ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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 前話の前書きに追加した通り名称を『冒険者』から『開拓兵』に変更し、二話に一文を追加しました
 設定を間違えて申し訳ない
 そこ以外は変えてないので読み直す必要はないです。ホント、名称を変えただけなので


第二五話 光明と変化

「ざっとこんなモンか」

「おお……今までで一番片付いたね」

 

 素早く終わらせるつもりだったのに想像以上時間がかかってしまった。

 

「てかさ、研究者がこういう研究資料を簡単に見せて良いモンなのか?」

「理解できないんじゃないの?」

「いや、俺はそうだけどさ、たまに依頼に出してるんだろ?」

「ああ、ヘーキヘーキ、見られても良いよ。趣味だから」

「そうなのか」

 

 だからってあの惨状はないと思う。

 それに研究内容によっては金になるだろうし。

 

「この紙束は計算の紙、この紙束はその他の思考過程とか実験過程結果を書いた紙な。本はざっと内容を見て種類ごとに分けたから」

「おお、優しいなヒイラギくんは!」

「いや、片づけんだから普通だろ。それにこっちは仕事でやってるんだぞ?」

 

 仕事で手を抜いたら問題だろうが。

 依頼の斡旋をしてもらえなくなるかもしれないし。

 死活問題だ。

 

「今までただ片づけるだけだったからね。ちょっと感心したよ、流石は異世界人。いや、ヒイラギくんと言った方が良いかい?」

「あ~、どっちかって言うと後者の方が良いな。異世界人だからって全員が良くも悪くも俺みたいなのじゃねぇだろうし」

「やっぱり世界が違っても人間とはそういうモノなんだね」

「そんなモンじゃねえの? よっぽど知能に差がなくて世界観が違いすぎなけりゃ受ける刺激は同じなんだったら精神性にデカい違いは出ねえだろ」

 

 とはいっても俺は二つの世界をそれぞれ不完全にしか知らないから明言はできないけど。

 

「ま、それはそれとして……エリナ、苦手なモノは?」

「え、鬱陶しい奴」

「違う、飯の話だ」

「無駄にしょっぱいのが苦手だ」

「そうか……それでよく干し肉生活やってたな」

 

 アレ、試しに食べてみたけどかなり塩気が強かった。

 泣くかと思った。

 

「もしかして飯買ってくるの? 別に今日はもう良いんだけど」

「ちゃんと食おうな? エリナの年齢がいくつかは知らんがそんな身体じゃ将来後悔するぞ」

「別に早死にしたってなぁ、楽しく生きられれば若く死のうと構わないし」

「それは俺も同意するが将来好きな人ができたりしたら子どもができなくなるとかそういうのあるだろう」

「出会う機会ないし、別に……」

「良いからちゃんと食え、な?」

「あい……」

 

 さて、何食わすか。

 一応固形物は食ってたみたいだし、普通の料理で良いだろう。

 

 この時、俺は心の底からこの時代に点滴(・・)がなくて良かったと思った。

 アレがあったら多分エリナはずっと点滴で過ごしていただろう。

 生きる屍と言うべきか。

 はたまた枯れ木というべきか。

 必要最低限の栄養は摂取しているから死にはせず、けれどそれ以上の栄養がないから栄養失調で肌は砂漠のように乾いて枯れ木のように細く見るも無残な姿に。

 本当に点滴がなくてよかった。

 

「簡単なので悪いが特別料理が上手いわけでもないから勘弁しろ、今日はパスタだ」

「わ、わかった」

 

 片づけのため荷物を一度移動させるときにこの家にキッチンがあるのは確認済み。

 一応調理器具もあるにはあった。

 箱の中に適当に詰め込まれていたが。

 

「すぐ戻るから下で待ってろ」

 

 強めにそう命令してダッシュで外に出る。

 急ぎだから値引き交渉なんてなしだ。

 幸いこの家は大通りに近いから買い物はすぐに終わった。

 

「早かったね」

「ああ、お陰で疲れたわ」

「ならそんなにしなくて良いんだよ?」

「そういうワケにもいかねーよ。ソレは俺の理性が同意しないからな」

 

 料理は一人でいる時間が長かったから慣れてる。

 そうじゃなくとも小学校中学校で何回も調理実習したんだ。

 問題ない。

 

「手際いいね」

「当然! それに開拓兵だしそのうち旅で必要になるだろ」

「それもそうだね」

「ほれ、できたぞ」

 

 生パスタなんて作ったの久々だから少し形が歪になった。

 確か昔作ったのは中学入ってすぐの頃だったか。

 興味本位で手を出して、しばらくハマった記憶がある。

 三年以上やってないから下手だな。

 

