ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「なあ、俺っていつまで髪の毛とか提供すれば良いんだ?」
「……そォだな、血とか唾液とかはもう良いぞ」
「ハゲそう」
いつの間にか髪の毛は白と青と緑の入り交じったモノになっていた。
生え変わったワケじゃない。
根元の部分だけ色が変わったのでもない。
髪全体の色データを弄ったかのように既に生えている部分全てがそうなっていた。
一本全てが白一色だったり青一色だったり緑一色だったり。
もっといえば一本の髪でも二色のグラデーションが掛かっていたり三色のグラデーションだったり。
幸いなのはそれがランダムなのではなくある程度規則的に配列していること。
「それでなンの用なンだ?」
「俺っていつまでレベルアップしちゃダメなの?」
「良いって言うまでだ」
……それって一体いつまでなんだ?
「死にてェなら好きにすりゃ良い。オレはあくまで
俺だけレベルアップできない件。
「今鍛えておけば後が楽になンだし、無駄にはならねェンだ。……まあ、頑張れよ」
「え、今頑張れって言った!? ……うおっほいッ! やる気出てきたぁッ!」
「うるせェ……」
頑張れとか言われたら頑張っちゃうよ。
そりゃ頑張っちゃうよ。
……真面目な話、期待を向けられたのっていつ以来だろうなぁ。
小学校入ってちょっと以来なかった気がする。
「じゃあ今日も場所借りるな」
「……あァ」
マユゲから指示されたリハビリ用のメニューを思い出しながら準備運動をする。
寝たきりになってたワケじゃないのにリハビリってのはちょっと違和感だ。
けど身体機能回復ってのは間違ってないからリハビリではある。
歪んだ身体を修正するのだから。
「あだだだだ……柔軟運動の時点でイテェ……」
以前の怠惰を本気で改めたい。
筋トレは
「邪念が多い。てめェ嘗めてンのか?」
「マユゲ……」
どうやら付き合ってくれるらしい。
「一旦邪念全部捨てて自分の身体に意識を集中しろォ」
「自分に……集中……」
柔軟運動の姿勢のまま目を閉じ、余計な情報を排除する。
マユゲも動かないから存在する情報は二人分の呼吸音と、重力が身体を押さえつけて接地面に掛かる圧力と、口に溜まる唾液と、全身を打つ鼓動と、体内外の魔力だけ。
限られた情報量。
一度背筋を伸ばし、そのまま背骨を曲げずに全身の力をゆっくりと抜く。
そのまま全身に意識を分散させる。
「意識を散らすなよ」
小さく囁く声。
至近距離で発せられた声だが指示道理に自分の身体に意識を集中している俺はそれをむず痒いと思うことはなく、背に触れられた冷たい手にすら意識は向かなかった。
ただ導かれるまま、押されるまま身体はゆっくりと倒れて深くまで行くことができた。
「おらっ、意識元に戻せ。そこが現状の最大だ、まずはそこに意識的に行けるようにしやがれ」
「お、あ、おう。……って、イテェッ!?」
意識が戻って反射的に全身に力が籠った。
脱力した状態の限界値で力を込めてしまったせいで全身が悲鳴を上げる。
「あ~スマン。……自分の思い描いた動きを出来るのと出来ないのとじゃ全然ちげェゼ?」
「そ、そうだな。思い描いた姿勢が出来てないから身体が歪んでるんだろうし、実際戦うときも完璧とは程遠かった」
やる機会があるかは知らんが飛んできた弾をぶった切るとかするには誤差が許されないし。
攻撃を受け流す時も間違った角度でやると受け流すんじゃなくて受けることになって装備が一瞬で悪くなる。
そういう精密さは目指す目標が高いほど重要になるはずだ。
「これから手伝ってもらっていいか?」
「……しゃーねェ、手伝ってやるよ」
「やったー、マユゲ大好きー」
「はいはい、そォいうの良いから。オレも時間無駄にしたかねェンだ、さっさとやンぞ」
「あーい」
一度意識的に無心の状態を作り出したからだろうか、柔軟運動を再開しようと意識すると一瞬でさっきと同じ状態に入ることができた。
限界まで身体を倒してもらい、そこで一定時間止めてから意識を戻して余計な力を入れないように気をつけながらさらに一定時間体勢を固定し、ゆっくり身体を起こす。
それを終えると次は限界以上に身体を倒した。
身体が激痛を訴えるがそれを無視してさらに限界を超えると肉が千切れるような、そんな感覚を抱いた。
「これっ、大丈夫なのか?」
「まァ、普通は大丈夫じゃねェなァ」
「てことは大丈夫なのね、わかった。これから何年何十年も戦うんだ、安全な状態で感じるこの程度の痛みなんてどぉってことねえぜ!」
普通はってことは今回は普通じゃないってことだろう。
だったら俺は疑わない。
マユゲの指示通り邪念雑念は排除して全力を尽くすだけ。
……痛いから可能な限り早く終わって欲しいけど。
「……よし、一旦こんな感じで良いだろ」
「そうなの?」
「ンで、一旦立て」
「わかった」
よくわからないが特に質問はせずに立つ。
聞いても意味がないからだ。
わからないとかじゃなく、わかっても多分どうしようもないこと。
「それは真っすぐ立ってるつもりか?」
「真っすぐ立てばいいのね」
「……左脚を少し引け、行き過ぎ、膝を緩めて、もう少しだ、よし、右脚も少し緩めて、そこだ。それで……そこからゆっくりお前視点で右に重心を移動……そこで止まれ」
