ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「二人とも今日からどうするんだ?」
「? ……ああ、宿か。どうする? 部屋分けるか?」
「霜村さんたちに誘われているので私は他の宿に行きます」
「そうか、なら俺のしばらく分先払っておく」
「わかった、嬢ちゃんも頑張れよ」
「はい」
一週間が終わり、新しい一週間が始まる。
そうは言っても日々に変わりはない。
俺は鍛錬に励むだけだ。
「クレイオスのオッサン、アイツの様子はどうだ?」
「……まだ悩んでいるよ」
「一日じゃそんなモンか。……じゃあ俺はそろそろ行く、香月も元気でな」
「あ、はいッ、一週間ありがとうございました!」
ただ初期のタイムリミットだった一週間を乗り切ったからだろうか。
金銭的余裕はいくらでもあったのに今更開放感が訪れている。
心なしか清々しい。
これからの目標はどうすっかなぁ。
漫然と鍛えてもやる気は出ないし。
目標がない。
目的もない。
そういう意味では香月や霜村たちに動く理由を貰っていたということに気づく。
今の俺では難しそうなことを見つけてそれの達成を直近の目標にするのも良いだろう。
「つってもどーすっかなー。予想外に金が手に入ったから金稼ぐモチベもなくて依頼もやる気出ないし、ゴブリン以外ロクに戦えないし……」
この世界のことを全然知らないから目標もそう簡単には見つからない。
どうしたものかと悩んでいると不意に黒猫が目に入った。
馬もそうだし猫もそうだけど、前の世界と大体同じような造形してんだよなぁ。
この形が進化に適してるってことなのかね?
二世紀前までは龍以外前の世界とそう大差なさそうだし。
「ほぉら、よっておいで~、チッチッチッ」
猫はワリと好きだ。
けど残念なことに好かれたことはない。
「鬱陶しい人間だね、こっちに来るんじゃないよ」
「……キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!」
スゲエな、オイ。
この世界の猫は人語を解するのかよ。
猫スゲエ。
ネコと和解せよ。
「わ、悪い……」
「ふんっ、気色の悪い人間だ」
和解できなかった。
黒猫はそう言い残して足早に路地へ消えていく。
「……辛辣、猫目線でもそれとか泣きそう」
まさか猫の目から見ても俺がキモイとは思わなかった。
というか猫の気色悪いってどういう基準なんだろう。
……臭い?
まさか加齢臭?
この歳で加齢臭とか嫌なんだけど。
それだったら普通に顔がキモイとかの方がマシだわぁ。
「考えるのやめよ……」
多分これは深く考えたらダメなやつだ。
考えたところで正解確認のしようがないんだから労力的にもメンタル的にも考えるだけ無駄だろう。
猫、猫、猫……フェーニャン?
フェーニャン可愛いよなぁ。
笑顔が無邪気だし、雰囲気とは裏腹にちゃんと仕事できるし、意外と賢いし。
周りの音に反応してピクピク動く猫耳も可愛いんだよなぁ。
モフりたい。
「よっす」
「ヒイラギ、今日は
「特に目的はない。とりあえず情報収集がてら依頼を見に来ただけ」
「そうにゃのか。にゃら新しいのは……これっ」
出された依頼書は多いがその大半が依頼主が変わっただけの知っている依頼内容だけ。
完全新規の依頼はほんの少しだ。
「え~と? 落とし物の捜索、研究材料の提供(なんでもあり)、復興のための住み込み支援、戦闘訓練の相手、話し相手の募集……ん? 戦闘訓練?」
依頼自体はおかしくないのだがそれ以外の場所に違和感を覚えた。
「あっ、ごめんっ、違うの混ざってた!」
「なるほど、だから見習いの俺に戦闘訓練なんておかしな状況になってたのか」
「この依頼は“一般”からの依頼にゃの。ごめん」
「いや、気にすんな、別になんにもなってないし」
そうか、“一般”にもなると誰かを鍛えるなんてこともするのか。
もし“一般”になれても誰かに教えるなんて自信はないけど、なれたらやってみるのも良いな。
「ふぅん……あまり面白そうなのはないな……」
「依頼を一体にゃんだと思ってるのさ、お子様だにゃ」
「辛辣ぅ」
事実だけど。
とはいえそうなると本格的につまらなくなる。
鍛えるためにゴブリンを狩りまくるだけになってしまう。
「……じゃあ大人にでもなってきますよぉ」
ゴブリン嘗めてた!
