ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第三六話 本日二度目

「おや、何か御用ですかな?」

「俺が用があるのがアンタかは知らん。とりあえず村長のマイヤーって奴に会いたくてな、村で一番デカい建物のところに来たんだ。アンタがマイヤー?」

「マイヤーはマイヤーですが村長(マイヤー)は息子に譲りましてね、私は元村長ってワケですよ」

 

 マイヤー一家の一人か。

 

「村長はどこだ?」

「……誰かわからない人に会わせろというのかい?」

「ま、村で一番偉い奴に会わせろって言ってんだからそうなるか。……俺は開拓兵のヒイラギってモンだ。様子を見に来た」

「なるほど。詳しくは知りませんが不審な影を見たという証言が複数上がっておりましたな」

 

 流石に急ぎすぎたようだ。

 これからやるのは一種の交渉と認識しなければならない。

 事実、交渉だろう。

 点にならない名声の為、隙のない交渉(パーフェクトコミュニケーション)を心掛けなくては。

 

「そういうことでしたら……あそこにいるのが村長(マイヤー)です」

「そうか、ありがとうな爺さん」

 

 この村にはまだ依頼達成の報告が来ていないのだろうか。

 ちっとも疑われない。

 

「アンタが村長(マイヤー)だな? 開拓兵だが今良いか?」

「! あ、ああ。構わないよ」

 

 ン~、イケメン。

 顔良くて村長ってツエーわ。

 村長だからじゃなくて顔が良いから色んな人に囲まれてない?

 

「これを返しに来た」

「これは……報酬かい?」

「そうだ」

 

 硬貨袋の中には当然だが大量の金が入っている。

 その額は全額の三七五〇アスター。

 最小だと銀貨三七枚と銅貨五〇枚なのだが、中にはそれ以上の枚数が入っていてその大半が古びた銅貨だ。

 

「怪しい影は森に潜伏していた盗賊。そっちは既に依頼が出ててな、盗賊に掛かっていた懸賞金も合わせて充分なほど金は貰ってんだ、これはいらない」

「そうだったのか……けれどそれはダメだ。このお金は正当な報酬として受け取って欲しい」

「いらねえって言ってるだろ。この依頼は偶然だったんだ、依頼をこなすつもりがなかった以上正当な報酬も何もねーだろうが」

 

 雰囲気を感じ取ってか周囲の村人たちの衆目が少し集まっているのがわかる。

 

「けれど――」

「ああ、もう……察しろよ。俺はこの国を護りたくて開拓兵になったんだぞ」

 

 嘘で、本当。

 優先順位が高いのはマユゲやベアトリクス、シャプルやフェーニャンなんかの奴らだ。

 あと一応は香月や愛那たち。

 見ず知らずの、こいつらのような個々人に興味なんてない。

 けれど俺に護れるというのならそんな奴らであっても俺は護る。

 理由なんて単純だ。

 誰かが死ねば大切な誰かが泣くかもしれないから。

 俺は俺の大切な人たちが泣く姿を見ていられるほど強くない、きっと心が痛むから、心が傷つくのが嫌だからそうならないようにその未来を回避する。

 

「お前たちのなけなしの金なんぞいらねえって言ってんだよ」

 

 そして誰かが死ねば俺の居場所がなくなるから。

 綺麗事なんかじゃなく、人間は独りでは生きられない。

 食事も、土地も、武器も、俺は自分だけの力じゃ生み出せない。

 一人を見捨てればその損失はいずれ全体を滅ぼす。

 国が滅びれば俺の居場所もなくなってしまう。

 これが依存なのはわかっているけど、それでも俺はマユゲたちと笑い合いたい。

 

「お前たちは価値のない村人なんかじゃなくて国を支える村人なんだ、死なれてもらっちゃ困るんだよ」

「……」

 

 青臭いことを言っている自覚はある。

 そこらの奴に俺の思いを話しても子ども扱いされて笑われるだけ。

 けれど俺は本気で実現したい。

 他ならぬ俺のために。

 俺も、俺が好きになった人も、その人が大切に思っている人たちも、全てが幸せになれる世界を。

 一生をかけてでも実現する。

 ルートヴィヒでそれが実現できないなら実現できる場所を見つける。

 見つからないなら創る。

 そのために世界を開拓する必要があるんだ。

 それまでも、そこからも死なれては困る。

 

「君は……」

「だからこれは受け取れねぇ、受け取らねぇ」

 

 理想の対義語は現実だという。

 けれどその両立が出来ないって証明した奴は多分、いない。

 だったら俺は両立するために全力を尽くして、片手で理想を、もう片手で現実を持ってバランス取れるくらいに鍛えるまでだ。

 

「そうか……君は英雄になろうというんだね」

「知らん。けど俺の理想の実現にそれが必要だってんならなるまでだ」

「なれると良いね」

 

 あ~恥ずッ。

 なぁにが「俺の理想の実現にそれが必要だってんならやるまでだ」だよ!

