ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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 ヤベェ……以前作った設定を改めて組んでたら一気に時間が溶けた……
 コツコツ貯めてた文字ストックも消えた……


第三一話 鍛冶師

「それで、装備ってのは武器ッスか? それとも防具ッスか?」

「武器だ。使ってたのがボロボロになってな」

「ウヘェーッ、ボロボロじゃないッスか!? 装備はこれだけッスか?」

 

 出した短剣は我ながら扱いが雑に思える。

 決して雑に扱ったつもりはないのだが刃毀れが酷く、よく見ると根元には罅が入っていた。

 今ようやく気づいたがあの盗賊との戦いは本当にギリギリなんだったのだと再確認させられる。

 

「ああ、それ以外武器は持ってない」

「まあ他所から来たオニーサンは持ってなくても仕方ないッスネ」

「……なんで俺が異世界から来たって知ってるんだ?」

「ああッ!? そんな警戒しないで欲しいッス! この短剣が他所の人に渡されるって知ってただけッスよ」

「あ、ああ……そういうことか」

 

 過剰反応かもしれないが言っていないことを知られているという異常な状況の所為で咄嗟に構えてしまった。

 開拓兵でないただの鍛冶師の彼女にとってそれは酷く恐ろしいことのはず。

 

「すまない。怖がらせた」

「い、いえ、平気ッスよ。アタシは毎日色んな人を相手にしてるッスから、全然平気ッス」

「そうか?」

「ヨユーッス。ヘッチャラッス」

 

 確かに鍛冶屋ということはそれを扱うモノが来るということ。

 そこで店番をしているこの少女が威圧的な見た目や態度に慣れていてもおかしくない。

 

「で、話を戻すッスけど。どんな扱い方したんスか? 他所の人用の武器って素人が扱ってもある程度問題ないように耐久性能優先で造ってあるんス。だからゴブリン相手じゃほとんど刃毀れしないってのでゆっくり武器の手入れとか知れるようになってるはずなんスよ」

「その……盗賊相手に打ち合いました、はい。雑に扱ってサーセン」

 

 作品をダメにされるっていうのは造った当人じゃなくとも嫌なことだ。

 それを少女とはいえ鍛冶師に話すのだから怒鳴られかねないと少しビビってしまった。

 

「なるほど」

「あれ? 雑に扱うなって怒んないの?」

「はい? 武器は戦うためのモンッスよ。ボロボロになるのは当然で、そりゃ無意味に自分の力自慢のために壊されたりしたら怒るッスけど戦いでそうなるなら別に平気ッス。むしろ武器のお陰でオニーサンを助けられたのだとしたら鍛冶師としては誇らしいッス!」

 

 武器は武器であると同時に使い手を護る防具。

 そういう考えなのだろう。

 その答えに俺は彼女を頼もしく感じ、そして彼女の鍛冶師としての誇りを感じ取った。

 開拓兵は人々を守り、鍛冶師は開拓兵を守る。

 それが彼女の、鍛冶師たちの誇りなのだろう。

 

「装備が戦いで壊れたのを怒るのは二流ってのがアタシの持論ッス。武器も防具も芸術品じゃなくて戦いの道具ッス、飾って美しいのが芸術品で、戦う姿が美しいのが装備ッスから。本質を間違えちゃダメッス」

「本質を間違えちゃダメ、か。確かにそうだな。壊されるのが嫌なら芸術家にでもなってろって話だ」

「ところでコレと打ち合った武器ってどんなッスか?」

「なんか…………長剣。すまん、なんて言えば良いのかわからん」

 

 正直薄暗い場所で戦ったしそもそもどう形容すれば伝わるのかがわからない。

 形状は長剣としか形容できないし材質もわからないしで。

 

「なんでも良いんで特徴言って欲しいッス」

「え~? なんていうか、こう、全体的に滑らか? で、細くて――」

「……コレみたいな感じッスか?」

「あ、そうそう。こんな感じで色は白っぽくて持った感じは軽かった」

「フルフィウステーラ派ッスか!? マジっすか!?」

「フルフィウステーラハ?」

 

 確認のために見せられたのは盗賊が持っていたのと同じ印象を受ける細身の長剣、

 持ってみると握った感じも近い。

 使っていた短剣よる少し重い程度の重量。

 見た目は細く頼りないながらもかるく揺らしてみるとそのしなやかさがわかる。

 

