ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「昨日の続きだ。……つっても昨日のはテメーらじゃねえけどな」
俺にとっちゃ大差ない。
モンスター、
恨んでなんてないけど昨日の俺の仇は討たせてもらう。
「今日の俺は昨日とはちょっと違うぜ」
本当にちょっとだ。
具体的には光源を魔術から魔道具に変えた。
バラまいて辺りを照らして使い終わったら回収しなきゃだからちょっと使い勝手が悪いけど。
「フハハハハ、頭が楽だわ!」
鍛えるために魔術の並行行使をしてたけどやっぱね、初見の相手を舐めて掛かるモンじゃねーな。
にしても、ホント楽。
意識がより戦闘に向けられるから昨日より圧倒的に戦いやすい。
魔術の並行行使は右手と左手で異なる図形を同時に書く以上に難易度が高い。
異世界人ゆえに魔術に慣れ親しんでいない俺にとって魔術の並行行使というのは片方で数学の問題を解きながらもう片方で英語の問題を解くようなモノ。
今は簡単な魔術しか使えないから算数と国語を同時にやるようなモノではあるが、それらを簡単だと感じるのはより難しい問題を知っている中学生以上の者。
算数も国語もそれを実際に考えている子どもにとっては難しい。
「シッ!」
けれど昨日の油断ゆえの無茶には恩恵もあった。
より過酷な状況での戦闘を続け、生き延びたゆえの心的余裕。
ギリギリだったからこそ本能が揺さぶられ、戦いの記憶は強く定着している。
一夜を経たことで記憶は整理され、
「ハァッ!!」
切断力特化の橙色の飛翔斬撃。
衝撃力特化の蒼色の飛翔斬撃。
それぞれ使い分けながら牽制し、連携をさせる隙を与えずに一対一の戦いを繰り返す。
傷を負っては最低限の治癒を掛けて武器を振るう。
これで……三〇と二、三……四。
時間は大体三時間ってところか。
光源にしている浮遊魔石灯が魔力を失い、新しいモノに変えてから体感一時間。
昨日と比べたらペースは良い。
だが休憩の暇がなかなかない。
ハイペースで戦闘を終わらせれば体力の消耗が激しく、かといってスローペースで戦えば戦闘音に引き寄せられて追加の相手がやって来た。
平均休憩時間は約四分。
開拓兵としての歴が浅い俺はたったそれだけの時間ではロクに体力回復ができない。
辛うじてできるのは呼吸で痛む肺を落ち着かせることだけ。
肉体の酷使で筋肉は容易く千切れ、治癒で誤魔化し続ける。
「あ~、しんど。無限かよコノヤロー」
なんとか得た休憩時間。
それすらも本当の意味では休憩できない。
いつ新たな敵がやって来るか、気が気でない状況。
ただただ頭が疲れる。
「ノルマなんぼだっけ? ……一〇〇?」
頭が全然働かず、この程度のことすら思い出すのに時間が掛かる。
恐らく正確には思考が戦闘に没入していてそれ以外のことに思考を回せないのだ。
俺は不器用だから自由に思考のスイッチを切り替えて戦闘から他のことに変えることは難しい。
一〇〇……一〇〇……うん、それ以外は思い出さなくて良いな。
今はノルマをこなすことと戦うことを考える。
いや、戦うことに集中する方が良いか。
ノルマ達成はその時に思い出せばいい……。
「いきなりやっと驚くだろーし……『回収した
勝手に思い出すんだから多分無意識領域でも考えることは減るだろう。
もっといえば手っ取り早く【洗脳】でノルマのことを達成まで考えないようにしてしまえば全く考えずともよくなるのだが、そうすれば意識面の成長ができなくなるからしない方が良い。
成長を簡単にするのはまだ良いが、工程そのものを簡単にしたら俺の経験値にならない。
「ふぅ、そろそろか」
強化し続けていた聴覚に掛かっていた近づいてくる足音。
休めたのはたった三分。
ドロップの回収時間を考えたらほとんど休めていない。
それでも向こうは待ってくれないし、そうなったら休むワケにもいかない。
「どうせだったらオリジナルの魔術でも造ってみるか? まあどうせ思いついても既存だろうけど」
バカの短絡的な思い付きなんてどうせ既に誰かが思いついている。
けど手数を増やすことができるのは新規既存に関係なく利点だ。
躊躇する必要はない。
さて、考えろ。
まず今の俺に何が出来る?
