが俺にはそんな癖があったのか。

 

「まあ、ホント、気にすんな。俺がやりたくてやったんだ、嫌だったら見捨ててる」

「永井……」

「あ、そうそう。そのうち霜村たちに仕事振るつもりなんだが、その下調べとして近いうち適当な奴らに着いて来てもらうから適当な奴ら見繕っておいてくれ。三人か四人で良い」

 

 明日か、明後日か。

 まあ面倒事を長引かせるのも嫌だし近いうちにやる。

 

「わかった。……それと愛那(あいな)で良い」

「ほ~ん? わかった、なら俺も柊で構わん」

「えッ……ひ、ひい、らぎ……」

「そんなに照れんなよ、こっちまで恥ずかしくなんだろうが」

 

 今更名前呼びが何だって言うんだか。

 この世界だと大体の人間が名字だろうに……。

 大体――

 

「大体(ヤロー)どもに媚びてどうこうしようとしてた奴が今更羞恥心って」

「永井くん……デリカシー」

「最低」

「ぅぅ……」

「あ~、うん、今のは流石にスマン」

 

 俺的には実際そこまで至ってないんだから問題ないだろうと思うんだが、まあ感覚は人それぞれだし俺の感覚を押し付けるワケにもいかないだろう。

 というか恥ずかしがって顔を俯かせてる姿がかわいくてしかたない。

 

「でも実際なんであんなことしたんだ? 身体売るより戦う方が怖いモンかねぇ?」

「それは……その時は戦ったら私たちじゃ絶対死ぬって思ってたから……」

「ふぅん? つってもよ、油断してりゃゴブリン相手だろうがあのアホどもも死ぬし、全力でやれば愛奈たちでもゴブリンくらいなら多分イケるぞ?」

「それはそうだけど、その時は……」

「あ~、ごめんごめん、別に今は責める気はねえよ。ただ純粋な興味で聞いて、口挟んでるだけ」

「悪趣味」

 

 言われなくても俺の性格が他の奴らに比べて歪んでるのはわかってるわ。

 ただ俺の目から見て明らかにおかしいと思ってることにツッコミを入れずにはいられないだけ。

 

「ま、良いんじゃねーの? 今はまともなワケだし」

「そうなんかな?」

「前よりはマシだろーが。それとも身体売る方が良いか? なら俺はいつでもウェルカ~ム」

「えぇ……」

 

 とはいっても最近は生活にワリと充実感があるからそこまで性欲高まってないんだけど。

 不意にムラッとはしても抑えは普通に余裕で効くし。

 そういうことで無理やりってのは正直趣味じゃない。

 場合によってはすることもあるかもしれないけど基本純愛派なんだよなぁ。

 

「ま、まあ、お礼に一回くらいは……」

「やめなさい、現状困ってないから。困ったとしても最悪店に行くから」

「汚い」

「あのなぁ、辰壬。暴走する方がヤバいでしょーが」

 

 犯罪だ、犯罪。

 切実な欲求なんだから、食欲と睡眠欲に並ぶ三大欲求だから。

 

「ちゃんと発散で来てるうちは健全だと考えろ。男が女心を理解してないのと同じで女も男を理解してないんだ、そのうち男とパーティ組むことがあってもそういう突き放すような言い方すんじゃねーぞ?」

「柊もそうなの?」

「えっ、じゃあ私が一緒の部屋にいるのってマズかったりします?!」

「いや、まあ俺も男だしないとは言わんが。別に気にしなくていい」

「……ん? 香月、柊と一緒?」

「え、はい。独りでいるところを誘われたので」

「……」

 

 何この空気。

 手は出してないから安心しろよ。

 てか俺を性欲魔人か何かだと思ってない?

 

「別にお前らに手ぇ出す気は全くねえよ……俺をなんだと思ってやがる」

「変態」

「変人」

「えっ、ええっと……」

「そぉかそぉか、そんなにお望みかぁ?」

 

 別に偉そうにするつもりはないんだが、こちとら一応恩人、なんですけどねぇ?

 確かにデリカシーはないし倫理観もあやふやだけど、それでも恩人なんだけどなぁ。

 ……まあ良いけど!

 

「……はぁ」

「いきなりテンション戻さないでくんない? 怖いんだけど」

「知るかよ。とりあえず伝えることは伝えたし組手も一通りやったから今日は行くわ」

「え、もう?」

「そんなに忙しいんですか?」

「手伝う?」

「気にせんでいい、個人的な用だ。簡単にいえばお前らに紹介する仕事の下調べ第一弾、だからオメーらは仕事で失敗しないようにある程度力着けとけ」

「う、うん」

「わかりました」

「お疲れ様」

 

 だから気にせんで良いっての……。

 

「あ、まだ残ってるだろうけど一人銀貨一枚分渡しとくわ。生活分の金しかねーとストレス溜まんだろ」

「い、いやッ、そんな別にッ!?」

「良いから。一度首突っ込んだ以上は最後まで面倒見切るって決めてっから」

 

 不安定ではあるけどそれなりにゴブリンからの貢ぎがある。

 泡銭はパッと使うのが一番だ。

 計画に入れにくいから入れない前提で動くのが性に合ってるし。

 

「んじゃ、バイちゃ!」

 

 

 

 さて、どうすっか。

 シャプルんトコには子どもがいるワケだしなんか土産でも持って行った方が良いよな。

 でも子どもって何喜ぶんだ?

