ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第三四話 語られぬ功績

「お呼びの者をお連れ致しました」

「入れ」

 

 俺をここまで連れてきたギルド職員が扉を叩くと部屋の中からなんとなく聞いたことがあるような声がした。

 扉越しだからかハッキリとせずに記憶を半開きにするだけのその女の声は凛としていて力強い。

 

「えぇっと? 失礼しまぁす……」

 

 そこにいたのは陽の光を受けて金髪にも見える美しい亜麻色の髪の女だった。

 こちらに向ける鋭い目つきは決して威圧的ではなく、凛々しくて美しいと感じるモノ。

 これまでの人生でトップクラスの美人に会った、いや、呼び出された俺は緊張と困惑を極めそうだ。

 

「ははは、そう硬くならなくていい」

「え、ああ……はい?」

 

 正直敬語が苦手な俺だが職員の態度から偉い人間ということはわかり、下手を打てば首が飛びかねないから流石に敬語を使うが正直どうすればいいのかわからない。

 

「君とは……六日ぶりだね」

「え? 六日? ……ああッ、街の外で会った上級騎士の! えぇっと~確か名前が、アデルオーガストだったっけかな?」

「憶えていてくれたんだね」

「まあ、流石にこの世界に来て初日っすから。オーガストさんのことは憶えてますよ」

 

 この世界初日に会って不審者扱いをされた上級騎士アデル・オーガスト。

 顔を見るのはこれが初めてだしそもそも今は鎧すら着ていない。

 座っているから身長も手掛かりにはならなくて唯一の手掛かりは声。

 けれどそれすら兜で曇っていたから曖昧で。

 正直わかる気がしなかった。

 

「そうか。ああ、それと敬語は特に気にしなくていい。呼び方もアデルで構わないし」

「あ、そうなの? んじゃアデルで。それでアデルは一体なんの用でわざわざ俺を待ってたんだ?」

 

 いきなり口調を変え過ぎたのだろうか、アデルはそれまでの表情からは考えられないほど変化しキョトンとしていた。

 けれど不快には思っていないらしくすぐに表情が戻る。

 

「いやなに、君が盗賊を退治したと聞いてね、お礼をしに来たんだ」

「盗賊のためにわざわざ上級騎士様が? 騎士って意外に暇なの?」

「あはは、酷い言いようだね。これでも多忙な身なんだけどね?」

「そりゃ失敬」

 

 たかが一盗賊団程度に上級騎士が礼を言いに来る。

 その異常さが理解できない。

 それは以前の感覚が染みついているからだろうか。

 実はこの国では盗賊とは途轍もない巨悪なのかもしれない。

 

「実は盗品の中にオーガストの所有する品物があってね、体裁的にそれを公にするワケにはいかなかったんだよ。だから知らなかったとはいえ君はオーガスト家を救ったと言えるんだ」

「別に気にしなくて良いぞ。ぶっちゃけ興味ないから普通に金で良いし。てかあの盗品の中にそんな重要なモノあったのか……気付かんかった」

 

 あまり重要そうなモノがあるようには見えなかった。

 正確には貴重なモノはあったが貴族が大事にしそうなほどのモノは見ていない。

 

「そこまで貴重じゃないよ」

「え?」

「ただその品物には見るものが見ればオーガスト家のモノだとわかる品物だったからね。盗まれることが困るんじゃなくて盗まれたという事実が知られれば信用問題なんだよ。言っただろう? 体裁的にって」

「ああ、そういうことね」

 

 政治要素の絡んだ話か。

 正直そういうの面倒だからぶっちゃけ関わりたくねー。

 

「つーかあの盗賊共貴族の家から盗む程度には凄腕だったのか。……盗みと戦いの強さは別なんだなぁ」

「違うよ、調べてわかったがあの盗賊たちはウチには直接の関係はない。簡単に言えば盗んだ奴らが裏で売って、それを商人が買って持ち出して、それを盗賊たちが襲って、君が捕まえたってことだよ」

「あちこち移動してたのか」

「それとオーガスト家とはいっても複数ある宝物庫の一つを襲われたんだよ、分家の管理する」

「警備力は弱めだったってことか。……言い訳くせぇ」

「あははっ、君は本当に酷いな」

 

 当然の感性だと思う。

 複数ある、分家。

 そんな単語を並べられたらそりゃあ疑う気にもなる。

 

「まあ真面目な話本当に助かったよ。受けた恩はちゃんと返さなければならないのだけど君はこの世界に来たばかりだからかやけに物欲が薄くて金で良いと来た。けど正直この恩に対してどれだけの価値があるかわからないんだよ」

「いや、だからそれなりの金が合ったら良いんだって」

「君はそう言うが、そういうワケにもいかない。事が露見すればオーガスト家の信用が一気に落ちる。信用が落ちれば様々な方面に融通が利かなくなる。融通か利かなくなると国の防衛にも支障を来たす。そうなれば人類は長き停滞を迎えるだろうし場合によっては滅亡すらありうる」

「そんなに深刻なの?!」

 

 その理屈ではそれらが繋がっているのは確かにわかる。

 わかるが、理解はできない。

 たかが盗品ごときで国の滅亡は言いすぎだろうというのが俺の素直な感想だ。

 吹かしすぎ、盛りすぎ、大袈裟がすぎる。

 

「建国の時から王を支え続けてきたオーガスト家はそこそこ権力があってね、その権力のお陰で国力増強がやりやすいしオーガスト家自体もその権力で武装などが大幅に強化できている。だからその権力を失うと純粋にモンスターへの対抗戦力を大幅に減らしてしまう」

