ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第二三話 旧下水道にて

 俺は今猛烈に後悔をしている。

 安全そうな仕事だけ斡旋しようと思って地下水路にやってきたら異臭が半端なかった。

 事前に解毒の魔道具を装備してきているからもし地下水路に病原菌が繁殖してても平気ではあるのだが異臭が少しキツイ。

 感覚的には公園のトイレというか、あれよりはまだマシなんだがモノが同じだし別の臭いも混ざってるからそれくらい鼻に来る。

 

「しかもモンスターまでいるとかどうなってんだよ……」

 

 いや、聞いてはいたのだ。

 この依頼を受けると決めた時にフェーニャンから地下水路にはモンスターがいると聞いている。

 曰く、龍との入れ替わりでモンスターが世界に蔓延り始めた頃の話。

 当時は今よりもモンスターの生息域は人間の住む地域に近かったらしく、さらに言えばそれまで戦っていたのは龍や竜。

 小型のものもいるモンスター相手には対策を講じていなかったため容易く街への進入を許してしまい、広大な地下水路全体に広がり繁殖を許してしまったのだとか。

 だから当時のモンスターやその影響で新たに生まれたモンスターが地下水路、正確には旧下水道にいる。

 新下水道には何故か極端にモンスターが少なく、その理由は定かではないが一説によるとエサ(・・)が少ないからだとフェーニャンが教えてくれた。

 

「こっちはレベルアップできないんだっての!」

 

 結局あの後隠されていた指輪の効果を教えられた。

 というか地下水路の依頼を受けようとしてフェーニャンからモンスターの話を聞いて、マユゲに相談をしに行ったら仕方ないといった雰囲気で教えてくれた。

 レベルアップを阻害する機能。

 一応理屈はあるらしいが魔道具の理論とかロクに知らない現状聞いてもわからないだろうからほとんど聞いていないが。

 ざっくり言えばモンスターから得る経験値を指輪が横取りして魔力に変換、結界の維持に役立てているのだとかなんとか。

 経験値が魔力に変換可能だって言うのは少し驚いたが、フィクションでありがちな命を力に変換(・・・・・・)する(・・)みたいなものだと考えたらまあ、それなりに納得がいった。

 

「クソネズミどもがぁッ!」

 

 尻尾を除いてざっくり1000mlの牛乳パックくらいのサイズのネズミ。

 大きいと言えば大きいし、小さいと言えば小さく感じる。

 そんなサイズだからかイヤになるほどやり辛い。

 蹴るには俺の速度と技術じゃ難しく、切るには足元過ぎて無理に近い。

 おちょくるように足元をグルグルと走り回って鬱陶しいことこの上ない。

 

「バターになればいいのに……」

 

 アレはトラだけど。

 

 攻撃的で臆病な性格なのか、俺が隙を見せないとなかなか攻めてこない。

 たまに体当たりをしてくることはあるのだが基本は走り回るだけ。

 もっといえばネズミたちは俺が殺気を出さなくなったタイミングで攻めてくる。

 常に集中できるわけじゃないから息継ぎをするように意識を切り替える意識と意識の狭間を狙ってくるのだ。

 

「老朽化してっからあんまやりたくなかったんだがなっ!」

 

 殺気を全体に飛ばしつつ素早く魔術を構築し、周囲から小さな石槍を生やしてネズミを一気に串刺しに。

 ネズミたちは一体に殺気を向けると逃げていき、殺気を解くと襲って来て、殺気を全体に分散させると様子を見る。

 その習性を利用すればこういう広範囲攻撃は通じるんじゃないかと思って試してみたが、効果は想像以上に抜群だった。

 死ぬかダメージが一定以上に達したネズミたちは霧散し、魔石や肉体の一部(ドロップアイテム)を残して消えてゆく。

 

「残りは……」

 

 周囲を殲滅し、遠くから様子を窺っていたネズミたちに目を向けると逃げて行っているのがわかった。

 恐らく俺はあいつら目線で殺気が薄いのに攻撃をしてくる奴(・・・・・・・・・・・・・・・)といった感じの立場だろう。

 