 飯か?

 でも好み知らねーし。

 となると絵本とかか?

 でも被ると無駄になる。

 だとしたら現金の方が良い。

 ただ現金だと受け取りづらいか?

 

「お? もしかして永井か?」

「あン? 誰だぁ?」

「おいおい、仲間相手にそれは酷くねぇか?」

 

 突然話しかけてきた同い年くらいの男。

 前の世界での友好関係なんて皆無だった俺相手に仲間(・・)とはおかしな話である。

 髪は日に焼けで薄くなった黒髪、同郷だ。

 

「友達でもなんでもねー奴相手にいきなり仲間とか、テメェゲイか?」

「違うっての」

 

 ニヤニヤした表情を怪しむのは俺の曲解か?

 単にそういう奴って可能性とか怖がらせないように笑ってるって可能性もあるがそれが逆に怪しい。

 

「あ~、まあいい。んで? 何の用だ?」

「いきなりだな。……俺たちと一緒に開拓兵にならないか? 今俺と須藤(すどう)今藤(いまふじ)の三人でいるんだよ」

「メリットがない、忙しい、既に開拓兵、以上の三点でお断り」

 

 怪しい上に地雷臭がする。

 今日で四日目か?

 その間何してたって話だよ。

 ギルドで見た記憶なし。

 ……まあ長時間ギルドホールにいないから単にタイミングの問題かもしれんが。

 

「そ、そう言わずに……」

「大体俺お前の名前知らんし」

(かずら)だよ!? 俺同じクラスなんだけど?! なんなら中学も同じだし!」

「そうだっけ?」

 

 ん~?

 うん。

 見覚えがない。

 一切見てないな。

 

「てか余計に入る気なくなったわ」

「なんで!?」

「いや、だってお前ら……全員名前に藤の字が入ってるじゃん」

「うん……え? ……それだけ?」

「ま、そういうワケだから。他を当たれ」

「え、ええぇ……」

 

 地味だけどイヤな疎外感だわ。

 

「な、なら霜村さんとか知らない?」

「女は多分もう開拓兵になってるぞ」

「マジで?!」

 

 とはいってもギルドの施設を利用するために登録したのが大体だけど。

 まあ現状訓練しかしてないから初期からメンバーは増えて多分ほとんど全員が登録してるな。

 

「これからどう行動するにしてもちゃっちゃと決めた方が良いぞ。時間も金もねーんだから」

「そう、だな」

 

 まあ命懸けりゃ金はそれなりに手に入る……って、ロクに命懸けてねえ俺が言えたことじゃねえか。

 【洗脳】で貢がせてるだけだし。

 

「まあ、適当に相手した感じだと一体のゴブリンを三人で相手するっての繰り返せばそこそこ行けると思うぜ? 人間としての一番の能力、考えることを放棄しなけりゃだけどな」

「そうか! ありがとう、自信出てきた!」

「お、おう」

 

 笑顔で走り去る藤。

 あまりにも単純で、言っておいてなんだが少し不安になるその反応にほんの少しだけ罪悪感が出る。

 あのまま三人が死んだら、と。

 だがもうこの世界で生きる以上は大体のことが自己責任だ。

 尻拭いをしてくれる親も、教師もいない。

 俺たちは赤子でも老人でもないのだから介護は期待する方がおかしい。

 たとえどんなモノを垂れ流そうと、全て自分で処理するしかないのだから。

 

「ま、精々頑張れ」

 

 気まぐれにそう背に声を投げて俺は明日シャプルに渡す土産やその他欲しいモノなどを見繕うことにした。

 その手のセンスは壊滅的だからひたすら迷走して最後まで決めれなかったが。




 第二二話が終わってようやく四日目が終わり、進まねえなこの物語
 まあ初期だから仕方ないけど……

 ちなみに柊が勧誘を断った理由はぶっちゃけ楽しくないってのが一番です
 いまさら同郷の野郎と仲良くなっても楽しくねえし得るモンもねえ、異世界人だったら考えるわ
 ってのが柊のざっくりした思考
 快楽主義なので自分のしたいことしかしません
 自分にメリットがある、もしくはそのうち降りかかるデメリットの解消以外だと興味がわかないんです、この主人公
 とはいえ人間って往々にしてそうなんで仕方ないっちゃ仕方ないですけど
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