そういえば俺はゴブリンにケガをさせられたんだった。
「俺って
一体の強さは盗賊リーダーに比べたら大したことはない。
だが相手のテリトリーという不利と数の不利が合わさって苦戦を強いられている。
徒党を組む程度の知能はあるから下手を打てば学習されて弱い攻撃は避けられ防がれてしまう。
「死ね死ね死ねぇッ!」
この新しい短剣は中々強い。
特に
武器強化の細かな加減はまだ下手だけど魔力操作が鍛えられるし、単純に強くて切る時のストレスがないのが長所だ。
瞬間的な圧倒的重量で相手の攻撃を弾き飛ばす。
難点があるとすれば一気に重量が変化して筋肉や関節に負荷がかかることだがこれは問題ない。
ちゃんと今後も鍛えればこの程度の負荷は平気で耐えられるし、今はマユゲからの指輪で肉体の耐久を向上させているからダメージも少なくて済んでいる。
『グギャァァアアアアッ!』
「正面から、罠を警戒したくなるが、お前らにそんな知能ないよなッ」
あるのは子どもの喧嘩のような暴力だけ。
襲い掛かってくるときに叫ぶわ集団で来てもロクに連携がないわで。
俺としては楽でいいんだが、そんな稚拙な暴力に苦戦しているっていうのが酷く屈辱的ではある。
自信もなくなってメンタルがやられそうだ。
「【
マユゲに頼んで教えて貰った新しい魔術。
昔は
やっぱり人の中での概念だからコロコロ変わるという。
「【
魔術分類は『初級』。
威力はそこまでなく、試しに自分の手に当ててみたら軽くケガをする程度だった。
けれど【
当たると僅かなダメージと、当たった場所周辺の麻痺状態。
元々魔術防御力の低いゴブリンにはこれが効果的で、脚に当てれば倒れるし腕に当たれば攻撃がほとんどできない。
流石に要なだけあって脳や心臓、肺などを麻痺することはできないがそれでも充分なほど強力な魔術だ。
「あとちょっと……流石に全力で動きすぎて体力きちぃな」
その時に少し気になることがあった。
マユゲがやたらと風と火の魔術を覚えさせようと迫ってきたのだ。
理由を聞いたら曰く「風と火、あとは雷の魔術は燃費がいいンだよ」と。
確かに消費魔力と威力のコスパは良いのだが、マユゲにしてはやけに強く押してきたのがなんかやっぱり引っかかる。
雷の魔術を教えてくれっていったら無表情で適性がないワケじゃないが平凡だから今はやめとけ、的なことを言われて結構ショックだった。
最終的にはマユゲの言う通り風と火の魔術を覚えるから雷の魔術を教えてくれってことで終わった。
「【
ただ火の魔術は教わることが多いらしい。
なんでも、しばらくは下準備としての魔術習得が続くとのこと。
アイツは一体俺に何をさせたいのだろうか。
新しく開発した魔術を使いたいけどマユゲ本人はあまり適性がなかったとかだろうか?
いや、仮にも
普人の俺に魔術で劣るなんて考えられない。
「【
だとしたらアレだろうか、新たに魔術を習得することでそれは肉体的にどんな変化を及ぼすのか。
とかの研究。
なんか初期の毛髪に比べて今の毛髪の方が包含魔力量が多いとか言っていた気がする。
普段研究してる姿を見ないからいまいち実感がないけどマユゲって研究者だし。
そういう方向性だろう。
「ふぃぃ……終わった終わった」
そのうち研究の内容と進捗でも聞いてみるか。
……いや、もし芳しくなかったらストレスを感じさせるだけになるからやめておこう。
流石にこの世界でも普通の猫は喋りませんよ?
彼女は特別で普通の猫に見える
精霊はエルフ同様特殊な場所でそれぞれの社会を築いているため滅多に人前に出ません
ただ好奇心旺盛な彼女はたまにコッソリと抜け出しては人の世界を見に行っています
魂を見ることのできる彼女は閉じてほとんど変化のない猫精霊の社会にストレスを感じつつ雑多な人間社会に少し憧れを抱いているのです
ヒイラギが初対面ながら辛辣なことを言われたのは彼女の魂を見る力が理由で、様々な方向性を一つの魂に秘めた混沌さを直視したため「気色が悪い」となりました
彼女は平和を好んでいて、純粋な魂の持ち主を見つけては観察しています
そんな彼女の名は『ウィナフレッド』
恐らく今後は出てこないでしょう