ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「ここは安くて多くて美味いぜ」
「確かに全体的に安いな。じゃあこのやみつき海鮮麺ってので」
銅貨一〇枚の範囲で収まる価格帯だ。
このやみつき海鮮麺は銅貨七枚。
正確な量はまだわからないが周囲の客を見る限りは結構多そうに見える。
「酒は飲まねえのか?」
「あんま好きじゃねーんだよ。普通にジュースかなんかで良いよ」
「甘いのが好きなのか?」
「あ~、そうだな。どっちかっていうと甘党だ」
多分前の生活を続けてたら糖尿病まっしぐらだったって自信はある。
一度バイト代のほとんど全部お菓子に突っ込んだこともあったし。
「じゃあ甘いやつあるから一杯奢ってやるよ」
「……一杯だけだぞ」
アルハラか?
まあ一杯だけなら問題ないから良いけど。
ワインはできれば嫌なんだよなぁ。
一度飲んだけど甘くないし渋いしで、若干トラウマ。
「じゃあ、ネヴァ! やみつき二つとツィッタ産のミード二つ頼む!」
「は~い」
わぁ、産地指定して酒頼むのカッコいー。
……今度やってみよ。
「ミードってなんだっけ? 蜂蜜酒?」
「お、流石に知ってるか。俺が一二の頃、初めて飲んだのがツィッタのミードなんだよ」
「一二……」
早くない?
この世界の成人って一五とかじゃなかった?
地域差?
場所によりけり?
「甘くて初心者向けだから飲んでるとたまに揶揄われるんだけどな、やっぱ思い出の酒だからたまに飲むんだよ」
「初心者向け、なるほど。俺は飲む順番を間違えたのか」
「はっ、いきなり普通の飲んだら大体の奴は無理に決まってんだろうが。ゴブリン倒したことない一般人が
「わかりやすい例え」
まあ俺はゴブリン倒してても
「はい、お待たせっ」
「おう」
「……さっきの店員と知り合い?」
「幼馴染で彼女」
「おっふ、デューベのハーレムメンバー両方に遭遇しちゃったよ……」
小柄な女の子だった。
獣人で、ケモミミと普人の耳両方を持った四つ耳。
少し珍しい。
「スゲエな、憧れるわぁ」
「クハッ、大いに憧れやがれ」
「てかぶっちゃけ……何キッカケ?」
是非、参考として聞きたい。
「きっかけって言ってもな……幼馴染だからとしか言いようがねーな。親同士の付き合いで知り合った五つ上のお姉さんと隣んちの三つ下の妹って感じだしよ」
「てことは二一と一三、一三?!」
「そうそう」
ロリコ……。
ん゙ん゙ッ、見た目じゃ他人のこと言えなかった……。
「あ、これウメェ」
「だろ?」
「甘くて香りがなんか……フルーティー?」
「お、わかるか?」
「柑橘系の香りがする」
「正解だ」
そういう環境で養蜂をしているらしい。
知識ではそういう風になるってのは前から知ってたけれどこうして実際に味わってみると昔舐めたのとは全然甘さの雰囲気も口の中で広がる香りも違う。
想像以上だ。
「ウメー……あ、でも飲むの止めると酒って感じがする」
「やっぱ初めのうちは慣れねーよな」
「何度も飲まないとダメかぁ」
飲みなれないせいか、それとも単純に俺が若く味覚が向いていないからかどうにも酒特有の『酒です!』って感じが苦手。
ピーマンとかは平気なのに酒の苦みはよくわからないが受け付けない。
「麺もウメェ!」
「だろ!」
「疲れた身体に染み渡るぅぅ」
こういうのを食べると俺ってちゃんと健全な男だったんだなってわかる。
やっぱりこういうガツンと系の食事は青少年にとっての正義だ。
動いたあとはこういうのが良い。
旨味の暴力って感じがする。
「麺って不思議だよな。ただでさえ大量に食えるのに疲れた状態で食うと無限に入る気がする」
「バッカ、そりゃこの店のだからに決まってんだろ。ここの飯はどれもウメーんだからよ」
「同意。まだこれしか食ってないけど見た感じだけで
「おっ、わかってるじゃねーの。ちなみにまだイケるか?」
「もち」
「なら俺のおすすめを教えてやるよ」
「期待してるぜッ」
死の危機からの開放感からか、それともアルコールによるものなのか、はたまた
自覚できる程度にはテンションが上がっていて、それに対する不快感や自制心はあまりない。
「ネヴァ――」
てかこうやって誰かと話しながら楽しく食べるのって久々だ。
そういえばこういう感じだったような気もするし、久々過ぎて初めてのような感じもする。
「魚の天ぷらだ」
「マジか、天ぷらあるのか……味付けは?」
「いらねーよ。そのまま食ってみろ」
「うおッ!? そのまんまでもウメェ……って、普通に塩振ってんじゃねえか! 俺にも寄越せ」
