ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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 三つ目の評価がもらえました、ヤッター


第三九話 錬金術で生まれたあれやこれや

「よう、エリナ」

「今日も来たのかい? さてはヒマだね?」

「否定はしない。ほら、飯持ってきたぞ。どうせ食ってないだろ?」

「今日はまだだね。とは言ってもあれから一応ちゃんと食べるようにしてるんだよ」

 

 確かに肌の状態はある程度回復している。

 顔の色も少し良くなっているが、元々真っ白だからそこまで大きな変化はない。

 

「今日はわざわざこれのために来たのかい? ありがたいけどもういい歳なんだからそういうのはいらないんだけど」

「あんなガリガリになって何がいい歳だ。……や、何、今朝ギルドで依頼を見てな、受けてはいないが気になったから様子を見に来た。趣味なんだろ?」

「ああ、そういうことかい。別に構わないよ、見られても困らないからね」

 

 あまりにも自分の研究成果に興味がなさすぎな気がする。

 公表とかは一切していないみたいだし。

 趣味で研究して引きこもりって、ホントにヘンリー・キャベンディッシュみたいな奴だな。

 どんな研究をしていようとどんな思想を持っていようと干渉をする気はあまりないが、エリナが発見したことに物凄く役立つことがあったらそれを埋もれさせるのはもったいないとい感情もある。

 公表して表舞台に立てとは言わないが、使わせてほしいものだ。

 

「なんか面白いモンあったら金払うからくれ、装備に使えないか知り合いに聞く」

「別にタダでも良いんだけど……うん、ちゃんと取引した方が気がラクだっていうならそれでも良いよ」

「気遣い感謝する」

 

 愛那たちの問題解決にも関わってもらったし、価値あるモノには相応の対価は支払う主義だから金を払ってちゃんと受け取る(トレード)する方が良い。

 世界で初めて買う人間だから適正価格ではないだろうけど。

 

「改めて……色々あるな」

「うん。そのあたりは鍛冶で生み出した素材と錬金術で生み出した素材のどっちがより高性能になるかって色々試した時にできたヤツだね」

「ああ、鍛造と鋳造みたいな……それで? どっちが強かったんだ?」

「モノによったね、一概にどっちが良いというのはないらしい。まあ手順次第ではもっと良くなるんだろうけどね」

 

 なるほど、勝手に鍛造の方が強いと思ってたけど絶対にそうってワケじゃないのか。

 

「鉄でもマルテンサイトとかあるしそういう組織とか構造で変わるよな。そういう武器に最適な構造を研究したりはしないのか?」

「興味ないね。私はあくまでもどちらの素材が高性能かという部分に興味を持っただけ、素材をどのように生かすかは他の誰かに任せるよ」

「そりゃそうか。趣味だから興味のあることしかやらんわな」

「そのあたりは最早錬金術関係なさそうだしね」

 

 俺も興味ないことは極力やりたくない。

 自分に一切メリットがないことならなおさらだ。

 愛那たちのは一応自発的、というか俺視点で間違っていると思って合理的でないと思ってそれを放置するのが不快だったからやったっていう理由がある。

 もっといえば人脈とか広げれたし経験も積めたし暇も潰せた。

 やはり嫌なことはメリットがない限り極力やらないのが精神衛生に良い。

 

「これとか面白いよ」

「半透明の……板?」

結晶金属(クリスタリウム)重力鉱晶(グラヴァイト)を合成したヤツで浮遊金晶(フローティウム)って言うんだよ。これは確か双子石を配合したから遠隔で魔力を流せて……えっとどれだったかな……ああ、これこれ」

 

 取り出したのは形を整えた綺麗な双子石、いや、魔石と合成した双子魔石。

 丸い玉になっている双子魔石に魔力を流すとその板――浮遊金晶(フローティウム)の板は宙に浮いた。

 

「オリジナル?」

「多分ね。というか作っても実用性皆無だし」

「弱いのか?」

「まさか。強度はバッチリ、結晶金属(クリスタリウム)の特性も持っているからそこそこ武器強化にも向いているさ」

「ならなんで?」

「お金が掛かるんだよね」

 

 なるほど?

 でも新しい短剣を買ったときはそんなに高くは……もしかして短剣にはそんなに使ってなかったとか?

 

「まずこの二つはどちらも耐魔性能の高い錬金釜が必要だし、設備があってもこの二つを錬金するには高級な錬金液とか高級な中和剤とかが必要になるんだよね」

「つまり浮遊金晶(これ)を使おうと思ったら金の暴力になるってことか」

「ま、つまりはそういうことさ」

 

 けど面白そうなんだよな。

 性能によっては金が大量に貯まったら作ってもらうのもいいかも。

 

「他のモノだと……これだね。鏡面虚現金属(ミラーマテリアリウム)、映し出した物体が理論上生物非生物を問わずに一時的複製が可能になるんだ」

「……人間も?」

「理論上は。けど映した対象を完全に再現するからその再現には膨大な魔力が必要でね、生物はそれだけで必要魔力量が跳ね上がるんだ」

「あ~……脳の複雑さとかが理由かね?」

 

 同じサイズの画像でも絵の複雑さとかによってバイト数が変わる。

 多分そんな感じなんだろうな。

 

「正直使い道はないよね」

「そうか? ……そうだな」

「効果を切れば再現したモノは消える、維持には魔力が必要。何に使ったら良いんだろうね?」

「……さあ?」

 