 鍛えても全然強くなってませんけどぉ?!

 

「じゃあな」

「ああ、ありがとう。君の名声が轟くのを楽しみにしているよ」

 

 ごめん、しばらく待ちぼうけ食らわすわ。

 俺成長遅いんだ。

 

「あっ、あのッ!!」

「え?」

 

 不意に呼び止められ、振り返るとそこには一人の少女がいた。

 

 ちょっと……ここは俺がカッコよく去るシーンでしょうが。

 カッコよくないけど。

 

「助けていただいて、そのうえお金まで返していただいてありがとうございます!」

「あ~、うん、気にせんでいいよ。助けたつもり一切ないし、そっちの認識としては……なんか怪しい人影見たけど見なくなったし気のせいだったんだろ、って感じに思ってくれれば楽だし」

 

 顔を売っておきたかったのは大人相手だし、子ども相手は……って、見た感じ同じくらいだし成人年齢考えたら普通に大人か。

 

「一つ教えてください!」

「……答えられる範囲ならな」

「私は貴方みたいなカッコいい開拓兵になれますか?! 私も強くなれますか?!」

 

 カッコいい?

 え、マジで?

 俺ってカッコいい?

 え~、もうそんなおだてても何も出ないぞ?

 

「生憎俺も開拓兵になって日が浅い、誰かの適性を見極めることなんて出来ない」

「そう……ですか……」

 

 こちとら一週間だぞ。

 殺しを平然と行う盗賊相手に勝てたことすら奇跡だっての。

 無理だわ。

 アデルのオーラすらぼんやりとしか感じ取れないのに出来るワケ。

 

「なんだ、開拓兵になりたいのか?」

「はい! 強くなって世界を見て回りたいんです! それが子どもの頃浮遊大陸を見た瞬間からの目標なんです!」

 

 なんだか今日は開拓兵になりたい女の子によく会う日だ。

 今日はそういう日なのだろうか?

 帰ったらもう一人くらいから相談されるのだろうか。

 

「殺し殺されるその覚悟があるなら開拓兵になればいい。力が欲しければ俺が貸してやるし紹介もしてやる。俺には助言なんてできないが、あえてするとしたら……好きにしろ(・・・・・)

「ありがとうございます!」

「俺がいつまで王都にいるかはわからんが、もし同じ時に王都にいれば声をかけろ。飯くらいは奢ってやる」

「……待っていてください!」

「そうだな、待ってるよ」

 

 俺は一人の少女の道を左右してしまったんだろうか。

 ただの返事じゃなくて「待っていてください」って言葉。

 決心……だよな。

 少し後悔をしているかもしれない。

 ……けどこうなった以上頼られたら面倒を見てやらないと。

 頼られなきゃこっちからは関わらないかもしれないが。

 

「じゃあな」

「はい! ありがとうございました!」

 

 さてさて、帰りますか。

 にしても王都から村まで意外と時間かかったなぁ。

 そのうち長期間の旅をすると考えると早いうちからちゃんと足腰体力鍛えとかないとな。

 ステイタスである程度楽できるらしいけどそれに依存するやり方は嫌だし。

 最低限自分の素の力だけで一〇〇キロくらいは走れるようにしたい。

 マユゲも「鍛えた肉体はステイタスに依存する人間よりもはるかに強くなれる」って言ってたし……貧弱なマユゲの言葉だから若干信憑性がアレだけど。

 それでも鍛えるべきではある。

 前の世界でも「筋肉は裏切らない」って名言もあったし。

 ついでに言えばステイタスに頼りきって、だらしない腹になるよりも引き締まった肉体美の方がやっぱ男としては憧れるモンだ。

 目指せ、筋力と機動力を兼ね備えた男らしい肉体!

 俺はやるぜ。

 超やるぜ。




 筋肉は大事(ここ重要)
 具体的にはレベルアップを繰り返す前に筋肉をつけるのが望ましい(もっと重要)
 レベルは少しだけではあるものの肉体に影響を及ぼします
 けれどレベルアップによって作られた身体よりも努力を積み重ねて造った肉体の方が存在強度が高いため肉体はレベルアップを重ねる前に行うのが効率が良いです
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