使える魔術は現状だと火・風・水・土の基本四系統が多少とその他身体強化系プラスアルファ。
今の俺じゃ複雑な魔術は処理が間に合わない。
工程の少ない、単純な。
けれど強力な魔術。
どうする、火・風・水・土……。
槍状に? それじゃ【
弾? 既にある。
壁状に? 無駄がデカい魔力消費が激しい、ダメだ。
形状にこだわるな。
他のことで発想を――。
「――よしッ!
詳しい部分はイメージでゴリ押しする。
今は魔術が成功した未来だけを考えればいい。
余計なことは考えるな。
アイツらは俺がバラバラにする。
その姿を明確に、鮮明に、正確に。
イメージの補強のため、空けた左手を真っすぐ突き出し、そのまま
そして研ぎ澄まされた意識の中、ゆっくりと口が開く。
「……【
集中した俺の口からは発した言葉の意味がそのまま乗ったような冷たい声が出た。
と、同時に左手から大量の冷気が流れ出る。
「ちッ」
起きたのは足元が少し寒くなった程度。
イメージとは程遠い。
潜るように踏み込み、三叉槍を握りながら首に短剣を突き立てた。
「もっと……強く――」
強くイメージを。
そう思った時左手に違和感があった。
凍てついた三叉槍。
いや、全てを凍てつかせるには足らずただの棒と化した三叉槍だった棒氷が手に握られている。
なるほど、不完全な魔術だから効果範囲が伸びずに掌回りにだけ留まったのか。
けどこいつらの魔術を上書きできることはわかったから確信は持てた。
あとはこの魔術に実用性を持たせるだけ。
イカンねぇ、凍らせるってのに燃えてきたよ。
「ッぶね。握り潰すぞテメェ」
的確に首を狙った一撃。
そしてその直後に背後から足を狙った振り払いが来るが跳んで避ける。
ある程度の連携パターンを聞いて、音で位置を把握すれば虚実がないこいつら相手なら流石に見ずとも回避は可能だ。
ま、そこまで握力ないから普通に掴んでから切るだけでいいや。
着地をしながら前に踏み込み、左手で
あと一〇センチ。
そこまで行ったとき、不意に左腕が後ろに回った。
「……あはっ、マジか」
手の中には凍った腕が。
白く、色を忘れたかのように真っ白に凍てつき、白い冷気を吐き出す白の塊。
首を切りながら腕を地面に叩き捨てると、破片となって、そして霧散する。
「いいねいいね、なるほど、こういう風に冷気は流れるのか。なら――」
高揚。
魔力管理の忘却。
出力は
俺の豹変を感じ取った
突き出された三叉槍を俺は後ろに退くことで届かなくし、槍先にそっと左手の指先を触れる。
「――こうすれば良いのか」
冷気が奔る。
透明さも相まって、その様子はガラスに入る罅のようだ。
一点の異変から一気に一瞬で奥までその異変は伝播する。
出力の加減を忘れた冷気は瞬く間に三叉槍を持っていた
「ふふっ、良い。これは、良い」
俺は右手も空け、両手から冷気を発する。
モンスター一体を丸々魔術で殺したという事実が俺に更なる高揚感をもたらし、だがその高揚感が一周回って俺に冷静さをもたらした。
さて、ここからは効率化の追究だ。
まず無駄が多い。
垂れ流すな、貯めろ。
凍らせる部位も全身にする必要はない。
必要なのは頭部か胸部。
時間を掛けると魔力が掛かる。
速度も上げて。
奔れ、奔れ、奔れ。
「……」
周囲から得た情報を脳内で整理して敵の動きを予測。
立ち回りで敵の反応を操作。
狭い範囲に集め、一番近い場所にいる奴を蹴り飛ばして他の敵を巻き添えに。
次へと繋がる冷気の
「ふぅ、全部終わったか」
先頭から次々霧散してゆく氷像群。
魔石と素材が散らばる。
「……意外と魔力消費少ないな。あれだけ暴れたからもっと減ってると思ったんだが」
不思議なことに魔力消費は想像未満だった。
これなら【
そーいや人によって同じ魔術でも消費魔力量が変わったって研究があるってマユゲから聞いたな。
それか?
いや、にしたって効果に対しての魔力消費が……。
もしかして冷気って第五系統?
それとも火系統?
今度戻ったらマユゲに聞いてみるか。
魔術の威力と消費魔力量は比例関係にはありません
同じ魔術なら魔力を込めれば比例関係になりますが、異なる魔術の場合は関係ないです
例えば同じ『一〇センチの風穴』という結果があったとしても【
威力は他の要因で決まりますからね
まあだからって【
状況によりけりです