「フルフィウステーラ、っていう鍛冶職人の派閥の一つッス。武の至上を軽さとしなやかさとして、美の至上を川のような滑らかさとする派閥で柄の部分に星の意匠を施すのが特徴ッス」

「あ、ホントだ、よく見たら柄の部分に星がある」

 

 正直鍛冶師なんて健全な小学生男児程度の憧れしかなかったからあまり意識していなかったし、だから鍛冶師なんてただ武器や防具を造るだけってイメージだったけどそういう派閥があるっていうのが新鮮で聞いていて楽しい。

 未知との遭遇というか。

 これまで目を向けてこなかった部分の世界を知ってワクワクする。

 前は人間域なんて狭くてすぐに観光し終わるって思ってたけど、意外とそうじゃないのかもしれない。

 

「というかその派閥はなんかヤバいの? 盗賊が持ってるのが信じられないくらい高いとか?」

「あ、盗賊と戦ったんスネ。高いってワケじゃないッス。まあ上を見たら高いのもあるッスけど安いのもあるッス。たださっき言ったようにフルフィウステーラ派の武器は軽さが特徴だから基本的に手数が増えるんスよネ。オニーサン、こういっちゃなんですけどさっきの様子を見ると反応速度良いってワケじゃなさそうッスから」

「たしかに思い返してみれば手数が多かったな。まあこの一週間もっとヤベーのに鍛えてもらってたからそっちで慣れたんだと思うわ」

 

 正直強さって点でしばらくビビることはないんじゃないか?

 どんなモンスターもベアトリクスに比べたら弱いだろうし。

 

「なるほど、慣れッスか」

「慣れだ」

 

 身体を動かすのが所詮は感覚である以上そういう曖昧に思える感覚ってのは結構大事だ。

 それは彼女も経験からわかっているらしく、納得の色が強い。

 

「ちなみに白っぽいのはなんだったんだ?」

「ん~、多分なんかの結晶との合金だと思うんスけどそれだけじゃ特徴なさ過ぎてわかんないッス」

「ま、それもそうか」

 

 ちょっと気になっただけだから別に良いか。

 

「んじゃ、武器だな」

「何をお探しッスか?」

「扱いやすいのが良いんだよな、弱い現状まだ流石にロマンに振れねえ」

 

 ロマン装備はカッコいいから好きだ。

 けど命と天秤にかけたらちょっとのロマン装備よりも未来の世界観光の方が大事である。

 

「となると長物はムリッスネ。じゃあ短剣短刀とかが合ってるんスか」

「じゃあ使ってた奴と同じかそれより性能が良いヤツで」

「予算は?」

「あ~……こんな感じだ」

 

 今日の報酬が後日になったからそこまで高額所持はしてない。

 ゴブリンに貢がせたのがあっても流石に装備を買うには少し足りないかもしれない。

 

「あ~盗賊退治は即金にはならないッスからネ。でも一応買えるには買えるッス」

「本当か?!」

「ホントッス。それにお金は商品受け取りの時、今日持ってなくても今度の時にたんまり持ってれば良いんスよ」

「それはそうだな」

「前金としてちょっとは貰うッスけど」

 

 まあ、それくらいなら問題ないな。

 ちょっとがどれくらいを基準としてちょっとなのかわからないけど。

 

「それなら短剣二、それと武器としてのガントレットあるか?」

「もちろんッス。ただガントレットの方は特注(カスタムメイド)になるんで時間が掛かるッスけど」

「具体的にどれくらい?」

「ちょっと手を見せて欲しいッス」

「おう」

「あちゃ~、オニーサン爪結構伸びてるじゃないッスか。ちゃんと手入れしないとダメッスよ?」

「お、おう」

 

 柔らかい、手が柔らかいッ。

 結構ゴツゴツしてるんだけど女の子って感じがするッ。

 

 サイズ確認のために出した手を触れてくる彼女の手の感触に一瞬動揺してしまう。

 けれど小さくも逞しいその手は鍛冶師としてのカッコよさを内容していて少し羨ましく感じた。

 

「おっきくてキレーな手ッスネ。多分一週間もあればイケると思うッス」

「なるほど、なら頼む」

「短剣ッスけど、種類あるッスよ」

 

 示された短剣は確かに数が多い。

 意匠が大きく異なるから一人で造ったワケではないのだろう。

 彼女と、彼女の父親と、他の誰かたち。

 

「さっきの予算で考えると使い切ったとしてもこの辺りが限界ッスネ」

「おお、一気に減った」

「あくまで同じ金額帯のを買うこと前提ッスから偏らせたらもうちょっと種類は増えるッスけど、どうするッスか?」

「この中からでいい。つってもよくわかんねーや、教えてくれ」

 