「ふぅっ、肉体的疲労より精神的疲労のがパネー」

 

 敵が至近距離(パーソナルスペース)で動いてるってのは想像以上にストレスだ。

 蹴散らしたくて仕方がない。

 けれど蹴散らせない。

 それが更にストレスになる。

 

「違うこと考えてストレス忘れよ~、その方が健全だ。……あとちょっとで担当区域は終わりか」

 

 思考の切り替えをし、地図と周囲の地形を確認して今回の依頼で引き受けた範囲がもうすぐ終わることを理解した。

 老朽化した旧下水道とはいえ定期的に依頼で清掃が行われているからかそこまで汚くもなく、道具でブロックとブロックの隙間に入ったゴミを除去して奥の方へと流すだけ。

 人口の少ない旧市街地区だからか川から流入している水が新市街地区よりも少ない。

 つまり水圧が低く、それもあって所々に詰まりというかゴミの引っかかりが見えるが想像よりは多くなかった。

 

「終わりッ、と」

 

 最終的な目的地である新下水道にたどり着く。

 そこは点検がしやすいように光源の魔道具まで取り付けられたかなり綺麗な場所だった。

 下水道だから清潔ではないのだが、さっきまでいた場所が場所だけに比較で綺麗に見える。

 

「……そういえば他にも何人か下水掃除受けてたよな、ちょっと見てみるか」

 

 軽い好奇心で左右の二人を見てみることにした。

 まずは右側。

 

「何か用?」

 

 いたのは横に繋がった道の三本目あたり。

 終盤だ。

 小柄で若く、俺と同じくらいの歳に見えるし体格も俺と大して変わらない男。

 こんな依頼を受けているってことは多分レベルは俺と大して変わらないのだろう。

 

「いや、俺この依頼初めてでさ、他の奴がどんな感じにしてるのかって気になったんだよ。ちゃんとやったつもりだけど全然出来て無かったら嫌だしな」

「そういうことか。別にちょっとくらいなら見ても良いけど邪魔はするなよ?」

「それは流石にわかってるよ」

 

 まあ今言ったのも嘘ではない。

 実際ちゃんと掃除したつもりだけど要求されてる清潔さがそれ以上だったら俺は全然ってことになるし。

 見た感じそういうことはなさそうだけど。

 

「なるほど、わかった。悪いな」

「いや、全然平気だ」

 

 目つきは若干鋭いけど悪い奴じゃないな、うん。

 敵意らしい敵意はなかった。

 それだけだけど。

 さて、次は左だ。

 

「何?」

 

 今度はほぼ最後の辺り。

 というか多分もう終わってる。

 身長は俺よりちょっと大きいくらい。

 体格は下水装備ではっきりしないけど結構イイ感じだ。

 さっきの男の比じゃないくらい目つきが悪い。

 子どもが見たら泣くレベル。

 

「いや、俺この依頼初めてでさ、他の奴がどんな感じにしてるのかって気になったんだよ。ちゃんとやったつもりだけど全然出来て無かったら嫌だしな」

「……アンタ、それしか言えないの?」

「もしかしてさっきの聞こえてた?」

 

 さっきってのはつまりそういうことだよな?

 結構耳良い?

 

「耳良いから」

「獣人か。ん? てことは下水にいんの辛くねーか?」

「獣人が全員嗅覚優れてるって認識、バカに思えるからやめたら? それに嗅覚が良い獣人でも嗅覚操作できる奴もいるし」

「何それスゲエっ!」

 

 チラリと見せてくる獣の耳。

 フードとかマスクで隠れてよく見えなかったけどちゃんと見たら普人種じゃ生えてない部分まで毛が生えててこの子もそこそこ獣度が高めだ。

 

「嗅覚操作は元々は嗅覚の弱い獣人が普人種レベルまで嗅覚を持っていくための力。今は他の獣人も使うようになったけど」

「へ~、でもそうなると獣人の間じゃ嗅覚レベルの差が余計に広がったんじゃ?」

「違う。嗅覚操作はわかりやすく言うなら素人の開拓兵が最低限戦えるように一段階強くなるための力。既に強い開拓兵が達人レベルに強くなるのとは同じ一段階だとしても全然違う」

