ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第四〇話 試験条件

「ヒイラギ、今から依頼受けにゃい?」

「なんだ藪から棒に……」

「ヒイラギの実績点を計算したらあとちょっとで“一般”ににゃる試験条件を満たすみたいだから提案」

「ほうほう、あとちょっとですと? ……それは今日中にできる?」

「だから提案したの」

 

 一般開拓兵になったら一部アイテムの購入権とかが一気に解放されるから結構魅力的ではある。

 どうせそのうちなるんだし早いに越したことはない。

 けれどちょっと不安はある。

 早すぎると実力不足でその試験とやらに落ちるんじゃないかと。

 内容は詳しくは知らないが開拓兵だから戦闘が不可避とは聞いた。

 

「んじゃ条件に合う範囲内で依頼を」

「わかった。これね」

「進めるだけあって先に選別してたか」

 

 新規の依頼はなく、その中で気になったのは知ってはいるがやったことのない廃棄鉱物の選別だ。

 魔力を流して反応を確認することで廃棄鉱物の質を選り分ける。

 これも経験だ、やっておくのも良い。

 

「これで」

「りょうかーい、頑張って~」

「あいよ」

 

 依頼者に直接納品する必要はなく、廃棄場所に行って納品分を確保してギルド伝いに納品をすればいい。

 ギルドによる検品も早いから成功してるかどうかがすぐわかって楽だ。

 

「さて、魔力で選り分けか……」

 

 魔力を流す、というか籠めると粗悪なモノは自壊するらしい。

 多分魔力でやる水風船だ。

 水を入れ過ぎたら風船が破裂する、的な。

 

「どんなもんか~っと」

 

 手袋を装着して石を鷲掴みにして魔力を籠める。

 するとある一定の量を超えたあたりで石がポロポロと崩れていった。

 まるで手の中だけ時間の流れが速いかのように、その様はまるで風化。

 砂となって崩れ落ち、手に握った砂の中を確かめてみると輝く金属片が数粒残っていた。

 

「……もらったサンプルと全然ちげェや」

 

 サンプルはただの石だった。

 恐らくは加減を間違えたのだろう。

 魔力を籠めなさすぎると何も変化は起きないし、籠めすぎると今のように全てが風化。

 適切な加減をこのサンプルで確かめろということだろう。

 

「ゆっくり……ゆっくり……」

 

 サンプルを壊さないようにと少しずつ魔力を籠める。

 まるで卵を握っている気分だ。

 潰すにはある程度の握力が必要で、けど一度壊れたら一気に潰れる。

 想像以上に神経をすり減らす作業だ。

 

「あッ!?」

 

 その時、ピキッと石に僅かな罅が入った。

 反射的に魔力を切り、石はなんとか無事だが魔力の感覚が少し曖昧になってしまった。

 ため息ながらに直前の感覚を思い出し、石に魔力を籠める。

 反応なし。

 少し魔力を増やす。

 反応なし。

 どうやら少し感覚を忘れてギリギリだと思って籠めた量はギリギリよりも少し少なくなっていたようだ。

 

「あと少し…………ここか」

 

 掌が砂を撫でる感触。

 魔力をほんの僅かに減らして状態を維持する。

 この量だ。

 この量の魔力を流し込んでも崩れないヤツを集める。

 

「維持は案外簡単だな」

 

 同じ量を継続するのは以外にも簡単だった。

 いや、正確には武器強化の経験が生きたのだろう。

 戦いの中で少しずつ最適化する魔力操作。

 要領が同じだからこれは武器強化に通ずるモノがある。

 

「ふぅむ、やるなら瞬間的な再現だな……」

 

 魔力を切って、籠める。

 失敗してしまいさっきは無事だった鉱物にヒビが入った。

 オンオフの瞬間的切り替え。

 そして狙った強さで自分の力を引き出す訓練。

 言うなれば今の俺は時速140キロの球を投げれるだけに過ぎない。

 やるなら時速140キロの球を投げれて、その上で時速100キロの球を投げようと思ってジャスト時速100キロの球を投げれる球速コントロールを身につけなくてはならない。

 俺の魔力量は現状そこまで多くない。

 ロスを減らさなくては戦闘継続力が高くならないだろう。

 

「はッ!」

 

 よほど弱かったのか一気に飛び散るほど崩れた。

 ……気合を入れて魔力を籠めすぎたのも事実ではある。

 感情によるコントロールのブレも訓練項目に必要だ。

 

「うぅん……上手くイカンな」

 