少し違和感がある。
肉が千切れているのか立っているのもかなり辛い状態なのだが、それ以上に身体の角度が普段と違うような感じがするのだ。
「よし、ここで治すから動くなよ」
「おう」
さっき激痛が走っていた部分に治癒が施されて立つのが楽になる。
それと同時に今の体勢が最も楽だという感覚があった。
「これは?」
「歪になってた肉を一度ぶっ壊してなァ、マトモな状態に戻してから治癒して固定したンだ」
「なるほど。そゆことね」
道理で楽なワケだ。
適切な姿勢が変わった、いや、元に戻ったんだから当然この状態が楽になる。
「今度は一人でやってみろ、無理はしなくていい」
「オーケー」
まずは普通に身体を倒す。
初めよりも深い。
次に脱力してやる。
限界が少しだけ深くなっていた。
「身体が矯正されて若干変わったなァ。そっから柔軟性上げんのはひたすら練習だ。無理すりゃできねェこたァねェがそれをしちまうと身体の感覚が覚えられねェ、自分でやれ」
「マイナスからゼロには戻すが、ズルはいけませんってことか」
ようやくスタートラインに立ってってことだろう。
……やっぱ不摂生にしてると普通の奴より出遅れるな。
くそぉ、異世界転移するならやっぱ最低でも一ヶ月前に事前申告してほしい。
そしたら全力で鍛えるのに……。
まさか本当に起こるとは思ってなかったから異世界転移で役立つ知識ってほとんど中学時代に調べたヤツだし。
ちくしょう、もっと科学の本とか数学の本とか読んでおけばよかった。
「はいはい、くだらねェ後悔してないでさっさと次やんぞ」
「……はい」
余計なことを考えて時間を浪費しているからか対応が少し雑だ。
いや、それはいつものことか。
ともかく俺は付き合ってもらっている立場だ、確かに無駄にするのはダメだろう。
「次はどうすんだ?」
「色々やるところはあンだが優先度が高いのは骨格だなァ。ちょっとそこにうつ伏せになれ」
「マッサージ?」
マントを外し、大人しく床にうつ伏せになる。
すると腰のあたりに圧迫を感じた。
「乗ってる?」
「おォ」
「ご褒美ですか」
馬乗りの状態で上の方から背骨を撫でられる。
両手の親指で挟むように圧迫されつつ下へと移動し、少しくすぐったい。
「……やっぱ全然ちげェな。筋肉が足ンねェ」
「どうせ貧弱ボーイですよーだ」
「拗ねるな面倒くせェ。首も傾いてっから左右で肩の筋肉ちげェし、本当に面倒だなァおめェ」
「すまん……」
ダメ人間でごめん。
これから変わっていくから許して。
「別にお前がどンな人間だろォとオレに損がなけりゃ構わねェけどよ」
「マユゲまじ半端ねぇ、結婚して」
「断る」
「即断即決どぉも、泣きそう。諦めないぞ」
「五、六年経っても同じこと言ったら考えてやる」
「お、マジで? それまでには強くなってよ」
まあ、正直な話、そこまで甘くないのは理解している。
この世界で、開拓兵という仕事をしていて、それだけの時間を生きていられるのは中々に難しい。
ただ日銭を稼ぐだけならともかく、俺が目的の実現を目指している間は険しい道が待っているはずだ。
となると、この五年や六年というのは前の世界の感覚ほど短くはないということだ。
俺は大体二三歳。
果たしてそれまで生きていられるか。
これはマユゲからの「やる気があンなら他のこと考えてねェで本気で生きろ」ということだろう。
「……ありがとう」
「なンだ、いきなり」
「なんだろうな」
ヒイラギの身体が歪んでいるのは幼少期が主な原因です
傷ついた身体を庇うように歩いていたら重心が横にズレ、自信のなさから下を向いて歩いていたら猫背に
吹っ切れて人格を変えるまでそういう感じにやってたのでそれが骨格に影響し、その小さなズレを矯正せずに暮らしてたら悪化したっていう経緯
矯正できてよかったねヒイラギ(クソ痛いけど)
~その後のやりとり(セリフのみ)~
「それとなァ、胸とか脚とか観ンのやめといた方が良いゼ」
「バレたッ!? ごめんなさいッ!」
「そういうのって普通にわかるからな?」
「女の勘ってスゲー」
「ンなンじゃねェよ。ただ見られてるだけならともかくそんな注意深く観られたら誰だって気づく」
「……マジ?」
「おォ、視線が不快だからやめとけ」
「あい、今度から気をつけます……」
殺気・敵意・害意・視線等の気配について
我々の世界とは異なり、この世界ではそれらの「きさま! 見ているなッ!」が実際にあります
決してオカルトな話ではなく――といっても【魔術】などをこの世界特有の【科学】として認識なければオカルトにはなりますが――意志の強さによって見られているかどうかがわかります
ただぼんやりと、視界に入ったとかであれば何も感じませんが種類問わずそれなりに強い感情を向けられたら男女問わず感じます
開拓兵はこれができないと強くなれないとまで言われてる
ちなみに学者がサイコロを振って偶数奇数によって相手を見る見ないを変えて人は視線を感じるのかという検証を行った結果
1000回実験して正解は502回
正解率約五〇%、サイコロも偶奇はそれぞれ五〇%
人は視線を感じない
某Youtuberの検証でも結論は同じ
我々の世界では人は視線を感じません