「これがパスタか。聞いたことはあったが食べるのは初めてだ」

「この世界にもあるのか」

 

 ……ああ、頭が動かん。

 動かないっていうか全身がだるい。

 流石に今の俺が茹でる水出して加熱してってのを長時間やるのは無理があった。

 魔力欠乏状態で疲労感が半端ない。

 

「久々にちゃんとした食事を摂ったけど……美味しいな」

 

 単純だなぁ、俺。

 こんなに疲れてんのにちょっと笑われただけで平気な気がしてくる。

 前が前だからそのギャップかもしれないけど、ホントこういうまともな人間って話すと心が楽。

 

「これからも……たまに作りに来るわ」

「本当!? 嬉しい! って……いいの? 忙しいんでしょ?」

「ン゙ッ゙」

 

 ダメだ、尊い。

 守りたい、この笑顔。

 

「仕方ねーだろ、目ぇ離すとあんな食生活されんだから」

「が、頑張るからッ。これからは頑張るからッ」

「掃除もしろよ?」

「それは……」

「なんでそこは躊躇うんだよ」

「いちいち片づけてたら時間がもったいないし」

「依頼出したら金がもったいないでしょーが」

「片づけに割く多くの時間をお金で解決した方が効率良いなーって」

「その思考があってなんでマトモな食事してなかったんだ?」

 

 片づけの時間をお金で確保するのは理解できる。

 けどその対価思考があってどうしてちょっと時間を割くことで脳が正常に稼働するという考えに至れなかったのかが不思議で仕方ない。

 

「仕方ないじゃん?」

「仕方なくねえよ……」

 

 こうやってると思考能力が低下しそうな気がしてくる。

 

「ま、まあとにかくありがとう。ほら依頼達成のメダルと、あとさっきの食事代」

「メダルはともかくそっちはいらねえ」

「けどこんなに色々してもらってタダは……」

「だったら異世界人でも大人数でできる戦闘以外の依頼を知らないか?」

「え? えっと……下水とか?」

「下水以外は?」

「え、ええ……シャプルから聞いてるだろうけど炊き出しとか……あ、街の清掃とかはどう? 公共施設を清掃するための団体があってそこなら身分関係なく働けるって聞いたことがあるし」

「下水と同じ団体?」

「うん。けどある程度選べるって話だし」

「! なるほど! ありがとう、また今度来る!」

 

 下水掃除に意識が向いていたから普通の街の掃除は盲点だった。

 種族、経歴なんかを全て問わずに働かせてくれるならあいつらにうってつけかもしれない。

 街ってことは日常的に色んな一般人と触れあうってことで、そうなれば日頃の行い次第ではちゃんと街の人たちに受け入れて貰えていずれは普通の仕事に就けるようになるかもしれないし、幸せな家庭を築いてこの世界を楽しめる可能性だってある。

 エリナには本当に感謝だ。

 

「俺、今日だけで色んな人に借り作りまくりだな」

 

 異世界に来れて本当に良かった。

 もしかしたら前の世界で俺から遠ざかっていたからかもしれないけど、それでも俺が転移してきたのはこの世界で良かったと思う。

 

「やあやあシャプル、元気?」

「ヒイラギさん、今日はどうかしたんですか? もしかして錬金術師の紹介ですか?」

「いや、エリナにはもう会った」

「てことはまた散らかしたんですか……」

「ああ、それはそれは酷かったよ」

「では今日は何を?」

「特に用事はないんだ。正確にはあったんだがなくなってな」

 

 うん、流石にこれじゃわからないよな。

 

「同じ世界出身の奴らでもできる仕事を探してたんだがエリナのお陰で解決したんだよ」

「なるほど! ……せっかく探してたのに無駄になっちゃったなぁ」

「ん? 何か言った?」

「いえ、それは良かったですと」

「なるほど、ありがとな」

「え?」

「いや、良かったってことは少し心配してくれたんだろ? だからありがとうって」

 

 社交辞令かもしれない。

 けれど社交辞令じゃないかもしれないって思えるように最近なってきた。

 前だったら今みたいなことを言われても社交辞令としか捉えなかったはずなのに、今はその言葉を素直に受け取ることができる。

 他人の言葉をずっと疑って、曲解し続けてきたから少し驚きで、それでいて嬉しい。

 自分を変われないクソみたいな奴だと思ってたから変われるという事実が。

 

「嬉しいよ、俺」

「そんな、ありがとうだなんて……でも喜んでもらえて私も嬉しいです」

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