 瞬時に思いつくことなんて何もない。

 その場にあるモノしか複製できない魔力喰らいの活用法なんてわかるワケがない。

 

「てかどうやって作ったんだ?」

「……色々頑張った!」

「憶えてないのね」

「し、資料は残ってるからッ。必要になったら資料見れば済むからッ」

「それもそうか」

 

 研究者って研究に関すること全部憶えてるワケじゃなさそうだし。

 資料を残してるならそれだけで充分だ。

 

「他にも並の武器じゃ切れない糸とか魔力を流すと伸びる革だったり魔力を流すと増殖する粘液とかもあるよ」

「……そうか」

 

 どこに使い道があるのかわからない。

 特に最後だ。

 粘液って何に使うんだろう。

 乾燥しないとかなら機械の潤滑油にできたりするかもしれないが。

 

「疑ってるね? そりゃあ増殖するっていうのは疑っちゃうだろうけどさ! 本当なんだよッ、見てたまえよッ!」

「お、おう」

 

 別にそこを疑ったりはしてなかった。

 確かに凄いと思うけど、この世界だから(・・・・・・・)で片づけられる。

 そのあたりの何が可能で何が不可能で、というのは異世界人であり常識のない俺にはそのあたりがわからない。

 

「これはスライムの素材を用いているのさッ、ほら増えたッ」

「確かに……」

 

 指先に垂らした粘液。

 魔力が籠って淡く光り、指先の雫は徐々に肥大化する。

 皮膚との接触面積によるモノなのか、粘液量によるモノなのか、それとも単純に魔力を籠める量を増やしたのか。

 粘液は肥大速度を速め、表面張力でその姿を維持できなくなった粘液の雫は決壊して指先を伝いながら掌に貯まり、それでもなお増殖を続ける。

 

「得意げなのは良いけどさ……」

「ん?」

「そろそろ魔力を――って、アブねッ!?」

 

 増え過ぎた粘液は掌から溢れ、一滴の粘液が床に向かって零れ落ちそうになっていた。

 その直下には研究資料の紙の束。

 インクが滲んで重要な研究資料が読めなくなったら大惨事だと俺は咄嗟に落ちた雫を掌で受け止め、そのままエリナの手を掴んだ。

 一瞬だけ掌に魔力を籠め、エリナが手に纏っていた魔力を弾き飛ばす。

 

「途中で止めぃ」

「いけないいけない、うっかりしてたよ」

「……」

 

 軽い調子でそう返してきたエリナの顔がやけに腹立たしく見えた。

 

「……ムカついたからこの粘液オメーの顔面に塗りたくって良いか?」

「なんで!?」

「いや、ムカついたからって言ったじゃん」

「やめてよぉッ」

 

 微妙に気持ち悪いんだよな、この粘液。

 ヌルヌルしてて単純にイヤだ。

 多分ヌルヌルした感触を今までほとんど味わったことがないからそう思うんだろうけど。

 

「アレだよ、ローションと同じだ。つまりは化粧水と同じ」

「何それ知らないよ!?」

「素の顔が良いから化粧なんてしたことないですってか?」

 

 いや、単純にこの世界だと化粧がそこまで重要じゃないのか。

 単に見分けがつかないってだけかもしれないけど街中で化粧してる人ほとんど見たことないし、命がホイホイと消えるこの世界じゃ美しくあるより強く健康にある方が重要だろうし。

 そういえばこの世界の人って基本誰でも筋肉質なんだよなぁ。

 流石に子供は普通な感じだけど大人は結構がっしりしてる人が多いし、女の人はほのかに浮き出る程度の腹筋は皆してる。

 ……この世界の体脂肪率って低そうだなぁ。

 

「てかこれって毒とかないよな?」

「まぁったくないよ。安全安心最高品質ッ」

「……ふぅん」

 

 試しに舐めてみた。

 味は心なしか甘いような、しょっぱいような、酸っぱいような、基本無味。

 触るとヌルヌルしているが口に含むと意外とそうでもない。

 唾液で分解されているのか唾液の年度の方が高いのか。

 

「意外と度胸あるねぇ、ヒイラギくん」

「だって毒ないし。ま、毒あっても即死じゃなかったら魔術で治療できるし」

「……命の価値低くない?」

「開拓兵だし」

 

 まあ自殺願望は現状ない。

 これまで何度か死にたくなったことはあるけど普通に乗り越えてきたし、平気平気。

 ただ好きなことやってそれで死ねるなら人間的には最高だと思ってるだけ。

 

「命の価値が低いってより、死ななきゃ無傷と同じ理論だ」

「は、初めて聞いたよその理論」

「だろうな」




 現代ではどうか知りませんが昔は色々舐める研究者がいました
 有名なのだと原子番号4番のベリリウムですね
 フランスの化学者ルイ・ニコラ・ヴォークランはベリリウムの入っている緑柱石を舐めて甘かったことからギリシャ語の『甘い』にちなむ『グルシナム』と名付けようとしましたが甘い化合物は多いことから緑柱石(ベリル)からベリリウムになったんです
 あとはスウェーデンの化学者カール・ヴィルヘルム。シェーレには物質を舐めてしまう癖があったとかどうとか

 つまりは危険は承知で好奇心に付き従う人間は昔からいたということです
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