 どうしても「破ッ」としてしまう。

 気合を入れるのは後回しだ。

 まずは平静状態でのコントロールを鍛える。

 基礎がなってないのに上に城を立てようとしたって崩れるのが目に見えている。

 やるなら美しい石垣を気づかなくてはならない。

 

「え~と、ほッ」

 

 僅かに籠めた魔力量が少ないのが自分でもわかった。

 ああ、なんだか楽しくなってきた気がする。

 これは成功と失敗が視覚的にも感覚的にも明確にわかるからゲームみたいで気持ちがいい。

 そして何よりも、未知の感覚を身体に染み込ませるこのなんとも言えない感覚が快楽的だ。

 

「あぁ、ダメだ。落ち着かないと」

 

 口角が上がっているのが自覚できる。

 感情を乱すと魔力も乱れる。

 冷静に。

 冷静に……。

 

「昨日の感覚を思い出したら上手くいくか? ……自分に意識を集中、こうして、こう……」

 

 一度目に映る全てをただの光として情報を無視し、自分の感覚だけを残し、スイッチを切り替えるように意識を切り替える。

 心が凪ぎ、自然と目の前の石に対して手が伸びていた。

 その時俺の心にあったのは依頼のことだけ。

 何回も、何十回も繰り返し、一つを掴んだのをきっかけに鉱滓の山が崩れたのをきっかけに意識が元に戻る。

 

「……ダメだな」

 

 このやり方は少なくとも現段階では俺に向いていない。

 練習によってはこれが効率的に働くこともあるだろうが、このやり方は記憶にほとんど残らなかった。

 意識に残らないから経験を積めない。

 これでは自分を機械として動かしているのと変わらないだろう。

 

「ズルはダメですってか」

 

 単純に自分のやり方が良くないだけなのは理解しているが、堕落しないようにそう思っておくことにした。

 クズは自覚しているがドブカスにはなりたくない。

 

 

 

「終わったぞ」

「お疲れ~、これで条件は達成。やろうと思ったら明日から依頼が受けれるけど……聞く?」

 

 明日から?

 この街でやるのか。

 

「そうだな、教えてくれ」

「場所はゼーフルス――」

「え!? ゼーフルスって南……海の街じゃねーか」

「うん。そうだけど?」

 

 街離れるのかぁ……まあ数日程度だし、良いか。

 

「すまん、続けてくれ」

「内容は洞窟に住み着いた海悪魔(サハギン)の討伐」

「サハギン……」

「あっ、注意だけど。街に行っても絶対に水棲種(マーフォーク)海悪魔(サハギン)とか言っちゃダメだからにゃ!?」

「あ~……うん、わかった」

 

 サハギンとマーフォーク。

 その特徴が俺の想像するモノと同様ならそれは確かに禁句だろう。

 黄色人種に対するイエローモンキーとかと同じ……今日日使わんか、コレ。

 まあとにかく、どっちも魚の要素があるからって一緒にしたらダメってことだな。

 

「全部倒すんじゃにゃくて指定した数倒せば大丈夫。まあ全部倒しちゃっても問題にゃいけど」

「無限にいるしな」

「ゼーフルスにはここから川を下って行くの」

「川、ああ、確かに何度か船を見たな」

「うん。魔導船で下るからその日の内には着くにゃ」

 

 街を散策する時に何度か見た川と船。

 興味がないからほとんど意識になかったが少し楽しみになってきた。

 船に乗った経験なんてない。

 よほど空腹じゃなければ乗り物酔いをするタイプではないし特に心配はいらないだろう。

 

「大体何日で終わるんだ?」

「え~と、向かうのに半日くらい、その翌日に上手くいけば依頼自体は終わって、その翌日に戻ってくるから大体三日かにゃ」

「早くてそんなもんか」

 

 となるとマユゲに遠出することを伝えてその間の素材は髪の毛だけにしてもらわないと。

 ちゃんと自分で採取もするよう気をつけないといけないし。

 

「どういう手はずでやれば良いんだ?」

「明日来た時に試験を受けるって言ってくれれば試験受験者の紙を渡すからそれを持って船のところに行く、見せればタダで船に乗れるからそのままゼーフルスに向かうの。着いたら向こうのギルドに行って、そしたらそこで説明が受けれると思うにゃ」

「オーケー、わかった」

 

 色々準備して早めに寝るか。




 水棲種(マーフォーク)たちは自分たちが海悪魔(サハギン)と似ているのは自覚しています
 けれど似ていることを理由に差別されることがあるので多くの場合は「似てない」と否定したりしています
 純粋な生物とモンスター、その他生態など様々な違いはあるものの見た目だけで言えば結構似てます
 見た目も違うところは多々あるので見分けることは充分可能です
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