「おお、なるほど。そういうことか」

 

 テストの点で馬鹿が平均になるのと平均が上位になるのとじゃ同じ点数の上昇でも努力の量が違う感じだな。

 

「ちなみにそれって普人種(おれ)だと使えないのか?」

「知らない」

「そっか……」

 

 習得出来るならやってみたかったんだけど。

 わからないなら仕方ない。

 

「ちなみに秘伝だから普人種に教えられないとかそういうのではない?」

「別に知りたければ誰にでも教えてると思う。少なくとも私は口止めされてないし」

「ふぅん。ならどんな風に使ってるんだ?」

「どんな風……こう、魔力をガーってやってグッとしてキュッって感じ」

「なるほどわからん」

 

 擬音ンンンンッ。

 わからんて。

 一切説明になってないだろ。

 あれか? 秘伝ってことすら言いたくなくて遠回しに拒否ってる感じか?

 

「う~ん……どうすれば……」

 

 あ、違うわこれ。

 普通に感覚派なだけだわ。

 説明下手かよ。

 

「ちょっと良い?」

「え?」

 

 突然俺の前に出たかと思えば手袋を外し、マスクの下に手を入れてきた。

 するとその手から魔力が流れ込んでくる。

 俺の魔力と反発して上手く魔力を流せないのか表情、というか目つきはより一層険しくなっていた。

 変なことはされないだろうと俺は顔の辺りの魔力の流れを上手く操作し、反発が起きないようにする。

 

「お、おおぉ……これは確かにガーでグッでキュッだわ」

 

 体内の魔力の感覚を誰かに伝達することなんて一切考えずそのまま簡単に表現したら確かにさっきみたいな感覚派の表現になった。

 魔力が勢いよく流れ、鼻のあたりに一度とどめ、複雑な図形を魔力で描くように圧縮する。

 

「……ッ! にゃぁぐぁああああッ! 鼻ぁぁああああッ!」

「あ、ごめん。場所が悪かった」

「痛いよぅ、鼻が痛いよぅ」

 

 顔面爆発した気分。

 というか激臭のするドライアイスを鼻の中に一かけら突っ込まれて鼻と口封じられた気分だ。

 

「うん、ホントごめん」

「いや、予測できたことだから、俺が悪いから」

 

 教えを願ったのは俺だし。

 これは自業自得で良い。

 それで普通に納得できるから問題なしだ。

 

「でも、こんなに変わんのな……」

「嗅覚はちょっと変わるだけで差が出るから。……涙出てるよ」

「わかってる。けど止まんねぇ」

 

 嗅覚はとっくに元に戻っているハズなのにいまだに鼻が痛い。

 わさびを一気食いしたみたいだ。

 

「まあ、ありがとな」

「変態」

「違うっ。なんとなく感覚掴んだし、頑張れば再現も……ノォッ!」

「学習能力ないの?」

「ぐうの音も出ねぇッ!?」

 

 調子に乗って嗅覚操作の感覚を掴んだと見せびらかせば、一気に襲い掛かって来る鼻内部の激痛。

 これはやった自分も自分の学習能力を疑うレベルだ。

 

「もう上に着いた。……どこまで着いてくんの?」

「まあまあ、そう恥ずかしがらずに一緒に行こうじゃないか」

「別に恥ずかしがってないけど……まあ、別にいい」

 

 依頼主の団体に下水装備を返却しつつ一緒にギルドへ向かう。

 

「ところで名前は? ちなみに俺はヒイラギ、異世界人で普人種な」

「オルロヴァ、鳥人種。よろしく」

 




 一部を除いて柊に女の方から近づきには行ってません
 柊の周囲に女が多いのは柊が男と女の二択を見つけた時に女の方に進んでるだけです
 その説明を今回旧下水道で描写しました
 そのためだけ……ではないけどそのために登場することになった少年X
 出番がセリフにして三行、少なくてスマンネ
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