 色が明確に違う奴しか違いがわからないし、区別ができるだけで性能はわからない。

 同じようなワイシャツを見て材質説明なしに違いを理解しろってレベルで無理だ。

 

「そうッスネ……この価格帯だと加性能(オプション)付きのがほとんどなくて基本は素材の性能で勝負する感じッス。例えばこの少し刃の部分が透き通ってるように見える短剣には結晶金属(クリスタリウム)が配合されていて単純な強度は落ちるものの魔力による武器強化の適性が向上するから武器強化が得意な人には結構人気があるッス」

「綺麗だな」

 

 透き通った橙色の刃は、結晶金属(クリスタリウム)でできた短剣はまるで鉱石ナイフのよう。

 

「それでこっちの青と紫の短剣には重力鉱晶(グラヴァイト)って素材が使われてて、ある程度重量が可変なんス。重くしたり軽くしたりできるから振る瞬間は軽くして速度を上げて当てる瞬間に重くして攻撃の威力を上げるってのもできるッス」

「要するに振り出しと打ち込みの瞬間にそれぞれ操作するってことだよな? 言葉で言えば単純だがクソむずそうじゃねぇか」

 

 そもそもが命がけの戦い。

 それに並行して神経を大きく消耗する作業を加えるというのは素人の域を脱しない俺には中々難しい話だ。

 

「ちなみに重力鉱晶(グラヴァイト)はエルドエーベルって派閥の作品に多用されてるッス」

「ほぇ~」

「エルドエーベル派の思想が一撃必殺ッスから武器の大きさはそのままで重さによって威力を上げることを追求した結果ッスネ」

「俺が使ったら腕が死にそう、その派閥の武器」

「一応装着者に配慮してある程度軽くできるッスよ」

「一応、ね」

 

 一応で、ある程度。

 結局は並外れた筋力と体力がないと無理そうである。

 

「ちょっとこの二つ振ってみても良いか?」

「もちろんッス」

 

 サイズや大まかな意匠(デザイン)は同じ。

 けれど比べてみれば重さがはっきりと違う。

 重力鉱晶(グラヴァイト)の方は結晶金属(クリスタリウム)二本分くらいの重さがある。

 結晶金属(クリスタリウム)の方は今まで使っていたナイフに比べるとほんの少し軽いくらいだから持った感じだけだとそこまで違和感はない。

 振り心地次第だが振った感じも変な感じはない。

 

 握りの感覚は前のと大体同じだな。

 ただ素材が違うからか?

 若干手に伝わってくる熱? が違う気がする。

 

 武器強化――魔力を流す。

 すると掌と短剣の境界が曖昧になったかのような感覚に襲われた。

 腕の感覚領域が短剣まで拡張したというワケではない。

 短剣が自分の中に溶け込むような、そんな感覚だった。

 気を抜くと本当に腕に溶け込みそうで、腕から短剣が生えそうで。

 怖くはなく、不思議な感じだ。

 今度は重力鉱晶(グラヴァイト)の方に武器強化を行う。

 やはり掌と一体化するような感覚。

 けれどさっきとは違った。

 さっきのが短剣が腕に溶け込むようなイメージだとすると、今は掌と短剣が癒着するような、ごく一部の領域だけが肉体と短剣の中間物質に変質するようなイメージ。

 

「おもしれーな」

「オニーサン意外と武器強化に適性あるッスネ」

「武器強化に適性?」

「正しくは性格が合ってるって感じッス。武器強化は本人の魔力や経験依存なんでよく言うような才能って逃げ道がないんスけど、一応あるとすればその性格によるって話ッス。今の感覚に忌避感がなければ上手くなるっていう感じで」

「何事も基本そうじゃね? 戦うのだって怖がってたら強くなれないし、勉強も苦手意識が強ければ身につかない」

「そうッスネ。アタシも経験あるッス」

 

 というか平然と才能(・・)って言葉を逃げ道って形容したよ、この子。

 その考え方ってこの世界の基本認識?

 それとも君だけ?

 ま、どっちにしろその考え方好きだわぁ。

 その考え方は俺も完全同意だし。

 

「じゃあ気に入ったしコレ買うわ」

「了解ッス」




 武器強化:おおよそ原理は身体強化と同様
      魔を通常状態以上に纏うことで存在力を強化する技術
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