「バレたか」
食事をしながらそんなくだらない会話をする。
一緒にいるだけで会話のない以前とは違って気が楽だ。
もっといえば楽しいと思えている。
いつか、こんなことを続けられる仲間と出会えたら。
「ところでよ、口ぶり的に……ヒイラギも色んな女の人と仲良いのか?」
「ぶへッ!」
やべ、酒が変なとこ行った。
「それはハーレム的な意味でだよな?」
「おう」
「……まあ、良いなって思ってる人は何人かいるけどさ」
「へぇッ、どんな人? 何人くらい?」
「どれも彼女にはなってないんだけど」
「いいからいいから」
やっぱそういうの気になるよなぁ。
俺もちょっと気になってたし。
「しょ、正直好きかどうか自分の気持ちがわからないんだよ」
「あ~、なんとなくわかるぜ? 俺も子どもの頃は普通に姉と妹程度にしか思ってなかったけど成長したらなんかよくわかんねーけど気になって。恋愛って概念があるのは知ってるけど自分の感情が本当に
「そう! まさにそう! 俺って初恋もまだだからさぁ、好きって感情がイマイチよくわかんなくてさぁ」
小学校の途中までは人が嫌いだったし、そういう感情が薄くなってからも嫌いじゃなくて無関心になっただけだったし。
こっちの世界に来て向こうの人間と異世界人は見た目が同じだけの違う相手だって認識して関心を持てるようになったけど。
それでも初恋がまだなことに変わりはないし。
「系統は違うけど似たような感じだったな。ずっと一緒にいて、前提に異性として以外の好きがあるど初恋の実感が湧かないし」
「だからホント、曖昧な感情と判断で言うけどさ」
「おう」
「まず名前を教えて貰えてないからマユゲってあだ名をつけてる
「コエーな」
怖いか?
隠し事をしなければ良いだけな気がするんだけど。
「そいつ結構強気っていうか、ワリと高圧的なんだよ」
「なるほど」
「基本的な関係性としてはマユゲが研究者で俺は異世界人としての研究対象兼異世界の情報提供者」
「変わった関係だな。てかヒイラギ異世界人だったのか、求道の英雄と同じだな」
「実はそうなの」
求道の英雄、名前は知ってるな。
なんだっけ?
ルイス?
まあいいや。
「マユゲの見た目としては緑の目と黄色の目、身長は一一〇センチから一二〇センチ、外ハネショートで特徴的な眉毛をしてる。あと一応そこそこ胸がデカい」
「結構身長違うのな。自分の半分くらいデカい男相手にして首とか疲れそうだ」
「着眼点そこなの?」
「んで? どこが好きになったわけよ」
躊躇なく聞いてきますね、お客さん。
少しくらい躊躇ってくれてもいいのよ?
「その、まずは本音で語り合えるってトコが良いなって」
「どういうことだ?」
「俺ってさ、噓を吐くのが苦手っていうか、思ったことをワリとすぐ言っちゃう性格で……だからかたまに人に嫌われることがあって、けど思考を読めるワケだから隠しても無駄じゃん?」
「そうだな。隠してもバレるしな」
「だから向こうが本当に望んでるのってそういうすぐわかる嘘じゃなくて、話してて楽な本音の相手って感じがするだろ?」
「まあ、いちいち嘘か本当かわかるワケだし」
「そういう本音を言ってもいい相手ってのがこれまでいなかったから……スッゲー嬉しくて……」
知りたいと思ったタイミングじゃなくて常に本当か嘘かわかるのは辛いだろうし、そういうところで余計なことを考えなくてもいいようにしてあげれれば良いんだけど。
……て、そもそもあそこにずっといるマユゲ的には俺が行かなかったら誰ともかかわらずに済むからそっちの方が楽なんじゃね!?
いや、きっと違うところで役に立ってるはず、多分。
研究とか、楽しいだろうし?
「あとはなんだかんだ言って優しいところとか」
「優しくしてもらうと嬉しいもんな」
「他は……その……考えてるときの顔が好きで。こう、なんて言ったらいいのかわかんないけどさ」
「おう、なんとなくわかるぜ」
「真面目な表情と理知的な目つきって言えばいいのか? とにかくカッコイイ感じのアレがさ、わかるよな?」
「わかるぜ! 俺もリンさんが働いてるときの姿スゲー好きだもん!」
「だよな! 言語化しがたい魅力っていうか、言語化不可能な魅力っていうか……」
「あの空気感良いよな。心の中にずっと刻んでるぜ、俺は」
「俺も」
うん、やっぱりデューベはワカル奴だ。
お前ならわかってくれるって信じてたぜ。
そもそも感情定義が曖昧系主人公
ぶっちゃけ初恋がないと恋愛感情って実感湧かないですよね(笑)
こいつら……酔ってるな(確信)
性癖話、もちっとだけ続くんじゃ