「ン成程。そこまでは理解した」

「最強戦力の一角が盗賊如きに遅れを取ったと知られれば権威は崩れ、そうなると国は不安に包まれるだろう。一つの要素に国民の意識を集中させればそれが正常に機能している限り国は強固でいられる、が、異常を来たせば一気に脆弱と化す。なんの偶然か君は名もなき英雄になったんだ、一切歴史では語られない功績の英雄だ」

「恥ずかしいな……」

 

 英雄なんて器じゃない。

 一切そう認識されないのはまだいいが、アデルにそんな風に言われるなんてとんでもなく恥ずかしい。

 

「まあ、そういうワケでこれは金なんかじゃ到底払いきれないんだ。だから申し訳ないが君の帳簿に貸し(・・)と書いておいてくれ」

「わかった。返済期限はナシってことで」

 

 ま、ぶっちゃけ俺が大したことをやってないって認識だから一生返さず踏み倒してくれても良いんだけど。

 それは許せなさそうだし、そのうちでいい。

 

「ああ。……治安維持の協力、心から感謝する!」

「……おうッ」

 

 六日前のことを意識して言ったのだろう。

 あの時のように声はピンと張りつつ澄んでいて、けれどあの時とは違って高圧的ではない。

 ただひたすらにカッコいいと思った。

 

「時間を取らせてすまなかったな」

「ああ、別に急ぎの用はないから良いよ。ところで一つ質問なんだけどさ、アデルってなんで全身鎧つけてたワケ? ステイタス高いんだろ?」

 

 ステイタスが上がれば数の暴力で装備性能なんてほとんど関係ないはずだ。

 むしろ邪魔なはず。

 着けている理由が少し気になる。

 

「まあ、ハッキリ言ってしまえば理由の半分くらいが見栄えのためだね。生身で平気だとしても流石に私服で民の前には立てないだろう」

「理解理解」

 

 さっきと同じような権威のため。

 そういうのが縁遠かったから少し馬鹿馬鹿しく思えるが、この世界からしたら重要な事なのだろう。

 俺の勝手な感性で否定してはいけない。

 

「もう半分は戦闘の補助だ。自慢ではなく事実、私レベルになると防具の防御力は紙を纏っているのとそう大差がない」

「マジか、パネェ」

「けれど魔術の補助や魔術の簡易発動など戦う上では有利に立てる。自分でできることが大半だがそれらを全て一人でやるには【並列思考】の能力でもない限りは難しいからな」

「ああ、確かに」

 

 俺も習得すればバリアを張れるだろうけどそれをすれば今の俺じゃ他の魔術が使えない。

 けど指輪でバリアを張れば並行して他の魔術が使える。

 つまり高レベル帯の人間にとって防具は電卓のようなモノなのだろう。

 

 ところでこれってこの後どうすれば良いんだ?

 俺が客として来たワケだし……俺の方が先に退出するってので良いのか?

 

「じゃあ用事も済んだみたいだし、もう行くわ」

「そうか、これからも頑張ってくれ。そして何かあったらすまないが力を貸してほしい」

「力になるならな~。……あ、それと。なんか自信なさそうで恥ずかしそうにしてるけど綺麗でカワイイと思うから堂々として見たらいいと思うぜ」

 

 ずっと気になってたんだよなぁ、評価を気にするような視線とモジモジした内股。

 ギャップで可愛くはあるんだけど正直キャラに合ってないと思うしアデルは凛々しい方が見栄えが良い。

 

「んじゃなッ」

「あっ、お、おいっ……」

 

 流石に揶揄いすぎたかと少し反省するものの戻るのが怖くて俺はそのまま足早に立ち去ることにした。

 幸いアデルが追ってくることはなかった。

 

「綺麗で可愛いとはなんだ? 戦っている姿も見ずに綺麗とは……それに可愛いとは一体……」

 

 言われ慣れていない以前にアデルにはその概念がなかった。

 女は政治の道具、などという風習が存在しないから幼少期にパーティーに出席した経験が少なく。

 大人になってから褒められたのはその強さのみ。

 つまりアデルにとって綺麗とは剣や戦っている姿のことを意味し、容姿を褒める言葉ではない。

 そしてアデルの辞書に“可愛い”の文字は一切載っていなかった。

 

「わからん……」

 

 騎士の家に生まれ、騎士になるために生き、騎士として生きてきたアデルに飾りなどなかった。

 あるのは権威を維持するための剣と鎧。

 アデルはしばらくの間俺の何気ない言葉で悩むのだった。




 見た目は評価項目に入るものの重要ではないこの世界でも人目を惹くほどの容姿の持ち主、それがアデルです
 血のほとんどがルートヴィヒではあるもののアウグストゥスの血も混ざっているため僅かに顔立ちが特殊に見え、それもあってその容姿は注目を浴びます
 けれど見た目がそこまで重要ではないために見た目を褒めるという文化がそこまでありません
 なのでどれだけ容姿が整っていても他のところで活躍をしていたり血筋が優秀だったりというアデルはそういった言葉に馴染みがありません

 まあ重要な褒め言葉じゃないので少なくともアデル相手じゃどれだけ容姿を褒めても好感度が上がることはありません
 言われて嬉しい?
 ンなワケない、異文化交流なんだからそりゃ褒め言葉も変わるし
 かと言ってアデルは強いとかの類は言われ慣れてるので好感度は行動で稼ぐしかない
 ちなみにステイタスは隠し項目(マスクデータ)も含めて全般人類最高峰なのでヒイラギの現状最強切り札である【洗脳】も一切通用しない、と
 どんな手を使っても攻略激ムズな色んな意味で鉄壁の女、それがアデルです 
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